ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

夏空

2021-02-21 18:09:44 | 
空から届く灼熱の光線
アスファルトからこみ上げる不快な空気
早くも向日葵はうなだれている
僕は気休めに思い出す
美しすぎた頃の海を

夢を見るには遅すぎても
枯れてしまうにはまだ早く
「折れていても花を」という教師の言葉を遠くに聞く
都合のいい幻音を流しながら
果てのない夏空を恨めしげに見たら
案外可愛い顔してた
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日記帳

2021-02-21 17:57:42 | 
梅雨の合間の
履き古したジーンズのような空から
降ってくる焼け付く光
離れてた雲が慌てて寄り添い
まだ少し早かろうと太陽を睨む

季節が積み重なってゆくのは
許されているようで逃れられず
逃れられないようで許されている
つかみどころのない流れもの

だから人は数字でくくり
日々の生活を具体的にしている
曜日までつけてめり張ってみせる

僕の心にある日記帳は色あせて
ところどころ抜け落ちてペラペラだ
読み返す価値もないだろう
それでも生きた証に違いない
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鼠空

2021-02-21 16:13:56 | 
「もう一度、立ち上がりなさい」
そう言い残し、あなたは足早に立ち去った
凛とした眼差しにかすかな憂いを含んでいた
貴方の残像を思い起こし、僕は立ち上がろうとする

立ち上がったはいいが、どこへ歩けばいいのかわからない
下手に歩き出し、目的地から遠ざかる結末を恐れる
回り道している時間はもう残されていない
太陽を地図にすればいいと空を見上げ
うんざりの鼠空にため息を漏らす

生温い雫が掌に落ちた
雨が落ちたのか
知らずに零れた涙か
人は生きる苦しさに並び立つ喜びを探し旅をする
今日こそは見つかるよと励ましながら
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何と例えればいいのだろう

2021-02-21 15:00:03 | 
その美しさを何と例えればいいのだろう
ふさわしい言葉を見つけるのが難しい
遠い昔、小学校の苦手科目の宿題のよう
それでも間違い覚悟でひねり出す
霞の空の向こうにぼんやりと透ける真実

その強さを何と例えればいいのだろう
ふさわしい言葉を見つけるのが難しい
遠い昔、迷子になった時の五差路のよう
それでも間違い覚悟でひねり出す
容易に開けられても決して動かすことはできない巨大な冷蔵庫

その哀しさを何と例えればいいのだろう
ふさわしい言葉を見つけるのが難しい
遠い昔、夏祭りですくい上げた金魚の飼育のよう
それでも間違い覚悟でひねり出す
訳も分からず檻に入れられた人たちの媚びた笑顔
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眠り海

2021-02-21 13:10:31 | 
君の最後の言葉は何だったかな
あまりに突然の別れだったから
何気なく聞き流した言葉を探そうとする
無駄な試みと分かっていても

日々の生活や努力を積み重ねても
巨大な力を前にしては
なす術もなく

太陽の邪魔をする雲はない
美しく孤独な青い空
海が穏やかに輝く
眠りにつき、小さな寝息を立てているよう

楽しくて笑顔が絶えない人生も
苦しくて心を支えきれない人生も
等しく意味がある

長く生き延びた命も
幼く散った命も
等しく価値がある

君に会いに行くよ
いつか会いに行くよ
何処にいるかは知っているから
あのちっぽけな物語の続きをしよう
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年末

2021-02-21 12:50:26 | 
暮れてゆく
暮れてゆく
今年もまた暮れてゆく
来年の話をしても鬼は真顔だ
たまに寂しげに微笑むだけ

当然の権利のように苦しみや悲しみは降り積もり
その上を孤独が土足で歩いてゆく
生きてゆこうとするならば
もうこれらの解決の糸口はない
僕の死とともに一緒に消えるだけ
その時、この世界に残せるものはあるだろうか
あるとすれば、これまで降り積もった物のひとかけらを光に変換する魔法

今年もあと三日か
地層に組み込まれる世界中の数えきれない小さな物語たち
さよなら
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何もかも解らなくなってしまった

2021-02-21 10:06:35 | 
僕は大の字にうつぶせになり、地球を抱いてみた
鼓動は僕か、地球の鼓動か
このまま、土に帰ろうか
地球よ、世界よ、俺は何でこんな心の形で存在してしまったんだ

時々、冒険して死の恐怖を存分に味わい、鼓動が速くなり、苦しい。
死にたくないと願う
そこから逃れ、しばらくして、ぼやぼやと浮かび上がるのは
遅かれ早かれ死ねるという安堵

解らない
生きたいのか死にたいのかそれさえ
もう、何もかも解らない
 
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夏祭りの色

2021-02-21 09:49:06 | 

長きにわたる曇天を掻き分け、太陽が顔を出し、大声を張り上げる
冷房を入れても、喉は冷たいものを欲しがり
僕は自分で補充した自販機で冷えた缶コーヒーを買う

7時を過ぎてもまだ明るさが残っている
僕は店を閉め、歩いてドラッグストアに向かう
途中、微妙な距離感で踏切が鳴り始めた
降りてくる遮断機を見ながら、僕は走り出し、軽く背を丸めてくぐった

走って生きてた遠い昔を思い出していた
彼から見たいまの僕は、どう評価されるのかな
そんな蔑むような眼を向けないで欲しい
哀れむような眼もいらない
君の言いたいことはわかるよ
それでも僕は、まだこの世にしがみついているんだ

彼方で響く太鼓の音
着物のおばさんのグループとすれ違い、後ろから少女たちの楽しげな声が聞こえた
僕は少しだけ長い瞬きをした
遠い夏祭りの色が映った

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