雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

栄光と屈辱の箱根駅伝 ② 復路 逆転の駒大 涙の創価大

2021-01-10 06:30:00 | 昨日の風 今日の風

栄光と屈辱の箱根駅伝 ②復路 逆転の駒大 涙の創価大
     3日午前8時、熱い一夜が明け復路のレースが始まった。
 往路のタイム差に従って芦ノ湖駐車場入り口をスタート。
 復路の5区間・109.9㌔を東京・大手町の読売新聞社前のゴールを目指す。
 
 トップ争いは最大の関心の的だが、
 シード権争いも熾烈なレース争いの中で繰り広げられる見どころである。
 往路フィニッシュタイムからレースの争点を見てみよう。
 ➉拓大5時間35分1秒 
 これを追う⑪早大なんとしてもシード権を獲得したい、5時間35分12秒
 拓大との差11秒。
 早大のあとを追いかけるのは⑫青学大、5時間35分43分で早大との差31秒
 ⑬城西大、5時間35分44秒で青学大との差1秒。
 波乱含みのシード権争いである。 
 
 一斉スタートはトップとの差が10分以上あるチームで、18位山梨学院大、
  19位中大、20位専大、関東学生連合である。
 
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、
 沿道での観戦自粛を呼びかけられた箱根駅伝復路のスタートの旗が振られた。

 追う駒大 逃げる創価大。
 このまま創価大が逃げ切ることができれば、
 
初出場からたった6年で初優勝を勝ち取ることができる。
 緊張と重圧、孤独なアスリートはただひたすらゴールを目指し
 トップを維持しようと10区最終ランナー創価大・小野寺勇樹は懸命に走る。
 追う駒大10区最終ランナーは石川拓慎だ。
 
 9区終了時点でトップの創価大と駒大の差は3分19秒。
 戦後、最終10区でこの差を逆転した例はない。
 観戦者の多くが創価大の復路優勝を予想し、駒大の逆転は絶望的に見えた。
 創価大の榎木監督は次のようにレースを振り返る。
 「(10区の)10㌔ぐらいまでは、先着できると思っていた」
 
 だが、駒大・大八木監督は希望を捨てなかった。
 絶望的なトップとの差を走る石川に檄を飛ばした。
 「いいぞ、おまえ! 本当にいいぞ! いいか、ここだ、ここからだ!」
 
 15㌔過ぎぐらいだったろうか、創価大・最終ランナー小野寺のフォームが崩れた。
   正確に一歩一歩大地をけっていたリズムが乱れた。
 ピッチが数センチいや数ミリずれている。
 わずかなピッチの乱れが小野寺の不調を物語っている。
 それはそのまま心の乱れへと連鎖し、アスリート小野寺の体力を消耗していく。
 肩がわずかに揺れ、口角が下がり、視点が左右に揺れる。
 数メートル先を見つめる揺れる視点は、やがて本人の意思と無関係に少しずつ上向きになっていく。 

 駒大・大八木監督は勝機を逃さなかった。
 運営管理車に乗った大八木監督の檄はその激しさを弛めず、活を入れ続けた。
 レース後石川はこの時の気持ちをこう語っている。
 「力になるのはもちろん、スイッチをオンにしてくれた」
 石川は更にピッチを上げる。
 20.9㌔付近、この日初めてトップを走る小野寺の背中を捉えることができた。
 肩が揺らぎ、背中が波打っている。
 「行ける!」
 石川の柔らかくスナップのきく足首が躍動し、鍛えたふくらはぎの筋肉を駆けあがり、
 太腿を伝い、骨盤へと熱いエネルギーに変換されて行く。
   石川は一気に拓大・小野寺を抜き去った。
  
 2008年を最後に総合優勝から遠ざかっていた駒大は残り2.1㌔で逆転し、
 13年ぶり7度目の総合優勝を勝ち取った。記録は10時間56分4秒。
 2年連続でアンカーを務めた石川拓慎(3年
)に、
 積み重ねた過酷な練習の日々がなつかしくよみがえってきた。
                     (日刊スポーツから転載)

 総合成績                 復路成績
   ① 駒 大 10時間56分4秒        ① 青学大 5時間25分33秒
   ② 創価大  〃 56分56秒         ② 駒 大  〃     35秒
   ③ 東洋大 11時間0分56秒                ③ 中央大  〃   28分39秒
   ④ 青学大  〃 1分16秒                              ④ 早 大  〃   47秒
                        ⑤ 創価大  〃   48秒

  大会余話
    10区の最大逆転とゴール直前逆転優勝はいずれも1920年の第一回大会。
    東京高等師範学校
(現筑波大)の茂木善作は明大の西岡吉平から11分30秒差で
    鶴見中継所をスタートした。「箱根駅伝70年史」によると、茂木が猛追し
    残り約1㌔の新橋で西岡に追いついた。ゴール手前約700㍍で茂木が抜け出し、
    ゴール。箱根駅伝はいきなり劇的な逆転劇で、その歴史が始まった。
    (スポーツ報知 2021.1.4記事から転載)

                                      (おわり)
          (2021.1.9記)             (昨日の風 今日の風№115)

 

 

 

 

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