この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

映画『ガタカ』、最終考察リターンズ、その6。

2018-08-04 18:25:35 | 旧作映画
 ヴィンセントは宇宙で死ぬということを前提に話を進めてきましたが、そのことに抵抗がある人がいるかもしれません。
 30年で寿命が尽きるという医者の予言に抗って、なお生き続けていたヴィンセントですから、宇宙での一年間のミッションを終え、地球に無事生還する可能性もゼロではないかもしれません。
 もしかしたら宇宙空間の無重力が彼の心臓によい影響を与えるかもしれないですしね。

 しかし仮にヴィンセントが地球に生還することがあったとしても、英雄として、つまり困難なミッションをクリアした宇宙飛行士として生還する可能性は限りなくゼロに近かったであろうと自分は考えます。
 なぜなら彼には心臓の障害の他にもう一つ、強度の近眼という身体的問題がありましたから。

 プライヴェートな空間がほぼないであろうと想像される宇宙船内において、コンタクトレンズなしにはほとんど物が見えないほど近眼である人間がそのことをどれぐらいの期間隠し通せるものなのでしょうか?
 一日だけであればそれほど難しくはないでしょう。
 一週間ぐらいなら隠し通せるかもしれません。
 一ヶ月となると相当難しいと思います。
 一年は、さすがに無理でしょう。
 どんなに慎重に行動していたとしてもコンタクトレンズは24時間つけっぱなしに出来るものではありませんから。必ずメンテナンスをしなければいけません。
 でなければ作中ヴィンセントが眼鏡をかける必要はないはずです。
 それにコンタクトレンズは装着時のトラブルも多いですよね。
 一年間の間ヴィンセントの身にそういったトラブルが一切起こらなかった、とはちょっと考えられません。

 つまり、宇宙に旅立ったヴィンセントには結末は二つしか用意されていなかったのですよ。
 一つ目は、過酷なミッションに耐え切れず、心臓発作を起こし、宇宙で亡くなるというもの。
 もう一つは心臓発作こそ起こさなかったものの、過酷なミッションの最中に強度の近眼であることがバレ、DNA詐称の重大犯罪人として地球に帰還するというもの。
 どちらの結末が好みですか?と尋ねるのは些か意地悪すぎる質問でしょうか。

 次回はジェロームの立場に立ってもう一度物語を見直してみたいと思います。


                                          続く。
コメント
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