ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

時よ

2021-02-18 18:35:30 | 
ためらうこともなく
急ぎ足になることもなく
時は潔く刻み続ける

過去からやってきた少女は
長い旅路を経て、鏡の前にたどり着いた
まもなく、彼女は自らの顔を両手で覆い、涙を流した

時よ、あなたなんだよ
少女に無残な落書きを加えたのは

あなたは美を創り、それを壊し
善を創り、それを壊し
悪を創り、またそれを壊していく

しかしあなたは潔く刻み続ける
ためらうこともなく
急ぎ足になることもなく
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時計

2021-02-18 16:07:54 | 
しのぎやすく、夜は秋の気配だ
自宅へ帰ると、時計の束縛を感じ
すぐに外す
左手首のみ白く保たれた肌は酷暑の痕跡

神は人が生まれてきた日、彼ら一人ひとりに時計を贈る
10年しか持たない時計もあれば、100年動くものもある
気まぐれに決めているのだろうか?

朝の公園で幼稚園にあがる前の子供が理由なく、駆け回っていた
若い母親が注意しても、止まる気配は微塵もない
彼の時計の針は有り余る力で1秒を刻む
懐かしくも彼に嫉妬する僕がいる

僕の時計はいつまで動くか、動いてくれるのか
針が義務感のみで刻んでくれているようだ
若い頃にはなかった時計への感謝の想い
「今日一日ご苦労さん。明日も頼むよ」と


もうすぐ百何十回目の新しい季節が巡ってくる
美しい、愛しい季節が巡ってくる
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遠い日の友へ

2021-02-18 14:51:00 | 
生まれて何十年も経てば、人間ボロボロになるね
僕も君もそれはもう見事なまでに

遠い遠いあの日、僕らは夢を語り合ったね
どうやら僕も君も壮大な嘘をついてしまったようだ

この先、苦しいことや辛いことがあるのは分かっている
むしろ、残りの人生のほとんどをそれらに覆い尽くされるだろう
ただ、そのわずかな隙間にささやかな幸せの侵食を期待する
僕らには顔を赤らめる言葉ではあるけれど
それを願う心が枯渇したら、人生の終わりを認めたも同然だから

夕暮れの美しさはあの頃と変わらないのに
僕らは夢を語り合う権利を失った
その資格があるのは瞬間の若葉たちだけ

僕は傷を深めながら進む。色をなくした道を
そして、ひたすら願う。どこかで君の笑顔がひっそりと咲いているよう
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シテイル

2021-02-18 13:10:24 | 
ぼんやりとしたカミソリ雲が空を征服している
女子高生が今が盛りと制服している

ビールをがぶ飲みしたサラリーマンが豚腹している
体調悪そうなOLが密かに頓服している

聖人君子に出会った村人が敬服している
悪人が拘置所で刑服している

ぼんやりした雲が限りなく黒に近い灰色になって
光の矢を放ち、怒声を浴びせ、大量の水を叩き落した
女子高生サラリーマンOLも
村人聖人悪人も
役立たずの傘を両手で握りしめたり、軒下で雨宿りしたり、逃げまどったり
皆、似たような格好をしている
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ショウワの空

2021-02-18 10:37:28 | 
秋の日、ショウワの空は青く澄んでいた
スタートラインに立つと、自らの鼓動が聞こえた
見渡せば日焼けした、最後の昭和少年たちの精悍な眼差し
負けたくなかった

夏の日、ペットショップでザリガニを買いに行く
泥にまみれて捕まえようとしても、手に入らない大きな大きなザリガニ
突然、ショウワの空が黒ずんだ
昼間なのにこんな黒い空見たことない
絵の具で間違えた色を選択された空
程なく雨は路面をたたきつけた
ずぶ濡れになりながら
ザリガニを無事に持ち帰ることだけを考え、ペダルを強くこいだ

放課後の帰り道、君と、君と、そして君と時間を忘れて話したね
いつしかショウワの空は橙色して僕らを大きく包んでいた
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