今日の北海道新聞3夕刊に以下の記事が載ったので少し調べてみました。
米メディア、日本は弱点を無視 強く批判 「安全性確保を先送り」北海道新聞3/26夕刊
前略
2006年に原発の新耐震指針を制定したのを受けて耐震性評価のための専門家委員会が09年6月に開かれた。その席で地質学の専門家である独立行政法人「産業技術総合研究所」(茨城県つくば市)活断層・地震研究センターの岡村行信センター長が、869年に三陸沖を震源とする貞観(じょうがん)地震が発生した際、大津波が仙台以南にも押し寄せたと指摘した。 同委員会はこの会合の直近にまとめた中間報告で、福島県沖で1938年(昭和13年)に起きた塩屋崎沖地震を津波の想定として設定、貞観地震に触れていなかった。これに岡村氏が疑問を呈し、想定の変更を繰り返し求めたが、保安院や東電は今後の検討課題として先送りした。
中略
記事では、地震や津波に備え、電力を必要としない「非常用復水器」という原子炉冷却装置が必要との技術者の指摘があったにもかかわらず、「(政府や東電には)現在の原子炉に新たな安全装置を取り付けるという議論はほとんどなかった」という諸葛(もろくず)宗男・東大公共政策大学院特任教授(原子力政策)の話を引用。日本政府や東電を「問題を(現在ではなく)将来の原子炉で解決することに熱心だった」と批判した。
こんな事を、外国の報道で知る情けなさ!!
このやり取りからも伺えます。
総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会 耐震・構造設計小委員会
地震・津波、地質・地盤合同ワーキンググループ(WG)(第32回)平成21年6月24日
以下の配布資料に基づき議論したものと考えられます。
耐震設計審査指針の改訂に伴う東京電力株式会社福島第二原子力発電所4号機耐震安全性に係る中間報告の評価について 原子力安全・保安院
耐震設計審査指針の改訂に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所5号機耐震安全性に係る中間報告の評価について 原子力安全・保安院
この議事録 の関係部分を抜書きした。
16、17ページ
岡村委員
まず、プレート間地震ですけれども、1930年代の塩屋崎沖地震を考慮されているんですが、御存じだと思いますが、ここは貞観の津波というか貞観の地震というものがあって、西暦869年でしたか、少なくとも津波に関しては、塩屋崎沖地震とは全く比べ物にならない非常にでかいものが来ているということはもうわかっていて、その調査結果も出ていると思うんですが、それに全く触れられていないところはどうしてなのかということをお聴きしたいんです。
○東京電力(西村) 貞観の地震について、まず地震動の観点から申しますと、まず、被害がそれほど見当たらないということが1点あると思います。あと、規模としては、今回、同時活動を審議会委員からのコメントを考慮した場合の塩屋崎沖地震でマグニチュード7.9相当ということになるわけですけれども、地震動評価上は、こういったことで検討するということで問題ないかと考えてございます。
○岡村委員 被害がないというのは、どういう根拠に基づいているのでしょうか。少なくともその記述が、信頼できる記述というのは日本三大実録だけだと思うんですよ。それには城が壊れたという記述があるんですよね。だから、そんなに被害が少なかったという判断をする材料はないのではないかと思うんですが。
○東京電力(西村) 済みません、ちょっと言葉が断定的過ぎたかもしれません。御案内のように、歴史地震ということもありますので、今後こういったことがどうであるかということについては、研究的には課題としてとらえるべきだと思っていますが、耐震設計上考慮する地震ということで、福島地点の地震動を考える際には、塩屋崎沖地震で代表できると考えたということでございます。
○岡村委員 どうしてそうなるのかはよくわからないんですけれども、少なくとも津波堆積物は常磐海岸にも来ているんですよね。かなり入っているというのは、もう既に産総研の調査でも、それから、今日は来ておられませんけれども、東北大の調査でもわかっている。ですから、震源域としては、仙台の方だけではなくて、南までかなり来ているということを想定する必要はあるだろう、そういう情報はあると思うんですよね。そのことについて全く触れられていないのは、どうも私は納得できないんです。
○名倉安全審査官 事務局の方から答えさせていただきます。
産総研の佐竹さんの知見等が出ておりますので、当然、津波に関しては、距離があったとしても影響が大きいと。もう少し北側だと思いますけれども。地震動評価上の影響につきましては、スペクトル評価式等によりまして、距離を現状の知見で設定したところでどこら辺かということで設定しなければいけないのですけれども、今ある知見で設定してどうかということで、敷地への影響については、事務局の方で確認させていただきたいと考えております。多分、距離的には、規模も含めた上でいくと、たしか影響はこちらの方が大きかったと私は思っていますので、そこら辺はちょっと事務局の方で確認させていただきたいと思います。あと、津波の件については、中間報告では、今提出されておりませんので評価しておりませんけれども、当然、そういった産総研の知見とか東北大学の知見がある、津波堆積物とかそういうことがありますので、津波については、貞観の地震についても踏まえた検討を当然して本報告に出してくると考えております。以上です。
29、30ページ
○岡村委員 先ほどの繰り返しになりますけれども、海溝型地震で、塩屋崎のマグニチュード7.36程度で、これで妥当だと判断すると断言してしまうのは、やはりまだ早いのではないか。少なくとも貞観の佐竹さんのモデルはマグニチュード8.5前後だったと思うんですね。想定波源域は少し海側というか遠かったかもしれませんが、やはりそれを無視することはできないだろうと。そのことに関して何か記述は必要だろうと思います。
ここまで念押ししています。更に
(第33回)ワーキンググループ会合議事概要
平成21年7月13日付 東京電力株式会社 提出資料
16ページ
869年貞観の地震による影響に関するまとめ
■869年貞観の地震が福島サイト基準地震動Ssに及ぼす影響について検討を行った。
●「日本被害地震総覧」による諸元を用いた場合,
・M-Δ図による震度はⅣ~Ⅴ程度であり,塩屋崎沖の地震③と比較し
て同程度以下。
・耐専スペクトルによる評価結果は,諸元の中央値を用いた場合,短周
期側の主要な周期帯で塩屋崎沖の地震②,同③を下回っており,諸元
の幅を考慮した場合も,不確かさとして考慮している仮想塩屋崎沖の
地震(①~③同時活動)を下回っている。→策定した基準地震動Ss-1を下回る。
●佐竹ほか(2008)による波源モデルを震源断層と仮定した場合,
・耐専スペクトルによる評価結果は仮想塩屋崎沖の地震と同程度あるい
は少し上回るものの,策定した基準地震動Ss-1を下回る。
■869年貞観の地震については,今後も引き続き知見の収集に努め,適宜必要な検討を行っていく所存。
要は「今後考えていきます」と簡単に無視! 原子力安全・保安院もこれを追認したということです。
対策を考えることだけでもしておけば、こんなに後手後手にはならなかったはず!!
想定外の天災ではなく、明らかに人災だろう。
貞観地震とは
東北地方太平洋沖地震 西暦869年貞観地震に伴う津波の研究
独立行政法人 産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター
平安の人が見た巨大津波を再現する-西暦869年貞観津波- 独立行政法人 産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター
津波災害は繰り返す 陸奥国府を襲った貞観年津波 東北大学大学院理学研究科教授 箕浦 幸治
広域連動、想定せず 869年「貞観地震」タイプか
【東北・太平洋沿岸地震】
今回のマグニチュード(M)8・8の地震は、岩手県沖から茨城県沖の震源域が連動したとみられ、専門家は「ここまで広い範囲で連動して起きるとは想定していなかった」と、研究や対策の対象にしていなかったと話す。869年に発生した「貞観地震」と震源域が近く、似たタイプの可能性があるという。
理科年表によると、貞観地震は三陸沖を震源とするM8・3の巨大地震。城郭などが無数に壊れ、津波が多賀城下を襲い、約千人が溺死した。古村孝志・東京大地震研究所教授によると、貞観地震の震源域と考えられる範囲は、今回の地震の発生場所に近い。
古村教授によると、30数年周期で繰り返し発生すると想定されていた宮城県沖地震はM7・5クラス。今回はその約90倍のエネルギーだ。連動して起きる地震としては、東海、東南海、南海の研究が進められている。