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ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

ひと、ひと、ひと

2021-02-26 18:39:08 | 
雪のような肌をして
ナイフみたいに鋭利に笑い
時にストーブのような眼差しで見つめる
抱きしめたらとろけそうな極上の人

今日もこの街の何処かに宝石が埋もれている
そう信じてゴミ箱をあさり
ようやく手にした宝石を
口いっぱいにほうばった食欲の人

いくら空の向こうに旅行したいからって
ビルの屋上の絶壁に立つなんて
ロケットに乗るより早く空に到着したかったのだろう
ついに一線を踏み越えてしまった引力の人
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 初恋の遠い空

2021-02-26 16:23:23 | 

「中学の同窓会、来る?」


同じ高校の他のクラスの少女が僕に問う机を挟み僕の目の前に立つ美しい君
卒業から1年も経ってなかったが
ショートカットだった君の髪は背中まで伸び、大人びて見えた

君が教室を去った瞬間から周囲は君を僕の彼女だと信じ込んだ
本当に迷惑な女
苛立ちと憧れが中学の頃から変わらない
彼女と話すと言葉が短く切れてしまうのも変わらない

帰る方向が同じだからたまに自転車を並べて話し、また話さず
粋がりのセブンスターにも、君は注意もせず、嫌な顔もしないので僕は悲しくなった

その時彼女は言った「背、伸びたね」と
今は長身の彼女より僕の方が背が高い
それが男らしさと幼い勘違いをして僕は満更でもない

「彼女できた?」
出来たとでも言えば、君は僕の肩を揺すって祝福するだろう
本当に気に食わない
告白でもしてやろうか
しかし、僕のたかだか16年のプライドが鼓動を高鳴らせ、それを許さない
こんなに近くにいるのに、君は遥か遠い空
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僕の平成

2021-02-26 15:16:01 | 
平成が明けた空はよく晴れていた
僕はその眩しさを忘れない
二度と見ることはなかった眩しさを

突然、僕の頭上に雷が落ちた
僕は死ななかった
壊れたまま生きていた

その日から常に重たい雨雲が垂れ込めていた
短い間隔で激しい雨に打たれる
冷たく痛く傘もない

僕は次第にどこに行けば激しく打たれるかを知り
あらゆる場所に立ち入らなくなり
少しでも豪雨を避けるための場所を探し続けた

ついに平成が終わる
意義や価値など見い出せないまま
死が怖いという理由で生き延び続けた平成が
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はるなつあきふゆ

2021-02-26 14:07:27 | 
春には花びら舞い散る中で
別れと出会いがあり

夏は夏でいろんな音が聞こえる
蝉の音
激しい雨の音
打ち上げ花火の音
大粒の汗が滴り落ちる音

秋には空は青く
雲は痩せ
色とりどりの人や木々は美しいけれど
生き急ぐ切なさは隠せない

やがて冬が来て西高東低の気圧配置
寒さの底で季節が止まったような気分になる

それでも柔らかなレコードのように時は回転して
季節が積み上がって時代は過ぎ
今この世に生きるあらゆる命たちはすべて消え
新しい人々が遥か遠くの春を生きている
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平成の暮れ

2021-02-26 10:33:10 | 
昭和の暮れ
両親に手を引かれた男の子の笑顔が、最後の夕日に輝いていた

平成の夜明け
日本はバブル景気に沸いていた
やがて日が高く昇るにつれ
金は消え、人は老い、心はすさんだ

自然も平成に対し、残酷だった
地震、豪雨、酷暑
それなのに今日の空は軽やかにくつろぐ

幸福を謳歌した人もいただろう
不幸を耐え忍んだ人もいただろう
新たに誕生した命、消えていった命は数知れず

あらゆる人生も生き抜いた価値に変わりなく
叶わなかった夢、報われなかった努力
こびり付いた苦しみ、悲しみ
つべこべ言わず、一列に並んで成仏せよ

30年前とよく似た家族が通り過ぎていく
両親に見守られ、プレゼントを抱えた男の子が無邪気に笑う平成の暮れ

 

 
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