脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

頚動脈狭窄症の新しい治療:T-CAR

2025年03月01日 | トピックス

脳に血液を送る重要な血管、頚動脈。

ここが細くなると脳梗塞の原因となります。

治療法には1)内服治療、2)外科手術(頚動脈内膜剥離術)、3)血管内手術(頚動脈ステント留置術)がありますが、あらたな治療法が加わります。

その名はT-CAR(ティーカー: Transcarotid Artery Revascularization)

どんな治療かというと、頚動脈の根本のあたりから管を入れて細いところ(狭窄部)にステント(メッシュ状の金属の筒)を留置する方法です。

https://silkroadmed.com/

日本に近日中に導入されるということで、アメリカでこの治療を多く行っているProf. Matouk(Yale大学病院)を訪問してきました。

治療の手法についてモデルを使った指導を受けた後、実際の治療を見学しました。

いくつかコツがありますが、この治療のポイントがとてもよく理解できました。

Prof. Matoukを含めたスタッフの方々、現地のSilkroad Medicalのみなさん、メディコスヒラタのみなさんに心から感謝申し上げます。

 

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You tube 第25弾 抗血栓薬の中止について

2025年02月16日 | その他

みなさんこんにちは!

血液サラサラの薬(抗血栓薬)を内服している人が手術などを受ける際、担当医から薬を中止して欲しいと言われることがあります。では、その場合にはやめてしまっていいのでしょうか?

実はそう簡単ではありません。薬を中止すれば、手術などの際の出血を減らすことはできますが、一方で脳梗塞を起こすリスクが増えてしまうのです。

ではどうしたらいいのでしょうか?

今回はこの疑問にお答えするため、手術などの際に血液サラサラの薬を止めるタイミングなどについてお話ししたいと思います。

 

最初に結論を言うと、「各薬剤の特性や、手術の種類、個々の患者さんの状態に合わせてお薬をやめるタイミングを決定する」ということになります。

まず血液サラサラの薬には大きく分けて2種類あります。( )内は商品名です。

1)抗血小板薬:アスピリン(バイアスピリン)、シロスタゾール(プレタール)、クロピドグレル(プラビックス)、プラスグレル(エフィエント)など。

 血液の中を流れる血小板という成分の働きを抑えることで、血栓の形成を防ぐ薬です。

2)抗凝固薬:ワルファリン(ワーファリン)、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、 エドキサバン(リクシアナ)

 ワルファリンや直接経口抗凝固薬(Direct Oral Anticoagulant: DOAC)は血液が固まる(凝固する)のを防ぐ薬です。

 これらの薬をどのタイミングでやめるか?薬によって推奨が変わってきます。

 抗血小板薬について、ざっくりと言えばマイルドな薬(アスピリンやシロスタゾール)は継続が可能なことが多く、強めの薬(クロピドグレルやプラスグレル)は1週間前後前から中止することが多いです。

 一方、抗凝固薬はワルファリンはその効き具合が数値でわかるので(PT-INR)、その数値によって出血リスクが変わります。またDOACの場合には当日朝からの中止で良いとされています。

 今回の動画で詳しく解説していますのでぜひご覧ください!

    https://www.youtube.com/watch?v=0IDv-CEzZOQ

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ISC 2025速報: MeVO shock!末梢血管閉塞に対する血栓回収療法の有効性証明されず

2025年02月07日 | トピックス

Los Angelesで開催されているISC 2025に参加しています。

最も注目していたのは、末梢血管に対するカテーテル治療(血栓回収療法)の有効性に関するランダム化比較試験の結果です。

これまでの臨床試験では主幹動脈(Large vessel)の閉塞が対象となっていました。しかし現場ではやや末梢の血管(MeVO)に対しても治療が行われており、その有効性と安全性確認のための試験が進行中でした。

今回の学会ではそのうちの3つが報告され(DISTAL, ESCAPE-MeVO, DISCOUNT(中間解析))、なんと3つとも有効性が示されませんでした。

しかもESCAPE-MeVO試験では血管内治療群で出血合併症が多く、死亡率も高いという結果となっています。

(3試験中2つについては発表と同時にNew England Journal of Medicineに出版されています)。

厳密に実施された臨床試験ですのでこれらの結果は尊重すべきです。ただ、臨床現場で行っている治療の有効性が示されなかったため、私たちにとっては、「MeVO shock !」と呼ぶべき事態です。

 

なぜ有効性が示されなかったのかについて、さまざまな意見が交わされていますが、個人的には以下を考えています。

1)比較的軽症が対象となっていた

2)出血合併症が多かった

3)血流検査が登録の選択基準となっていなかった

4)使用した治療器具が適切ではなかった

5)判定したmRSスコアが適切でなかった

などです。

3つも否定的な結果が出ると、臨床現場でも治療を差し控える必要が生じます。しかし、一定の患者さんに対する有効性はあるはずですので、全ての治療をやめてしまうと、「助けられる人を助けられない」、といったことが起こりえます。

このようなことを防ぐためには、治療が有効な患者さんを選び出し、その効果を科学的に示さなければなりません。

私たちは今回の結果をある程度予想していたため臨床試験を検討中でした。今後、迅速に対応を講じたいと思います。

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You tube 第24弾 W-EB留置術

2025年02月04日 | 動脈瘤

脳動脈瘤の新しい治療器具として、W-EBというものがあります。

みかんのネットのような形のものなのですが、これが血管の分かれ目にあるネックの広い動脈瘤に非常に有効なのです。

どういうことかというと、上の図のように、ステントを併用すると血管をメッシュが横切ることになるため、血液サラサラの薬が長期間必要なのですが、W-EBの場合には術後の長期内服が不要なのです。

もちろん全ての動脈瘤に応用できるわけではありません。

サイズは直径3mm以上〜10mmぐらいまでですし、動脈瘤の向きなども影響します。

しかし、これまでの50例以上の経験で徐々に適応が広がり、多くの動脈瘤に使用できるようになってきました。

今回のYoutubeではこのW-EBについて動画も交えて詳しく説明しています。

ぜひご覧ください!

You tube 第24弾 W-EB留置術

https://www.youtube.com/watch?v=MnRgsVmfE8o

 

 

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You tube 第23弾 かくれ脳梗塞とは?

2025年01月24日 | 脳梗塞

みなさん、かくれ脳梗塞という言葉を知っていますか?

もちろん医学的には正式名称ではありません。

これは自覚症状がほとんどないあるいは全くない脳梗塞のことで、健康診断や他の病気の検査中に偶然見つかることが多い病気です。

別名、大脳白質病変というもので、脳内の小さな血管が詰まることで起きるとされています。

50歳以上の約20~30%にみられ、高齢になるほど多いとされていて、MRIで診断されることがほとんどです。

軽いものから重症まであり、グレード0からグレード4に分類されます。

重症になると歩行速度の低下や認知力の低下につながりますし、

これが出ている人は脳卒中が多いことも知られています。

MRIでこのような所見があることをお伝えすると大きなショックを受ける人もいます。

そこで今回はこの話題を取り上げました。

MRIで「白いところがある」などと説明された方はこの病気の可能性が高いです。

お時間があればぜひご覧ください。

https://youtu.be/hPavClsmIJ8?si=wQOVNAr0Nyq70nGv

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You tube 第22弾 脳動脈瘤手術後の検査

2025年01月16日 | その他

みなさん、こんにちは!お元気でしょうか。

今日は脳動脈瘤術後の検査について紹介します。

治療が無事終わった後は、外来での定期検査が行われます。最初の数ヶ月は良いとしても、1年を過ぎてくると、「いつまで検査を受ければいいのですか?」と質問を受けます。

これにお答えするには、それぞれの患者さんの動脈瘤の再発率について考えなければなりません。

脳動脈瘤術後の再発率は以下の条件で変わってきます。

  • 治療方法
  • 動脈瘤の種類、位置、サイズ
  • 危険因子

(高血圧、喫煙、家族歴、大量のアルコール摂取、高脂血症など)

(多発性動脈瘤、高齢、女性、なども関連因子)

 

「治療法によって再発率が違う」と聞くと驚かれる方もおられるかもしれませんが、実際に治療法やその結果によってかなり再発率が違ってきます。

また、それぞれの治療後に適した検査法があります。例えば、脳動脈瘤クリッピング術後はクリップが邪魔になってMRIでは血管が見えにくいことが多いため、CT造影検査が行われます。また、ステントやフローダイバーターを使用した場合にはステント内の血流が通常のMRIでは見えなくなるという問題点があります。

そのような場合には最新のMRI撮影法であるサイレントスキャンを行うことで、血管がうまく見える場合が多いので一度試されると良いと思います。

今回の動画では実際の事例を含め、術後の検査について詳細に紹介しています。

https://www.youtube.com/watch?v=ZXcrjA5FPCc

ぜひご覧ください。

 

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Val d'Isère (ヴァル=ディゼール)での学会 ABC WIN 2025に参加してきました

2025年01月16日 | 学会/研究会

みなさんこんにちは!

本日まで、フランスのヴァルディゼール(Val d'Isère)で開催されているABC WIN2025に参加してきました。

この学会は脳血管内治療に関する最も歴史のある学会で、これまで何度か参加してきました。コロナ蔓延でしばらく参加を見合わせていたのですが、昨年末に世界脳血管内治療学会の理事に選出されたため、会議参加のため参加してきました。

この会はフランス奥地のスキーリゾートで開催されるのですが、その発表レベルは極めて高く、世界最先端の取り組みが続々と発表されます。

今回もいくつかの印象的な発表がありましたが、なかでも

1) 難治性頭痛に対する脳血管内治療

2) 高度石灰化頚動脈狭窄に対する新たな治療デバイス

3) 低髄圧症候群(頭蓋内圧低下症)に対する血管内治療

4) AIを用いた術中アラームシステム

などが特に興味深いものでした。普段、仲良くしている世界の同僚たちが新たな治療にチャレンジしていることに感銘を受けました。世界はどんどん前に進んでいます。治療出来ないと諦めている患者さん達に、より良い治療を届けられるよう、自分も頑張らなければ、と思いました。

低髄圧症候群や頭痛が治らずお困りの方は下記までご連絡下さい。ぜひお役に立ちたいと思います。

Email: stroke_buster@mail.goo.ne.jp

電話:0798-45-6455

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You tube 第21弾 フローダイバーター留置術

2024年12月29日 | その他

みなさんこんにちは!

私のYouTubeも20回を超えました。動画によっては1万回以上見てもらったものもあります。

市民講座などを行っても、500人以上集まることは稀です。

みなさん、本当にありがとうございます。それにしてもYouTubeのパワーはすごいですね。

ところで、先日外来で「フローダイバーターの会はないのですか?」と質問を受けました。

実は、フローダイバーターについては治療の動画を撮影しており、いずれアップする予定なのですが、治療自体を今回紹介することにしました。

 

まず、フローダイバーターとは、目の細かいメッシュの筒のことです。

名前の由来は、「フロー(流れ)」を「ダイバート(変える)」もの、という意味です。

つまり、血管に目の細かいメッシュの筒を置くことで、動脈瘤への流れを減らして治す、治療器具です。

動画ではアニメーションを使って説明しています。

 

全ての動脈瘤に使えるのか?

いいえ、そうではありません。直径5ミリ以上で、分岐部でない部分にある動脈瘤が対象となります。

治療後の治癒率は1年で80%台程度ですが、5年経過すれば95%程度に達します。

ただし大型や枝のある動脈瘤では治癒率が下がるというデータもあります。

 

動画では留置した時に枝が詰まる確率や合併症率についても率直に紹介しています。

ぜひご覧ください!

 

https://www.youtube.com/watch?v=FAJgQrBsGRI

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You tube 第20弾 脳動脈瘤術後の定期検査

2024年12月17日 | 動脈瘤

みなさんこんにちは、今回は脳動脈瘤術後の定期検査について紹介しました。

 

治療が終わった後、どの程度の頻度で受診すればいいのでしょうか?これは多くの患者さんから受ける質問です。

脳動脈瘤の大きさ、多発か単発か、どのような治療を受けたか、などによって必要性は変わってきます。

では何をもとに医師は定期検査を進めるのかというと、再発していないかどうか、そして、多発性の場合には残っている動脈瘤が増大していないかどうかを確認しているのです。

また新たな動脈瘤ができることもあります。一般の方は0.5%未満とされていますが、脳動脈瘤がある程度大きくて治療を受けたような方はやや頻度が高いとされています(0.5〜1.0%)。このため脳動脈瘤治療後の方で、特に危険因子のあるような方は長期、検査を継続される方が多いです。

ではどんな検査法がいいのか?以前は開頭クリッピング術は全員、CT造影検査(CTA)や血管撮影を受けてもらっていました。またステント併用コイル塞栓術やフローダイバーター留置術後はMRIではステントの中が見えないので、脳血管撮影が行われていました。

しかし最近ではサイレントMRIなどでステントやフローダイバーターの中まで確認することが可能になってきました。

今回はこの定期検査について詳しく紹介しています。

ぜひご覧くださいね。

 

https://www.youtube.com/watch?v=ZXcrjA5FPCc

 

 

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You tube 第19弾 脳動脈瘤術後の内服

2024年11月20日 | 脳卒中

皆さん、こんにちは。

外来でよく受ける質問に「脳動脈瘤の術後の内服はどんな薬が必要で、いつまで続ければ良いか?」というものがあります。

内服薬は以下のように分けられます。

 

1)危険因子管理 - 高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などの治療薬

2)ステント留置に対する内服管理 - 抗血小板薬

3)てんかん発作予防 - 抗てんかん薬

 

まず1)は血圧や採血データを元に管理され、内服治療と並行して生活スタイルの改善(禁煙、ダイエット、運動など)も指導されます。

次に2)については血管の中にステントという金属メッシュが留置されると、それに膜が張って覆われるまで血液サラサラの薬を飲まないといけません。

3)は、実際にてんかんを起こした人だけに必要ですが、中止する時期などは明確ではありません。

これらについて詳しく説明を行なっています。

ご自身やご家族が内服治療を受けている場合には参考になると思います。

ぜひご視聴ください!

https://www.youtube.com/watch?v=820XeAwfzxo

 

 

 

 

 

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