大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!38『赤ずきんと狼男』

2024-10-22 08:15:37 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
38『赤ずきんと狼男』 




――ああ、ここにいたのか――


 振り向くと、楓(かえで)の葉っぱが一枚宙に浮いていやがる。

「そんなに気を遣わなくてもいいわよ、風邪をひくわよぉ(-_-;)」

 赤ずきんが、葉っぱの方を見ないようにして言いやがる。

――でも、姿を現したらキミが辛いだろう――

「もう、気持ちの整理はついたから。それに透明になって身を隠すんだったら、その楓の葉っぱはよしたほうがいいわよ」

――透明でも……ここだけは、きまりが悪くって――

「葉っぱがユラユラしてるの、かえっていやらしいわよ」

――そ、そっかなあ――

「エヘン……あのな、マユはぜんぶ見えてるんだぞ」

 葉っぱの1メートル上のところを見ながら言うと。葉っぱがびっくりしたように落ちてしまって、さすがのマユも真っ赤になっちまったぜ(#'∀'#)。

――ほ、ほんとか( ゚Д゚)!?――

「ああ、ほんと」

 大あわてで、葉っぱが元の位置にもどると道の向こうにすっ飛んで、薮の中に隠れてしまいやがった。

「ごめんねぇ、情けないとこ見せちゃって」

「あれが、赤ずきんタソガレの原因なんだな」

「うん……あいつが戻ったら、説明するわね」


 少しすると、気配が服を着て現れた。

 マユは斜め向かいに別のベンチを出してやったぞ。

「ひょっとして、キミがウワサの魔法使い……おっと、危ない。このベンチ、崖のすぐ間際だよ!」

「そう、事と次第によっては、ベンチごと崖下に落してやるからな」

 ふーっと息を吹きかけると、ベンチが後ろに傾いた。

「ワ、アワワワ(''◇'')!」

「ああ!」

 イケメンが吉本のお笑いみてえに慌てやがる。意外な反射神経で赤ずきんがそいつの脚を掴んで、危ういところを引き戻しやがった。

 それから、そいつ九割、赤ずきん一割ぐらいで事情を説明しやがる。

「……と言うわけ」

「……なのよ」

「エ――( ゚▢゜)!?」

「ウワァアアーーー(≧◇≦) !」「キャーーー(≧⊿≦) !」

 マユは慌てて口を押さえたけど、漏れた息で、イケメンは手を伸ばした赤ずきんごと落ちていきやがった!

「あ、ごめん……」

 ふたりはバラエティーで罰ゲームをうけた二線級アイドルみてえな引きつった笑顔で戻って来て、話の続きをしやがった。

「じゃ、なに、赤ずきんは、この狼男。それをそうだとは知らずに好きになった。で、この狼男は、狼になったときに、知らずにお婆ちゃんと赤ずきんちゃんを食べちまったってわけか!?」

「「うん……」」

 二人がそろってうなづいた。

「で、でもよ……どうして、そのことが分かったんだ!?」

「……それは……ね……この人の裸を見たら、お腹に大きな傷があって」

「ボクは、腎臓結石をとったときの傷だと思っていたんだ。だってお母さんがそう言ってたから」

「わたしも、それで納得したんだけどね。デートが終わって、名残惜しいものだから、ずっと彼が帰っていく姿を見ていたの。そうしたら峠を越えた向こうで狼の遠吠えがして……てっきり彼が狼に襲われたと思って、怖さも忘れて駆けつけたの……」

「そうなんだ、赤ずきんちゃんは、自分も裸だったのにもかかわらず、ボクのことを心配して駆けつけてくれたんだ」

「すると、そのとき、雲がお月さまにかかって……この人が、ちょうど人間にもどりかけているところを見てしまって、思わず叫び声をあげてしまったの。マユほどじゃないけど、わたしの叫び声もすごくて、あのとき、わたしを助けてくれた猟師さんが駆けつけて『そいつは、こないだお婆ちゃんと赤ずきんちゃんを食べた狼だ。その傷はわたしが縫ったんだから!』なって」

「ボクは、なにも知らなかったんだ。そのとき、初めて自分が狼男だったってことが分かったんだ……(-_-;)」

 マユは眉をつり上げて聞いたぞ。

「でもよ、そうだったとしても、自分のお腹にいきなり大きな傷ができて、なんとも思わなかったのかよ!?」

「ボクは、子どものころから記憶がまだらなんだ。血だらけで帰ったり、服がボロボロになっていたり……そのつど、お母さんが説明してくれて……」

「そうか……でもよ、そんな夕暮れ前に、なんで二人裸でいたんだ……?」

「それは……(-○-;)」「ねえ……(-,-;)」


 見交わす二人の目から☆が出て、ぶつかって、大きなハートマークになっていきやがった!


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 狼男
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!37『赤ずきんの秘密』

2024-10-21 06:42:10 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
37『赤ずきんの秘密』 




「赤ずきん、約束だっただろ。白雪の件が片づいたら話してくれるってよ」

「……覚えていてくれたの?」

「悪魔の記憶力は、神さまよりもいいんだぞ」

 分かれ道の奥まったところに、ころあいの日だまりを見つけ、魔法で小さなベンチを出して二人で掛けた。

「うれしいわ、覚えていてくれて……みんな、白雪さんのことに有頂天になって、わたしのことなんか忘れてしまったみたいだったから」

「だからさぁ、赤ずきん……」

「あの……」

「なに?」

「本題に入る前に、はっきりさせておきたいんだけど……」

「なんだよ?」

「わたしたちって、著作権が切れてるから、いいって言えばいいんだけどね……でも、やっぱ」

「やっぱ? なんなんだよ!?」

「夕べも言ったと思うんだけど、わたし、アンパンマンのキャラじゃないの」

「は……?」

「だから……」

「はっきりしろよ。天下の赤ずきんだろーが!」

「ほら、また……」
 
 赤ずきんは、ため息をついてうつむいてしまいやがった。

「わたし、赤ドキンじゃないの……赤ずきん」

「え……まだ、そんなふうに聞こえるのか?」

「う、うん」

「マユ、ちゃんと『赤ずきん』て言ってるぞ。ほら、今だってそうだし、三行前も、その前のト書きだって、六行前だって、この37章になってから、五回出てくるけど、ちゃんと赤ずきんになってるぞ」

 マユは、携帯魔法端末を出して今までのログを見せてやったぞ。

「ほんとだ……でも、わたしには赤ドキンて聞こえる」

「……これも、この世界のゆがみのせいなのかぁ?」

「じゃないかな。白雪さんは、マユちゃんが、なんとかしてくれたけど、まだ他のゆがみは残ったまま」

「そうだな、眠れる森の美女も、起きてきやがったし」

「わたしも先週までは、十歳の女の子だったのよ」

「ええ……どう見ても十八歳以上……どこ見てんだ?」

「あ、ごめんなさい……かたちのいい胸をしてるなって思って」

 マユは、頬を染めて胸を隠したぞ。

「どうせ、マユはBカップだ。おめえのCカップには見劣りするよ!」

「わたしDカップ……あ、そんなつもりじゃないのよ(;'∀')」

「ま、ま、いいけどな。本題だ本題。赤ずきんが、そんなになっちまったのは先週のことか?」

「うん、六日前……猟師さんに助けられた明くる日」

「ああ、狼におばあちゃんといっしょに食べられて、猟師のオッサンが狼のお腹を切って助けてくれたんだよな」

「うん……その明くる朝、目が覚めたら、こうなってたの。最初はうれしかった、急にオネエサンになれたみたいで。それから心配になったわ。ひょっとしたら、一日ごとに歳をとって、一週間もしたら、お婆ちゃんより年寄りになってしまうんじゃないかって」

「でも、そうはならなかった……だろ?」

「うん、明くる日も、その次の日も、起きてみたら変化はなかったわ……」

「だったらよ、なんで、そんなにたそがれてるわけさ?」

「四日目にね……」

「!?」


 赤ずきんが、後を続けようとしたとき、後ろの分かれ道で人の気配がした。


――やあ、ここにいたのか!?――


 気配が口をきいた……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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銀河太平記・255『船長がレースクイーンのコスで宣言したっす!』

2024-10-20 15:29:52 | 小説4
・255

『船長がレースクイーンのコスで宣言したっす!』 ツナカン 




 人が集まると騒いでみたくなるのがヒンメル魂っす!


 巨大戦艦と言ってもヒンメルは船は船、毎日同じ乗員同士顔付き合わせて、同じルーチンで任務とかこなしていると、マンネリっつうか飽きるっつうか、 モチベーションが下がるっす。 口に出しては言わねえっすけど、非常事態になった時にも十分能力が発揮できなくなる恐れも無きにしも非ずっす。

 で、冥王星軌道を離れた時にマーク船長たちファルコンZのクルーたちが密航してるのが分かって、ちょっとしたお祭り気分になったっす。


「ようし! では、ただいまからヒンメル・ファルコンZチーム対抗のボートレースを開催するぞ!!」

 船長がレースクイーンのコスで宣言したっす!

 ああ、やっぱ船長も分かってるんだなあと、ちょっと見直したっす(^_^;)

 
 ヒンメルは300名の乗員が三交代で勤務して、一直、二直、三直になってるんで、直番ごとのチームと兵科別(砲雷・航空・航海・機関・船務)のチームで競うっす。

 そして、直番と兵科の優勝者とファルコンZのチームが最終決戦やって最後の優勝者が決まるって段取りになってるっす。

 自分は副長なんで船務チームに混ぜてもらってるっす。副長なんて大した肩書っすけど、元々がストリートチルドレン。かっぱらったマシンをチューンしては悪さばかりやってたんで、こういう時は萌える、いや燃えるっす!

「副長、偵察してきました!」

 通信士のサバカンが目を輝かせて船務科のピットに戻ってきたっす。

「どうだった、ファルコンチームは?」

「はい、バルスってのがオーソリティーみたいで、マーク船長の無理な注文も半分以上こなして、内火艇とは思えないパワーがあるみたいです。特にブーストがハンパじゃないみたいで……」

「……内火艇をそこまでチューンしたら、急旋回した時のGに耐えられないっぽいぞ」

「はあ、構造補強もやってるんでしょうけど、外側からでは……」

「そういう時は敵の表情をだな……」

「はい、見てきました。マーク船長の目はうちの船長と缶蹴りやって勝ったときみたいな目をしてました。油断なりませんよ(;'△')」

「そ、そうか……!」


「おまえらぁ、あんまり熱くなるなよぉ」


 船長が涼しい顔をしてピットの入り口に立ったっす。

「って、このレース言い出したのは船長っすよ!」

「いやあ、シャケカンのところも見て来たんだけどなぁ、ピットの中がアッチッチでなあ。いやぁ困ったもんだ」

「船長ヽ(`Д´)ノ」

「怒るな、そこで対策を考えたぞ」

「対策ぅ(゛○゛)?」

「そうだ、決勝の前にエキシビジョンレースをやろうと思うんだ」

「エキシビジョンっすか?」

「ああ、勝ち負け抜きでホノボノするようなやつをな、考えたぞ(^▽^)」

 この笑顔はクセモノなんすけど、エキシビジョンなんで、そう物騒なこともないかと思ったっす。

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!36『白雪の成功と赤ずきん』

2024-10-20 07:24:42 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
36『白雪の成功と赤ずきん』 





 ドワーフたちは、朝の八時には小屋を出て行ったぜ。
 
 
 いつもなら、白雪姫の棺の番をするために一人が残るんだけどな。今朝はエルフの王女レミとマユ、それに、赤ずきんがいるんで、七人揃って「ハイホー」を唄いながら行ってしまいやがった。


 今朝は勝負の朝だぜ!


 くちびるを白雪姫と取り替えた赤ずきんが、白雪姫の服を着て、白雪姫の声で唄いながら、庭のお花に水をやってやがる。
 念のため白雪姫の棺には白いベールが被せてあってよ。万が一、アニマ王子が白雪姫に目を奪われないための用心までしてあるぜぃ!

 しかしよ、その用心は必要じゃなかった。九時前に森の小道にさしかかったアニマ王子は、歌声にひかれて、ゆっくりとドワーフたちの庭に入ってきやがった。

「きみは……」

「はい……」

 王子と赤ずきんの目が合った。

 王子は戸惑った。かわいいという共通点はあるんだけどよ、白雪姫とは別人だ。でもよ、くちびるを中心に感じるオーラは、白雪姫そのものだからな。

 赤ずきんも、王子の一途な想いをたたえた目には惹かれるものがあってよ……赤ずきんの元カレと同じ切ない想いを感じた。

 え、赤ずきんに元カレ……? 

 ビックリした……けど正念場! 二人のキスに集中したぜ!

 赤ずきんは、そっと目を閉じた。

 王子の顔が、くちびるが、だんだん近づいていきやがる……('◎◇◎')。

 そして、二人のくちびるが重なった!

 赤ずきんは、くちびるになんの感触も感じてねえ。だって、くちびるは白雪姫のくちびるだからな。

 でも、王子の熱は感じた。

 元カレのそれとは違うけれど、思いの丈は同じ。赤ずきんの閉じた目から、涙が一筋流れ落ちたぜ。

 小やぶに隠れていたマユは、急いでスマホ型携帯魔法端末を操作して、くちびるを入れ替えたぜ!

 すると、白いベールがフンワリ飛んで、棺の蓋が開いて、自分のくちびるにもどった白雪が、ゆっくりと起きあがったぜ。


「王子さま……」


 そうして、めでたく、アニマ王子と白雪姫はむすばれやがった!

 その様子は、レミが撮って、ファンタジーの世界にライブ配信され、山で仕事にとりかかろうとしていたドワーフのやつらも、ファンタジーの世界のキャラたちも、みんな集まりやがった!

 もう、グリムもアンデルセンもディズニーも宮崎アニメもへったくれもなしに集まって、二人の幸せを祝いまくりやがった!
 中には、刺激を受けて目を覚ました眠れる森の美女まできやがるし「わたしの王子さまは!?」と叫びやがって、その間の良さにみんなは暖かい拍手で応えやがった(^_^;)!

 後日談だけどよ、「わたしの王子さまは!?」は、その年、ファンタジー世界の流行語大賞にもなってよ、あくる年の春には、眠れる森の美女の王女さまにも、めでたく王子さまの婚約者ができたって話だ。

 でもよ、マユ一人、他のキャラに気を取られちまった。
 
 そう、赤ずきんだぜ。

 赤ずきんは、くちびるを戻したとたんに、使い捨てられた赤ぞうきんほどにも意識されなくなっちまったんだ。

 赤ずきんは、小屋にもどると、そっと服を着替えた。

 そして赤ずきんの衣装にもどって、お祝いの輪を避けるようにして、その場を去ろうとしたぜ。

 あんまりの人だかりで、当たり前なら十秒ほどで出て行ける庭を出るのに五分もかかってやがる。

「ちょっと、すみません……あ、ごめんなさい……」

 まるでAKBかなんかのライブの人混みをかき分けるような状態だ。

 目立つ赤いコスの赤ずきんだけども、だれも、街角の郵便ポストが動いたほどにも関心を示さねえ。

 悪魔学院の芸術鑑賞で観た『影武者』を思い出したぜ。武田信玄の影武者をやってた男が影武者であることがバレちまって、雨の中、裏門から追い出されるとこに似てやがる。

 マユは追いかけたぜ!

 追いつけたのは、森の外れの分かれ道のところだった。

「よかったぁ、ここ分かれ道だから、ここを過ぎたら、会えなかったかもだぜ……」

「なにかご用?」

 ふりかえった赤ずきんは、とても寂しげな笑顔だったぜ……。
 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・134『演劇部の部室で昼ご飯』

2024-10-19 15:28:04 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
134『演劇部の部室で昼ご飯』   




「男ってつくづくバカですね」

 図書室へ本を返しに行って戻ってきたロコがしみじみ言う。

「え、どうしたの?」

「思わず人生の真理を呟いたハムレットみたい」

 二つ目の言葉(最初のは真知子、二番目は牧内さん)で分かったらえらいんだけど、今日のお昼は演劇部の事実上の部室である図書分室でお昼を食べている。

 二年の二学期にもなると、学校の様子は分かってるし、マンネリもやだから、時どきイレギュラーなところでお昼にする。

ロコ:「え、あ、商店街の自販機でカップヌードルを買った話をしてたんですよ三年の男子が」

たみ子:「カップヌード(''□'')?」

ロコ:「あはは、そういう間違い方ですよ」

牧内さん:「ああ、銀座のホコ天で、あれ食べながら歩くのが流行だってテレビで言ってた」

 他のカップ麺に比べて割高なカップヌードル。わたしはあまり買わないけどね。

 そのカップヌードルが発売になったのが今月なんだ。人によって認知度がちがって、ロコ以外は牧内さんが知っている程度。ロコがスクラップ帳を広げて説明すると、カップ麺だけに食いつきがいい。

ロコ:「商店街の酒屋が自販機置いたんですよ」

たみ子:「え、インスタントラーメンの自販機!?」

ロコ:「並みの自販機と違って洋服ダンスくらいに大きくて、通行に邪魔になるんで、酒屋は横に入ったとこに置いたんですよ。それをなにか勘違いして……」

メグリ:「アハハ、ヌードに引っ張られたわけだ」

ロコ:「いやはや、男って言うのは……」

佳奈子:「でも、わざわざ自販機で買うようなものなの? スーパーとか、それこそ酒屋の店先でだって売ってるでしょ」

真知子:「メーカーの陰謀じゃないのぉ。カップヌードルって、男の想像力を刺激するかも?」

たみ子:「でも、ヌードルって、英語で麺類一般だからねえ」

佳奈子:「値段はいくら?」

ロコ:「それが、220円!」

みんな:「高っかー!」

 ああ、だよね。学食のラーメンだったら二杯食べてお釣りがくる。

ロコ:「いや、それが、お湯まで注いでくれて食べられる状態で出てくるんですよ! 取り出した瞬間は、ちょっとした幸福感に浸れます!」

メグリ:「あ、ひょっとして、ロコ、自分でも買ってみたんだ?」

ロコ:「え、あ……アハハハ(^_^;)」

 こういうところは、ロコの愛すべき好奇心だ。

 
 でも、我々はヨタ話をするために演劇部の部室でお昼を食べているわけではない。


 みんなの目の前には同じB5のプリントが置かれていて、そのプリントには氏名の他に記入欄が三つある。


 文系志望   理系志望   その他(就職、各種学校、その他)


 そう、中間テストも終わって、二年生全員に進路希望調査票が配られたんだ。


 五人のうち、ハッキリボールペンで(つまり清書)書けているのは牧内さんだけ。彼女はハッキリと劇団〇〇付属研究所と書いていた。



 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!35『七人の小人と赤ずきん』

2024-10-19 07:22:10 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
35『七人の小人と赤ずきん』 




 鉱山から戻ってきた小人たちは、自分たちの家が見えてきたところでビックリしやがった! 

 無理もねえ、白雪の歌声が聞こえてきたんだからな!

「てっきり白雪姫が生き返ったと思ったじゃないか( ' ^ ' #) !」

 おこりんぼのグランピーが鼻息荒く言った。

「でも、そのバラ色のくちびると声は白雪姫だ。ま、いいじゃないか(^_^;)」

 照れ屋のパッシュフルが、頬を染めてため息をついた。

「でも、これって、どういうこと(´^`) ?」

 おとぼけのドービーは、まだ分かっていねえ。

「だから、今言ったろ、これはだなぁ……ハーックション( >ω<) !」

 知ったかぶりのスニージーがテキトウに解説を加えようとして大きなクシャミ。

「つまりだな、ここにいる魔女のマユが、魔法でなんとかしてくれるってことだ……ってぐらいは、なんとなく分かった(''◇'')」

 リーダー格のドックが、とりあえずまとめやがった。

「だーからぁ、明日の朝、アニマ王子がやってきて、白雪のくちびるをした赤ずきんにキスして……それで、うまくいくってことなんだ! 文句ねえだろが(>▢<)!」

 マユはキレかかったぜ。

「ま、どうにかなるんだから、どうにかなるんだろ。ハッピーじゃないか(^▽^)!」

 ポジティブなハッピーが素直に喜んで、やっとドワーフたちは納得しやがった。めんどくさいやつらだ!

「山から帰ったばかりで、お腹空いてるでしょう。今夜は、わたしが晩ご飯を作ってあげるから」

 レミが、とりなしやがる。

「ああ、お腹空きすぎて、眠いのも忘れちまったよ」

 ねぼすけのスリーピーがうなづくと、七人のドアーフたちのお腹が、いっせいにグー……と鳴りだし、みんなで大笑いになったぜ。

「でも、今日は、山で働きすぎて、燃料の薪を集め損なったな!」

 おこりんぼのグランピーが腕を組んで、右足で地面をドンドンした。

 すると、さっきから、三人娘たちが盛大にまき散らした『!』や『?』や……が、ピョンピョン跳ねだした。

「これは、いい薪になるよ。純粋な『!』や『?』だ、グランピーのは不完全燃焼になるんで使えたもんじゃないけど、これなら、今夜のぶんの薪には十分だ」

「どれも、よく乾いていて、いい種火になりそうだ」

 ドックとハッピーが『!』や『?』を集めはじめた。

「アチチ、この『!!』は熱すぎるぞ!」

 グランピーが拾ったのは、白雪姫が最初に言ったやつ。「ああ、もう、やってらんないわよ!!」の『!!』でだったぜ。


 にぎやかな晩ご飯が終わって、マユは赤ずきんを庭に連れだしたぞ。


 庭は、月のやつも満腹になったのか、まん丸の満月で、ひっそり話すのにはぴったりだったぞ。

「なにか、お話でもあるの?」

 赤ずきんが白雪姫の声で訊いた。

「最初に現れたとき、なんだか顔色が冴えないって感じて……でも、こちらのお願いは喜んで引き受けてくれて……なんか、あるんじゃねえかって思ってよ」

 マユは、切り株のベンチに、赤ずきんをさそった。

 月の光に縁取られた赤ずきんの姿は、マユがびっくりするほど美しかったぞ。

「わたし、思ったより大人だったでしょ……」

「おお。十歳くらいのガキンチョかと思ってたぞ」

「わたし……時間の流れが、他の物語の登場人物と違うの」

「え……?」

「お婆ちゃんを、オオカミさんから助けて、それで、わたしの物語は終わるはずなんだけど、終わりにならなくって……気がついたら、こんな……多分十八歳ぐらいの女の子になってしまって。なんだか、芝居が終わったのに、まだ幕が下りない役者さんみたいに戸惑ってるの」

 赤ずきんは、足もとの松ぼっくりを、そっとけ飛ばした……松ぼっくりは、コロコロ転がって、白雪姫の棺の下まで転がっていった。

 自然に二人の目は、白雪に向けられたぞ。

「同じファンタジーの、それも同じグリム童話の仲間。その役にたてたら、それで、わたしはいいの……」

 バランスが悪かったのだろ、いったん停まった松ぼっくりは、コトリと音を立ててこけた。

「アイデンティティーのない主人公って、なんだかね……」

「アイデンティティーとか、レーゾンデートルの問題だけじゃねえように思えるぞ」

 マユも足もとの松ぼっくりをけ飛ばした。松ぼっくりは、見事に赤ずきんの松ぼっくりに当たった。

「ビンゴ……?」

「明日……白雪さんのことがうまくいったら……ああ、やっぱりダメだ」

 赤ずきんは、うつむいてため息をついた。

「ねえ、あの松ぼっくりたち、なんだかお話してるみたいだよ」

「ほんとだ……」

 そう言いながらも話がまとまらねえ今日一番の功労者。

「明日、その気になったら話してよ。赤どぅきんちゃん」

 優しい気持ちになってきたんで、きちんと「ちゃん」付けで言ってやったぞ。

「いま、赤ドキンちゃんって言った?」

「え、そう聞こえたかぁ?」

「わたし、アンパンマンのキャラじゃないんだからね」

「アハハ、そうだよな。赤どぅきんちゃん」

「ほら、また!」

「そうかぁ?」

「もう……」

 赤ずきんがふくれた。

 マユは、手を伸ばして、赤ずきんのホッペをつついた。

「プ」と音がした。

「アハハハ」

「やっと笑った。赤どぅきんの負け。この件が終わったら話してくれよな」

「はいはい。さすが小悪魔ですね」

「おちこぼれだけどな」

「「アハハ……」」
 
 二人を照らすお月さまの光が柔らかくなったような気がしたぜ……。

 人の気配に気づいて振り向くと、七人のドワーフたちが、白雪姫の棺の周りにあつまり、口々に「お休み」とささやいていきやがる。

 ドワーフたちは、白雪姫への「お休み」が終わると、小屋へと帰っていく。
 小窓から、レミがドワーフたちの優しい「お休み」のあいさつを見守っていたぞ。

――明日は、たのむよ――

 リーダー格のドックが、メガネをずらして、マユの方を向いた。

――まかしとけ――

 想いをこめてうなずくと、ドックは、ニッコリ笑って、小屋の中にもどっていった。

 あいかわらず、お月さまは星どもを従えて、柔らかく微笑んでいやがった……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!34『唇交換魔法』

2024-10-18 08:07:03 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
34『唇交換魔法』 




「「赤ずきんちゃーん(^▽^)!」」


 レミと白雪姫が、頭のてっぺんから声を出しやがる。


 二人が声を出さなきゃ、赤い服がよく似合う、マユよりちょっと年上の女の子に見えただろうぜ。

「わたし、どうしてここへ?」

「わたしが、魔法で呼び出したの」

「提案したのは、わたし」

 白雪姫が、申し訳なさそうに言った。赤ずきんの顔色が冴えない。でも、目覚めた白雪姫を見て、赤ずきんは素直に喜んだ。

「まあ、白雪さん。生き返ったのね!」

「あ、まあ……」

「……ということは(^▢^)!?」

「残念だけど、マユが一時的に蘇らせただけだ。魔法でな。あと三分ほどで魔法がとけて、また仮死状態にもどっちまう」

「この人は……?」

「あ、こないだし話したでしょ。悪魔の……」

「あ、ああ! この人が希望の星の悪魔さん( ゚Д゚)!?」

 レミが説明しかけると、赤ずきんは分かったようだ。

「こ、小悪魔だけどな(^_^;)」

「あなたが、このファンタジーの世界を救ってくれるのね! わあ、めちゃくちゃ嬉しい!……あ、あ、で、わたしは何をしたらいいのかなあ(^▽^)!?」

 赤ずきんは、知井子みたいな笑顔でピョンピョン跳ねやがる。

「実はな……」

 マユが説明すると、三人はエサを撒かれたハトのように顔を寄せてきやがった。


「「「くちびる交換(((◎*◎)))!?」」」


 三人の声が、それぞれの頭のてっぺんから出て、三つずつの!と?がみんなの頭の上でこんがらがってしまった。

「アニマ王子には、明日の朝、会った女性にキスしたくなるように魔法がかけてある。だから、明日、この森に来て赤ずきんにキスをするんだ。で、その時のくちびるが白雪のだったら、それで白雪は生き返ることができるって寸法だ!」

「「「なーる……!」」」

 また三人がいっしょに感心した……と!が、また三人分飛び出して、ぶつかって火花を散らした。

「でもさ、お城には若い侍女さんとか、かわいい女の子がいっぱいいるから、その子たちにキスしちゃうかも」

 レミが心配げに言い、白雪姫と赤ずきんがうなずいた。

「大丈夫。効き目が出るのにタイマーをかけておくから。何時頃に王子は来やがるんだ?」

「判を押したように、朝の九時。それから、少なくとも日に三度は来るわ」

「じゃ、九時に……セット」

 マユは、スマホを出して時間をセットした。

「へえ、小悪魔さんでもスマホ使うんだ」

 みんなが感心した。

「スマホ型の携帯魔法端末。人間界にいるもんで、こういう型にしてあるんだ。じゃ、時間ないからいくぜ」

「あ、でも」

「なんだレミ?」

「魔法でキスするようにしたるんなら、わざわざ唇を入れ替えなくても」

「ああ、そこなんだけどよ。この魔法は目覚めて起きてる相手にしか効かねえんだ。それに王子のやつ、だいぶこじらせてやがるからよ」

 ほんとは、マユの魔法が未熟なんだけどよ、それは言わねえ。

「いくぞ!」

「「「うん!」」」

 返事が揃って、また三人分の『!』が飛び出した。

「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム……えい!」

 マユは、スマホ画面の白雪姫と赤ずきんのくちびるを指ですり替えた。

「ああ……」

 白雪姫は、赤ずきんの声を発したかと思うと、クルクルっと二回転して、棺に収まってしまった。

「時間ギリギリだったみたいね」

 マユは、冷や汗をかいたぜ。

「わたし、なんだか歌を唄いたくなってきた……」

 赤ずきんが、白雪姫の声で言った。

「白雪さんて、歌が好きだったから!」

 また『!』が一つ転がり出てきた。

「いつか王子さまがやってきて~♪」

 赤ずきんは、白雪姫の声で唄いだした。すると、森の向こうからドアーフたちの「ハイホー」の歌声が聞こえてきて、うまい具合にハモったぜ。

「ハイホー」は、いつか、驚きの声に変わり、七人分の歓声になって近づいてきた……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  



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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!33『取りあえず目覚めた白雪姫』

2024-10-17 07:53:01 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
33『取りあえず目覚めた白雪姫』 




「見ろ、白雪の寝顔」

「え……どうかした?」

「鬼になりかけてやがる……」

「鬼に……?」

「体は動かねえけど、ある程度のことは分かってやがるんだ」

「白雪さ~ん!」

「やっぱり……」

「なにか、変化があったの?」

「マユの目は、高速度カメラ並なんだ。百万秒の一秒の変化でも分かる。今、白雪は百万分の二秒目を開いた。とても悲しそうな顔でな……なあ、もう日は落ちたか?」

「うん。お日さまはまだ名残惜しげに西の空を染めているけど、東の空は、もうお月さまが、宵の明星を従えて現れてるわ」

 レミが東の空を指差した。

 マユは、念のため二十メートルほどジャンプして、西の山にお日さまが居ないことを確認したぞ。

「すごい。マユ、それだけジャンプできたら、オリンピックで金メダルだわよ!」

「人間だったらな。あいにくの小悪魔。オリンピックには出られねえけど、今から白雪さんに魔法をかけるぞ」

「え、どんな魔法!?」

「黙って。神経を集中させなきゃできねえんだから!」

「あ、ごめん」

「エロイムエッサイム……エロイムエッサイム……」


 白雪姫の胸のあたりに手をかざして、とびきりの呪文を唱えたぜ。

 そして数十秒たった……。


「ああ、もう、やってらんないわ(ꐦ°᷄д°᷅) !!」

 可愛い寝顔を、まるで九回の裏、ゲッツーをとられ敗北した阪神タイガースの試合を観ていたオバハンみてえな顔に変えて、白雪は目覚めやがった!

「し、白雪さん( ゚Д゚)!」

「あのクソ王子! いいかげんにしろよおおおお٩(๑`▢´๑)۶ !!」

「あ……ああ……」

「なぁ、だから言ったろ、鬼になりかけてるって……」

「あ、あんたか、わたしを自由にしてくれたの。とりあえずありがとう……」

 簡単にお礼を言うと、白雪は棺から飛び出やがった。

「待て! その魔法は五分間しか効き目がねえぞ!」

「「え……?」」

 レミと白雪が同時に声をあげた。

「マユは小悪魔だから効き目が薄いんだ。でもよ、白雪は王子にじらされて、このままじゃ鬼になっちまう。だからよ、取りあえず五分間だけでも目覚めさせたんだ」

「え、小悪魔あ? 魔法少女じゃないの?『月に代わってお仕置きよ!』とか決めて、サクサク解決してくれるんじゃないの!?」

「なんだ、文句あんのか!?」

「あ……いえ……ごめんなさい。そしてありがとう……たとえ五分間でも起きることができて。レミもありがとう。毎日心配して見にきてくれてたんだよね。わたし、身動き一つできなかったけど。まわりのことは全て分かっていたのよ」

「毒リンゴを食べてから、ずっと?」

「ええ、継母のお后が、リンゴ売りのお婆さんから元の姿に戻ったときは『このクソババア!』と思ったけど。その直ぐ後の悲しそうな目は忘れられない」

「え、あのお后が、悲しそうな顔!?」

「うん、わたしも意外だったけど、継母は、わたしのことを憎んでなんかいなかった」

「だって、いつも鏡を見ては『世界で一番きれいな女はだーれ?』って、やってたんじゃないの?」

「違うの。本当は『世界で一番、この国を治めるのに相応しいのはだーれ?』ってやってらっしゃった」

「話がちがうぜ……」

「自分の考えも、鏡の答えもいっしょだった。でも、国民の多くは、わたしが女王になるべきだと思っていた。でも、わたしは見かけ倒し。かわいいだけで、とても国の政治なんかできないの」

「でも、毒リンゴで仮死状態にしておくなんて、あんまりだわ」

「継母さまは、それも、お考えになっていた。だから、いつか白馬の王子が現れて、わたしにキスをすれば、目覚めるように……それが、あのくそ王子!」

「アニマ王子のこと嫌いなの?」

「……いいえ、愛しているわ。最初に会ったときから……あの人の苦しみも、分かってる。でも、毎日来ては、わたしのくちびる一センチのところまで顔を寄せて、ため息ついて帰っていくばかり。それが、もう九十九回もつづいて。もう一回、こんな目にあったら、魔法少女……いえ、小悪魔のマユさんの言うとおり、わたしは鬼になっていたわ……」
 
 白雪姫はさめざめと泣き始め、レミは白雪をハグして慰めた。


「申し訳ねえんだけど!」


 マユは二人の間に割り込んだ。

「この魔法、五分しか効き目がねえ。効き目が切れるまでに対策考えろ!」

「「対策って?」」

 かわいいだけの白雪と、心配だけがイッチョマエのレミが、また同時に声をあげやがる。

「白雪。おめえの友だちで、おめえぐらいにかわいくて、勇気のある女の子いねえか!?」

「かわいくて……勇気……ああ、グリムチームに一人いる!」

「だれだ!?」

「ええと〇〇よ」

「え(''◇'')ゞ」

 名前を聞いて心配になった。かわいくて勇気はあるけども、ちょっと若すぎる。しかし、時間がないんで、マユは呪文を唱えて、そのかわいくて勇気のある女の子を呼び出したぜ!

「エロイムエッサイム……エロイムエッサイム……」

 モクモクモク……ポン!


 魔法の煙とともに現れた、その子は、思ったほどには若すぎなかった……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
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馬鹿に付ける薬 022『子犬に名前を付ける』

2024-10-16 13:59:55 | ノベル2
鹿ける 《気まぐれアルテミスとのんびりベロナの異世界修業》
022:『子犬に名前を付ける 




「連れていくんだったら名前を付けてやれ」

 前を歩くプルートがボソリと言った。

 ヒュドラの黄金のリンゴを手に入れて、三人は街道を北に歩いている。

「名前はケルベロスだろ」

「元々の名前だし、だめかしら?」

 アルテミスはプルートの背中を見て、ベロナは腕に抱いた子犬をモフモフしながら話を続ける。

「それは魔犬の時の名前だ。再生したことだし別の名前を付けてやった方がいい……それに、ケルベロスというのは微妙に長い」

「でも、カッコいいぞ」

「そのままだと、また首が三つになるかもしれんぞ」

「「それは困る!」」

 ワン!

「まあ、急ぐことでもない、ゆっくり考えろ」


 まあ、これも長い旅の慰めだろうと二人は考え始める。


「あれ?」

 半時間ほど考えて歩いていると、道を行く自分たちの影が一つ増えていることに気づくアルテミス。

 いつの間にかカロンが後ろを歩いている。

 ワンワン

「カロン(^_^;)」

「い、いつの間に(;'▭')」

「さあな」

「何かあったのか?」

 プルートは気づいていたようで、振り向きもせずに普通に聞く。

「この先に関所ができた」

「「「関所?」」」

「イリオス王プリアモスの息子でパリスという若造が冒険者たちに旅の目的を聞いている」

「イリオス王の息子?」

「誰だ、それ?」

 アルテミスとベロナが聞くと子犬も倣って首をかしげる。

「女神共に難儀な判定を迫られている若者だ。どうやら、まだ答えられずに冒険者相手に練習しているようだな」

「そんなの無視して行けばいいんじゃないのか?」

「ここで旅をやめて帰れるか、アルテミス?」

「できるわけないだろ」

「それと同じだ、パリスもゼウスに頼まれたんだ無下にはできん。二人とも、今のうちに考えとけ」

「あぁ、ちょっとぉ」

 子犬が肩の上でモソモソして持て余すベロナ。

「あ、首に札が付いてるぞ」

「え、いつの間に?」

「名札だ、ハチって書いてあるぞ」

「ハハ、カロンのやつだな」

「勝手に名前つけんなよ……あれ?」

「あら、もう居ないわ」

「さあ、犬の名前も決まった。先を急ぐぞ」 

 道の先に人だかりが見えて来た、どうやら、それがパリスの関所のようだ。



☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • アルテミス          アーチャー 月の女神(レベル10)
  • ベロナ            メイジ 火星の女神 生徒会長(レベル8)
  • プルート           ソードマン 冥王星のスピリット カロンなど五つの衛星がある
  • カロン            野生児のような少女  冥王星の衛星
  • 魔物たち           スライム ヒュドラ ケルベロス(再生してハチ)
  • カグヤ            アルテミスの姉
  • マルス            ベロナの兄 軍神 農耕神
  • アマテラス          理事長
  • 宮沢賢治           昴学院校長
  • ジョバンニ          教頭
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!32『ライオンを捜す少女』

2024-10-16 06:15:34 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
32『ライオンを捜す少女』 




「キミはライオンを探しているのかい?」

 渡りに船でアニマ王子が聞きやがる。張り倒してやろうかと思ったけど、少女の手前、ちょっとガマンしたぜ。

「ライオンじゃなくてぇライオンさん!」

 言い返しやがる。可愛いけど、ちょっと気ぃつよそうなガキだぜ。

「でも、ライオンなんだろ?」

「ちがうぅ! 二本の足で歩くし言葉だって喋るしぃ、何よりも勇気を誇りにしているわ。で、そういうライオンさんを見かけなかった!?」

「いいえ」「んなの知るか!」と、レミとマユが答える。少女の視線は、王子にもどった。

「ぼくも知らないけど、ライオンさんに会えたら伝えてくれたまえ」

「え、なにを?」

「あ……その……つまりだね……」

「あの、わたし急いでるの。分からなかったら、他をあたらなきゃならないから!」

「もし、ライオンさんに会えたら伝えてくれたまえ……」

「だから、なにをですか!?」


「どうやったら……勇気が持てるか」


「そんなもの、自分でどうにかしなさいよ。まったく今時のオトコときたら!」

 少女は捨てぜりふを残して回れ右をし、一歩踏み出して……立ち止まった。

「いま、わたし『オトコ』って言ったわよね……」

「う、うん」「どうかした?」

「う、ううん。なんでも。じゃあね」

 少女は、ギンガムチェックのスカートとツインテールをひるがえしながら行ってしまった。


「……あいつ、ドロシーだよな。『オズの魔法使い』の?」


「そうよ。今頃は、エメラルドの国に着いてなきゃいけないんだけどね」

「やっぱり、これもゆがみのひとつなのか?」

「たぶんね。でも、ドロシーは所属がMGMで、そこにワーナーやソニーが絡んだり、ややこしくって、よく分かんない」

「でも、そのややこしい中でも、ケナゲにオズの国を目指してやがるんだな」

「そう、だれかさんと違ってね」

 レミは、麦わらをあみだに被り直し腕組みをした。


「じゃ……ボクはこれで失礼するよ」

 アニマ王子は肩を落としたまま立ち上がると、マントを被りなおした。

「明日もちゃんと来るのよ」

「ああ……」

「そして、キスするのよ(>▢<)!」

「……ああ、前向きに考えるよ」

「なに、その政治家みたいな言い方!?」

「母上に教わったんだ。こういう状況で使う言葉……じゃ」

「待て、これ持ってけ」

 マユは、胸ポケットから歯ブラシを出したぞ。

「歯ブラシ?」

「今夜と明日の朝、それで歯を磨け」

 アニマ王子は、手に息を吐きかけて、臭いを嗅ぎやがる。

「臭うかな……?」

「似合うぞ」

「え……?」

「ロゴを見てみ」

「……ライオン歯ブラシ」

「分かった?」

「ありがとう。ギャグで励ましてくれたんだよね……ごめん、上手くリアクションできなくて」

 王子はハイセイコーにも乗らずに行ってしまいやがった。

「ありがとう、ごめんね、めんどくさい王子で。せっかくシャレで締めくくってくれたのに」

「シャレじゃねえよ」

「え……?」

「あの歯ブラシには魔法がかかってんだ」

「どんな魔法?」

「あれで歯を磨くと、好きな女の子にキスしたくなる魔法がよ」

「え……それじゃ!」

「でも、あいつに効くかどうか自信はないわぁ。小悪魔程度の魔力じゃどうしようもねえ」

「ううん、マユはがんばってくれた。ありがとう」

 礼を言われると、ちょっと居心地が悪くて、とっさには返事できねえ。

「それにしても白雪、可愛そうだな……」

 白雪姫に目をやるレミ。マユも自然に目を移した。

「あ……白雪の顔?」


 マユは、白雪姫の寝顔に不吉なものを感じたぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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銀河太平記・254『密航者っす!』

2024-10-15 17:13:26 | 小説4
・254

『密航者っす!』 ツナカン 




 ええと……解説の続きっす。


 読者の中には気づいてる人もいるかもっスけど、マーク船長のねぐらは、うちらの火星基地の裏側にあるっす。

 うちらの基地を畳むときには「もう少し様子を見る」ってことで残ってたっす。

 規模が小さいのと、大海賊アルルカンが退避した後ならかえって目立たないってことなんすけど、横着で面倒くさいからだと船長もヒンメルの乗員も思ってるっす。

 うちらは、超宇宙戦艦ヒンメルを使って銀河系レベルで活躍する大宇宙海賊。言ってみりゃ巨大企業なんすけど、マーク船長はファルコンZってボ-トみたいな宇宙船で、チマチマと太陽系の中を走り回ってる零細企業。

 その巨大企業のボスのアルルカンと零細企業のマーク船長は、表面はカタキ同士みたいなんすけど、根っこのところでは仲がいいっす。

 だから、駆逐艦松のブリッジに隠れていて、姿を現した今も「き、貴様ぁ、ファルコンZのマーク船長(;・`д・´)!」とか言いながら嬉しそうに松のデッキに上がって行ったっす。

「いやぁ、ちょっと事故っちまってファルコン・Zオシャカにしちまってな。他に船もねえから、冥王星のコレクションの中に忍び込んでお待ち申し上げていたってわけだ」

「不埒なやつめ! でも、よく松に乗り込んだもんだなあ。冥王星のコレクションは300隻はあるぞ」

「あはは、長い付き合い、アルルカンの趣味と事情は分かってるさ。お前なら、きっと松竹梅を選ぶってな」

「いや、ほんとはナガトを持っていくつもりだったんだぞ」

「でも、ツナカンやアルミカンに反対されて、妥協の末に松竹梅。図星だったろう?」

 アハハハハハ(ᵔᗜᵔ* ) 

「笑うなツナカン!」

「マーク船長、そっちのクルーはどうしたんすか?」

「ああ、竹と梅にな……」

 船長が指差すと、竹のデッキにバルスのおっさん、梅のデッキにミナホとポチが出てきたっす。

「おお、みんな元気にしてるっすかぁ(^▽^)/」

 思わずゲストのココちゃんたちと手を振ったっす!

『おーーい!』『元気かぁ!』『ワン!』

 向こうも元気に手を振ってくれたっす!

「あらあ、でも、みなさん顔や服が汚れてぇ……」

 ココちゃんが気づいて、うちらも、ちょっと気になったっす。

「ああ、密航してるだけじゃヒマなんでな、あっちこっち弄ってスペック上げといたんだ」

「ええ、わたしのコレクション触ったのか!?」

「映画の道具にされてた船だけど、レプリカのナガトと違って元々は現役の軍艦だ。触ってみたくもなるぜ……んな顔すんなよ」

「なんだか、自分の娘が好きにされたみたいだぞ」

「ちょ、マジで泣くなよ!」

「ググ、でも、マーク、なんでお前の服や手はきれいなまま……あ、そうか、いちばんオキニの松だけは触らなかったんだな!」

「いや、あいつらは興が乗っちまって、内火艇とかもいじってたからな」

『もう、ギンギンにチューンしました!』『ミナホもがんばりましたぁ!』『ワン!』

「ああ、目まいがぁ……」

「あ、船長!」

「アハハハ(≧ε≦*) 」

 ショックのあまりガラにもなくよろめく船長、反射神経で介抱するココちゃん、爆笑の周温雷。殿下(森ノ宮親王)と胡蝶さんは、さすがに微笑むだけっす。

 うちら乗組員は――ああ、またかあ――って感じなんすけど、これで挫ける船長じゃねえんす(^_^;)。

 でも!

 これ以上の話しは、このツナカンをもってしても心臓に悪いんで、この次にするっす(-_-;)。


☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!31『だったらキスしろ!』

2024-10-15 08:30:40 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
31『だったらキスしろ!』 




「この棺の中の……白雪姫だよな?」

 五分経った。

 レミはアニマを、アニマは棺の中の女を見つめるばかりでらちが明かねえんで、聞いてみたぜ。

「白雪姫だよな?」

「…………」

「…………」

「あ、ひょっとして蝋人形か( ゚Д゚)!? 最近のはシリコンとかで出来てっから、スゲェーんだよな。胸とかは特に柔らけえの使ってて、ゼリー胸とか言ってプニプニなんだろぉ(〃∀〃)?」 

「触んなアアア!!」

「おっと、なんにも言わねえから、ちょっとふざけただけじゃねえか! なんか言えよ!」

「ハァ、眠れる森の美女じゃなければね(*´Д`)」

 やっとレミが答える。

「ね、そうでしょ!?」

 レミは、矛先をアニマ王子に向ける。

「あ、ああ……スノーホワイトかもしれないし、シュネービットヒィエンかもしれないけど」

「それ、英語とドイツ語に言い換えただけじゃねえか」

「あ、ああ……そうだよね。でも彼女がスノーホワイトなら、英語じゃなきゃ伝わらないし、シュネービットヒィエンならドイツ語でなきゃ。ボクは日本語だから微妙に違うかも……ハァァァァァ(*´▢`)」

 軟弱王子は、長いため息をついて、うなだれやがった。

「まあ、現実を認めるようになっただけ進歩だけどね。ね、スニージー」

 レミがつぶやいくと、棺の陰に気配がしたぞ。


 ハーックション!


 とたんに大きなクシャミがして、棺の向こうからドワーフが現れやがった。


「やあ、レミ、世話かけるね。そちらさんが?」

「うん、魔法使いのマユ。やっと来てもらえたの」

「そりゃあいい。もう、この世界はこんぐらがっちゃってるからね。よろしくマユ」

「お、おう、おめえ七人の小人のドワーフだろ?」

「ああ、そうだよ」

「他のドワーフは居ねえのか?」

「山に行ってるよ。鉱石掘りが俺たちの仕事だからね。夕暮れになったらみんな戻ってくる。もう少し時間があるから、俺も行っていいかなあ」

「もちろんよ。でも、あの山の向こうで、つま先立ちしてるお星様たちが顔を出すまでには戻ってきてね」

「うん、分かった。それじゃ、ちょっくら行って来る」

 スニージーは、アニマ王子に一瞥をくれると、ハイセイコーの馬面を撫で、サッサと、ツルハシをかついで行っちまった。


「ドワーフたちも、持て余してるのよねえ……」


 スニージーを見送りながらレミがこぼしやがる。

 ヘックション!

 とたんに彼方のスニージーが大きなクシャミ。そのコダマが収まって、マユは聞いたぜ。

「なあ、白雪姫の話ってよぉ、王子のキスで白雪姫が生き返って、メデタシメデタシになるんじゃねえのか?」

「それが、そうならないから、苦労してんのよ」

「ああ、いったいどうすればいいんだ……僕はぁぁぁぁ!?」

 アニマ王子が、頭をかきむしりながら身もだえやがる。

「簡単だ。キスしちゃえばミッションコンプリートじゃねえか!」

「それがね……」

 レミが腕組みをした。

「ひょっとして、アニマって〇〇……なのか?」

「そんな、ボクは〇〇でもなきゃXXでもない! 心から白雪姫のことを愛しているんだ!」

「だったらあ……!」

「ボクが王子でなくて、白雪姫が王女でなきゃ事は簡単なんだけどね」

「ハア……」

 組んだ腕をほどいて、レミはため息をついた。


「僕と白雪姫がいっしょになったら、どうなると思う……」

 アニマ王子は、両手を広げると空をあおいでつぶやいた。

「ハッピーエンドじゃねえのか?」

「考えてもくれよ。一国の王子と王女だよ。それが好きになって結ばれたら、二つの国が合併することになるんだよ。うまく根回ししても、強力な同盟関係になったと思われるし、現にそうなってしまうだろう」

「それがぁ……(‎ ‎¯ࡇ¯ ) 」

 めんどくさいやつだ。

「ここは、北にシンデレラの王国、南に眠れる美女の王国、そのまた南が白雪姫の国だ。うちと白雪姫の国がいっしょになれば、この微妙なファンタジー世界のパワーバランスが崩れ、緊張関係がいっそう増してしまう。王子であるボクは、自分の思い通りには行動できないんだよ」

「でもよ……んなこと、やってみなきゃ分かんねえだろーが。ディズニーアニメだったら、もうとっくにメデタシメデタシでエンドマーク出てんぞ」

「あれはディズニーが、無理矢理話をねじまげたからだよ。ファンタジーの世界はもっとリアルで残酷なんだよ。このグリムの原作を読んでみるといいよ」

 ズイ! パシ!

 岩波文庫のグリム童話なんか出しやがる。そいつをパシっとはたいて襟首を捕まえてやった!

「な、なんだぁ(;'∀')!?」

「グリムの残酷さぐらいは魔法学校で習ったわ! しっかり現実を見てみろよぉぉぉッ!」

「な、なにをする(>○<)!?」

 もう辛抱ブチギレて、アニマを棺の前に引き据えてやったぞ!

「マ、マユ……(;'∀')」

 マユの強引さに、レミは、思わず声をあげやがる。

「好きなんだろーが!?」

「う、うん……」

「愛してんだろーがあ!?」

「だったら、何も考えることは無ぇえ。キスしちまえええ(>▢<)!」

 ありったけの魔力で、王子の顔を白雪姫の顔に近づける……しかし、アニマ王子は渾身の力で抗いやがって、その唇は五ミリの距離を置いて止まってしまう!


「……なんちゅう根性なし!」


「だって、ここで二人が結ばれたら、白雪姫の国で内戦がおこるよ。王妃側と白雪姫側に分かれた血みどろな内戦が!」

「それをなんとかすんのが、王子だろーが!」

 アニマ王子が、顔を真っ赤にして、何か言おうとしたとき。お花畑の横の道に気配がした。


「あのぉ……お取込み中のところ失礼します。このへんでライオンさん見かけませんでした?」

「「「ああん!?」」」

 三人メッチャ不穏な返事をしたのに、 そいつは、白と水色のギンガムチェックに半袖パフスリーブのワンピース。髪はツインテール、バスケットを腕に下げ、赤い靴を履いていて、人の事なんかぜんぜん気にしねえでリフレインしやがった。

「このへんでライオンさん見かけませんでしたぁ?」



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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やくもあやかし物語2・077『魔王子トバルと御息所の激闘』

2024-10-14 11:01:52 | カントリーロード
くもやかし物語 2
077『魔王子トバルと御息所の激闘』 




「ミヤスドコロぉ?」「 なんだ、その観光地の休憩場所みたいな名前はぁ?」

「ふん、哀れなな異世界王子よ。読み仮名だけ拾っても妾(わらわ)の値打ちは分かるまいぞ」

「なにを……ぼくは世界中の言語を理解する力があるんだぞ」「六条御息所……か、フフ、休憩所どころか京都の公衆トイレみたいな字面ね」「トバリヤクモは容赦ないね」「あなたは力でおしていきなさい」「ああ、リアルメイソンと同じ力だからね」「その意気よトバルメイソン」

 トバルヤクモとトバルメイソンが交互に反論してくる。

「フン、では、その公衆トイレに勝ってみよ!」

「「望むところ!」」

「あぶない、御息所ぉ!」

 ブン! ブブン! ブン!

 姉のトバリと同じような音をさせて御息所に攻撃を仕掛ける二人の分身トバル。

 フワリ フワフワ  

 ブブン! ブン!  

 フワ  

 ブブン!  

 フワリ

 トバルヤクモとトバルメイソンに分身してるんで敵わないかと心配になったけど、けっこう身軽に躱していく御息所。

「なかなかやるじゃないか、おチビちゃん」

 悪気無く禁句を使って応援するメイソン。いつもだったら「おチビちゃん言うなあ!」と文句を言うんだけど、黙々と異世界王子の攻撃をかわしていく御息所!

 ブン! ブブン! ブン! 

 フワ フワ ヒラリ フワワ 

 ブブン! ブン! 

 フワリ フワフワ ヒラリ

「頑張ってるけど、なんだか躱してばかりだなあ……だいじょうぶか?」

「だいじょうぶ、なにか考えがあってのことだと思う」

「フワフワ逃げてばかりいないでぇ」「かかってこいぃ!」

 ブブン! ブン! 

 ハラリ フワフワ ヒラリ

『よし、もうこのくらいで良いであろう』

「「なんだと?」」


 呆気にとられるトバルを尻目に両手を広げてトバリの周囲をグルリと回る御息所。
 その入っている手袋からはハラハラと星くずみたいな花粉みたいなのが振りまかれ、二人のトバリは急速に眠くなってきて一つになって元の一人トバリの姿になったよ。

『トドメじゃ!』

 ウワァアアア!

 トバルは目をつぶったまま恐慌状態になって、叫び声をあげると逃げるように急上昇した。

 ズゴン! ギャフン!

 衝撃音と悲鳴があがる。

 急上昇したトバルは、そのまま結界の頂点にいた姉のトバリに激突して消えてしまった。


 ピ~~ピピ~


 ヒバリの声だけがして、あたりは元の穏やかな草原に戻ったよ。


 でも、メイソンも他の仲間も姿が見えない。

 時間切れになったんだ。

 メイソンも言ってたし、ちょっと寂しいけど……まあ、仕方がない。

「ねえ、どうやってやっつけたの?」

 御息所に聞いてみる。

『あれはね、あいつがこれまで見た悪夢をぜんぶ思い出させてやったのよ』

 もう通常モードになって、それだけ言うとポケットの中に戻ってしまう御息所。

 ZZZZ……ZZZZ……ZZZZZZ……

「疲れちゃったんだね……しかたない、一人で行くかぁ」

 メイソンたちが持ってきてくれた食料の中からチキンラーメンを出して、ボリボリ齧りながら先に進んだ。

 ゲフ

 一袋まるまるかじって食べたら、けっこうお腹がいっぱいになった。


 キーストーンを取り返す旅はまだまだ続いていきそうだ……。



☆彡主な登場人物 
  • やくも        ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド  メイソン・ヒル  オリビア・トンプソン  ロージー・エドワーズ  ヒトビッチ・アルカード  ヒューゴ・プライス  ベラ・グリフィス  アイネ・シュタインベルグ  アンナ・ハーマスティン
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子)  トバリ(魔王女)
 
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!30『情けねえ王子』

2024-10-14 08:42:00 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
30『情けねえ王子』 


 


 薮から棒のような男は、心ここにあらずという顔をしてやがる。


「なんだ、この覗き魔ヤローは!」

「あ、その人だったら大丈夫。わたしなんか目じゃないから」

 麦藁帽を被りながら、レミが言う。

「目じゃねえ?」

 どういう意味だ?

「アニマ……今日もダメだったんだね」

「……あ、レミか。いつもと服装が違うから分からなかった……ああ、似合ってるよ」

 後ろの「似合ってる」は取ってつけたみてえで心が籠ってねえ……と思ったら、弱っちい女みてえに手で顔を覆って泣きやがる。

「な、情けないやつだよボクは!」

 ベルベットのマントにシルクの袖なんかかがゆったりしたドレスシャツ。乗馬ズボンに、金の鎖が付いたサーベルなんか付けていて、見るからに、ハイソな坊ちゃん。顔も、泣いてさえいなかったら、ディズニーアニメの王子さまが務まりそうなイケメンなんだけどな、自分で言ってる通りに情けねえ。

「紹介しとくわ。この人、ゲッチンゲン公国の王子さまで、アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン。こちら、わたしのお友だちで味方のマユよ」

 現金なもので、レミは、もう十年来のお友だちの感覚でいやがる。

「よ、よろしく、アニマって呼んでくれていいよ」

「ああ、小悪魔のマユだ。覚えとけ」

「え、あ……悪魔(◎△◎)!?」

「そーだ。ウジウジしてっと呪い殺すぞ」

「ヒーー(>□<)!」

「ああ、それくらいにしてやって、マユ(^_^;)」

「フン」

「今日もダメだったのね……」

「う、うん……」

「強い心で踏み出さなきゃ、いざという時に王子としての義務が果たせなくなるわよ。いすれは、国王にならなきゃいけないんだからね」

「ボ、ボクには、そんな資格はないよ。あの愛しい人一人救えないのに」

「じゃあ、その愛しい人のところに連れていってくれるかしら、現物見てもらった方が分かり易いから」

 え、マユに振んなよ(^_^;)!

「ああ、そうだな。見てやってくれたまえ。そして、ボクに知恵と勇気を与えてくれたまえ。このファンタジーの世界の程よいヒーローとしての勇気を」

「もう、ココロザシが低いんだから。ヒーローってば一番に決まってるでしょうが! 程よいなんてありえないわよ!」

 レミは、鼻息荒くアニマを叱りやがる。

「そういう帝国主義的なヒーローは、趣味じゃないんだ」

「そうやって、言葉でごまかして責任逃れするんだから」

「あ、立派な馬……」


 王子の後ろから立派な白馬が現れた。


「やあ、僕ハイセイコー。アニマ王子の専用のお馬さんだよ」

「馬が喋った!」

 驚いた。魔界でもケルベロスとか喋るけどよ。そういうのは見ただけで分かる。この馬はカッコはいいけど普通の馬だ、こいつには『喋ります』ってオーラがねえ。

「ここは、ファンタジーの世界よ。カラスが監視カメラにもなるし、馬だって、喋って当たり前」

「……でも、ハイセイコーって、どこかで聞いたことあるなあ」

「三十年前に、ここに来たんだ。そっちの世界にいたころは競馬場で走ってた(*´ω`*)」

 ちょっとはにかみながら、ハイセイコーが言いやがる。

「あ、伝説の競走馬!」

 マユの頭の悪魔辞典にも答えが出てきた。

――ハイセイコーは日本の世界的競走馬。1970年代の日本において社会現象と呼ばれるほどの人気を集めた国民的アイドルホース。第一次競馬ブームのヒーローとなる。1984年、顕彰馬に選出され、銅像にもなっている!――

「あ……そんなに感動してくれなくっていいから」

 ハイセイコーは、チラッとアニマ王子に目をやった。

「ハイセイコーは、この世界に来てからは、兄のアニムス・ウィリアム・フォン・ゲッチンゲンの乗馬だったんだ。兄が亡くなってからは、役目上ボクを乗せてくれているんだけどね」

「アニマ王子、僕は、キミに乗ってもらって光栄だと思ってるんだよ……そりゃ、お兄さんも偉い王子さまだったけど」

「そうだよ、兄貴は立派だったさ!」

 こいつ、だいぶ病んでやがる。

「ま、とにかく、ここで落ち込んでても、なんにもならんないから、行くとこに行こうよ!」

 レミが、キッパリと言った。


 それは、さらなる森の奥にあったぜ。


 丘を超えて小川を渡ったところが、テニスコートほどに開けた芝地になっていて、そこここに、マユには分からない花がいっぱい咲いてる。お花畑っていうやつだ。

 そのお花畑の真ん中に棺が安置されてやがる。

 近づくと、それはガラスの棺ってやつだ。


 棺の中で眠るように横たわっていたのは……まるで白雪姫だったぜ。
 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・133『are so』

2024-10-13 15:56:57 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
133『are so』   




 ちょっとやり過ぎたかなあ。


 殊勝なことを言ってるけど、たみ子の目はへの字だし、いっしょに写真を見てるお仲間は、みんなニヤニヤしてる。

 さすがに教室だと差しさわりがあるので、昼休の中庭、藤棚の下で体育祭の写真を見ている。ほら、最後のプログラムだった着せ替えリレー。

 何十枚もある写真の中で一番人気が10円男の女装写真。

 もともとスレンダーな優男なんだけど、めちゃくちゃセーラー服が似合ってる。
 パンツ以外は全部女物で、走っているとスカートの中のスリップやら、揺れる襟から覗くブラ紐なんかがリアルに雰囲気。
 そして、髪は女子のボブってくらいに伸ばしてたから、違和感がほとんど無い。

 そして何より表情。

 最後まで嫌がってたんで、眉根にキュっと力が入ってるとこが、健気でカワイイ(^▽^)

「山口百恵みたい!」

 思わず口走って、みんなが『?』な顔をする。

 しまった、この時代、まだ山口百恵はデビューしてないか!?

「あ、ちょ……」

 佳奈子が声を上げる。ちょうど通路から10円男が友だちとやってくるところだ。

 アワワワ(''◇'')

 真知子が慌てて写真帳を挟んでいたスクラップ帳ごと落としてしまう。

 仕方が無いので、スクラップ帳ごと拾ってスクラップ帳を観てるふりをする。

 写真帳もスクラップ帳もロコのもので、開いたところは今月のニュース。

「なんだ、ヒロヒトの写真なんか見てんのか……」

 捨て台詞を残して、男どもは学食の方に行ってしまう。

「そうだ、天皇陛下、そろそろ帰って来るんだねぇ」

 記事の写真を見ながらたみ子が話題を変える。 

 
 史上初めて天皇陛下がアメリカに行った。


 この時代の天皇陛下は令和の天皇陛下のお祖父ちゃん。

 令和の天皇陛下も、わたしの感覚じゃお爺さん。愛子様はわたしより四つも年上なんだけど、その愛子様はひ孫になるんだからすごいよ。

「おもしろいエピソードがあるんですよぉ(^▽^)」

 さすがはロコ、新聞をスクラップするだけじゃなくて、ネタを仕込んでるよ。

「「「なになに?」」」

「あっちじゃ、いろいろご歓談になってるんですけど。あ、陛下は日本語で通訳が入るんですけどね」

「でしょうね、天皇さんが英語喋ってるのは見たことない」

 真知子は『天皇さん』と呼ぶんだ。

「あの人、英語しゃべれるよ。皇太子のころにイギリスに行って国王とさしで喋ってるの見たことある」

 たみ子は『あの人』だよ(^_^;)

「で、どんな英語」

 英語が苦手な佳奈子が話題を戻す。

「それがですねぇ、人が喋り終えると『are so』って言われるんです」

「『ああ、そう』って日本語でしょ」

 わたしが普通の反応をするとESSの部員でもあるたみ子がピンときた。

「あ、そうか! 言うよ『are so』って、日本語に訳しても『ああ、そう』だ!」

「are so なんだ( ゚Д゚)!」

 あ、アハハハ(^〇^)

 ギャグをかましたと思われて、笑われてしまった。


 うちへ帰ってお祖母ちゃんに話をした。


「ああ、あれはすごいことだったんだよ」

「are so?」

 ポコン

「イテ」

 新聞丸めたので叩かれる。

「国家的規模の敗戦で潰れなかったのは日本の皇室だけなんだ」

「え、そうなの?」

「イタリアなんかムッソリーニが処刑されて、一応王制は残ったんだけどね、国民の総スカンくらって国外追放になった」

「え、イタリアに王さま居たの?」

「居たよ。第一次大戦じゃドイツとロシアの帝政が廃止されたし、中国の清朝も日清戦争に敗れて滅んじゃったし。ナポレオンもロシアに負けてコルシカ島に流されたしね」

「ああ、そうなんだ」

「それに、昭和天皇はあの戦争が起きた時の国家元首だからね、その陛下が敵国だったアメリカに国賓で行かれた意味は大きいよ」

「そうなんだ」

「エリザベス女王が来日された時の記者会見でね『来日の目的はなんでしょう?』って質問をした記者がいたんだけどね、女王のご返事は『天皇陛下に教えを請いにきました』だったよ」

「ええ、リップサービスじゃないの?」

「女王の訪日は、陛下の訪米の四年後だよ。それに、その時、裏の警護責任者をやってたのは……」

「え、お祖母ちゃん!?」

「そうだよ、向こうの影のSPとも親しくなってね。お祖母ちゃん、あくる年にその人からプロポーズされた」

「ええ、うっそー( ゚Д゚)!?」

「で、シュミレーションしてみた」

「え、どんな?」

「孫娘が生まれたら、どんな子になるかって……ほら、こんなの」

 お祖母ちゃんが指を回すと、ソファーの向こう側にわたしを100倍可愛くしたようなクォーター美人が現われた。そいつ、長い足を組んでピースサインをしやがったよ(^_^;)。

 明日から中間テスト、がんばろう。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 


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