(ブログ記事「非色」から引き続いて始まります)
ところで、有吉さんと言えば、2021年12月4日付け朝日新聞土曜別刷り版be内の
コラム「歴史のダイヤグラム」に、そのお姿の写真が掲載されていました。1974年
(昭和49年)の参院選に立候補した紀平悌子氏(写真左から2人目)を応援演説する
有吉さん(同3人目)がそれです。
この応援のいきさつは、小説「複合汚染」の冒頭に延々と挿入されているエピソードで、
実際に写真(画像)でそのシーンを見られたことに、私としては少々興奮気味でした。
複合~出だしを飾る、この演説へ繰り出す羽目になる前後の丁々発止なやりとりが大変
おもしろく、一連の流れの中には若き日の菅直人氏(まさかのちに総理大臣になるとは、
有吉さんもびっくりでしょうけど)まで登場するなど、とても興味深いお話が展開されます。
この街頭演説中に気分が悪くなったこと(頭痛を発症)をきっかけに、環境問題への関心を
深めていくことになり、このあと本題へ続くのはいいとして、スリリングな選挙運動の話題は
雲散霧消し、ついに最後まで小説の中には再登場しないのが、残念と言えば残念なんですよね。
歴史~は政治学者の原武史さん(相当な鉄道マニアでもあるみたいです)が歴史上の出来事を
鉄道と絡ませながら読み解いていくコラムで、鉄道にも歴史にも詳しくない私には、ちんぷん
かんぷんなまま終わることもありますが、独特の視点から解説される裏歴史的なエピソードは
多くが意表を突く形で再現、構成されておりとても興味深く、拝読するのが楽しみな記事です。
朝日読者でない方でも、特に鉄道好きのお方は、これまでの連載が「歴史のダイヤグラム」
として本になってまとめられているので、書店などで目を通されることをお勧めします。
今回の記事に有吉さんが出てきたのは、複合~内で、彼女が東京の東側と西側で雰囲気が
違うことに気づいたくだりがあるからで、杉並区(西側)では演説の手応えを感じたのに、
江東区(東側)では「誰も私の小説を読んでいないのではないか」と疑うくらい反応が鈍い
ことを悟ったのです。原さんは、これを地上駅と地下駅の多さの違いが原因だろうとし、
東京の東側は地上駅が少なく、駅前広場のような公共空間がないために演説は駅から少し
離れた地点で行うことになり、これが関係していたと思われると分析されました。広場や
ロータリーのない地下駅は、人々を集める公共空間になりにくく、地上の駅前に相当する
ような空間があればいいのにと、コラムは結ばれています。