大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

真凡プレジデント・19《なんの仕事するの?》

2021-03-12 06:38:57 | 小説3

プレジデント・19

《なんの仕事するの?》 

 

 

 うちの生徒会執行部には各種委員長のポストが無い。

 体育委員長とか風紀委員長とかのね。

 学級委員会はあるんだけど、昔のように生徒会と結びついた活動では無くなっていて、各委員会で役員を互選で選び独立した活動をしている。

 組織的には各種委員会というのは生徒会の手足みたいなものだから、うちの生徒会は頭だけしかないタコのようなものと言える。

 

 理由はいろいろあるんだけど、その方が、先生たちは仕事がやり易いし、生徒会の選挙のたびに九人も候補者を集めるのも大変。でしょ? 今度の選挙でも藤田先生苦労してもんね。

 でも、頭だけの生徒会って、意欲のある生徒には魅力がないので、逆に候補者が集まりにくいって悩ましさもあったりする。

 今回に限って言えば、急に書記と会計の子が辞退して、代わりになつきと綾乃が入ってくれたのは、その身軽さがあったからとも言える。

 身軽って言うと、お互いを下の名前で呼ぶことにした。

 なつき(橘 なつき)は元からそう呼んでるし、なつきは性格的にも下の名前で呼びやすいネコ的な感じなので、すぐに馴染む。

 あやの(北白川 綾乃)は、ちょっと苦労。なんたって、学校一番の美人で才女、どうしても「北白川さん」になってしまう。それで、彼女は「北白川さん」と呼ばれたら返事をしない作戦に出て、福島さん……おっと、みずきのアイデアと相まって二日で定着させた。

 みずき(福島 みずき)は、全員分の『下の名前バッジ』を作って、生徒会室に居る間は四人とも胸に付けることにした。

 このバッジ、単に下の名前が書いてあるだけじゃなくて、それぞれの似顔絵と役職名が英語で書いてある。日本語の役職名だと硬いイメージなんだけど、英語にすると、ちょっとオシャレ(^▽^)/。

 そのうち、生徒会室を出ても外すのを忘れて、付けたまま廊下を歩いたり職員室に行ったりして、ちょっと好評だったりする。

 あ、そうそう、肝心の生徒会の仕事だよ。

 

「で、生徒会って、なんの仕事するの?」

 

 なつきがアッケラカーンと質問したのは、つまり、そういう背景があったから。

「今でも制度上は各種委員会は生徒会の一部なんだよ。だから時々は各種委員会にも出るし、予算とかは生徒会費から出てるのもあるから季節的には忙しい」

「まずは予算委員会を開かなくちゃ」

「あー、森かけとか桜で総理大臣イジメる委員会!?」

 こういう発想の飛び方は、いかにもなつきで、綾乃もみずきもコロコロと笑っている。

「クラブ予算よ。総額八十万の予算をいかに振り分けるか、なつきの仕事だよ」

「ゲホゲホ、わたしの仕事( ゚Д゚)!?」

「大丈夫よ、みんなも居るし、先生たちがリードしてくれるし」

 綾乃がやさしくなつきの手をとる。ネコ系のなつきは、これだけで穏やかになる。

「ゴロニャ~ン(n*´ω`*n)」

「体育祭が迫ってるから、そっちの方にも出なきゃならないわ」

 みずきが生徒手帳の予定表を繰りながら呟く。

「まあ、例年通りだと、開会の挨拶と各種賞状の作成というところね」

 昔、体育祭は秋に行われていたので文化祭と並んで、前期執行部の締めくくりの仕事になっていて、けっこう忙しかったらしい。六月に行われるようになって、実質生徒会が間に合わなくなって、開会の挨拶と賞状の作成と言う名誉的な仕事が残った。

「これって、なんだか立憲君主国の王様みたいね」

「って、真凡は女王様!?」

「じゃ、なつきはプリンセス!」

「コスプレとかしちゃおっかな~(*^▽^*)」

「いまさら行事の主導権を取るのは無理だけど、もう少し生徒会が前に出るようなことができないかなあ」

 なつきが混ぜっ返すのを、みずきと綾乃が静めてくれる。

「そうだね、少しでも盛り上がれるようななにかをね」

「そりゃ、やっぱコスプレっしょ!」

「まあ、なつきの意見も考慮して、今月中には結論ね」

「会長からは、なにかない?」

 真凡と言わずに役職で振ってくるみずき、やっぱ、心得てる。

「わたしはね、週に一遍くらいのペースでよその学校を調べに行きたいの、研究しなきゃ提言もできないしね」

「調べるとは、どういう風によ?」

「あらかじめポイントを絞って見学を申し入れるの、漫然と出向いてもなにも見えてこないだろうし」

「座布団持参だね、ドーナツ型置いてる学校なんて、そうそうないと思うよ」

「そ、そうね(^_^;)」

 その時、グラウンドの方からキャンキャンと犬の鳴く声が聞こえてきた……。

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨    対立候補だった ちょっとサイコパス
  •  北白川 綾乃   モテカワ美少女の同級生 書記
  •  橘 なつき    入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き 会計
  •  橘 健二      なつきの弟
  •  福島 みずき   生徒会副会長
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問

 


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