正社員転換・待遇改善プラン(厚労省)
社会の動き
「フリーター」という言葉が公に認知されたのは、1991年の広辞苑第4版に掲載されてからか。
それから25年が経過した現在、この言葉も死語になってしまった。
当初この言葉の内包する意味は「何となくかっこいい」、「自由である」などの意味を含んでおり、
テレビや新聞などのメディアに頻繁に登場した。
「俺はフリーターだ」と誇らしげに言う若者も増えていった。
だが、内実は「アルバイト」であり、正社員の道に歩み損ねた人たちが多かったため、今では死語になった。
「ニート」という言葉も流行った。
これは、玄田有史(東京大学教授)の「ニート フリーターでもなく失業者でもなく」という著書(共著)が
2004年に発行された時初めて使用された用語である。
働かない若年層が社会問題化するなかで、生まれた言葉であるが、
それは単に「失業者」という暗いイメージではなく、
社会への違和感ゆえに労働する意志、教育を受けようとする意志を持とうとしない若年層を指していたが、
この言葉も現実と乖離し、言葉だけが独り歩きをしたために死語となった。
現際の状況と政策
「フリーター」も「ニート」も死語とはなったが、社会状況が好転したわけではない。
むしろ、閉塞感を伴い、状況は悪化し深刻化している。
非正規労働者は増加し、経済格差は広がり、貧困は親から子へ継承され、教育の格差にまで及んでいる。
物が安いということが、消費者にとって良いことか?
必ずしもそうではなく、物価の安さが、時間給や労働者の給料を圧迫してしまう例を私たちは幾度も見てきている。
厚労省が策定した「正社員転換・待遇改善プラン」は、
派遣や契約社員など非正規労働者の正社員化を促すものとして注目したい。
非正規で働く人の割合を2016年度以降の5年間で約半分にすることを目指す。
こうしたプランを推進する企業に助成金を出すことも検討している。
正社員との賃金格差も大きく、
正社員の月額は31万7千円だが、非正規は20万円で定期昇給もなく、
50代にいたれば約2倍の差になる(厚労省調べ)。
プランでは「賃金格差を縮める」との目標を立てたが、
格差をどのくらい是正するかという数値目標までは踏み込まなかった点が残念だ。
(昨日の風 今日の風№39) (2016.2.12記)