学生時代に哲学の教授から教えていただいたルートウッヒ・ウィトゲンシュタイン。
「論理哲学論考」
ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン著
ちくま文芸文庫 840円+税
西洋哲学のデストロイヤーとしての存在が魅力的で何度も入門書も読んだのですが、それでも分からない難解さ。
その不可思議で奥深い論理、言語の世界は、とても魅力的なのです。
ルートウッヒ・ウィトゲンシュタインは、1889年オーストリアのウィーンに生まれ。
家は大富豪、兄弟の多い家庭で、その末っ子だったと記憶しています。
かなりの秀才だったらしく、その後、大学で航空工学や数学を学びます。そ
の後、フレーゲやラッセルに哲学を学び、哲学や論理学の世界へ。
「論理哲学論考」にも師匠ラッセルは、文書を寄せています。
理科系をベースにして文系に入った・・・それがウィトゲンシュタイン・ワールドを築いたのです。
「論理哲学論考」は、前期ウィトゲンシュタインの代表作。
前期というのは、同書によって哲学を結論づけたということで彼は哲学の世界から自ら去ります。
「語りえぬものの前では沈黙しなければならない。」と喝破、歴史ある西洋哲学を全否定するのです。
論理哲学論考の中から、さわりの部分を・・・
1 世界とは出来事たる一切である。
1.1 世界は事実の総体であって、事物の総体ではない。
1.11 世界は事実によって規定されており、また、一切は事実である、ということによって規定されている。
(このあたりから早くも理解不能状態になっていきます・・・)
1.12 なぜならば、事実の総体が出来事たることを規定し、また、すべて出来事ならぬことも規定するからである。
1.13 論理的空間内の事実が世界である。
1.2 世界は出来事へと砕けて事実となる。
・・・・
同書は、こんな感じで進んでいき、中盤~後半では数学の数式が多数出現することになります。
文系の私にとっては全くの理解不能状態に陥ります(笑)。
ただ、数式の持つビジュアル的な美は、なかなか素敵な世界。
バーボンあたりをなめながらペラペラめくるには、ぴったりです(何も分かっていないのですが・・・笑)。
哲学の世界を離れた彼は、ふたたび哲学の世界に帰っていきます。
小学校で教師をしていた彼は、同書の誤りに気付き、ふたたびケンブリッジ大学に帰っていきます。
そこで展開されたのが「言語ゲーム」理論。
言語も使用される状況によって、解釈が異なってくることを哲学的に証明していったのです。
そして、最終的には、「哲学探究」に帰結させ、1951年死去。
62歳の人生でした。
訳者は、中平浩司さん(1932~2002)。
高校教員をしながらウィトゲンシュタイン研究を続けたなかな魅力的な人物。
哲学の世界に一石を投じた名著。
わずか150ページを、諦めず最後まで目を通す(たとえ字ずらを追っているだけだったとしても・・・)こともなかなか知的エンターテイメントのように思えます。