原発事故の費用 何処で負担するのか
膨らむ原発事故費用
事故処理費用の推移
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総費用 |
中間貯蔵施設 |
除染 |
廃炉 |
賠償 |
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2011 年 事故発生 |
6 兆円 |
※ |
※ |
1兆円 |
5兆円 |
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2013 中間貯蔵施設に国費投入決定 |
11 兆円 |
1.1兆円 |
2.5兆円 |
2 |
5.4 |
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2016 新電力負担決定 |
21.5兆円 |
1.6 |
4 |
8 |
7.9 |
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2020 デブリ取り出し開始 |
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2030~ デブリ取り出し完了 |
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2060 国民の費用負担(ツケ回し)終わる |
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原発事故の(処理)費用は総費用で
6兆円➡11兆円➡21兆円
処理費用は事故発生から5年で総費用で4倍弱にまで膨張しています。
特に廃炉費用はなんと事故当初の8倍の8兆円にも膨らんでいます。
デブリ取り出し開始から完了までに、10年以上かかると考えられています。
(デブリとは、メルトダウンした核燃料を核燃料容器から取り出す作業ですが、
今度のメルトダウンで核燃料は圧力容器や格納容器を貫通してと思われているので、
デブリ完了までにはもっと多くの時間が必要かと思われます)
廃炉に関しては、未経験で原子炉格納容器の中がどうなっているのか予測が尽きません。
放射能の極めて高い内部で、技術的にも改変していかなければ手の施しようがない状態です。
廃炉作業員の被曝の問題も含め、難題山積です。
見積もりを立てるたびにどんどん膨張していく事故(処理)費用は何処で負担するのでしょうか
事故処理費用は何処で負担するのか
21.5兆円の費用負担は次のようになります。
中間貯蔵施設 ➡ 税金を投入
除 染 ➡ 国保有の東電株の売却益を充当
廃 炉 ➡ 東電が負担
賠 償 ➡ 新電力も一部を負担する。国民負担は月額18円。
賠 償
注目して欲しいのは『賠償』です。
追加分の2.5兆円は2020年から2059年まで
40年かけて送電線の利用料に上乗せするというものです。
送電線は大手だけでなく電力自由化で参入した、
原発を持たない新電力にも負担の義務を負わせる。
従って、電力消費者は契約先に関係なく、
月平均で18円の負担が課せられることになります。
これは、実質上の電気料金の値上げではないでしょうか。
(システムには経産省の理由付けがあるのですが、ここでは割愛します)。
事故前までの電気代は事故対応費を含まず、国民は安い電気を使ってきた。
その間に集め損ねた事故対応費の分をこれから
国民に2020年から40年かけて払ってもらう(朝日編集委員・上田俊英)
原発事故の2011年に生まれた人は、このとき50歳目前です。
自分たちが生まれた年に起こった原発事故の責任をなぜ私たちの世代が負わなければならないのか。
原発コストは他の電気エネルギーと比べて安いと政府は、公言してはばからないが、
本当にそうなのでしょうか。
世代間で継承し良いのは、次の世代に引き渡してもきちんと説明のつく施策です。
負の遺産はその世代で解消し、後の世代に継承しない。
施政者のそして私たちの戒めとしなければならないことではないでしょうか。
これまで見てきたように、原発事故の費用負担は、未来の世代にまで負担を強いる。
高速炉の実証炉の建設も、今の子どもたちの世代が負っていきます。
使用済み核燃料から出る「高レベル放射性廃棄物」は、
10万年もその危険と向き合わなければならず、
現在、その隔離方法さえ確立されていない。
私たちはこんな危険な得体のしれないものを発明し、手なずけようとしている。
それはあたかも、科学者のフランケンシュタインが作り出した「怪物」のように一人歩きし、
どうにも手におえないものを、私たちは手なずけているようにも見える。
プロメテウスの火にならないように、私たちは次の世代に、
「昔こんなことがあった」と説明できる大人として責任を持ちたい。
(2017.01.12記)