読書案内「火垂るの墓」野坂昭如著
(1) 多彩な顔を持つ表現者・野坂昭如
12月9日、野坂昭如氏が死去した。2003年脳こうそくで倒れ、活動の範囲はかなり狭くなったが、新聞や雑誌などに寄稿された彼の文を読むことで、健在ぶりを知っていた。享年85歳。
彼ほどたくさんの顔を持った表現者も稀だ。
作家、編集者、作詞家、歌手等活動の範囲は多岐に渡っていた。
また、焼け跡闇市派、無頼派、黒メガネのプレイボーイを名乗り、
映画監督の大島渚の結婚30周年記念パーティーでは、
主催者の大島渚を殴り、殴り合いのけんかをした。
金権政治を批判し、旧新潟三区から衆院選に立候補(落選)等、
話題には事欠かなかったが、「反戦」「反権力」の姿勢は、最後まで貫き通した。
体表作でアニメにもなった「火垂るの墓」では、
終戦間際の戦争の中で必死に生き、死んでいった少女と少年の物語を描き、
「アメリカひじき」や「エロ事師たち」、「受胎旅行」、「骨我身峠死人葛」など句読点の少ない、
長いセンテンスの文章でユーモアとアイロニー、エロティックを盛り込んだ小説で、発表当時多くの読者を獲得した。
写真は1968(昭和43)年刊行の本、当時780円だったが、現在5000円ほどの高値である。
(明日へ続く) (2015.12.21記)
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