新宿酒場ロン 6・29
島、絵美、銀さんが揃った。冷えたビールがうまい。
「東京駅の喫茶店で初めて会って、名刺をもらえなくて、名前も忘れてしまった投資家か」
「そんな初対面の、名刺も貰えない投資家の要望で、朝鮮総連の35億円の不動産の所有権移転登記をしてあげた緒方弁護士」
「手付金を1銭も貰わずに」
「この一事だけで、緒方弁護士の嘘八百が分かる」
「どの世界にこんなことをしてあげる人間がいるだろうか」
「まあ、サザエさんでもしないわね」
「不思議なのは、こういう弁明をして世間に通用すると思っている緒方の頭の構造はどうなっているのだろうか」
「とても正気の沙汰とは思えない」
「権力の道を一筋に歩いて来た、お役人様のたわ言かな」
「じゅうめいさん、何考えているの?」
「フム、どういうカラクリになっているのか面白い」
「いやね、特捜が2度も緒方のガサ入れをやったんだが、面白いものが出てきた」
「何だい?」
「4億8千4百万円の領収書の控え」
「緒方は否定していたが」
「朝鮮総連から、なぜ4億8千4百万円も出たのか」
「それ自体は商慣習で不思議ではない、売買の両当事者からブローカーはカネを貰ってもおかしくない、通常はそれぞれ5~10%だ」
「4億8千万円というのはちょっと大きいね」
「その数字は意味があると思うね、4億8千万でなければならなかった理由が必ずある」
「実力者のホ・ジョンマンは、強制執行を逃れるために、所有権を誰かに移転する必要があった、それでブローカーの満井に頼んだ」
「満井は、同じ悪仲間の緒方とたくらんだ」
「架空の投資者をデッチ上げて、35億円の売買契約を総連と交わして、移転登記をするようにホ・ジョンマンに頼んだ、ホはホで早く登記を移転したかったから、協力した。」
「しかし、この話が漏れて、特捜が動いた。すべてがパーになった」
「誰が漏らしたの?」
「公安のスパイだと思うね、メディア全部にスクープで召集が来たから特捜のリークは早かった、一番反応したのは毎日新聞とTBSだったが」
「そして執行妨害罪より罪の重い詐欺罪か」
「緒方・満井サイドは、登記後、投資の話は駄目になりました、と言い逃れをする計画で、総連もそこは暗黙の了解か」
「もし本当にホ・ジョンマンを騙したなら、緒方と満井は今頃、東京湾に浮いている、それとも、だから特捜が逮捕して身柄を守った?」
「調べてみたら、これと同じようなことを緒方・満井はやっている」
[六本木の大型雑居ビルで、暴力団、地上げ屋、ブローカーの権利関係が複雑に絡み合って、六本木の超一等地でありながら再開発できないTSKという幽霊ビルがあるんだが、そこでも緒方・満井は暗躍していて、同じような手口で億単位のカネを騙し取ったとして、裁判沙汰になっている、そして余談だが、そのTSKビルは稲川会の伝説の創業者・故稲川聖城が作ったものだ。当時は高級クラブ、レストランが入っていて賑わっていたそうだ]
「そうすると、あのポンポコリンは極め付きの悪徳弁護士か」
「霞ヶ関の1丁目1番地から聞こえてくるのは、緒方は公安庁長官時代に、各方面の秘密情報を握っていて、権力の弱みを熟知しているから、強気だと苦虫を噛んでいるが」
「各方面と言うのは?」
「愚問だな、政界、経済界、裏社会、総連、エスタブ・・・」
「公安庁は米国のCIA、ロシアの旧KGB、韓国の旧KCIA、イギリスのM16と同じだ。つまり、分かりやすく言えば、権力の暴力団」
「緒方は、巧妙に塀の上を歩いていたが、内側に足をすべらしてしまった」
「総連という複雑怪奇なものに手を出したのがエスタブの逆鱗に触れた」
「国民の税金1兆4千億円を贈与で総連にくれてやったが、627億円のカネを払わない、側面的には、拉致の秘密交渉で最後に裏切られた、つまり金だけは取られたが、めぐみさんは帰ってこなかった。拉致の象徴である(めぐみさん)を帰すという話に一旦煮詰まったが、最後は北朝鮮本国に拒否された。知りすぎた者は消される」
沈黙が訪れた。洋子ママの柳眉が怪しく光る。
(ムラマサ、低く鳴き始めた)
島、絵美、銀さんが揃った。冷えたビールがうまい。
「東京駅の喫茶店で初めて会って、名刺をもらえなくて、名前も忘れてしまった投資家か」
「そんな初対面の、名刺も貰えない投資家の要望で、朝鮮総連の35億円の不動産の所有権移転登記をしてあげた緒方弁護士」
「手付金を1銭も貰わずに」
「この一事だけで、緒方弁護士の嘘八百が分かる」
「どの世界にこんなことをしてあげる人間がいるだろうか」
「まあ、サザエさんでもしないわね」
「不思議なのは、こういう弁明をして世間に通用すると思っている緒方の頭の構造はどうなっているのだろうか」
「とても正気の沙汰とは思えない」
「権力の道を一筋に歩いて来た、お役人様のたわ言かな」
「じゅうめいさん、何考えているの?」
「フム、どういうカラクリになっているのか面白い」
「いやね、特捜が2度も緒方のガサ入れをやったんだが、面白いものが出てきた」
「何だい?」
「4億8千4百万円の領収書の控え」
「緒方は否定していたが」
「朝鮮総連から、なぜ4億8千4百万円も出たのか」
「それ自体は商慣習で不思議ではない、売買の両当事者からブローカーはカネを貰ってもおかしくない、通常はそれぞれ5~10%だ」
「4億8千万円というのはちょっと大きいね」
「その数字は意味があると思うね、4億8千万でなければならなかった理由が必ずある」
「実力者のホ・ジョンマンは、強制執行を逃れるために、所有権を誰かに移転する必要があった、それでブローカーの満井に頼んだ」
「満井は、同じ悪仲間の緒方とたくらんだ」
「架空の投資者をデッチ上げて、35億円の売買契約を総連と交わして、移転登記をするようにホ・ジョンマンに頼んだ、ホはホで早く登記を移転したかったから、協力した。」
「しかし、この話が漏れて、特捜が動いた。すべてがパーになった」
「誰が漏らしたの?」
「公安のスパイだと思うね、メディア全部にスクープで召集が来たから特捜のリークは早かった、一番反応したのは毎日新聞とTBSだったが」
「そして執行妨害罪より罪の重い詐欺罪か」
「緒方・満井サイドは、登記後、投資の話は駄目になりました、と言い逃れをする計画で、総連もそこは暗黙の了解か」
「もし本当にホ・ジョンマンを騙したなら、緒方と満井は今頃、東京湾に浮いている、それとも、だから特捜が逮捕して身柄を守った?」
「調べてみたら、これと同じようなことを緒方・満井はやっている」
[六本木の大型雑居ビルで、暴力団、地上げ屋、ブローカーの権利関係が複雑に絡み合って、六本木の超一等地でありながら再開発できないTSKという幽霊ビルがあるんだが、そこでも緒方・満井は暗躍していて、同じような手口で億単位のカネを騙し取ったとして、裁判沙汰になっている、そして余談だが、そのTSKビルは稲川会の伝説の創業者・故稲川聖城が作ったものだ。当時は高級クラブ、レストランが入っていて賑わっていたそうだ]
「そうすると、あのポンポコリンは極め付きの悪徳弁護士か」
「霞ヶ関の1丁目1番地から聞こえてくるのは、緒方は公安庁長官時代に、各方面の秘密情報を握っていて、権力の弱みを熟知しているから、強気だと苦虫を噛んでいるが」
「各方面と言うのは?」
「愚問だな、政界、経済界、裏社会、総連、エスタブ・・・」
「公安庁は米国のCIA、ロシアの旧KGB、韓国の旧KCIA、イギリスのM16と同じだ。つまり、分かりやすく言えば、権力の暴力団」
「緒方は、巧妙に塀の上を歩いていたが、内側に足をすべらしてしまった」
「総連という複雑怪奇なものに手を出したのがエスタブの逆鱗に触れた」
「国民の税金1兆4千億円を贈与で総連にくれてやったが、627億円のカネを払わない、側面的には、拉致の秘密交渉で最後に裏切られた、つまり金だけは取られたが、めぐみさんは帰ってこなかった。拉致の象徴である(めぐみさん)を帰すという話に一旦煮詰まったが、最後は北朝鮮本国に拒否された。知りすぎた者は消される」
沈黙が訪れた。洋子ママの柳眉が怪しく光る。
(ムラマサ、低く鳴き始めた)