平和がなくなれば戦争もなくなる
平和主義者が声高に叫べば戦争は流行る
戦争が激しくなればなるほど、人々は平和を渇望する
平和と戦争は真実の海底で絡まりあっているんだ
平和が必要である限り、戦争はなくならない
平和という文字が消えた時、戦争はすでに滅びている
冬のトラウマのような雪がまだ色濃い春
強い風に包まれながら、急な温かさに戸惑う春
目に明るく、軽い装いを楽しむ春
頬杖つく春
生活用品の買いだめに余念のない春
いまから梅雨を恐れる春
自らのぼやけた空気を嫌い、凛とした秋の姿にあこがれる春
あと何度、春を迎えられるだろうと想う春
春が眩しく笑った
春が美しく咲いた
春が高らかに飛び立った
春が卒業した
春がくしゃみした
春が夕暮れに焼けて、明日の晴れを約束した
様々な場所に様々な春
到底数え切れるものではない
毎年、春たちは「知恵を出し合えばきっとより良い春が生まれるはず」と誓い合う
その議論の果てに湿度と高温に溶かされ消えてゆく
強い風に包まれながら、急な温かさに戸惑う春
目に明るく、軽い装いを楽しむ春
頬杖つく春
生活用品の買いだめに余念のない春
いまから梅雨を恐れる春
自らのぼやけた空気を嫌い、凛とした秋の姿にあこがれる春
あと何度、春を迎えられるだろうと想う春
春が眩しく笑った
春が美しく咲いた
春が高らかに飛び立った
春が卒業した
春がくしゃみした
春が夕暮れに焼けて、明日の晴れを約束した
様々な場所に様々な春
到底数え切れるものではない
毎年、春たちは「知恵を出し合えばきっとより良い春が生まれるはず」と誓い合う
その議論の果てに湿度と高温に溶かされ消えてゆく
アリバイ作りの仕事を終えて
とぼとぼと暗闇の家に到達する
文明の光を点けても
僕は暗闇のまま
リモコンを押せば
キャスターたちが「今は経済よりも命が優先です」と善人面
ひねた心が疼き、テレビを消した
静寂の部屋の隅で僕は凍える
それにしては今日の雨は温かかった
もう春なんだね
とぼとぼと暗闇の家に到達する
文明の光を点けても
僕は暗闇のまま
リモコンを押せば
キャスターたちが「今は経済よりも命が優先です」と善人面
ひねた心が疼き、テレビを消した
静寂の部屋の隅で僕は凍える
それにしては今日の雨は温かかった
もう春なんだね
季節は巡るから幸せだ
秋から冬へ、それを凌げば春が来る
しかし生き物は、いや人生といった方が適切か
春夏秋冬の先には死があるのみだ
二度と春を迎えることはない
冬を生きる人々は口にする
「春に雷に打たれた後遺症が残って」
「夏に家族が蒸発して」
「実りの秋にうまい話に釣られてしまって」
冬の人は諦めきれない過ぎた季節を振り返る
雪山の奥深く、瞼が重たそうな顔をして
来世のお守りを抱えながら
秋から冬へ、それを凌げば春が来る
しかし生き物は、いや人生といった方が適切か
春夏秋冬の先には死があるのみだ
二度と春を迎えることはない
冬を生きる人々は口にする
「春に雷に打たれた後遺症が残って」
「夏に家族が蒸発して」
「実りの秋にうまい話に釣られてしまって」
冬の人は諦めきれない過ぎた季節を振り返る
雪山の奥深く、瞼が重たそうな顔をして
来世のお守りを抱えながら
人に人の気持ちは分からない
その能力は与えられなかった
だから知らず知らずに他者を深く傷つける
僕や君の努力、そして苦しみ、悲しみが分かるのは
見上げた空であったり
踏みつけられた大地であったり
僕らを包む街であったり
寂れた壁であったり
使い古した時計であったり
もうこの世にいない人であったり
決して言葉を発しないものだけ
だから僕は空や地や街に
或いは壁や時計や亡き人に
辛うじて生かされているのだ
その能力は与えられなかった
だから知らず知らずに他者を深く傷つける
僕や君の努力、そして苦しみ、悲しみが分かるのは
見上げた空であったり
踏みつけられた大地であったり
僕らを包む街であったり
寂れた壁であったり
使い古した時計であったり
もうこの世にいない人であったり
決して言葉を発しないものだけ
だから僕は空や地や街に
或いは壁や時計や亡き人に
辛うじて生かされているのだ
太宰がリストカット少女に声をかける
「君、よろしければゴマフアザラシのタマちゃんを探しに行かないか?
川深く入っていけば見つかるかもしれない」
神宮外苑で風のように走る青年
短髪で背筋を伸ばし、寂しそうな顔をしていた
背中は一瞬にして小さくなった
セーラー服姿の女子高生がニコリともせずヨーヨーを楽しんでいる
随分、幼稚な娘だ
それにしてもスカートの丈がかなり長い
ペナントを終えた甲子園は物思いにふけっている
死んだ子の年を数えてみたり
大きな少年の金属音を再現したり
「聡ちゃん、遊ぼうよ」
友人たちの誘いに耳を貸さず、懸命に走る大きなランドセル
男の子は勢いよく81マスの海に飛び込んだ
「君、よろしければゴマフアザラシのタマちゃんを探しに行かないか?
川深く入っていけば見つかるかもしれない」
神宮外苑で風のように走る青年
短髪で背筋を伸ばし、寂しそうな顔をしていた
背中は一瞬にして小さくなった
セーラー服姿の女子高生がニコリともせずヨーヨーを楽しんでいる
随分、幼稚な娘だ
それにしてもスカートの丈がかなり長い
ペナントを終えた甲子園は物思いにふけっている
死んだ子の年を数えてみたり
大きな少年の金属音を再現したり
「聡ちゃん、遊ぼうよ」
友人たちの誘いに耳を貸さず、懸命に走る大きなランドセル
男の子は勢いよく81マスの海に飛び込んだ
生きる過酷さ知り尽くしても
どんな意味があるのだろう
振り返る仕草
フタされた未来
もう二度と開かない
男なら涙見せずに
何度でも立ち上がれ
懐かしい声が風に揺られて小さく聞こえた
まさかの道をとぼとぼ歩き続けるうちに
美しいものはただ汚れていき
陽は傾いて弱まった
足を止めることが多くなり
目を閉じることが多くなり
コンクリートに寝転がる欲求のみが強くなっていく