毎年恒例の「レンタルビデオ店会員証・更新時貸し出し一枚無料サービス」に乗っかって、
今回お借りしたのは「映画・けいおん!」です。テレビシリーズは第一期(高校入学時~
2年生)、第二期(たぶん2年生~3年生)とあり、続いて劇場版新作アニメ(高校卒業直前)
として公開されたのがこの作品だったようです。私は放映10周年記念として再放映された
第一期しか見ておらず、第二期の再放送を待ちつつ、先に劇場版を見ることになりました。
映画は軽音楽部オリジナルメンバー4人の卒業寸前の出来事を中心に進行し、この期に及んで
一期から部員数が増えず5名のままなので、4人が卒業すると2年生の梓(あずさ)ひとりだけが
残されることになり、部が存続するのだろうかと、まずはそこを心配しました。しかし、映画内では
いっさいそういった話題は出てこなくて、もしかしたら二期の中で、そのあたりの細々した
いきさつはすでに消化済みなのかもしれません。
新作として公開される劇場版に概ね共通して言えるのは、大きなスクリーンで上映されることを
意識しすぎ肩に力が入るのか、話が盛られすぎて、よそ行きのドラマになりがちなようです。
私の感触では、それがいいほうに作用することは稀で、たいていは空回りすることのほうが多く、
残念ながらこのけいおんの映画版でも、その傾向をやや感じました。第一期では、彼女らの
日常生活を丹念丁寧に、かつテンポよく描くことから生まれるお笑いには切れがありましたが、
映画では大振りが目立ち、ギャグシーンもいまいちタイミングが合っていないように思えたのです。
あと、劇場版で非日常感を増し、スケールを大きくみせる場面転換手法として旅行(合宿だったり、
修学旅行だったりとか)に出させるシーンを多々見かけますが、ここでも例外でなく、彼女らは
卒業旅行としてロンドンに出かけます。高校生の卒業旅行で「ロンドン」はありなの? お金持ち
お嬢様設定の紬(つむぎ)はともかくも、その他のメンツはそんな余力あるのかしら?というのが
素朴な疑問でしたし、さらに、いかに軽音楽部とはいえ、普通海外旅行にギターとかベースを担いで
いかないよねえ、ワールドツアー中のミュージシャンでもない限り。と思ったら、なんと現地で
演奏するシーンが二回もあって、なるほど、そのための布石だったのだなとはわかったけど、
三泊五日の短い滞在中に偶然からライブ演奏する羽目になる場面がしかも二回、かなり無理のある
ストーリー進行であることがこれだけでもわかります。
とまあ、テレビ版一期と比べ気になる点がいくつかあったので辛口の批評となったのですが、これも
テレビシリーズを大いに気に入っていることの「愛する気持ち裏がえし」でもあります。これまで
聞いたことのなかった、放課後ティータイム(彼女らのグループ名)のその他のレパートリーを
たくさん聞くことができただけでも良かったし、見る価値はありました。
そういえば、昨秋通勤途中の車内で聞いていたNHKラジオR1「三宅民夫のマイあさ!」内で、
放課後~の「ごはんはおかず」が流れ、三宅さんが「面白いタイトルの曲ですねえ…」みたいな
苦笑コメントを述べられていたのが印象に残りました。ニュース番組内での放課後~の登場に私も
驚きでしたが、確かこの日は深読み(特集)コーナーで「お米」の話題が取り上げられており、
三宅さんではなく、他のスタッフがこの曲を知っていてオンエアに至ったのではないかと思われます。
劇場版と言えば、「鬼滅の刃・無限列車編」が切り貼りされたうえで、テレビシリーズとして作り直され
放映されたのにも驚きでした。テレビ版を再編集し、映画化することは過去普通に見かけてきましたが、
逆はこれまであったのかなあ(私が知らないだけかも)。テレビシリーズとして再編されても、まったく
違和感なく楽しめたところもすごいと思いました。先ほどの話を蒸し返すと、このケースでは、特に
劇場版だからと力みすぎず、普段通りのクオリティ(それが相当高いので実現できたとも言える)で
テレビ版とあまり変わらないスタンスで映画も制作され、そのナチュラルさが史上最大の興行収入となる
大ヒットにつながったひとつの要因であった…と考えるのはどうでしょうか。現在放映中の「遊郭編」も
そのまま劇場版としても通用しそうなハイテンションですよね。
(このあと「忍風 カムイ外伝」の話をし始めたところ、長くなりすぎるので全文省略)
この冬の新作アニメ「平家物語」の番宣に山田尚子監督(けいおんの監督でもある)が出演されて
いました。想像していたよりもずっとお若くて、かつおきれいな方でした。出演する声優陣もおそろしく
豪華で、主演の悠木碧、早見沙織さんは、幼女戦記でもコンビを組んでいましたね。私の最近の実感では、
番宣を大々的に打つ作品は評判倒れに終わることが多く、逆にあまり期待しないほうがいい作品バロメーター
として要警戒するほどです。さすがにこの強力なスタッフメンバーだと外すばずがないとは思うのですが…
ひとまず冬アニメ最大の注目作としていいのには違いなく、できたら私のイチ押し五本目となるような
面白い作品に仕上がっていることを期待しています。