ことの葉散歩道 (№23)
幸せの指標
明日やることがある人が 一番幸せ ※ 落語家 三遊亭好楽 |
次のように言葉は続く。
「喫茶店に行くと、たまにモーニングコーヒーを昼までかけて飲んでいるお年寄りがいますよ。
急いで飲んだってやることがないんでしょうね、時々ぼーっと天井見たりなんかして。
それに比べたら、借金返さなきゃなんないし、晩の買い物もあるし、もう何だか忙しくって、
なんて言ってる人の方がよっぽと幸せですよ」と。
数年前のバラエティー番組「所さんのダーツの旅」で、
日向ぼっこしている老人に「何をなさっているんですか?」と問いかけた。
「することなんかなぁーんにもねえさ、ただ死ぬの待っているだけだ」と。
老人の言葉は明快だ。
ここには負のイメージが全く感じられない。
老いていく自分と、年々社会的役割から遠ざかっている老人の姿が見える。
だが老人はそんな自分の姿を笑い飛ばしている。
生きることの意味と老いていくことの意味を理解した老人の言葉には、
「明日もまた天気が良ければ、日向ぼっこをして一日を過ごすさ」。
これが俺に許された仕事だと老人は言いたかったのだろう。
朝目が覚めて、「さて長い長い今日一日をどうして過ごそうか」と思うのは、少しばかり寂しい生き方だ。
挙句の果てに「早くお迎えが来てくれないかな」思う自分がいることに気づき愕然とする。
幸せの意味は人それぞれに異なるだろう。
お金が欲しい、名誉や地位も欲しい。
家族にも恵まれたい。
病気で苦しんだ人は健康であることを、「幸せ」と感じる人もいるのでしょう。
「平凡に暮らせること」を幸せと感じる人も多い。
平凡に感謝し、明日も今日と同じような日が訪れることを願う人は多い。
だが、平凡を支える一人一人の努力がなければ、
健康も、家族のだんらんも縁のないものとして遠ざかってしまう。
「今日できることは、今日やる」という生き方があって、
「明日もまた昨日に続く日」を迎えることができれば、人生は粋に感じることができる。
その上で「明日できることは、今日やらない」という生き方を実践できれば、
心豊かに生きることができる。
(2016.2.3記)