武田じゅうめい 愛と誠と正義

色即是空とは、すべての存在は虚無であると知る。
旗印は日本愛、 日本人には日の丸が足りない

新橋の男

2007年06月14日 | 人生の意味
待ち合わせは新橋第一ホテルのロビーであった。
吹き抜けに西洋画のようなものが大きく描かれている。
新橋の雑踏のなかで、ほっと一息つける空間だ。
その壁画を見上げていると携帯が鳴った。
耳に当てると「じゅうめいさんですね」と声が聞こえる。
喫茶室の前にいますと低い声が聞こえてくる。目をやると60年配の男の人がそこに立っている。
私はすぐに目で合図をして、電話を切った。
男は私を連れて、新橋の裏路地にある雑居ビルの一室に連れて行った。
6畳間ほどの狭い空間、机一つと質素な応接セットが置いてある。
「グッドウィルについてお知りになりたい?」
「ええ」
「朝日新聞の島さんからの紹介でしたね。MOの少年時代は波瀾だった、蒲田にあった父の町工場が倒産して、一転貧しさのどん底に突き落とされた、両親は離婚して生活保護を受けていた、家計のために、月7万円の給与が出る陸上自衛隊の少年工科学校に入学。成績優秀で常にトップクラス、400人いる同期生から15人しか進学できない防衛大学校に推薦された。
初めから自衛隊に興味はなかったようだ。あくまでも社会に出るための踏み台に過ぎなかった。衣食住の心配が無く、しかも給与が出る。
今の日本ユニシスを経て、当時の日商岩井の人事部に自分を売り込みに行ったそうだ。入社して東欧関係でラジオ・オーディオ関係の販売をやっていたが、そんな商売は儲からない。そしてあるグループに誘われて、日商岩井の名前を使い、ディスコ「ジュリアナ東京」を立ち上げて成功した。最初は、女性を仕込んで仕掛けた演出だったが、それに周りが乗せられていった。そして悪い噂が立つようになって、桜田門が動き始めた。
日商岩井は面白くなかったろう。そこでジュリアナ内で内紛が起きた。所詮ディスコは堅気の人間がやることじゃない。組織の息がかかっている。
そこでMOは借金7千万を背負って追い出された」
「その組織というのは?」
「組織といえばその筋しかない、あのxxxだと思ってもらえばいい」
「そこから這い上がるわけだが」
「立志伝中の人物か、蜘蛛の糸だったのか」
「それまでに、謎の3年が存在する・・・」
部屋に熱気がこもってきた。その男は私に話しかけるというより、独白の口調になってきた。「それからの3年間は・・・」男は話を続けた。

コメント
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