商店街を歩いていると、店舗の前でお揃いのオレンジ色のTシャツを着た女性が、チラシを配布中。
「中を、ご覧になりませんか?」
チラシをいただくと、「内覧会(見学会)のお知らせ」というメッセージ。
シュガーレスのデンタルグミが一つ付いています。
マンションのショールームかな、と思ったところ、実は、歯科医院の新規開業。
スゴイ時代になったものです。
ここの院長さんは、なかなかのマーケティングセンスの持ち主です。
歯科業界のコンサルタントの指導が入っているのかもしれません。
歯科医院を専門とした経営コンサルティングが成り立つ時代。
歯科業界も、たいへんな時代・・・競争の時代になっています。
高校時代の友人が歯科医院を経営しているのですが、彼に聞いたところ、「開業には2億円かかる。競争も厳しいよ。」とのこと。
昔は、歯科医と言えば、お金持ち・・・というイメージだったのですが、今は、事情が相当違うようです。
大学の歯学部を出て国家試験に合格・・・新規で開業した場合、私立大学歯学部だと学費もろもろで5000万円、開業費用で2億円・・・すごい投資額。
これを回収しようと思えば、20年かかるのでは???
以前であれば、その歯科医の評判や地域住民の紹介などで、なんとか経営も成り立ったのですが、今では歯科医院の林立、競合激化により、医院を存続、成長させることが難しくなっているようです。
歯科医院も、まさに、マーケティングの時代に入ったようです。
歯科医院のマーケティングという観点から、3つの道具を使っての観点を整理してみました。
1. 3C分析
マーケティングの基本の「キ」である3C分析。
「自社(カンパニー)」「顧客(カスタマー)」「競合(コンペティター)」の頭文字をとったものです。
「自社(カンパニー)」
自院の強み、専門性、診療技術、スタッフなどを多面的に整理していくことが出発点です。
「顧客(カスタマー)」
地域特性の分析です。
そのエリアには、子どもが多いのか、サラリーマンが多いのか、高齢者が多いのか等の分析です。区役所などの統計データを集めて分析します。所得なども重要な要素です。
お金持ちやセレブだけを顧客とすることも考えられます。
「競合(コンペティター)」
そのエリアに、どのくらいの歯科医院があるかを調査します。
大型歯科医院なのか、個人経営なのか、駐車場のありなし等も調べます。
SWOT分析という手法もあるのですが、初めてだと分類を誤る可能性が高いため、まずは3C分析がお勧めです。
2. 4P分析
「製品・サービス(product)」、「価格(place」、「流通・立地(place)」、「プロモーション(promotion)」の頭文字をとった分析です。
「製品・サービス(product)」
自医院が提供できるサービスを洗い出していきます。
小児歯科や矯正歯科、口内外科なども含めた専門サービスと、そのレベルを確認していきます。
「価格(place」
診療報酬が決められているので、価格での差異化は難しいと思います。
しかしながら、保険外の特別診療などで客単価の向上も考えられます。
「流通・立地(place)」
小売業同様、立地は重要な要素です。
医院前の通行量や地域の人口、駅や幹線道路からのアクセス、駐車場や駐輪場の有無など。
「プロモーション(promotion)」
マス媒体での広告宣伝は費用対効果の点、広告規制の点から難しいと思います。
インターネットやソーシャルネットワークの活用、自医院まわりのCI(コーポレート・アイデンティティ)の確立、チラシやミニ新聞の発行などが考えられます。
今では、ネットやスマホで調べてからの来院というパターンが多いため、アクセスのしやすさ、見やすさ等が大切になります。
場合によっては、SEO対策も必要です。
また、院長によるブログ開設、地場のケーブルテレビへの出演等が出来ればベストです。
そのほか、お伺い葉書の定期発送、メールによる相談受付なども、よく行われています。
3. STP分析
マーケティングプランニングの最終段階であるSTP分析。
顧客の分析です。
「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の頭文字をとったものです。
「セグメンテーション」
そのエリアの人口動態や年齢別、男女別、職業別、ライフスタイル別等の分析から得られた情報から、顧客の分析をしていきます。
「ターゲティング」
セグメンテーションで得られた分類の中から、自医院の強み・専門性を加味しながら、標的とする顧客を絞り込んでいきます。
「子ども(0歳~6歳)を持つ30歳の主婦」といった顧客定義を行います。
「ポジショニング」
ターゲティングした顧客に対して訴求するために、自医院のコンセプト・・・一言で言えるキャッチフレーズにまとめ上げます。
「子ども(0歳~6歳)を持つ30歳の主婦」というターゲットであれば、「キッズとともに診療できる明るいデンタルクリニック」という感じです。
この場合、医院内でのキッズコーナーの設置、クマやウサギといったキャラクターやぬいぐるみの導入、広めの駐車場や駐輪場の準備、バリアフリー設計、ベビーカーや車いす対応などが求められます。
ただし、マーケティングで成功しても、最終的には、リピーター、紹介客をいかに確保するかということ。
当然ですが、技術、腕、サービス力が土台となります。
厳しい歯科医院業界・・・サバイバルに向けた良質なサービス競争をしていただきたいものです。