大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:211『中海沿いを西に進む』

2023-10-20 13:35:45 | 時かける少女

RE・

211『中海沿いを西に進む』テル 

 

 

 中海(なかうみ)を右手に見て、山陰本線の鉄路に沿いつつ西に進む。

 

 中海のその向こうに日本海が広がっているのだが、間に島根半島が立ちふさがり左には山陰の山々が迫って……隠国(こもりく)の気が立ち込めている。

ヨネコ:「ふふ、そうですね、立ち込めていますね」

 後部座席でヨネコが笑う。

 ランドセルを抱えているので、なんだかランドセルの妖精のようだ。

テル:「ヨネコは人の心を読むのか?」

ヨネコ:「いえいえ(^_^;)」 

 ハタハタと両手を振るとランドセルもワシャワシャ揺れて、ますます妖精のようだ。

ヒルデ:「隠国のところは口にしていたぞ」

テル:「そ、そうか(;'∀')」

ヨネコ:「タングニョーストさんは、リュックだっこしないんですか?」

タングニョースト:「フフ、リュックの中身が恥ずかしがり屋なんでな」

ヨネコ:「?」

ケイト:「海のそばを走ってるから、瀬戸内を走ってるみたいだな」

雪舟ねずみ:「朝方に来ると、霧が立ち込めてることが多いです。雪舟さんは、お好きでしたね」

ヨネコ:「想像力を刺激するんです、水木しげるさんも小泉八雲さんも、朝霧の中にあやかしやもののけを見たんです」

桃太郎二号:「鬼とかもいるのか!?」

ヨネコ:「居たらどうするんですかぁ?」

桃太郎二号:「退治すんだよ、退治してお宝ぶんどって、男を上げるんだ! いつまでも二号なんて言わせねえ、俺さまこそがシン桃太郎だってな!」

イザナギ:「よかったですね。もうじき、黄泉比良坂、鬼は掃いて捨てるほどいます」

桃太郎二号:「そ、そうか、腕が鳴るなあ(;'∀')」

ケイト:「どんな鬼がいるんだ?」

ヨネコ:「男を食うやつとか女を食うやつとか、子どもばっかり食うやつとか、赤ん坊専門に食うやつとか、家ごと食うやつとか、鬼を食う鬼とかもぉ」

桃太郎二号:「く、食うやつばっかしだな……」

ヨネコ:「食わないのもいるよ、ノッペラボウとか雪女とかねずみ男とかぬらりひょんとか一反木綿とか、人間的なやつなら平家の幽霊が耳を引きちぎっていくやつとか! それとか……」

 

 キーーーーー!

 

 ヨネコが絶好調になりかけた時、雪舟ねずみが急ブレーキをかけた。

桃太郎二号:「イテ!」

ケイト:「グ……頭ぶつけた!」

イザナギ:「ヨネコさん、だいじょうぶですか?」

ヨネコ:「うん、ランドセルがクッションになったから(^_^;)」

雪舟ねずみ:「すみません、与一さんが停まれの合図をしてこられたものですから」

 フロントガラスに目を向けると、数メートル先で後姿のまま与一殿が手を挙げて、あたりは、いつのまにか深い霧に覆いつくされている。

 

 ガチャ

 

 ただならぬ気配に、ヒルデとタングニョーストが外に出て、わたしも続いた。

ヒルデ:「なにごとだ、与一殿」

与一:「怪しの気配に満ちている、すぐに危害を加えてくることは無いでしょうが、少し危険です」

イザナギ:「黄泉比良坂は、もうすぐそこです、無駄な戦闘は避けたいですね」

与一:「おっしゃる通りです。ここは鳴弦で凌いでおきましょう」

ケイト・桃太郎二号:「「メイゲン?」」

テル:「鳴る弦と書いてメイゲン、弓弦をビョンビョン鳴らして、その響きで邪気を追い払う方法だよ」

ヨネコ:「ああ、月からの使者がかぐや姫を迎えに来た時に侍たちがやったやつですね」

 

 グググ ゾロゾロ ワシャワシャ グチャグチャ……

 

ケイト・桃太郎二号:「き、来た」

与一:「本来なら桃の木の弓を使うのですが、これも歴戦の強弓、効き目はあるでしょう」

ケイト:「あたしもアーチャー(弓兵)だ、いっしょにやろうか!?」

与一:「弓を見せて」

ケイト:「うん、これだけど……」

与一:「……力のある弓です、得意な技はあるかい?」

ケイト:「うん、カイナティックアローとか……」

与一:「力のある技のようだ、いっしょにやろう」

ケイト:「うん!」

 

 与一殿は、大きな所作で弓を構えると、ビョンビョンと弓の空打ちを始めた。

 ケイトも、それに倣い、ピュンピュンと少し高い音をさせて魔を封じはじめた。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ

 

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RE・トモコパラドクス・53『友子の夏休み 軽井沢・5』

2023-10-20 07:17:15 | 小説7

RE・友子パラドクス

53『友子の夏休み 軽井沢・5』 

 

 

 軽井沢大橋に行ってみよう!

 

 簡単に決まってしまった……。

 軽井沢大橋とはご大層な名前で、巨大な橋を連想するが、湯川ダムから続く渓谷の上に渡された小ぶりなアーチ式の橋である。

 これに(大)の字が付くのは、地元のリゾート開発にかける心意気なのだが、今では特別な響きがある。

 いつのころからか、ここは自殺の名所になり、軽井沢の心霊スポットの一つになって、著名な作家が推理小説の舞台にしたり、怪奇系ドラマのロケに使われたりしている。
 
 地元の人間は行かない。行くのはたいてい、夏の避暑にやってきた若者達である。そこを見越して友子は竹内興産のセガレグループに頼んだ。

「ねえ、軽井沢大橋に連れてってよ!」

 セガレグループはたじろいだが、リーダーの秀哉に目が集まると、秀哉は顔を青くしながらも作り笑顔で頷いた。

「お、おう、任しとけ(((( ;゚Д゚)))」

 秀哉の車を先頭に三台の車とロケバスが続いた。

 

 国道176号線を右に折れて、三百メートルほど山道をいくと、それはあった。

 

 橋の欄干の上には二メートルほどの鉄柵が付けられ、さらに、その上には三段の有刺鉄線が内向きに傾けて取り付けてある。よほどの決心と、実行へのエネルギーがないと、乗り越えられないシロモノで、それだけのエネルギーがあれば、実行など思い立たないだろうという仕掛けになっている。

「街路灯が薄青いだろ……」

 秀哉が、マイクロバスの運転をしながら呟いた。

「ほんとだ、普通白色か、オレンジ色だよね……」

 純子が、さらに低い声で応える。

「あの色はな、一番心が落ち着いて、自殺を思いとどまらせる効果がある……そう……だ……」 

 秀哉の声は落ちるとこまで落ちて、語尾はほとんど聞こえなくなった。

「じゃ、降りて見学しようか!」

「「「「「ええ(;'∀')!?」」」」」

 紀香が脳天気な大声を出すので、みんなびっくりし、各人各様の悲鳴をもらした。友子は、わざとだったし、テレビのスタッフたちは見上げたもので、表情一つ変えなかった。

 バスを降りて、テレビスタッフ、結衣たちバニラエッセンズの三人に友子たち六人は徒歩で橋を渡り始めた。

 テレビのクルー達が九十メートル下の渓谷を写す。しかし、中継用のライトでは、谷底までは届かず、ただ上流のダムから流れてくる川の音を轟かせるだけであった。

 橋を渡り終える……と……気配に振り返った。

 すると、橋の中央当たりに、白いワンピースの女の人の姿が見えた!

 友子には予想外だった。本番は、もう少しあとで出す予定であった。

「で、出たー!」

 秀哉が叫ぶとセガレグループは逃げ散って姿が見えなくなってしまった。

 元幽霊の結衣まで怯えているのはおかしかった。

 テレビクルーは震えながらも、しっかりと映像と音声を撮り続けている。時間にして数十秒、白いワンピース姿はフェードアウトしていった。

 みんなは幽霊と思いこんでいるが、友子と紀香には分かった。

 

 これは、場の空間が覚えている残像である。

 

 強い想いや事件があると、空間自体が網膜が強い光を残像として残すように記憶してしまう。たまたま、ここの空間は、そういうものを残しやすい時空的な構造にになっていたのだ。思い詰めた人は、その残像を見て誘い込まれるようにして飛び込んでしまうのだ。結衣の元の水島クンのような本物の幽霊もいるが、ここは、どうやら時空の問題のようだった。

 友子は紀香ともども義体の因果さを思った。

「男の子達がいないよ(;゚Д゚)!?」

 麻子が気づいて騒ぎ出した。

 友子は、紀香に目配せされて、仕方なく偶然を装ってセガレグループを捜した。四人は、ほとんどひとかたまりになって、林の中で震えていたが、秀哉の姿が見えない。

―― この斜面の下、気づかない? ――

 紀香から思念が送られてきた。

―― ケガはしていないわ。とりあえずパルスショックをおまけ付きで送っとく ――

「キャ~~~(。>д<)!」

 どう聞いても男らしいとは言えない悲鳴を残して、秀哉が崖を駆け上がってきた。

「い、いま、白い服着た、お、お、女に、い、息吹きかけられたぁぁぁぁぁlll゚Д゚lll!」

 秀哉は、短パンの前を濡らしたことも気づかずに叫んだ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士
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