大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・78『国境警備司令ドーカン・1』

2023-10-02 14:51:07 | 小説3

くノ一その一今のうち

78『国境警備司令ドーカン・1』そのいち 

 

 

「ドーカン、状況はどうなっておる!?」

 

 王女は警戒の兵の頭越しに呼ばわった。

 兵たちは、その声だけで声の主が分かったようで右往左往。

「王女!?」「姫君!」「ちょ、司令!」「お声が……!」「お待ちを!」

 すぐに、二階建ての司令部から、髭の司令官が飛んで出てきた。

 

「殿下!?」

 

「A・B国でいざこざがあったと聞いて、様子を見に来た。状況報告せよ!」

 なんちゅう剥き出し(-_-;)。

 これでは、王女ここにありと宣伝しているようなものだ、A・B両国の監視哨も近く、その気になればピンポイントで狙撃されてしまいかねない。

「場所をかえます、こちらへ」

 司令官も分かっているようで、副官に一言耳打ちして、自らトレンチ(塹壕)に下りて、姫とわたしを先導する。

 掩体壕を二つ経由して、地下壕に向かっていると分かる。チラリと見えた司令部のポールには花のデザインの王女旗がスルスルと上っていくのが見えた。

「もう敵には知られておるでしょうから、はっきり示した方が安全ですので」

 もっともだ、明確に王女の滞在を示しておけば、簡単には攻撃もできないだろう。

「ドーカンは心配性だなあ」

「万一のことがあってはなりませんので。こちらは、日本から来られたお客人ですか?」

「ああ、主演女優の付き人兼セキュリティーだ。臨時にわたしの副官を務めてもらっている」

「そうですか、基地司令のドーカンです。お名前は?」

「風間そのです、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

 過不足のない笑みで挨拶してくれる。

 実直そうな司令官は、名前の通り日暮里の駅前に立っている銅像の太田道灌に似ていなくもない。

「それで、状況は?」

「はい、未明にAB国境付近で爆発音がありました。音から推量すると旧ソ連製の地雷です。古い地雷なので自然に暴発したともとれるのですが、原因は不明です。その後A国が機銃、迫撃砲を発砲。迫撃砲は延べ35発。いずれもB国の監視哨施設は外しております」

「単なる威嚇か?」

「とも申せません。そう思わせて、一気に本格的な攻撃に出る場合もあります。じっさい、昼前から予定外の補給トラックが10台入ってきました。うち一台は早期警戒レーダーを積んでおり油断ができません」

「B国は、どうか?」

「よく耐えています。刺激して攻撃の口実になるのを避けているように思えます」

「このままで済みそうに思えるか?」

「分かりません、最悪は、AB共同で奇襲してくる可能性もあります。むろん、背後で草原の国が糸を引いていると考えるべきでしょう」

「その場合、この国境警備隊で持ちこたえられるのか?」

「無理です。玉砕覚悟で抵抗し、時間を稼いで応援を待つのがセオリーです」

「可能性は?」

「あるとしか申せません。判断するのは統合参謀本部で、決意されるのは総理の輔弼を受けられた陛下です」

「そうだな。分かった、しばらく滞在するぞ」

「……承知しました、お部屋を用意いたします」

 微妙にためらって、ドーカン司令は内線電話でなにやら指示すると、地下道を通って司令部棟の一室に我々をあんないした。

 部屋のドアには『司令官室』のプレートがかかっていた。

 急場のことで自分の部屋を提供するのが一番と考えたんだ。自分はオペレーションルームに寝袋でも持ち込むんだろう、この実直さは好ましい。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女
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RE・トモコパラドクス・35『樹海戦争・2』

2023-10-02 05:51:59 | 小説7

RE・友子パラドクス

35『樹海戦争・2』 


 

 けして歴史には残らない樹海戦争が始まった……。

 

 セイ! 

 ジュワ!

 100体の栞が4体の友子に襲いかかった。瞬時に4体の友子はテレポートしようとしたが、4体目が間に合わず、スペシウムソードで真っ二つにされた。

 3体の友子は、すぐに義体を合成し30体に増殖。さらに放射状にテレポート、そこで20体の友子が倒されたが、義体は、さらに合成され、栞と同じ100体になった。

「どう、これで同じ数ね。栞の義体は合成に0・01秒、わたしより時間がかかる。これ以上義体を増やそうとしたら、その瞬間に100体のわたしに破壊されるわよ」

 2回のテレポートで、友子と栞は半径2キロの円の中に散らばってしまった。

「100体同士のタイマンね!」「受けて立つわ!」

 セイ! ズシ! ベシ! ブシュ! ギシ! ズビュン! ドゲシ! ズビ! ドシ! ビシ! バシ! ズビビ!

 最初の5分は友子が有利だった。スペシウム光線、スペシウムソードが、あちこちで閃き、火花を散らし、栞は80体に減った。

「力の差よ。このままでいくと、あと3分で栞は全滅するわ。もう、戦いは止めて話をしようよ。なにが、わたしたちを戦わせているか、互いが戦うことによって得をするのは誰か。こう見えても、お互い親子なんだからさ」

「喋りすぎたわね、お母さんの弱点が分かった」

「え……」

「お母さんの義体は自律していない。千分の一秒で、100体の義体とエンゲージし続けている。だから、お母さんの意識は、100体の義体にエンゲージするために、千分の一秒のタイムラグができる。それが弱点よ!」

 ビシュ!

 一体の友子の首が飛んだ。

「そうよ、栞は、それぞれが自律しているようだけど、スペックが違う!」

 ピッシャーーーー!!

 2体の栞が蒸発した。友子はスペシウム光線を破動砲に切り替えていた。

 それからは乱闘になった、あちこちで、母子の体が両断され、首が飛び、あるいは蒸発した。

「わかった、エンゲージの乱数!」

 栞は、仲間20体を犠牲にすることによって、友子のエンゲージ順の乱数を解析してしまった。

 あとは、早かった。

 ズシ! ベシ! ブシュ! ギシ! ズビュン! ドゲシ! ズビ! ドシ! ビシ! バシ! ズビビ!

 栞は残った義体全てで、エンゲージ順位の最後の友子を次々に倒していった。友子も死力を尽くしたが、最後は三対一で囲まれてしまった。

「チェックメイトよ、お母さん」

 背後の栞は、大胆にも友子にケーブルを伸ばしプラグインしてきた。

 カチ

「ウ……」

「これで、もうお母さんは指一本動かせないわ……捕獲して、最終処分は特務に任せる」

「……その仏心は……命取りに……」

「命令なの、最善の場合は捕獲して連行するようにって。悪いけど、わたしの電脳の支配に従ってもらうわ」

 

 ピューン

 

 一瞬、高圧電流が走ったような衝撃があって意識が飛んだ。

 

「わたしのスペックは、まだブラックボックスがあるのよ、ごめんね、栞……」

 栞はマネキンのようにフリーズしてしまった。

 前後の栞は、瞬間のうちに友子の義体に再合成されてしまった。

 栞の後ろの友子は、右手で栞の首を掴まえプラグインしていた。

「この状況を利用して敵討ちしに行こう。このままじゃ栞がかわいそう。わたしも平穏な高校生活を送りたいしね」

 一体の呟きに二体の友子が頷いた。

 はるか後年、樹海インシデントという不明事件にカテゴライズされる母子の戦いは、朱に染まった富士の樹海で幕を閉じた……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
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