RE・かの世界この世界
え、あいつか!?
ジャンケンの勝負は一発で付いた。
連れて行くなら、子どもながらにイケメンで品行方正なフレイがいいと思った。
フレイアも女の子なので、少々お転婆でも扱いやすいだろう。それが、わんぱく坊主のロキだ(-“- )。
ただのわんぱくなら、まだいい。
カエルを投げつけてきた首謀者、それも、捕まっても素直に認めずフレイやフレイアのせいにしようとした。
そういう性格が気に入らない。
それに、なんでジャンケンなんだ?
なんだか、院長先生にしてやられた感じがしないでもない。十三人の子どもたちの中から、よりにもよって。
単に、厄介者のロキを放り出したいから……そう勘ぐってしまうほど、ロキを連れて行くのには気が進まない。
皆さんの旅に神のご加護のあらんことを!
ウダウダ思っているうちに、院長先生とフリッグ先生は送別会の準備を整えてしまった。
「ロキ、みんなに旅立ちのご挨拶をなさい」
「そ、そんなのいいよ……」
「ロキ、元気でね」
「お便りちょうだいね」
「水には気を付けて」
「オネショすんなよ」
「ご飯の時は、ロキの席に写真を置いとくからね」
「そうだよ、旅に出ても、心は一つだからね」
「いつか帰って来いよ」
「ロキが居なくなってせいせいする!……と思ってたのに、寂しいよ」
最後の言葉はフレイアだ。なにか言おうとするのだが、涙を浮かべてアワアワするばかり。
いやなガキだと思っていたけど、こいつなりに受け入れられていたんだと、ちょっとだけ目頭が熱くなる。
……ロキ!
感極まってフレイアが抱き付く。すると、他の子どもたちも寄ってきて、泣きながら抱き付いて、モミクチャの団子になった。
「さあ、泣いてばかりいたら出発できなくなるわ。ゲートに並んでお見送りしましょう」
促された子供たちは、涙をぬぐいながらゲートに並んだ。
「ちょっと待って!」
フレイアが建物に戻って一分ほどで荷物を作って戻ってきた。
「枕がかわったら寝られないっていうから、枕と着替え。いいでしょ先生?」
「う、うん、構わないわよ」
先生は、渡すべき荷物を用意していたようだが、フレイアの気持ちを大事にするんだろう、フレイアには見えないように荷物を減らしている。二号よりは大きいと言え四号も狭苦しい戦車だ、荷物は少ない方がいい。
「わたしたちから渡す荷物はこれだけです、よろしくお願いします」
「お預かりします」
旅立ちに四号戦車はピッタリだ。
砲塔のキューポラだけではなく、側面のハッチ、操縦手と通信手のハッチからも半身を乗り出して、お別れの手を振る。
ゲートまでと言われた子どもたちは、坂を下って村の境まで付いてきた。
もう、涙涙でグシャグシャだ。
ついさっきまでは、このクソガキと思っていたけど、涙と鼻水でヨレヨレになったロキも可愛い。
「さ、ここまでですよ」
オーディンシュタインの効き目は村はずれの峠までだ。峠のてっぺんで二人の先生は促した。
五つのハッチから身を乗り出した我々は改めて敬礼。ポンプの修理に無理な魔法を使ったヒルデはヘロヘロだったが、なんとか笑顔で手を振っている。
峠を下ると、道は『く』の字に曲がってしまって孤児院のみんなは見えなくなる。
「全員車内へ、警戒しつつ前進!」
タングリスが車長として指示し、全員車内に収まる。
「ん? ロキ、お前のポケット……」
ケイトがロキの上着のポケットを指さした。
「え? あ、う、うわー!」
ポケットの中でグニグニ動くものがあって、ロキはアタフタと上着を脱いで。ハタハタと振る。
「バカ、車内でやるんじゃ……!」
注意するのが遅かった。
ポケットの中から転がり出てきたのは、子どもの拳ほどのシリンダーだった。
とうぜん車内は大騒ぎになるが、もっとビックリした。
「ポ、ポチ!?」
ロキが、シリンダーを名前で呼んだではないか!
☆ ステータス
HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長