大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・2・012『お風呂掃除の点検とデラシネ』

2023-10-23 15:53:06 | カントリーロード

くもやかし物語・2

012『お風呂掃除の点検とデラシネ』 

 

 今日はイース棟の子たちがお風呂掃除の当番だった。

 

 えと、寄宿舎は二つある。

 寄宿舎は校舎である本館と、本館とは渡り廊下で繋がってる寄宿舎棟があるんだ。

 寄宿舎は西と東に分かれていて、東をイース棟、西をウェス棟っていう。

 魔法学校だったころは別の名前だったんだけど、民俗学学校になった時に改められた。

 真上から見ると、横倒しになったFの形。二つ出っ張ってるところが寄宿舎棟。

 この形から分かると思うんだけど、イース棟とウェス棟は、どことなく疎遠。

 だから、お風呂掃除の要領を教えても――分かってんのかなあ?――というところがあって、ちょっと心配だから見に行くんですよ。

 

 お風呂は、前回で言ったけど露天風呂。

 

 脱衣のある所だけ屋根があって、表の札は『準備中』になっている。

 ちゃんと掃除が済んでいるというシルシでもある。

 さてと……

 まだ温もりの残っている脱衣場は床の水滴も拭かれ、マットも立てかけて乾かしてある。

 脱衣棚もチェック、パンツの忘れ物も濡れタオルも残っていない。

 

 続いて露天風呂に出る。

 普通は「浴室に入る」が正しいんだろうけど、天井の無い露天風呂だから「出る」になってしまうよ。

 

 モワ~~っと湯気が立ち込めていて、半分くらいしか見えない。

 まずは洗い場から。

 シャンプーもボディーソープも所定の位置、オーケー。

 湯桶もお風呂椅子も、端っこにまとめて重ねられてる、オーケー。

 さて、次は浴槽だ。

 

 え?

 

 浴槽の奥に人の気配。

 よく見ると、見覚えのあるウェス棟の女生徒がお湯に浸かっている。

「あ、ごめんなさい(;゚Д゚)!」

 ひとこと言って、脱衣場に逃げる。人が裸で入ってるお風呂に服を着たまま入るのは、とっさには恥ずかしいよ。

 でも、考えたら、もうお風呂の時間は終わってるわけだし、あたしは点検に来たわけだし、謝る理由はない。

 それに……脱衣場には、その子の脱いだものや着替えとかが無い。

 入り口のところに靴も無かった……

 

 ちょっと変だ。

 

 もう一度出てみる。

 

 ザザァ

 ちょっと意表を突かれた感じで水音。

――気づかれた――

 ちょっと棘のある思念が飛び込んできて身構えてしまう。

 

 シャーー!

 

 その子はマッパのまま、空中を飛んできた!

 しゅんかん見えた足の間からはしっぽが見えている、爪も伸びてるし牙も剥いてるしぃ!

 

 バシ!

 

 思わず腕を回したら手応え。

 その子は、左のホッペを押え、ちょっとビックリした顔でこっちを睨んでいて、睨んだ目には白目が無い。

 もう一つビックリした。

 自分の右手が鬼の手を握っている。

 ほら、前のシリーズで、俊徳丸を手伝って酒呑童子をやっつけた時にもらった鬼の手。

 

「あ、あ、ごめん、そんなつもりじゃ(;'∀')」

 

 そう謝って鬼の手を背中に隠したんだけど、その子には完全に敵認定されたみたいで、いっそう牙を剝いてくる!

 

「させるかぁ!」

 

 空から声が降ってきたと思ったら、目の前にパジャマ姿のネルが耳をピンと立ててガードしてくれている。

 

 シャッ

 

 旋風が吹き抜けたような音をさせて、そいつは消えてしまった。

「だいじょうぶだった!?」

「う、うん」

「目が覚めたらベッドにいないし、露天風呂の方から凶暴な気配がしたし、飛んできたんだ」

「あ、ありがとう」

 ルームメイトのネルは尖がった耳を70度くらいにピンと立ててあたりを警戒して、安全だと分かるとやっと耳も目尻もニュートラルにした。

「それで、こんな時間に風呂に来てなにしてんの、ブラでも忘れたかぁ?」

「ち、違うよヽ(`Д´)ノ! お風呂掃除ちゃんとできてるかなあって気になって、今日はイースの当番だったし」

「責任感つよすぎ、で……その孫の手みたいなのは?」

「え、あ、これは!」

 ビックリして、いっしゅんで鬼の手を消してしまう。

「え、ヤクモ、魔法が使えんの!?」

「あ、これはちがくてぇ……(;'∀')」

 口下手なあたしは、鬼の手の説明をするのに日本に居たころの物語を朝までかかって説明することになった。

 それから、さっきお風呂に居たのはデラシネと言って、ちょっと厄介な妖精なんだとも教えてくれたよ。

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・トモコパラドクス・56『友子の夏休み in 東京・2』

2023-10-23 06:33:14 | 小説7

RE・友子パラドクス

56『友子の夏休み in 東京・2』 

 

 

 友子は悩んだ。泣き叫ぶべきか、青ざめて震えることにするか……。

 で、一度やってみたかった『誘拐された可憐な少女』というのをやってみることにした。

 

「深入りしすぎたなお嬢ちゃん。お前が別荘から、この絵を持ち出しているのは、あちこちの防犯カメラに写っていたぜ」

「ということは、この絵について何か知ってしまったということだ。王(ワン)のジイサンのとこまで行くくらいだからな」

「そ、そんなんじゃ、あ、あ、ありません(*´□`*)……あ、あの絵を持ち出す、よ、ように……(*´〇`*)

「言われただけなのかい?」

「そんなヨタが通じるほどアマちゃんじゃねえんだぜ。その絵ちょろっと見てみろ」

「それはただのフェルメールの複製です。お、お礼に頂いたんです(˚ ˃̣̣̥˂̣̣̥ )

「……なるほど、表面はフェルメールだが……ほうら、端の方をめくると、別の絵が出てくる」

「そ、そんなの知りません。ただの……( ;; )

「同じサイズの絵なんか、お礼に渡すかしら、女子高生に?」

「とりあえず、アジトに行ってから、洗いざらい喋ってもらおうか」

 むろん絵は、友子が電子分解して、フェルメールの下に作った精巧なレプリカだ。友子は、戦闘中でもアバターやガジェットを複製する能力がある、絵のレプリカなど造作もない。

 友子の狙いは当たりつつある。

「あ、あ、あたし気分が悪い……(;ˊˋ)

「ちゃんとエチケット袋があるから、ここに吐きな」

「ワプ!?」

 友子の口にビニール袋があてがわれる。

 友子は、かなり加減して百馬力で運転手の後頭部目がけてヘドを噴射した。

 ヘドは袋もろとも運転手の手下に命中。手下は気絶し、助手席の男がブレーキを手で押さえ込む。下っ端の工作員とはいえ、かなり訓練はされているようだ。

「チ、なんて馬力でヘド吐くのよ! 李、林と代わって!」

 素早く、李という男は運転手の林といれ代わった。そのどさくさに、友子は残りのヘドを道路に吐いた。

「大丈夫ぅ、あなたたち、車に弱いんだから……」

「なんで、そんなに優しい声なんすか?」

「見える範囲に防犯カメラが三台もあるのよ!」
 
 そう、友子は、ちゃんと場所を選んで事に及んだのだ。そして、車が再び動いて道路を離れ、角を曲がったところで、友子のヘドは濛々と赤い救難信号の煙を吐き出した。警察は、それを見て非常線の網を張った。

 しかし、彼らも周到に代車の大型トラックを用意していた。

 そのために、張られたばかりの非常線にかかることもなく友子を連れた工作員たちは、アジトに着くことができた。

 

 友子は、別室に監禁され、その間に工作員たちは絵の真贋を確認している様子だ。

 

「間違いない。福の逆さ文字が浮かび上がる」

「当たりましたね」

「あの娘を連れてこい。もう少し聞き出せるかもしれない」

 部屋に連れてこられると、裸にされて椅子に括りつけられた。足はなぜかブリキ缶の中だ。

「おまえの選択肢は二つだ。楽に死ぬか、苦しんで死ぬか」

「知ってることを全部喋れば楽に死なせてあげる」

「こ、このブリキ缶はなに(#°◇°)? で、ど、どうして、あたし裸にされたの(°Д°#)?」

「そのブリキ缶にはセメントを詰めるの、ゆっくり海の底で眠ってもらうためにね。裸にしたのは身元がバレないように。今日日は下着のかけらからでもメーカーや販路が分かってしまうからね」

「し、死ぬのね……あたし(#°Д°)」

「まあ、いずれは死ぬんだから。知ってることみんな話してくれたら、この注射で眠るように死なせてあげる。イヤなら、生きたまま海に沈んでもらう」

「じゃ、生きたまま沈めてくれる。その代わり、その絵がなんの役に立つのか教えてもらえる。こう見えても王一族の王清香の孫娘、王清娘なのよ(;゚Д゚)」

「あ、あんたが王清香の……」

 これは、ハッタリである。彼らが一番恐れている王一族の女傑の名前を出しただけである。今は生死も明らかではないが、その存在は彼らの伝説的な恐怖になっている。ただ清香に孫がいても、四十代にはなっているのだが。

「清香の娘なら敬意を払わなくちゃな。この絵には清朝の隠し財産の在りかが描かれている。並の技術では解けない手法でな。日本円で五十兆の価値がある。元を質せば漢族の王朝である明から簒奪したもの、それを正統な子孫が人民のために使おうという遠大な計画だ」

「で、あんたの名前は?」

「冥土のみやげに聞いておけ、朱元基だ」

 

 ここまで聞けば十分だ。

 

 彼らの思念から全てのことは分かっていたが、第三者が確認できるような証拠を握ることが大事だった。

 友子は、この部屋に入った時に、口から極小カメラを二台、音速で吹きだし天井と壁に仕掛けている。

 友子は、そのあと足を速乾性のコンクリートで固められてバンに乗せられ、そのまま船に乗せられた。同時に残した超小型カメラに位置情報と映像の内容を警視庁に転送した。むろん自分の裸にはモザイクが入るようにしてある。

 

 ドッポーン……!

 

 友子は、東京湾の真ん中で海に放り込まれた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士

 


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする