南国の“情熱の花”ハイビスカスと美装を纏った旅する蝶・アサギマダラ(下写真)の交歓を話題にします。
舞台は、本邦・南西諸島の一小島・喜界島の東沿岸を念頭に書いています。そこではアサギマダラが繁殖し、海を渡り、多くの地方を旅しています。
アサギマダラの長旅の助けにと、蜜を蓄えて待っているハイビスカスの“思い遣り”の心を想像しました。
< 原文 と 読み下し文>
次韻蘇軾《海棠》 通紅芙蓉 [下平声七陽韻]
太洋瀲灔曙瑞光,
太洋 瀲灔(レンエン) として曙(アケボノ)の瑞光,
蛱蝶飄飄旋転廊。
蛱蝶(キョウチョウ) 飄飄(ヒョウヒョウ) として廊に旋転(センテン)す。
芙蓉猶恐蜜充否,
芙蓉(フヨウ) 猶(ナ)お恐る蜜の充なるや否やを,
更待旅蝶耀紅粧。
更に待つ 旅蝶(リョチョウ) 紅粧(コウショウ)を耀かして。
註] ○芙蓉:ハイビスカス; ○瀲灔:広々とさざ波を湛えたさま;
○飄飄:漂い翻るさま; ○旋転:ぐるぐる舞まわる; ○旅蝶:アサギマダラ
のこと、大海を渡って旅する蝶。
<現代語訳>
蘇軾《海棠》に次韻 真紅のハイビスカスの花
波静かな大洋の水平線に日が顔を出すと、海面では瑞光を映して漣の如くに光が揺れる、
廂の向こうには、大小、色取りどりの蝶がひらひらと活動を始めた。
ハイビスカスは、蓄えた蜜が充分であるか 気にしながら、
真っ赤な装いを輝かして、これから旅に出る旅蝶の来訪を待っている。
<簡体字表記>
次韵苏轼《海棠》通红芙蓉
太洋潋滟曙瑞光, 蛱蝶飘飘旋转廊。
芙蓉犹恐蜜充否, 更待旅蝶耀红妆。
<記>
喜界島は、鹿児島―沖縄間のほぼ中間に位置、太平洋に面していて、温暖な亜熱帯に属する、周囲ca.49km面積ca.57km2の小島である。
島の東海岸に立てば、太平洋が一望でき、遥か水平線はやや凸に孤を描き、円い地球が実感できる。朝日や夕の望月が水平線上に顔を覗かせると、海面の漣に揺れる光が映える。
同島で注目される一つは、島の台地の森林内に生息(/繁殖)したアサギマダラの乱舞する情景にお目に掛かれることである。
ハイビスカスの蜜は、生命維持・活動のための栄養源の補給が目的となろう。「蜜を十分に蓄えたよ!長旅に耐える体力作りに利用して」と、目印として花を真っ赤に染めて、蝶を待っているのだ。
植物の多くは、独特な色または香りを発して、有翅昆虫や小鳥などを呼び寄せ、蜜を提供する。その代償に受粉の手助けをしてもらっている。
ハイビスカスとアサギマダラの関係もその例から外れることはない、「持ちつ・持たれつ」の生態系の一例と言えよう。
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