最高裁令和2年12月15日第3小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89896
【判示事項】
同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合における借主による充当の指定のない一部弁済は,特段の事情のない限り,上記各元本債務について消滅時効を中断する効力を有する
「同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において,借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をしたときは,当該弁済は,特段の事情のない限り,上記各元本債務の承認(民法147条3号)として消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である(大審院昭和13年(オ)第222号同年6月25日判決・大審院判決全集5輯14号4頁参照)。なぜなら,上記の場合,借主は,自らが契約当事者となっている数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在することを認識しているのが通常であり,弁済の際にその弁済を充当すべき債務を指定することができるのであって,借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく弁済をすることは,特段の事情のない限り,上記各元本債務の全てについて,その存在を知っている旨を表示するものと解されるからである。」
第一審 さいたま地裁川越支部平成30(ワ)第625号
第二審 東京高裁令和元年(ネ)第3700号
〇 事案の概要
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2020/jiangaiyou_02_887.pdf
亡Aは,被上告人に対し,平成16年に253万円余を,平成17年に400万円を,平成18年に300万円を貸し付けた。被上告人は,亡Aに対し,平成20年に,弁済を充当すべき債務を指定することなく,78万円余の一部弁済をした。亡Aは,平成25年に死亡し,上記の各貸付けに係る各債権を上告人が相続した。
最高裁における争点は,平成20年の一部弁済により,平成17年及び平成18年の各貸付けについて,消滅時効が中断するか否かである。