博報堂生活科学研究所が、設立されて32年。
当時の博報堂は、「マーケティングエンジニアリング」を標榜し、同社のフラッグシップとしてのシンクタンクを設立しました。
広告コンセプトやマーケティング戦略を策定する上で差異化要因となるマーケティング調査機関としての位置づけだったように思います。
現在も、定点観測、未来年表など興味深い取り組みを続けており、定性分析の草分け的なプレゼンスを示しています。
設立時は神田だったと思いますが、いまは赤坂のBizタワー。
生活とは少し場所的距離がある立地です。
同社が打ち出した「生活者」というキーワードは、30年たってもなかなかマーケティングの世界に定着しなかったように思います。
「消費者<生活者」という定義なのですが、どうもしっくりこないまま今になってしまいました。
以前あった「売り場」ではなく「買い場」という消費者目線のとらえ方も、生活者というカテゴリーによく似ています。
3.11の1年前に出版された「生活者発想塾」博報堂生活総研著・日本経済出版社刊は、なかなか素敵な本で、従来のマーケティングの概念に対し新しい切り口を与えてくれます。
「広告は人間学」という導入から始まり、
生活者発想を「兆しの見方」「声の見方」「数字の見方」「場の見方」「波形の見方」という観点から解説していきます。
「兆しの見方」のポイント・・・気になるを集めよう・・・事実有根
「声の見方」のポイント・・・人は上手く語れないから・・・点で見つけて系を掘り起こす
「数字の見方」のポイント・・・数字は偉大な表現者・・・生きるとは数字を生産すること
「場の見方」のポイント・・・真を写すから、写真・・・写されたものが映していることを見る
「波形の見方」 のポイント・・・時系列データは雄弁である・・・YTTの視野(YTTとは、昨日、今日、明日のこと)
そして、生活者発想を暮らしに活かすための心得として3つを取り上げ、まとめとしています。
日々の心得1 創造性を暮らしの実利に。
日々の心得2 分かち合って太る。
日々の心得3 明転の精神。
まさに、そのとおりだと思った次第です。
これから、インターネット、IT、グローバル化、価値観の多様化など、マーケティングがますます難しい時代となってくることは明らかです。
博報堂生活総研も過去の延長線にとらわれず、
ビッグデータやグローバル、高齢社会といったキーワードで新しい境地を切り開いていただきたいものです。