旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

怪獣男爵

2022-01-30 19:16:30 | 図書館はどこですか



横溝正史少年小説コレクションの第一巻「怪獣男爵」を読み終えました。
内容としては、先に想像したとおり、推理小説というよりも冒険小説と
言っていいもので、横溝さんの一般向け作品と同じような隠微なムードを求めると
拍子抜けはします。あえて言うなら、怪奇色がやや残っている程度ですかね。

収録作は表題作に加え、「大迷宮」「黄金の指紋」の三作品で、金田一耕助が
登場するのは後記の二作のみ、いずれも敵役が怪獣男爵ということで、
そのくくりでの一括収録のようです。

編集者日下三蔵氏の解説によると、横溝さんの少年ものは角川文庫版へ
収録の際に改編が行われ、探偵役がほぼすべて金田一耕助へと改められた
そうです。なので私の手元にある当時の文庫本も、たぶん多くは金田一ものと
なっているはずです。今回のシリーズは、原則初版本を下地に編まれたもので、
原形に近い形ですべて読めるのは相当に画期的なことだそうで、横溝ファン、
特に少年向け小説愛好家には願ってもないシリーズとなるでしょう。

ブームの頃、私も含め、横溝ファン=金田一ファンみたいな感じでしたから、
その変更は致し方ない気もする反面、かなりの暴挙ではありますよねえ。
由利・三津木推しからは抗議の声が上らなかったのでしょうか? あった
のでしょうけど、かき消されてしまったのかもしれません。

それにしても、なぜ横溝版少年小説は江戸川乱歩の少年探偵団シリーズほど
知られる存在でなかったのでしょうか。乱歩版は、探偵団(小林少年)+
明智小五郎+怪人二十面相の三点セットが完全無欠だったことが、人気を
高めたひとつでしょう。それ故にワンパターンの印象が強いのも事実ですが…。
横溝版は、探偵役や敵役が固定できなかったこと、少年探偵団に匹敵するような
少年らから憧憬される組織を生み出せなかったことなどが、乱歩版に比べ
人気や知名度が劣った大きな原因であったと想像します。二十面相はともかく、
怪獣男爵なんて誰も知りませんよね。なんとか髭男(←この方、いまだに
正式名がわかっていない)と間違われかねません。そうすると、探偵役を
すべて人気の金田一に統一した角川の処置も、無理やりながらうなずける気も。

そのあたり、第一巻の解説には記載がありませんが二巻以降で触れられて
いるかもしれませんし、私自身もさらに読み進めることで、原因や理由を
探求してみたいと思います。

コメント
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