勝った方が渡辺明竜王への挑戦権を手に入れる戦いとなった第22期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第三局。
振駒で森内俊之九段の先手。角換り相腰掛銀先後同型。定跡にある仕掛けから,深浦康市王位の方が早い段階で変化したのが第1図。
将棋の定跡というのはしかと確立したものからそれほどではないものまであるのですが,この戦型は典型的な前者。したがってこの段階で変化できるというのは僕には驚きでした。研究範囲であったと思いますが,この手の成否如何がこの将棋の行方を左右する手であるといえるでしょう。
取れないならば第1図で▲3四歩と取り込むのは自然。△4四銀に▲7四歩△同金と形を乱されたので後手も攻め合いに活路を求めるほかなくなりました。そうして第2図に。
7一に打った角を成り返ったところ。一見するとぼんやりした手にも感じるのですが,この手が厳しく,先手に傾いたようです。後手はこの直前に△6五桂とただのところに跳ねているのですが,それがどうだったのかともいえるのですが,全体を通してみるなら,この将棋に限っては新手がうまくいかなかったということではないかと思います。第2図以下,後手も最後まで粘ったので全駒のような将棋となってしまい,先手が勝っています。
展望では対抗に挙げた森内九段が挑戦者に。戦略家同士ですので面白い七番勝負となることと思います。
ここで病院食がどんなものであったかということについて少しお話しておきましょう。
メニューは基本的には全員が同じです。ただし,たとえば腎症の患者などでは,たんぱく質を控えなければならにというような場合もありますから,そういう場合の配慮はなされていた筈です。塩分に関しては元から控えられていました。つまり食事を自分で食べるすべての患者が,塩分控えめの食事をしていたということになります。
メニューは同じなのですが,量は異なります。とくに僕のような糖尿病の患者に関しては,摂取カロリーが管理栄養士によって決められていて,これは体型などによって異なってきます。僕の場合は1日の摂取カロリーは1760kcal。これはもちろん退院した現在も同じで,僕は今でもそのように食べているわけですが,これについては後でお話しします。人によっては2000kcalであったり,1200kcalであったりするわけで,必然的に量は変わってきます。なお,これは必要摂取カロリーですので,これ以上食べてはいけませんが,これだけは食べなくてはいけないという量でもあります。インスリン注射をしている糖尿病患者の場合には,摂取カロリーが減少すると低血糖症状を起こす可能性があるからです。
さらにこれとは別の配慮があります。主食というのは,朝にはパン,昼にはうどんないしはそばが出ることもありましたが,これは3日に1回程度。基本はご飯です。このとき,僕はおそらくまともに食事をすることが久しぶりであるということが考慮されたのだろうと思いますが,お粥になっていました。これは結局,退院することになる20日の朝の食事までずっと続きました。どの程度の患者がお粥であったのかは僕には分かりませんが,普通のご飯ではなくお粥であるということによって,僕にはひとつの利点とひとつの難点があったのです。
振駒で森内俊之九段の先手。角換り相腰掛銀先後同型。定跡にある仕掛けから,深浦康市王位の方が早い段階で変化したのが第1図。
将棋の定跡というのはしかと確立したものからそれほどではないものまであるのですが,この戦型は典型的な前者。したがってこの段階で変化できるというのは僕には驚きでした。研究範囲であったと思いますが,この手の成否如何がこの将棋の行方を左右する手であるといえるでしょう。
取れないならば第1図で▲3四歩と取り込むのは自然。△4四銀に▲7四歩△同金と形を乱されたので後手も攻め合いに活路を求めるほかなくなりました。そうして第2図に。
7一に打った角を成り返ったところ。一見するとぼんやりした手にも感じるのですが,この手が厳しく,先手に傾いたようです。後手はこの直前に△6五桂とただのところに跳ねているのですが,それがどうだったのかともいえるのですが,全体を通してみるなら,この将棋に限っては新手がうまくいかなかったということではないかと思います。第2図以下,後手も最後まで粘ったので全駒のような将棋となってしまい,先手が勝っています。
展望では対抗に挙げた森内九段が挑戦者に。戦略家同士ですので面白い七番勝負となることと思います。
ここで病院食がどんなものであったかということについて少しお話しておきましょう。
メニューは基本的には全員が同じです。ただし,たとえば腎症の患者などでは,たんぱく質を控えなければならにというような場合もありますから,そういう場合の配慮はなされていた筈です。塩分に関しては元から控えられていました。つまり食事を自分で食べるすべての患者が,塩分控えめの食事をしていたということになります。
メニューは同じなのですが,量は異なります。とくに僕のような糖尿病の患者に関しては,摂取カロリーが管理栄養士によって決められていて,これは体型などによって異なってきます。僕の場合は1日の摂取カロリーは1760kcal。これはもちろん退院した現在も同じで,僕は今でもそのように食べているわけですが,これについては後でお話しします。人によっては2000kcalであったり,1200kcalであったりするわけで,必然的に量は変わってきます。なお,これは必要摂取カロリーですので,これ以上食べてはいけませんが,これだけは食べなくてはいけないという量でもあります。インスリン注射をしている糖尿病患者の場合には,摂取カロリーが減少すると低血糖症状を起こす可能性があるからです。
さらにこれとは別の配慮があります。主食というのは,朝にはパン,昼にはうどんないしはそばが出ることもありましたが,これは3日に1回程度。基本はご飯です。このとき,僕はおそらくまともに食事をすることが久しぶりであるということが考慮されたのだろうと思いますが,お粥になっていました。これは結局,退院することになる20日の朝の食事までずっと続きました。どの程度の患者がお粥であったのかは僕には分かりませんが,普通のご飯ではなくお粥であるということによって,僕にはひとつの利点とひとつの難点があったのです。