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ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

あなたのいない世界

2021-02-02 22:20:27 | 
笑った覚えはない
だけど僕の口元は緩み、目は輝きを帯びていたに違いない
それはあなたがいたからだったんだね

遠い夏に打ち上げられた花火
僕は夜空の満開を見上げた
心が弓なりの魚のように跳ねた

今、その空からは雨が落ちている
僕は表情なく、視線をアスファルトに乗せて歩いた
雨脚は強まる一方で
人気のない軒下で傘を置き
固く結ばれていた口元を解き
空を睨むように見た

笑う事もなくなった
花火を見上げる事もなくなった
あなたのいない世界を僕は生きている
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悪意

2021-02-02 22:20:27 | 
この星は水で満ちている
酸素で満ちている
アルコールで満ちていは金で満ちている
場所によっては金で満ちている

そして悪意で満ちている
それは国と国の衝突から小さな教室の隅々まで

一人密室に閉じこもっても
まだまだ悪意はたじろがない
インターネット
そして彼自身
自分の毒には鈍感で他人の毒には敏感な
人なる生き物

子供から大人になるためのお祝い品
絹の綺麗ごとで丁寧に包まれた
得体の知れぬ重たい悪意ひと箱
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歌姫

2021-02-02 21:47:24 | 
地層に埋もれた歌姫たちの声が
アスファルトの遥か下から微かに聴こえる

都会の人は早足でただ前のみを見つめている
まるで昨日などなかったように

あの頃は目で物を言い
口の数で気分を表明し
耳からあらゆる景色を浮かべ
心に鍵を無造作に置いていた

日を追うごとに寒さは厳しくなり
僕は北の夜風を受けながらしゃがみ
少しだけ歌姫たちに近寄った
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宇宙の隅

2021-02-02 17:59:12 | 
朝の目覚めの不快感
泥沼につかるような倦怠感
新しい日が生まれる絶望感
僕は仰向けからうつ伏せに体勢を変え
ベッドから起き上がることを目指す

一日は長くても一年は早い
熟成された木々の色づき
せわしなく華やぐ街並み
僕は今年の終わりの近づきを意識して
酷暑さえ懐かしく感じた

まして一生など一瞬だ
その中に数え切れぬ出来事が圧縮されて無造作に詰め込まれている
長く険しい今日もやがて終わり
明日には束の間の宇宙の隅で小さく転がっている
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秋の壁際

2021-02-02 16:41:46 | 
近頃の夕日は随分と早く消えていく
潔く沈み、美しさをさらに際立たせる考えのようだ

生きる覚悟も死ぬ覚悟も持てぬ僕は
その美しさの中へ吸い込まれたいと願う
しかし夕日はいつの間にか姿を消し
闇を創り上げた

時が進めば進むほど
僕は後ずさりして
いよいよ壁際まで追い込まれた
風が一層冷たくなり
ナイフのように僕の生涯を突き刺そうとしている
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朝の告白

2021-02-02 12:55:00 | 
思えばあの頃が僕の人生のピークだったのかもしれない
もっとかみしめておけばよかった
しかし、まさか思いもよらなかったから
深く暗い空洞を隠すように敷いてあった薄紙の上を僕は歩いてしまった

地獄に落ちてから長い手数をかけました
抜け出せないと知りながら、光の射す方へよじ登ろうとした
しかし、それは僕に向けられたものではなかった

もう走れなくなった
だから僕はコーヒーを飲みながら
流れる雲を茫然と見つめた
若葉の香りが美しく
僕とは見事なまでに不釣り合いでした
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男は死ななきゃいい

2021-02-02 10:52:06 | 

開発も極まれり
絶望のビル街
その地下に希望は眠っているか?
ビルの向こうに夢はいるか?
強固で広大な集合ゆえ
確かめる術もなく
ただ立ちすくむ
 
昔の友よ
元気で生きているか?
俺はまだ生きているよ
「男は死ななきゃいい」と言い合ったあの頃
本当にそうだろうか?
そんな答えなんて考えようともせず
あの頃は幸せだった
 
 

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