ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

転がる蝉

2021-02-09 21:51:32 | 

アスファルトの真ん中で
仰向けで動かない蝉
それは真夏の死の表現者

美しい人はいる
美しい人間はいるだろう
美しい人生はあるのだろうか
真夏の死の表現者よ、教えてほしい

この世に幸せはあるだろうか
おそらくないと僕は思う
探せば探すほど絶望するだけ
そして最後に訪れる死の苦しみ
その後の話だろう幸せは

仰向けに転がる蝉は
あの世で幸せを手に入れ
この世で真夏の死の表現者となった
君は偉大だ

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化石の世界

2021-02-09 18:20:31 | 
遠いジーンズがひと夏を駆ける
僕はうつむきながら少しだけ笑う
いつか彼にも訪れるのだろう
生きる難しさを思う日が

街の憤りや息苦しさを包むような黄昏
僕は少しだけ足を緩める
いつか人は今日を忘れるだろう
巻き戻しの利かない交差点で

前を向くことに絶望し
さりとて今を生き抜くのも疲れ果て
僕は少しだけ立ち止まり、期待して振り向く
建ち並ぶ化石の家々、人々、ありとあらゆる風景
強い光を浴び、それらは白々とスカスカに輝いていた
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この土を掘り起こせば

2021-02-09 14:25:00 | 
この土の中を掘り起こせば、色々なものが出るだろう
骨となったペットや
15年前の未来への手紙や
揺りかごで眠る赤ん坊の穏やかな寝息が

さらに掘り続ければ、やがて出会うだろう
江戸庶民の語らいや
戦国足軽の嗚咽や
平安貴族の熱血に
耳を澄ませば聞こえてくるのだ
語らいや嗚咽や熱血が

さらに奥へ耳を凝らせば、かすかに聞こえてくる
大仏建立のための人々の息遣いや
高床式倉庫開発までの企画会議や
縄文土器職人の寡黙が
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か弱き抵抗

2021-02-09 13:15:31 | 
天使の嘆きという名の酒場を出て、外気に触れる
足元をふらつかせ、虐げられた街を彷徨う

帰る家が無い訳ではないけど
ベッドに横たわれば、すぐ朝がやってくる
明日という日は見えないから怖いよ

路上深夜に座り込み、「まだこの夜が明けないように」と祈りを捧げる
いやいや生きた今日をこんなにも愛していたなんて
だから明日に対してか弱き抵抗を試みているんだ

大きな力に運ばれることは分かっているよ
それでも路上に寝転び、身を挺して世界を止めてみたいんだ
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ことば病院

2021-02-09 10:56:46 | 
絞り出された言葉がおかしい
だから言葉をピンセットでつまんだ
「あ」が歪んでる。「ら」が震えてる
もう病院へ行くしかない

手土産に少々の薬をもらう
震えを止める薬、歪みを正す薬
それを病的な言葉たちに塗りこむ
わずかな回復ともいえない回復

薬がなくなり、また病院へ行った
そこで目にしたのは、リハビリに励む言葉たち
外は雨が強く地を叩いていた
言葉たちのうめき声をかき消すように
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