書斎のデスクの奥から、一冊の本が出てきました。
「ランボー詩集」
堀口大學訳、新潮文庫から出されている一冊。
おそらく高校時代に買ったものだと思います。
難解ながら、どことなく魅了されるランボーの詩。
アルチュール・ランボー(1854~1891)は、フランスに生まれ、小さなときから秀才。
15歳から詩作をはじめ19歳で創作活動を止めます。
そう、天才詩人ランボーは10代後半しか詩を創っていないのです。
その後、欧州を放浪、そしてアフリカに渡り砂漠の商人となります。
なかなかの商才があったらしく、王室御用商人になって一財産を作った翌年、大病を患い、片足を切断。37歳の時に生涯を閉じます。
そのあとに続く、タダイズム、シュールレアリズム、実存主義に多大な影響を与えます。
凡人の自分としては、天才詩人の世界に入りきれず、でも、その言葉の魔法に惹き込まれていったことを覚えています。
そんな中、出てきたコマーシャルフィルム。
サントリー「ローヤル」のCFです。
マーク・ゴールドバーグの音楽に合わせて展開されるシュールな世界。
たちまち虜になりました。
そこで入るナレーションのコピーは、ランボーの全てを語りつくしていました。
その詩人は底知れぬ渇きを抱えて放浪を繰り返した
限りない無邪気さから生まれた詩
世界中の詩人達が青ざめたその頃
彼は砂漠の商人
詩なんかよりうまい酒をなどとおっしゃる
永遠の詩人ランボー
あんな男・・・・・・ちょっといない。
http://www.youtube.com/watch?v=hy-z421FwGQ
(ユーチューブで当時のフィルムを発見しました)
1982年に放映されたこのコマーシャルフィルム。
芸術作品です。
まさに広告界の金字塔だと考えています。
ランボー編の後、アントニオ・ガウディ編(こちらも優れた秀作です)、李白編があったように記憶しています。
当時は、バブル前・・・サントリー宣伝部の時代を切り取る切り口の鋭さ、無謀にもランボーを取り上げた勇気・・・スタンディングオベーションです。
なぜ、今、ここまで踏み込んだCFが出てて来ないのでしょう?
残念でなりません。
この作品は、自分自身、その後、広告業界を目指した起点となったようにも思います。
ランボー詩集は、わずか157ページ。
初期詩編、後期詩編、地獄の一季、イリュミナシオンから構成されています。
代表作の「地獄の一季」、次の世代に大きな影響を与えた「イリュミナシオン」・・・。
哲学者ウィトゲンシュタインが「語りえぬものの前では沈黙」と吐き捨て一時哲学の世界を去ったように、
ランボーも詩作からエスケープしていきます。
ランボーの詩で最も愛すべき詩「永遠」から・・・・・・
永遠
もう一度探し出したぞ。
何を?永遠を。
それは、太陽とつがった
海だ。
待ち受けている魂よ、
いっしょにつぶやこうよ、
空しい夜と烈火の昼の
切ない思いを。
人間的な願望から
人並みのあこがれから、
魂よ、つまりお前は脱却し、
そして自由を飛ぶという・・・。
絶対に希望はないぞ、
希いの筋もゆるされぬ。
学問と我慢がやっと許してもらえるだけで・・・。
刑罰だけが確実で。
熱き血潮のやわ肌よ、
そなたの情熱によってのみ
義務も苦もなく
激昂ぶるよ。
もう一度探し出したぞ。
何を?永遠を。
それは、太陽とつがった
海だ。
ウイスキーとランボー。
なんでこんなに合うのでしょうか?
琥珀色の液体を見るたびに、ランボーの世界に惹き込まれていきます。