大橋むつおのブログ

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くノ一その一今のうち・68『一週間ぶりの登校』

2023-08-03 09:21:59 | 小説3

くノ一その一今のうち

68『一週間ぶりの登校』そのいち 

 

 

 またまた一週間ぶりで学校に行く。

 

 いや……二週間ぶり。

 甲府から戻って一週間ぶりに学校に行こうとしたら、駅前のロータリーで拉致られるようにして大阪での任務。

 それも、またまた多田さん始め木下家にしてやられ、かなりの金塊が国外に持ち去られてしまった。

 

 昇降口で上履きに履き替える。

 下足のローファーを掴もうとして屈むと、通学カバンの中身がゴソリと寄れる。

 ゴソリの中にえいちゃんの気配はない。

 えいちゃんは帝国キネマの所属なので東京には来れないんだ。

 仕方がない、本来のわたしは鈴木豊臣家の姫、鈴木まあやの付き人でガードなんだ。

「よし!」

 小さく気合いを入れてローファーをロッカーにぶちこんで教室への階段を上がる。

 この一週間は、社長や嫁持ちさんがわたしに化けて登校してくれていた。

 一週間分の授業内容はスマホで送ってくれている。もともと大した成績じゃないし、ノートもとってもらってるし、なんとかなる。

 

 あ、そうそう、席替えしてたんだ。

 

 大阪に行ったあくる日に席替えが行われて、運よく窓側なんだけど一番前。

 ジミ子のわたしは窓側が好き。

 こないだまでは、窓側の四番目。ちょうど柱の陰になって具合が良かった。

 一番前というのはイマイチなんだけど、前にあるのは掲示板と掃除用具のロッカーだけだからまあまあ。

 スマホを出して、もう一度確認。

 よし、なんとかなるだろう。

 タップして消去。

 一時間目は英語だから、ちょっとだけ勉強。

 窓側の一番前というのは高い確率であてられる――○行目から▢行目まで読んで訳しなさい――ってね。

 きれいな訳はしなくていいけど、訳せずにオタオタするのはみっともない。

 スマホを辞書機能にして、一ページ分の訳にとりかかる。

 

「おはよう」

 

 声が掛かって、教科書に目を落としたまま「おはよ……」と応える。

「よかった、やっと本物に会えた」

 え…………え!?

 振り返ると、見たことも無い男子が後ろの席に座って、組んだ手の上に首を載せてニコニコしている。

 見たことが無いだけじゃない。紅毛碧眼の美少年!

「ぼく、ミヒャエル・ミュンツァー。三日前に転校してきたんだ」

「え、あ、あの……」

「よろしくね、風魔流当主風魔そのさん(๑´ڡ`๑)」

「あ、あ……」

 

 不覚にもゲシュタルト崩壊してしまった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミヒャエル        ?

 

 

 


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