萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

山岳点景:monochrome

2016-04-30 23:49:05 | 写真:山岳点景
止まる時間



山岳点景:monochrome

岩稜×銀嶺、四月の富士はモノトーンの春。


撮影地:富士山@山梨県サイド

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花木点景:最高峰の花―富士桜

2016-04-30 19:53:04 | 写真:花木点景
女神の華



花木点景:最高峰の花―富士桜

富士桜、富士の女神・此花咲耶媛の花。
富士山にだけさく小さな桜は今、花盛りです。


撮影地:富士山

最高峰の桜に和んだら↓
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山岳点景:春富士銀嶺

2016-04-29 22:49:00 | 写真:山岳点景
最高峰の四月



山岳点景:春富士銀嶺

今日の富士山です。



四合目付近から山頂を撮るとコンナ↑カンジ、



銀色に輝く雪面は美しくて、この光が強いほど氷化した雪は硬度はコンクリートレベル。



山中湖畔から見てもコンナカンジ↓鏡面状態の雪面はアイゼンも効きません。



刻々と形を変えて流れる雲、風速がわかります。



どれくらい強風かっていうとシャッターぶち壊す豪風です、その風に転べば遮るもの無く滑落して死に至ります。



白魔とも呼ばれる積雪期富士、四月の銀嶺は冷厳の領域です。


撮影地:富士山@山梨県

積雪期の富士はプロでも遭難死が絶えません、夏富士とは別世界です。
雪と夏でレベル変化することを甘く見れば遭難事故になります。
・凍傷による指切断
・転倒→滑落→大斜面の摩擦で身ぐるみはがれ全裸で凍死
・豪風により飛ばされ死亡
こうした事故例は積雪期富士で珍しくありません、装備+経験ある方も起きるのが現実です。
こんなふうに山はどこも積雪期と夏で難易度が変化します。

凍てつく春富士に↓
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雑談夜話@休暇×けせらんぱさらん

2016-04-29 00:09:01 | 雑談
連休前夜



雑談夜話@休暇×けせらんぱさらん

世の中ゴールデンウィーク、10連休なんて方もあると思いますけど。
そーゆー連休のいちばん楽しいのは初日前夜、明日から休みだワーイな時がいちばん楽しいもんです。
が、休み前だからこそアレコレ忙しかったりナンダリもあるワケですけど、
自分の場合コンナ時間になった理由は悪戯坊主の換毛期

もふもふ抜けまくる=毛だらけ=毛玉ふわふわ床を飛ぶ

なんてわけでブラッシング=日課なここ最近、笑

猫と暮らせばソウイウ手間やっぱりかかるけど、時間もとられるけれど、
そういう手間×時間の分だけ愛情やっぱり大きくなって、その分だけ和ませてくれる。
そんなこんなで一緒にいることは幸せで、その時間あとドレ位かワカラナイからこそ今この時が温かい。

なんてわけでブラッシングしたり短篇ひさしぶりに書いたりしていたら、こんな時間。
ソンナワケでもう寝ます、笑



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第84話 整音 act.19-side story「陽はまた昇る」

2016-04-27 22:55:14 | 陽はまた昇るside story
Pour new seas in mine eyes 君の海へ 
英二24歳3月



第84話 整音 act.19-side story「陽はまた昇る」

海を見たのは、どれくらい前だろう?

「去年の夏か、」

ひとり微笑んだ唇を潮かすめる。
ほろ甘い香なぶらせ髪ひるがえす、頬に風冷たいくせ陽ざし熱い。
レザーソール透かして砂がしずむ、もう潮騒は近くて海が響く。

『英二…見て、桜貝、』

ほら記憶が笑う、はにかんだ黒目がちの瞳が映る。
やわらかな黒髪きらきら風なびく、くせっ毛やさしい笑顔に逢いたい。

「逢いたいよ周太?」

呼びかけて潮そっと甘い。
あのときも潮風あまやかで優しくて、けれど君がいない。

―こんなに独りって寂しかったかな、俺?

独りが好きだった、今だって山なら独りも良い。
それなのに海の風は虚ろに透ってゆく、空も波も青く霞む。
茫漠シャツの衿元はためかせジャケット翻す、ただ見つめる砂浜に呼ばれた。

「英二さん?」

やわらかなアルトが呼んでくれる。
なつかしい声にふりむき笑いかけた。

「ひさしぶり、菫さん?」

潮騒やわらかな道、銀髪きらきら風に立つ。
その傍ら茶色やわらかな毛並み駆けだした。

「おんっ、」

ひと声ほがらかに足もと座る。
ふさふさ尻尾ふる愛犬に英二は笑った。

「ひさしぶりだなカイ、あいかわらず海が好きか?」
「おんっ、」

茶色つぶらな瞳が見あげてくれる。
大きな三角きれいな耳ふれて、くるり白い腹さらしてくれた。

「腹まっ白だな、きれいだなカイ、」

そっと撫でた手やわらかに受けとめられる。
やさしい和毛ふれて温かい、春の海辺に優しいアルト微笑んだ。

「怪我をしていますね英二さん、無理はいけませんよ?」

心配してくれる、そんな言葉の瞳は菫色やさしい。
何も変わっていない眼ざしに笑いかけた。

「無理したくないから来たんだよ、」

無理したくないのは何に?

なんて質問この女性はしない、それくらい聡いひとだ。
その瞳の前で犬そっと撫でるまま訊かれた。

「入院中と伺っていました、脱け出して来たのですか?」

これは「聞いていない」のだろうか?
思考めぐらす潮騒のなか、犬の傍らから見あげた。

「きのう退院したよ、今は鷲田の家にいるんだ、」

答えた先、菫色の瞳ゆっくり瞬く。
白い手やわらかに銀髪かきあげて老婦人は微笑んだ。

「そうですか、鷲田様も喜んでいるのでしょう?」
「たぶんね、」

笑いかけながら茶色の耳そっと撫でてやる。
寝ころんだ茶色の瞳に微笑んだ頭上、やさしいアルトが訊いた。

「怪我はまだ痛むのでしょう、それでも待っていたのですか?」

問いかける声、銀髪とコートひるがえす。
潮騒おだやかな海風のなか菫色の瞳を見あげ笑った。

「菫さん、周太に逢わせてよ?」


(to be continued)

【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】

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花木点景:富貴花寺

2016-04-27 15:45:39 | 写真:花木点景
花王の雲上



花木点景:富貴花寺

山ふところの禅寺、牡丹が咲いています。



曹洞宗延命寺、どこか温もりある寺です。



この寺の開基は遠山丹羽守直景、桜吹雪の刺青した北町奉行遠山金四郎の先祖です。
本尊は薬師如来、牡丹の根は牡丹皮という薬になりますが薬師如来も名のとおり薬壺を持っています。



ここは多種多様な牡丹が見事です。
ちょっと珍しい黄色も蕾ふくらませていました。



赤紫濃やかな大輪は百花の王らしい風格。



薄紫は清楚艶麗、高貴な女性を想わせます。



波うつ花弁あわく重なる、その陰翳が色濃やか。



紅白しぼり咲き、自分は初め見ました。



緋牡丹の透ける光彩、



丸い白花、なんか可愛いです、笑



この花寺で明日4月29日はぼたん祭が開かれます。
撮影した4月23日は蕾もありました、また違う花が開いて綺麗かなと。



どれも美しい百花の王、自分は白一輪に惹かれます。


撮影地:延命寺@神奈川県足柄上郡松田町

このお寺さんは地元の方の散歩道+法事も営まれる地域に大切なお寺です。
いつもは拝観料もなく観光地化ゼロ、禅寺らしい簡素を守られています。
もし訪問されるなら地元優先&マナー礼儀を遵守で。

○花はスマホでもカメラでも近づいて撮ることは厳禁です。根を踏んだり土を踏み固めるため植物の成長を妨げます、足もとの配慮を。
○枝を押しやったり花を触ることもNG、過って折ったり傷つけることは花にも育てた方にも失礼です。
○寺社で撮影する場合、ご挨拶のお参りはちゃんとしましょう。地元の方が大切にされる信仰の場であることを忘れずに。

雨ふり休憩合間、ちょっと気分転換にUPしました、笑

晩春の花寺ちょっと和んだら↓
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第84話 整音 act.18-side story「陽はまた昇る」

2016-04-25 22:25:20 | 陽はまた昇るside story
Or wash thee in Christ’s blood  この血ゆえに
英二24歳3月


第84話 整音 act.18-side story「陽はまた昇る」

午前6時、テラスは木洩陽の光だけ。

開け放した窓から梢鳴る、葉擦さらさら風がふく。
やわらかな空気すこし冷たくて、おかげで頭脳が醒まされる。

「ふ…、」

微笑んだ口もと緑かすかに香る、そんな窓の木々どれも緑あわい。
籐椅子もたれこむ時間ひそやかに静かで、止まったような朝に呼ばれた。

「英二さん、どうぞ?」

かたん、陶器かすかな音に紅茶が香る。
華やかな馥郁へ視線を動かして、渡された一杯に微笑んだ。

「ありがとう、中森さんも座ってくれる?」

今このまま話したい、そんな想いに穏やかな瞳が微笑んだ。

「先ほどの続きですか?」
「そのつもりで紅茶、淹れてくれたんだろ?」

笑いかけた前、微笑すこし銀髪かたむける。
あわい木洩陽の席、ネクタイ端正なニット姿は座ってくれた。

「お茶、冷めないうちにどうぞ?」

座って促してくれる声は優しい。
素直にひと口そっと啜りこんで、あまやかな湯気ごし尋ねた。

「中森さん、祖父が俺のことで怒るってどういう意味?」

数分前、庭でそんなことを言っていた。
確かめたくて見つめた先、静かな明眸は微笑んだ。

「そのままの意味です、克憲様を本気で怒らせるのは英二さんのことです、」

そんなこと、本当だろうか?

「俺より姉ちゃんのことだろ、あのひとが本気で怒るなら、」

言い返して紅茶くちつける。
そっと啜りこんで熱が甘い、馴染んだ香に家宰が言った。

「花とアキレス腱の違いですよ?」

どういう喩えだろう?

「…花とアキレス腱?」

つぶやいて言葉めぐらせる。
何を言おうとしているのか?その意味に自分なぞらせた。

「俺には周太がどっちもだな、いちばん綺麗で大事で、いちばん俺を支えてくれる弱点だ、」

やっぱり君を重ねてしまう、こんなことにまで。

―逢いたいよ、周太?

逢いたい、やっぱり君に逢いたい。

こんなこと今ここで願っても何もならない、そう解っている。
解かっているくせまた考えだす、どうしたら傍に行けるのだろう、離れないで済む?
もう諦めないといけない、そう解かっているくせ俤どうしても離れないまま明眸が笑った。

「それが答えですよ?」
「これが?」

戻された意識すぐ問い返す、ティーカップの向こう家宰は口開いた。

「英理さんは花です、愛しんで成長を見つめる宝物です。でも英二さんは見つめるだけじゃない、克憲様の全てを支える宝物なんです、」

全てを支える、だなんて本当だろうか?

「あの祖父が、支えなんて必要かよ?」

本音つい言い返す、だって解からない。
あの男にそんなものが要るのか?つい笑って、けれど言われた。

「昨日は英二さん、書斎で克憲様に泣かれたのでしょう?」

どうして?

「え…、」

どうして知っているのだろう、というより不思議だ。
だって自分でも信じられない、その本音に問いかけた。

「ほんとうに泣いていたんだ、あの祖父が?」

昨日あの書斎で見た、あれは現実だったのか?
まだ信じられない想いの真中、家宰は困ったよう微笑んだ。

「あの方でも泣くのですよ、あなたの事だけは本気で、」

穏やかな声に木洩陽がふる。
冷たい風やわらかな陽だまりの席、深い明眸が見つめてくれた。

「六年前、東大だけは受けないと英二さん言ったでしょう?あのときも克憲様は泣きました、克憲様と同じ母校は嫌だと英二さんが言ったからです、」

言葉ただ静かに見つめる、その記憶ゆるかに鼓動を敲く。
とくん、密やかなノック起きだすまま穏やかな声は続けた。

「司法試験に合格した時も泣かれました、宮田様も喜んでいるだろうと笑って涙ひとつ零されて。司法修習を受けないと言いに来られた時もです、あのとき克憲様と同じ官僚にはならないと英二さん言ったでしょう?あのあと食事もされず書斎に籠られました、次の朝も食事をとられませんでした、」

過去ひとつずつ話してくれる、その声は穏やかに優しい。
聴きながら見つめる小さなテーブル、あまやかな馥郁に言葉は続いた。

「英二さんが警察学校に入られた時もです、そうか、とだけ仰って書斎に籠ってしまわれました。奥多摩に配属された日もです、難しい山に登頂される時もです、英二さんが遭難救助される時も、いつも書斎に籠られては食事を忘れてしまわれます。だから観碕氏にも本気で怒っているんです、解かりますか?」

問いかける瞳ただ優しい。
けれど逸らせない強靭な眼ざしに溜息ひとつ言った。

「俺のこと本気で心配してるってことか?」
「そうです、他の何があると思いますか?」

答え訊き返されて鼓動そっと響く。
なぜだろう?まだ解らない本音こぼれた。

「その心配、宮田の祖父にだろ?」

問いかけた先、明眸が静かに見つめてくれる。
なんでも聴く、そんな眼ざしに声押しだした。

「あのひとは宮田の祖父を尊敬してるから俺を養子に欲しかったんだろ?それって宮田の孫だから大事ってことだよ、俺だからじゃない、」

自分の価値はどこにある?

そんな問いかけに鼓動が軋む、肋骨まで疼く。
包帯かすれるシャツの胸ふれて、ちいさな鍵の輪郭そっと掴んだ。

「俺っていう人間が欲しいんじゃないだろ、宮田總司の孫が欲しくて大事なだけだ、アキレス腱だなんて買い被りだよ?」

言葉ごと指先まさぐる、シャツ透かす金属が温かい。
ずっと自分の肌温めてくれた小さな合鍵、その想いに微笑んだ。

「本当にアキレス腱だとしてもさ、跡継ぎだから切れたら困るってことだろ?でも俺は子供を作るつもりないよ、もう裏切りたくないんだ、」

この合鍵を裏切りたくない、もう二度と帰られないとしても。

―周太、今なにしてる?

心もう呼んでしまう、今すぐ逢いたくて泣きたくなる。
こんな自分は弱いのだろう、それすら愉快なまま言われた。

「子供と信用は別問題です、彼のほうこそ子供を望みたいのではありませんか?」

図星だ、悔しいけれど。

「…そうだな、」

肯定に微笑んでティーカップくちつける。
熱い香ゆるやかに喉すべらす、ほっと吐いた呼吸に微笑んだ。

「やっぱり子供は作らないとダメかな、俺も周太も、」

そういう立場にお互いある、それ以上に感情もある。
その結末ひとつ率直な声が告げた。

「克憲様はやり直しをされたいと想っています、家庭人として素直になれませんでしたから、」

この言葉、時間どれだけ籠るのだろう?
そこにある想い笑いかけた。

「姉ちゃんには子供できると想うよ、それじゃ満足できない?」
「英理さんのお子様も大事ですが、英二さんのことも大事だと言うことです、」

即答すぐ返される。
やっぱりこう言われるんだ?笑った正面また言われた。

「それは彼も同じです、だから顕子様が介入されるのではありませんか?」

ことん、

肚ひとつ落ちて前を見つめる。
視界の真中ゆるやかな馥郁の先、穏やかな唇は微笑んだ。

「顕子様は英二さんの幸せも願われています、何があってもあの方は愛情を棄てられない方ですよ?だから彼のことも匿っておられる、」

優しい言葉、けれどそれだけじゃない。

「中森さん、いつから知ってた?」

与えられたヒントに微笑んで見つめる。
視線そのままに質問を投げかけた。

「周太が祖母の親戚だって俺の手紙を読む前から知ってたろ?事件の日に祖母を家に招いたのは、観碕の目的が周太だと知ってたからだよな、」

あの日に祖母がこの屋敷にいた、それは偶然じゃない。
そこにある背反の可能性に問いかけた。

「あの事件は観碕が企んだことだ、だから祖父は逆に利用して潰そうとしたんだろ?利用するなら観碕の目的を調べるに決まってる、でもその前だろ?」

問いかける前、静かな視線は逸らさない。
いつもどおり穏やかな明眸に一晩の結論を投げた。

「周太と祖母の関係を知ってるから事件のニュースを見せたんだろ、目的は検察庁に観碕を追い込ませるためだ。中森さんが周太を調べたのはいつだ?」

だから「知らない」は「知っている」と言うことだ。

『そういう顕子様だから克憲様にとって頭あがらない方なのです、だから今回も協力しましたが、ご事情を知れば克憲様も驚くと思いますよ?』

昨日そんなふう家宰が言った、あの言葉がヒントだ。
そうして導かれた結論に静かな明眸は微笑んだ。

「英二さんが保証人を変更された時です、」

陽だまりの席、穏やかな風すこし冷たい。
開け放たれた窓から鳥が聞える、まだ静かな朝に笑いかけた。

「中森さんなら戸籍も遡って取れるもんな、専属弁護士さん?」

この男が調べないはずがない。
そう解っていても小さな痛みに問いかけた。

「知ってたくせに昨日、手紙で驚いた貌したのは俺の機嫌を損ねないため?」

そうだとしたら今、誰を信じたら良いのだろう?

―そっか、俺、このひとを信じたかったんだ?

ほら自問に気づかされる、こんなふう自分は弱い。
どこか信じたい甘え残っている、そんな自覚に家宰兼弁護士は言った。

「驚いたのは英二さんの気持ちです、命懸けの真実に、」

陽だまりに言葉そっと響く。
その声じっと見つめた先、深い明るい瞳が微笑んだ。

「英二さんと彼が親しいことは調べれば解かります、でも親しいのは利用目的か暇潰しだと想っていました。今回の救助に志願されたこともです、」

ズイブンな言われようだな?

なんて想っても文句は言えない。
そんな過去に困って笑ってしまった。

「酷い言われようだけど、それくらい俺ってイイカゲンな奴だったもんな?」
「そうですね、器用な分だけタチが悪くて、」

また率直に言ってくれる、その瞳は温かい。
こういう相手だから信じたいと願って、ただ素直に笑いかけた。

「俺は器用でタチが悪いよ、でも周太のことだけは不器用で困ってる。こういうの…似てるかな?」

こんな質問ほんとうは悔しい、けれど微かに温かい。
どこか気恥ずかしい陽だまりの風、穏やかな声が笑ってくれた。

「似ています、だから克憲様を信じてもらえませんか?」

やっぱり似ているんだ?
納得ひとつ気が付いたまま口開いた。

「祖父は俺に、嘘吐いたことある?」

昨日の貌、あの眼が忘れられない。
確かめたい想いに深い眼ざし微笑んだ。

「嘘はありません、はぐらかしたり黙っていることはあるでしょうけどね?」

信じていいのだろうか、今なら。

―いろんな意味で潮時かな、今きっと、

ずっと信じられなくて、それでも今すこし変わってゆく。
もう時が来たのかもしれない、そんな陽だまり穏やかに笑った。

「朝飯の後、俺がコーヒー淹れるよ、」

これで少し伝わるだろうか?
想い笑いかけた先、家宰は微笑んでくれた。

「きっと喜びますよ、夕食は何がよろしいですか?」
「そうだな、あ?」

答えかけて思いだす。
そう言えば伝えていなかった、迂闊に可笑しくて微笑んだ。

「ごめん、夕食は外ですませる予定なんだ、」

相手は誰か、言わないでも解かるだろうな?
それだけ有能な男は肯きながら言った。

「わかりました、でも困ったタイミングですね?」

やっぱり「困った」ことになるんだ?
そんな気難し屋の未来予想に笑いかけた。

「出先でワインでも買ってくるよ、」


(to be continued)

【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】

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花木点景:王花の春

2016-04-25 22:00:02 | 写真:花木点景
花仙ひらく



花木点景:王花の春

山ふところ花の寺、牡丹が咲いています。



あでやかな薄紅、白の紅ぼかし。



光たたえる華やかな紅色。



三角形の花びら×紅ぼかし、唐絵の華そっくりです。



楊貴妃のかたわら咲くような。



薔薇のような幾重の深紅。



高貴やわらかな紫一花。



陰翳ふかい紅紫。



緑に映える桃色の八重二十重。



百花の王、その華ほころぶ寺の春。


第135回 昔書いたブログも読んで欲しいブログトーナメント
撮影地:延命寺@神奈川県

土曜に載せた牡丹寺の続篇です、笑

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山岳点景:桜巴

2016-04-24 22:20:00 | 写真:山岳点景
山ふところ花襲



山岳点景:桜巴

昨日、山腹の桜森にて。



今年は花がすこし早め、それでも枝垂桜と八重桜は残っていました。



薄緑の桜は御衣黄ギョイコウ、花色が薄緑=浅黄色から淡黄→薄紅と変化します。



御衣黄とよく混同されるのが鬱金ウコン、間違えられた表示をよく見ます。



もとから桜は遺伝子変化しやすく同種を保存するには挿木となります、なかでも鬱金は生育条件も難しく国内で現在確認されるのは27本。
いろんなところで鬱金の名札つけた木も見ますが花弁に緑線アリ、御衣黄と混同or遺伝子変化したのだと思います。
ソンナワケでこの森も鬱金はありません、ので、写真の緑系+黄色系の桜どれも御衣黄です。



鬱金と御衣黄の違いは緑色の線、この緑色は葉緑体によるものです。
鬱金は葉緑体が少ない=黄色が目だつ、御衣黄は多い=緑色が顕著に表れて咲き始めから緑の線が強くでます。



下は気多白菊桜ケタノシロキクサクラ、もう散りかけでしたが菊っぽい花の形が残っていました。



山懐の桜の森、多品種さまざま織りなす春の枝。



晩春の花曇り、あわい陽に透ける花はきれいです。



今春もまた逢えた花、来年もと春のごと願います。


撮影地:桜の山@神奈川県某所

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花木点景:牡丹花園

2016-04-23 23:50:14 | 写真:花木点景
山懐の仙女


花木点景:牡丹花園

牡丹の寺に偶然、行きつきました。


絵画そのままに咲く花たち。


華麗×繊細な造形、その瞬間を古くから描かれる花。


単色、けれど薄い花弁は透かす光に深まります。


惹きこむ陰翳、色彩、花弁の隆線。


絵巻に描かれた理想の花姿、その現まばゆく匂いたちます。


端整な姿に花守の手が優しいです。


黒紫から葡萄色、あざやかな大輪は蓮台のような造形美。


禅寺の静寂、花は艶やかなくせ清らか。


この寺の開基は遠山丹羽守直景、桜吹雪の刺青した北町奉行遠山金四郎の先祖です。


牡丹の根は牡丹皮という薬になります、そんな花寺の本尊は薬師如来。


山懐たたずむ花の寺、その晩春ただ美しいです。


第194回 1年以上前に書いたブログブログトーナメント
撮影地:延命寺@神奈川県

花を撮影する時、スマホでもカメラでも近づいて撮ることは厳禁です。
根を踏んだり土を踏み固めるため植物の成長を妨げます、撮るときは足もとの配慮を。
また枝を押しやったり花を触ることもNG、過って折ったり傷つけることは花にも育てた方にも失礼です。
美しい花は高嶺の花、ちょっと離れたところから望遠を効かせて撮るほうがイロイロ美しいのでは?笑

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