大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・79『国境警備司令ドーカン・2』

2023-10-11 15:44:15 | 小説3

くノ一その一今のうち

79『国境警備司令ドーカン・2』そのいち 

 

 

 B国を繋ぎとめなければならん……

 

 指令室のモニター画面を操作しながら姫が呟く。

 カメラもモニターも高解像度の8K対応。屋上で身を晒して双眼鏡を覗くよりもよく見える。

 姫が国境警備隊に来ていることを示すのは敵を幻惑させる効果があるが、度が過ぎればピンポイントで狙撃されかねない。

 ここで銃弾なりミサイルが飛んできても簡単には特定できない。A・B両国も草原の国も旧ソ連製の武器を使っている。弾やミサイルからでは簡単には分からないのだ。

「ドーカン、B国に行きたい」

「なんですと?」

「サマル(B国の皇太子)は賢い奴だが気が弱い。過敏に反応してとんでもない行動に出る可能性が高い」

「行って、どうなさいます?」

「敵に与しないように説得する」

「無茶です」

「グズグズしていてはA・Bが連合して草原の国の露払いになる」

「危険すぎます」

「従兄妹同士だ、そう無茶はしないだろ。もし、わたしに万一のことがあったら、A・Bと諸共に喪に服せばいい。王族に不幸があれば一か月の喪に服するのが三国共通のルールだ。その間に対策を練ればいい、草原の国も喪中の国を攻めることはない」

「しかし」

「映画の撮影隊を呼んで平和志向のPRもしているが、国連の平和維持軍も引き上げてしまっているんだぞ。手を打たねば自滅する。自滅しては王族も国境警備も意味はないだろ」

「しかし、姫を窮地に置くことはできません」

「ドーカン、国が窮地に置かれているんだぞ」

「いかにも……硬く決意されたご様子、これ以上は申しますまい」

「すまん、無理を言う」

「しかし、やるからには最善を尽くさせていただきますぞ」

「頼むぞ」

「では、一時間の猶予を」

「おお」

 

 一時間かけてドーカン司令は、わたしとアデリア姫を送り出す準備にかかった。

 

「では、10分後に姫はご出発ください」

「おお、ドーカンこそ、無理をするなよ」

「出発します」

 ブロロン

 ドーカンが自ら運転するジープが走り去る。助手席には姫と同じ軍服を着た女性兵士が乗っている。

 走り出した先はA国との国境線。東京の地図で言えば、日暮里の駅前から線路に沿って池袋に向かって走るようなものだ。

 国境線ギリギリに走って、A国の様子を探るというポーズを見せる。

 基地司令と王女が乗っていることはすぐに分かる。近いところではA国の監視哨から200メートルほどのところを走るのだ。場合によっては狙撃されかねない。

 ドーカンは国境紛争での戦闘経験も豊富で、敵の姿が見えなくても撃たれる予感がするらしい。

「予感に従って躱していけばめったに当たりません」

 ということらしい。

 監視哨には、もう一人王女のダミーが立つ。

 王女の人相はデジタル化されて、AIが、その真贋を判断する。

 ジープの方は、走行中で激しく揺れるので瞬時の判断はAIでも困難だ。レイバンのサングラスをしているし、鼻から下は砂塵よけのマフラーを巻いている。

 監視哨の方は……おっと、時間になった。

 

 ペシ

 

 ラクダに鞭を当てると、姫とわたしはB国の都を目指した。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女

 

 

 

 

 

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RE・トモコパラドクス・44『東京異常気象・3』

2023-10-11 07:13:12 | 小説7

RE・友子パラドクス

44『東京異常気象・3』 

 

 

 美麗は大使館の機密電信室に入るまで異常には気づかなかった。

 自分のあとについて入ってきたのが仲間の秀麗だったからである。

 

「美麗、収穫があったみたいね」

「そんなふうに見える? 残念ながら坊主よ、アリバイの定時報告をするだけ」

 そう言って、美麗はUSBをパソコンにかけ、気乗り薄にキーをいくつか叩いた。

「暗号化して、圧縮……」

「いつもやってることでしょ」

「左手で隠したけど、F3ボタンを押したでしょ。それは最高機密専用の変数ボタン……だわよね」

「フフ、秀麗って見かけほどバカじゃないのね」

「そうよ、美麗が谷口三佐から受け取ったのは『あかぎ』のスペックとイージス艦の配置計画でしょ」

「……そんなの知らないわ」

「エンターキーは押すんじゃないわよ。それには、とんでもないウィルスが付いてる。我が国の国防、外交に関するデータが、全部オシャカになるわ」

「やっかまないでよ、自分のノルマが果たせないからって」

 カシャ

「……あ~あ、押しちゃった。親友としての忠告だったのにぃ」

「だから、定時連絡と、アリバイのカスみたいな情報だって」

「カスを入力して、コンピューターが、そんな反応するかしら?」

 電信室の全てのモニターのスイッチが入り、大使館がこれまで営々として集めてきた機密情報が、現れては、すごい早さで消去されていった。

「こ、これは……(;゚Д゚)」

「だから言ったでしょ、全部オシャカになるって。同じことが、軍や外交部のコンピューターでもおこっている」

 カシャカシャ!

 美麗は慌てて強制終了のボタンを押した。

「あ……バカだなぁ。それ押すと消去したデータが、日本の防衛省とアメリカのペンタゴンと、世界中のプレイステーションに送られたわよ」

「こんなこと……(ºдº)

「仲間の忠告を聞かないからよ」

「秀麗、あんた……(꒪ꇴ꒪ ; )」

「日本の公安なめんじゃないわよ」

 秀麗は、顔のゴムマスクを取った。そこには、美麗と同じ顔があった。

「くそ!」

 美麗は、ルージュ形のピストルの引き金を引き、もう一人の美麗の心臓を貫いた……が、効果は無かった。

 もう一人の美麗は胸から弾をほじくり出すと、指で弾を弾いた。弾は美麗のブラジャーの右のストラップを切った。

 銃声でアラームが鳴り、武装した警備員が機密電信室に向かった。

「なにをしている!? 銃を捨てて出てこい!!」

 警備課長が怒鳴った。

「待って、出て行くから撃たないで」

 電信室からルージュ形のピストルが放り出され、美麗が出てきた…………次々と!

「ドアを閉めろ!」

 警備課長が、怒鳴ったときには、美麗は100人になっていた。そして、大使館内部の部屋からも次々に美麗が飛び出し、その数は1000人を超え、一斉に正面ゲートに殺到した。ゲ-トは、すぐに閉じられたが、大使館のゲートは、左右のフェンスごと倒された。

 そう、1000人の美麗は友子の義体が変身しテレポートしたもので、大使館を出ると四方に散っていった。

 

「リアル美麗さんは、どうした?」

 大使館向かいのビルの屋上で紀香が聞いた。

「アメリカ大使館。メイクで人相変えてるから、しばらくは分からない」

「しばらくって?」

「アメリカへの亡命が済むまでぐらい」

 友子が仮想インタフェイスを出すと、C国大使館のパニックの映像が流れていた。

「こいつを、なんとかしなきゃね」

「じゃ、こんなもんで……」

 シャララ~ン……

 陽炎のようなエフェクト付きで散った美麗たちが消えた。

 

 政府もマスコミも一連の事件を、むりやり、ここのところの異常気象のせいにした……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
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