ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

閉幕

2021-02-24 18:20:07 | 
夢びとたちの白い息
陽光とぶつかり宝石になった

絶望を抱えたまま氷上に降りた天使
羽を広げ飛び立ち、力尽きて雪上に降りた伝説

彼らは風よりも速く
大樹よりも力強く
虹よりも儚く
クラシックよりも上等に
見たこともない世界へ自らを連れていく
短い生涯を大粒の汗で絞り、極限に凝縮された舞台で

時の風が夢を思い出に流していく
見守った人々の記憶もいつしか点にばらけて
しかしそれは彼らの心の夜を金色として照らす

まもなく聖火が消える
そして時の風が吹き始める
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星々のレコード

2021-02-24 15:49:20 | 
17歳の地図をビリビリに破られ
それは僕のノンフィクション

街には真冬の恋人たち
夏をあきらめたのが昨日のようなのに
とはいえ、春の歌にはまだ遠く遠く
心にいくつもの難破船
錆びた港に帰りたい

家路に着いた頃に陽は紅
すでに部屋は翳りゆき
不貞腐れて寝転がり、ピースやハイライトでむせ返る
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 星々の本棚

2021-02-24 13:47:12 | 

潮騒がこころを揺さぶる
西の空を見上げれば斜陽が眩しい
海辺にカフカはいなかった
カフカの繊細は腹立たしい
いれば、その背中を蹴ってやりたかった

限りなく透明に近い駅に滑り込んだ銀河鉄道に乗り込む
鉄道員の合図もそこそこに銀河は出発
メロスと並べて走らせたらどちらが速いか

トンネル抜けたら案の定、雪国だった
東京の雪と違って、さらさらして心地よい
童心に帰り、寒さも忘れた
いっそすべてを忘れたい

 
あの時のいのちも
それから、あの手紙も、あの巨塔も、あの運命の人も

ガリレオみたいに強くなれない
人間失格でいいじゃないか
カリスマも模倣犯も、人みな大河の一滴と言い聞かせ

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卑屈が伸びてゆく

2021-02-24 11:42:39 | 
無意識に瞼を強く握りしめていた
初冬の太陽にさしたる力はない
それでも僕はしばらく目を強く閉じていた
もう何も見たくないのかもしれない

立派なものは、より立派に映り
輝いているものは、より輝いて映り
みすぼらしいものは自分に見えた
卑屈が高く高く伸びてゆく

生きていることが恥ずかしく
だから穴に入りたいのだが
コンクリートはそれを許してくれない
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 羽のような、幻想のような

2021-02-24 09:50:44 | 
豪雨がおさまり、小降りになった
世渡りの傘は持ち合わせていないが
今この軒下を飛び出し、走って目的地に向かおうかと迷う
迷っているうちに、雨は再び激しさを増した

いつになったら踏み出せるのだろうと不安になる
不安の正体は雨ではない
自分の弱さであり
前に向けない気持ちであり
時間である

雨は止んだ
しかし、空全体は分厚い黒雲に覆われている
夕方になり、西に目を向ける
夕焼けがない事を確認し、俯く
そもそも、僕の残りの人生に太陽は存在するのだろうか?

けれども未来の天気は知りたくない
そこに太陽がなければ死にたくなる
羽のような、幻想のような希望
それを携えていたからこそ、これまで生きてこられた
この先の人生、どこかに太陽は存在するという希望

膨大な苦しみ、諦めの影で
少年のような、今日にすべてを捧げる情熱を
思いもよらぬところで抱きしめながら
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