道新 2021/3/7
放水で放射性物質抑制「不可能」 原発テロ対策 疑念次々 専門家が指摘:北海道新聞 どうしん電子版 (hokkaido-np.co.jp)
福島第1原発事故を踏まえて策定された原発の新規制基準で義務付けられたテロ対策について、原発の安全性を保つには不十分との指摘が専門家から出ている。原子力規制庁は、航空機などの衝突で原子炉格納容器が損壊し放射性物質が外部に漏れても放水で「拡散を抑制する」と強調。これに対し、放水で防ぐのは「非現実的」だとして、現行の基準のまま再稼働が進む現状に警鐘を鳴らす。
テロ対策の柱として設置が定められたのは「特定重大事故等対処施設」(特重施設)。航空機やミサイルなどによる大規模テロを受け建屋や格納容器が損壊した場合、遠隔操作で冷却し続けるため原子炉建屋から100メートル以上離れた場所に制御室や注水ポンプなどの配備が求められている。
規制庁によると、格納容器が壊れた場合は、持ち運びできる大容量の消防ポンプから放水し、大気中への放射性物質の拡散を防ぐという。安全性審査では、航空機の重さや進入速度、衝突時の火災などから原子炉建屋がどのような条件下で損傷するかを評価するが、「原子炉建屋が壊れないようにするための増強工事は、原発事業者に求めていない」(実用炉審査部門)。
これに対し、石油精製プラントの元設計者で、原子力市民委員会原子力規制部会長も務めた筒井哲郎さん(79)は「たき火から飛散する火の粉を『水鉄砲』で洗い落とそうとするようなものだ」と効果を疑問視。広範囲に浮遊する放射性物質を、棒状に水を放つ放水砲を使って落とすことは「現実的に不可能」と話す。
元東芝の原子炉格納容器設計者の後藤政志さん(71)も、そもそも建屋や格納容器などが壊されることを前提とした対策であることを問題視。航空機を故意に衝突させるテロに対し、一定の条件下での安全性を評価しても意味がないとした上で、「どんな条件でも建屋が壊れないようにする評価や対策をすべきだ。『テロの可能性は低い』と想定外を許すなら、福島原発事故で分かった安全神話と何も変わらない」と基準見直しを訴える。特重施設の審査は非公開で行われ、九州電力、関西電力、四国電力の計12基の原発で特重施設の許可が出ている。
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