強い北風の吹いた日だった
木枯らしに乗って太平洋側から、トランプが飛んできた
落ち葉を掻き分け、それらを拾ってみる
カードの裏側にいろいろ書いてあった
「栗の季節はもう終わっただろ」
「奴が何も出来ないのはわかっている。でも、こうするよりほかになかった」
「万歳、アメリカ復権!」
トランプ勝利の報が流れた11月の夕暮れは急ぎ足で
世界の終わりのようでもあり
いつもと何ら変わらぬようでもあり
風に舞うトランプ
彼らはこれからさまざまな思惑に流され
舞い上がるのか、落下するのかも分からず
今はただただ、勝利の風に吹かれて、浮遊している
よき家に生まれ育ち
よき学びの場に進学し
よき職に就き
よき収入を得て
よき人に出会い
よき家庭を築き
よき親になる
優雅に流れるような、届きようもない幸福はいつも彼方にある
しかし思うのだ
山脈のように連なる悲運の狭間で、ひっそり佇んでいる細々とした光
それが僕にとっての幸福ではないかと
コイン3枚すべて裏目
もしかしたら人の幸運や不運は、こうした小さな積み重ねなのかもしれない
死は人生で最も大きな悲しみ、苦しみだろう
しかし、不運や悲運ではない
誰もが間違いなく経験すること
大病もたいていの人は経験する
不運とは言い切れない
しかし、コインが裏目に出ること
そしてそれが積み重なることは、不運ではないか?
1回、5回、10回、100回、1000回
すべて自分の願いと異なる世界が現れたら、どんな気持ちになるだろう?
盛況のうちにオリンピックが終われば、次はパラリンピック
街で障害者たちを見る人の眼は暖かいようで、冷徹なようで、同情しているようで
哀れみの感情で彼らを見つめる傲慢
もしかしたら人の幸運や不運は、こうした小さな積み重ねなのかもしれない
死は人生で最も大きな悲しみ、苦しみだろう
しかし、不運や悲運ではない
誰もが間違いなく経験すること
大病もたいていの人は経験する
不運とは言い切れない
しかし、コインが裏目に出ること
そしてそれが積み重なることは、不運ではないか?
1回、5回、10回、100回、1000回
すべて自分の願いと異なる世界が現れたら、どんな気持ちになるだろう?
盛況のうちにオリンピックが終われば、次はパラリンピック
街で障害者たちを見る人の眼は暖かいようで、冷徹なようで、同情しているようで
哀れみの感情で彼らを見つめる傲慢
哀れみの感情で見られるべきは彼らではなく
コインが裏目に出る性質の人たちなのだ
空のチャンネル変えたら
ザァーって音がして
瞬く間に悲しみの水位が高くなっていった
僕はそれを被りたくはない
ないけれど、どこへ避難する訳でもなく
避難場所も分からず
もし分かったとしても
そこから離れる気力もなく
いずれ、溢れるであろう悲しみの水位を
じっと見ていた
君は投げ時を探している棋士のような顔を浮かべているけど
終わりにするのはまだ少し早かろう
終わりにするのはまだ少し早かろう
君がパンを食べたくなるのは、体や心がまだ生きたいと叫んでいるから
瞼が重くなるのは、細胞が明日の生活に備えるために休息したいと訴えているから
宇宙の歴史から見れば、君の人生は紙ヒコーキのフライト時間と変わりない
どれだけ辛く苦しい時が長く続こうとも、そんなもんだよ
どんなに幸せな人であろうとも、その法則に変わりはない
所詮、紙ヒコーキのフライト
もう春がそこまで来ている
今年も桜はきっと咲くだろう
かつて希望と不安が交差した、君の大好きだった春が微笑みながら
もうそこまで歩み寄っているよ
瞼が重くなるのは、細胞が明日の生活に備えるために休息したいと訴えているから
宇宙の歴史から見れば、君の人生は紙ヒコーキのフライト時間と変わりない
どれだけ辛く苦しい時が長く続こうとも、そんなもんだよ
どんなに幸せな人であろうとも、その法則に変わりはない
所詮、紙ヒコーキのフライト
もう春がそこまで来ている
今年も桜はきっと咲くだろう
かつて希望と不安が交差した、君の大好きだった春が微笑みながら
もうそこまで歩み寄っているよ
いちばん端のいつもの座席に座り
電車の中を見渡すと
目に留まったのはひとりの美しい少女
うらぶれた街の、さびれた高校への通学途中、突然の僥倖
視線をそらすように窓の外を見た
朝の陽に照らされた古い建物たちが、鈍く輝いている
普段と変わらない風景に飽きて、再び正面を向くと
少女が目の前に立っていた
何と無防備なのだろう
きっと、僕が凝視できないことを知っているから無防備なんだ
話しかけたかった
しかし、少女も話しかけてきそうな雰囲気を漂わせていた
それに甘えて話しかけなかった
日々の対面は時の流れを感じるほど長らく続いた
少女に逢うたびに、僕の朝は優しくなり、素直になりさえもした
そして少女がついに話しかけてきた
「さよなら」
僕の卒業の日だった
言葉を返そうとした時
電車の中を見渡すと
目に留まったのはひとりの美しい少女
うらぶれた街の、さびれた高校への通学途中、突然の僥倖
視線をそらすように窓の外を見た
朝の陽に照らされた古い建物たちが、鈍く輝いている
普段と変わらない風景に飽きて、再び正面を向くと
少女が目の前に立っていた
何と無防備なのだろう
きっと、僕が凝視できないことを知っているから無防備なんだ
話しかけたかった
しかし、少女も話しかけてきそうな雰囲気を漂わせていた
それに甘えて話しかけなかった
日々の対面は時の流れを感じるほど長らく続いた
少女に逢うたびに、僕の朝は優しくなり、素直になりさえもした
そして少女がついに話しかけてきた
「さよなら」
僕の卒業の日だった
言葉を返そうとした時
電車のドアが閉まり、彼女は姿を消した