ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

スギタル

2021-02-17 21:49:22 | 
朝日は軽過ぎて、ぷかぷか浮かんでいく
夕日は重過ぎて、じりじり沈んでいく

老人は多過ぎて、葬儀屋がニヤニヤしている
そのビルは高過ぎて、京都に怒られている
この部屋は狭過ぎて、閉所恐怖症の美しい蝶は出て行った

どうやら、スギタルのようだ
向こう側でオヨバザルが笑っている
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空の喫茶店

2021-02-17 18:07:43 | 
レンタルの雲のかけらに腰掛けて
温かなコーヒーを飲みながら新聞を手にしたら
少し雲椅子が傾いて
活字が紙面から滑り落ちてしまった

のっぺらぼうの新聞をパラパラとめくる
それなりに難しかったけど
言わんとしている事はおおよそ理解できた

コーヒーを飲み終え
少し頭が良くなった気がした上機嫌な僕は
釣りはいらないといった調子で
雲のかけらを空へ返した
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少年棋士とベテラン棋士

2021-02-17 14:36:39 | 

藤井聡太七段の111手目を見て
ベテラン棋士はしばらくして投了した
天才棋士の老獪な指しまわしにベテランは悔しさをにじませた
藤井の駒台に無造作に散らかる駒たちが彼が少年であることを物語るだけ
恒例のインタビューが始まり、藤井はいつもの様にはにかんで、小さく答える

質問がベテランに移った
半日以上盤上で火花を散らした疲労を浮かべながらベテランは言った
「3回りほど違うのかな。年甲斐もなく、今日は先手を持ちたいと思ってたんですがね」
振り駒はベテランの気持ちも知らず、藤井の先手を選んだ

「いや、完敗ですよ。長渕剛ですよ」
得意のギャグにも、敗れた勝負師の寂しさは染みついていた
そしてこうも続けた
「最近は成績もさっぱりでしたけど、藤井七段が現れて、また将棋が楽しくなった」
天才棋士の出現への闘志と感謝を素直に口にした

最後にもう一度「いや、完敗ですね、長渕さんですね」と独り言のように話した
その意味が解っているのかいないのか、藤井はベテランの言葉を穏やかに聞いていた

盤上を挟んだ二人の姿は引き止めたい思いを振り切って、手の届かない場所へ離れていく父と息子のようだった
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーー
藤井聡太王位棋聖が高校を自主退学しました。この時期にという声もあるでしょうが、秋から話し合いを進めていたようで、藤井君はずいぶん前に決断していますね。
 
まあ、学校教育というのは、大多数の普通の子を社会で通用する大人に育てる場所なので、天才との相性が悪いのは明確です。
それにしても久しぶりに藤井君らしさを見た思いです。芯の強さ、無類の負けず嫌い。勝負師として必要不可欠なものを彼は持っています。
 
立派な決断でした。天才には学歴は必要ありません。 
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死と生

2021-02-17 13:19:28 | 
仕事で富も名声も得て
笑顔の絶えない家族を持ち
よき友に恵まれ
長寿を全うして安らかに天国へ旅立つ
羨ましいほど薄っぺらい生

恥の多い生涯は送りたくないが
それは紛れない真実の生で
いつの日か同類相哀れんでみたい
この世かあの世か知らないけれど

桜の潔さを愛でながら
人間ドックは欠かさない
死にたいと願いながら生き続け
生きたいと願いながら死んでゆく
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さよならチョコレート

2021-02-17 09:43:26 | 
雲間からこぼれた光が春先の声を照らす
蕾たちが開花するタイミングにときめいている

時の薬は悲劇の人々を救えたのだろうか
地球の自転は彼らが立ち直るのを待ってくれない

学生たちは社会の歯車への坂道の途中で足を止め
しばし友との別れを惜しんでいる
ずっとその場にいることはできないと知りながら

さよならチョコレート
優しい言葉は全部君にあげる
もう僕には必要なくなった
そもそもが不要なものだった
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