「勝つための経営 グローバル時代の日本企業生き残り戦略」
畑村洋太郎・吉川良三著
講談社現代新書 760円+税
失敗学を確立された畑村洋太郎さんは東大名誉教授。
もう一人の吉川さんは、日立製作所を経てサムソン電子常務を10年勤められ、現在東大ものづくり経営研究センター特別研究員。
サムソンの電子の飛躍に大きく貢献された人物です。
同書の腰巻には、「円高・税制は負けている言い訳にすぎない」のコピー。
急速に進展するグローバル競争の中でのサバイバルの方法論を提言しています。
目次
第1部 日本企業を取り巻く現実
第2部 日本企業の浮上を妨げる三つの枷
第3部 これからの世界
第4部 では、どうすればよいのか?
第4部では、「戦略で負けるな」「秘伝のタレを生かせ」「やはり決定的なのは人と組織」という三つの提言をして締めくくります。
1.「戦略で負けるな」・・・技術で買って市場で負ける、品質で買ってオーバースペック等、最近のニッポンものつくりの弱点を指摘しつつ、巨大な中間層市場を獲る覚悟の必要性を指摘します。さらに、米国の通った道は日本の通る道ではないと分析、オリジナリティ創造が必須であると説きます。
2.「秘伝のタレを生かせ」・・・差異化の条件である「秘伝のタレ」・・・。なかなか良い表現です。すり合わせ競争からモジュラー戦争になった今、秘伝のタレを持つニッポンのものつくり企業のタレ再発掘が有効と指摘。
3.「やはり決定的なのは人と組織」・・・金太郎アメではなく、組織のクラスター化がイノベーションに必要であることを解説。最終的には、「小魚の大群」のような組織がグローバル競争で強みを発揮するという結論で締めくくります。独立した個+共有知で、環境変化にも十分対応できると・・・。なるほど、そのとおりだと思います。
同書の中で、最も同意したのが、この組織と人の箇所。
リスクをとらない、コンプラ抵触可能性で全て退却、稟議・手続等の膨大な意思決定システム、スピードの遅さ、言われたことしかやらない社員、重要な意思決定を先延ばしする経営幹部・・・確かに、これでは負けるハズです。
同書では、「官僚化」と呼び、1.形式主義、2.数量主義、3.管理主義という三つの特徴を掲げ解説しています。
やたら社内文書が増える、
稟議手続が複雑で重い、
定量化するものの全て数字で意思決定する、
なんでもかんでも管理対象・・・
こういった症状が出てくると、その組織は厳しい将来を覚悟しなければなりません。
しかしながら、すぐに変われないのが人間の悲しい性(さが)。
国家の経済が破たんしIMF管理下に入った韓国、会社更生法の適用を受けたJAL・・・最後まで追いつめられないと、変化を起こそうという意思は出てこないのです。
ただ、一度修羅場を踏むと、その後の当分の間、以前よりパワーアップするいうのは事実です。
二人の著者は言います。
「まずは、負けを認めてからだ!再スタートをそれからだ。」