ふつう私たちは、歴史の流れを過去から追っていったとき、自然に過去より現在、現在より未来の方が進歩していると思います。
ロッシャーによる「自然経済→労働経済→資本経済」という三段階論やビュッシャーの「家計経済→都市経済→国民経済」という発展段階論がその代表的主張ですが、これらの源にはヘーゲルが「弁証法」という論理により提示した歴史哲学すなわち「啓蒙主義的進歩史観」があるといいます。
ウェーバーは、こういった進歩史観には与みしませんでした。
(p88より引用) 世界史的進歩史観に対する批判的な意識を、ランケ以来のドイツの歴史主義的思考は一貫してもっていたのでした。ウェーバーはそれを徹底して継承したということができるでしょう。
ウェーバーは、歴史の個性的・具体的事象の連関に重きを置きました。
(p186より引用) 諸民族の世界史的な連関の中にあって、いかなる個性的具体的な要因が、どのような因果連関をかたちづくったがゆえに-そこでは具体的な政治的事件や宗教をはじめとする文化的・個性的な要因がこれまた個性的なかたちで絡み合って働いているというのがウェーバーの見方でした-われわれのヨーロッパ近代、その第一の特徴である「世界の魔術からの解放」がもたらされたのか、というのが彼の根本的な問いであったのでした。
ウェーバーは、「比較」、すなわち「類似」と「相違」とに着目して因果連関を解明していきます。
「ヨーロッパ近代」との比較の対象となったのは「古典古代」でした。
(p186より引用) そこで見いだされた因果連関、古代ユダヤにおける予言の出現と捕囚という一連の連鎖は、まさにその時点の歴史的な条件ゆえに成立したのであり、つまり一回限りの個性的な条件においてはじめて成立した、その条件が一つでも違えば結果は別になりえた、そのような過程であったというのです。そうした条件は二度と繰り返されることはない、そうであるがゆえにあの一連の過程は歴史的・世界史的意義をもっているのだというのがウェーバーの基本的見方でありました。
フランス啓蒙思想に代表されるような普遍主義的思考には批判的な態度です。
(p187より引用) その意味では近代ヨーロッパの文化と社会をもたらしたものは、誤解を恐れずにいえば、いわば偶然的な条件の符合とそれにもとづく因果の連鎖の結果であって、決してはじめから定められたごとく必然的に進行する進歩なり発展なりの結果というわけではない、というのがウェーバーの考え方でした。
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