ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

風に舞うトランプ

2021-02-05 21:49:23 | 

強い北風の吹いた日だった
木枯らしに乗って太平洋側から、トランプが飛んできた
落ち葉を掻き分け、それらを拾ってみる

カードの裏側にいろいろ書いてあった
「栗の季節はもう終わっただろ」
「奴が何も出来ないのはわかっている。でも、こうするよりほかになかった」
「万歳、アメリカ復権!」

トランプ勝利の報が流れた11月の夕暮れは急ぎ足で
世界の終わりのようでもあり
いつもと何ら変わらぬようでもあり

風に舞うトランプ
彼らはこれからさまざまな思惑に流され
舞い上がるのか、落下するのかも分からず
今はただただ、勝利の風に吹かれて、浮遊している

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幸福について

2021-02-05 19:51:35 | 

よき家に生まれ育ち
よき学びの場に進学し
よき職に就き
よき収入を得て
よき人に出会い
よき家庭を築き
よき親になる


優雅に流れるような、届きようもない幸福はいつも彼方にある
しかし思うのだ
山脈のように連なる悲運の狭間で、ひっそり佇んでいる細々とした光
それが僕にとっての幸福ではないかと

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 コインの悲劇

2021-02-05 17:10:38 | 
コイン3枚すべて裏目
もしかしたら人の幸運や不運は、こうした小さな積み重ねなのかもしれない

死は人生で最も大きな悲しみ、苦しみだろう
しかし、不運や悲運ではない
誰もが間違いなく経験すること
大病もたいていの人は経験する
不運とは言い切れない

しかし、コインが裏目に出ること
そしてそれが積み重なることは、不運ではないか?
1回、5回、10回、100回、1000回
すべて自分の願いと異なる世界が現れたら、どんな気持ちになるだろう?

盛況のうちにオリンピックが終われば、次はパラリンピック
街で障害者たちを見る人の眼は暖かいようで、冷徹なようで、同情しているようで

哀れみの感情で彼らを見つめる傲慢
哀れみの感情で見られるべきは彼らではなく
コインが裏目に出る性質の人たちなのだ
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悲しみの水位

2021-02-05 14:03:18 | 
空のチャンネル変えたら
ザァーって音がして
瞬く間に悲しみの水位が高くなっていった
 
僕はそれを被りたくはない
ないけれど、どこへ避難する訳でもなく
避難場所も分からず
もし分かったとしても
そこから離れる気力もなく 
いずれ、溢れるであろう悲しみの水位を
じっと見ていた
 
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紙ヒコーキのフライト

2021-02-05 12:13:24 | 
君は投げ時を探している棋士のような顔を浮かべているけど
終わりにするのはまだ少し早かろう
 
君がパンを食べたくなるのは、体や心がまだ生きたいと叫んでいるから
瞼が重くなるのは、細胞が明日の生活に備えるために休息したいと訴えているから
宇宙の歴史から見れば、君の人生は紙ヒコーキのフライト時間と変わりない
どれだけ辛く苦しい時が長く続こうとも、そんなもんだよ
どんなに幸せな人であろうとも、その法則に変わりはない
所詮、紙ヒコーキのフライト


もう春がそこまで来ている
今年も桜はきっと咲くだろう
かつて希望と不安が交差した、君の大好きだった春が微笑みながら
もうそこまで歩み寄っているよ
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僥倖少女

2021-02-05 10:57:01 | 
いちばん端のいつもの座席に座り
電車の中を見渡すと
目に留まったのはひとりの美しい少女

うらぶれた街の、さびれた高校への通学途中、突然の僥倖
視線をそらすように窓の外を見た
朝の陽に照らされた古い建物たちが、鈍く輝いている

普段と変わらない風景に飽きて、再び正面を向くと
少女が目の前に立っていた
何と無防備なのだろう
きっと、僕が凝視できないことを知っているから無防備なんだ

話しかけたかった
しかし、少女も話しかけてきそうな雰囲気を漂わせていた
それに甘えて話しかけなかった

日々の対面は時の流れを感じるほど長らく続いた
少女に逢うたびに、僕の朝は優しくなり、素直になりさえもした

そして少女がついに話しかけてきた
「さよなら」
僕の卒業の日だった
言葉を返そうとした時
電車のドアが閉まり、彼女は姿を消した
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