For all sweet sounds and harmonies あまい香も聲も、
未来点景 soliloquy めぐる秋に、―another,side story
ちいさな日常ちいさな喧嘩、その始まりは君。
だって遅れてきたくせに、いきなりその質問?
『おまたせ周太、そのメール誰?』
こんな質問ほら、あれだ、プライベートの侵害?
つい睨んだテーブル越し、白皙の笑顔きれいに言った。
「遅れてごめんな周太、これでも走ってきたんだけど許してくれる?」
ずるい、その笑顔。
―ついゆるしたくなっちゃう、ね…きれいで、
切長い瞳ふちどる睫こまやかな陰翳、あの翳り哀しそうで。
白皙なめらかな輪郭シャープに削ぐ、そのライン凛々しくて見惚れてしまう。
特にほら、顎から首すじ凛々しいライン、シャツの襟元あざやかな鎖骨のくぼみ、まるで彫刻のよう惹きこまれる。
もう言いなり全部ゆるしてしまいたい?そんなカフェの窓辺、マグカップに白皙の指ふれた。
「これココア?ひとくち飲ませてよ、周太?」
長く細い指がマグカップからむ。
そんな仕草ひとつ綺麗で、つい惹きこまれかけて首ふった。
「だめ、英二は英二で頼んで?」
「俺は俺でオーダーしたよ、でも今すぐ飲みたいんだ、」
言い返してくれる低い綺麗な声。
見つめ返す瞳も綺麗で、つい見惚れてマグカップ盗られた。
「あ、」
声が出て、でも手が出遅れる。
そのまま白皙の手はマグカップかたむけ、凛々しい唇そっと口つけた。
ほら?首すじもう熱い。
―だめこんなのいしきしちゃだめ、でも、
意識してしまう見てしまう、あの唇。
こんなこと馬鹿みたいだ?そう解かっているのに逆上せて熱い。
こうなると解かっているから止めたい唇、けれど勝手に飲んでしまった笑顔ほころんだ。
「ほっとするな、あまいのも良いね周太?」
きれいな低い声が笑ってくれる。
こんな声ほんとうに大好きで、つい頷いた。
「ん…あまいのもいいよ?」
「そうだな、周太なんか甘いもの頼んだ?オレンジケーキとか美味そうだよ、」
笑ってメニュー広げてくれる。
指さす白皙あいかわらず綺麗で、でもどこか逞しくなった。
―きっと山だね…毎日の訓練でザイル繰って、
出逢ったころ、長い指は節くれ一つなかった。
―苦労知らずの手って思ったな、おぼっちゃまのクセにって…はらがたって、
なめらかな白皙の手、細く長い美しい指。
傷ひとつない手に育ちから全て見えるようで、けれど今はもう違う手。
いくども豆潰し、火傷も負い、薄れてはいるけれど無数の傷痕が刻まれた手。
―こんなだから憎めないんだよね、こんな…遅刻されても、ね?
どうして今も遅れたのだろう?
なんて話してくれるまで訊かない、でもそれでいい。
そんなふう想えるほど時間いくつも重ねた相手は綺麗な笑顔で言った。
「それで周太、さっきのメール誰?」
やっぱり訊くんだね?ああもう台無し。
「かんけいないでしょ?」
ほら言い返してしまう、だから訊かれたくないのに?
こんな面倒リンクの始まりに綺麗な低い声が笑った。
「関係あるよ周太、周太の予定が解からないと俺も困るだろ?」
「こまるって、なにが困るの?」
また言いかえす、マグカップ取り返し抱えこむ。
口つけかけて、ふっと馥郁かすかな甘さに首かしげた。
「…英二、香水を変えたの?」
いつもと違う甘い香、これは君の匂いと違う。
けれど知っている甘い香に大好きな声が笑いかけた。
「変えてないよ?たぶん花じゃないかな、」
「…花?」
尋ねて見た先、白皙の笑顔が窓を見る。
切長い瞳の視線そっと追いかけて、懐かしいオレンジ色に微笑んだ。
「ん…きんもくせい咲いたんだね、」
あまい芳香やわらかに咲く、この香は秋を呼ぶ。
あまい風さわやかに頬ふれて、すこし開いていた窓に笑ってくれた。
「そうだ、キンモクセイだったな?匂いは憶えてたんだけどさ、」
「記憶に残る香だよね、金木犀…いいにおい、」
微笑んだ唇そっとあまくなる。
風かすめる甘さにマグカップ口つけて、ひとくち甘くて息呑んだ。
―あ、かんせつきす?
ああどうしよう、同じマグカップ口つけてしまった。
気恥ずかしくて、もう熱い首すじ掌そっと隠しこんだ。
―だからだめっていったのにえいじったらもう、
心裡つい文句ながれる。
でも声にできない気恥ずかしさに綺麗な低い声が言った。
「周太の予定がわからないと俺、困るよ?予定を考えないといけないだろ、飲みいくなら誰とどこなのか教えて周太?」
また話が戻るんだ?
飽きず廻らされる会話にタメ息こぼれた。
「予定って…別にいいでしょ?英二いつも帰り遅いんだから、」
「俺のが遅いかもしれないけどさ、でも夜の予定は大事だろ周太?」
すぐ言い返して見つめてくれる、この眼ざしに揺らぎそう。
だって睫こまやかな陰翳が綺麗だ、つい惹きこまれそうで首ふった。
「…しつこいえいじ、」
「しつこいよ俺は?周太にそれだけ夢中だから、」
さらり言い返してくれる、その言葉に熱また逆上せだす。
こんなに赤くなるなんて恥ずかしい、唇そっと噛んだまま言われた。
「周太は酒弱いだろ?俺が迎えにいかないといけないし、飯も俺一人になるしさ、夜のこともあるから教えてよ周太?」
たしかに自分はアルコールに弱い。
たしかに迎えに来てもらうかもしれない?納得して、けれど止まった。
「…よるのこと?」
それ、何のことだろう?
立ち止まった思考に綺麗な声が笑いかけた。
「飲みすぎた夜はセックスよくないだろ?だから前の晩にしとかないといけないからさ、いつどこで誰と飲むのか教えてよ周太?」
ああもうなんてこと言うんだろうこんな場所で?
「……もうしらない、」
かたん、
椅子が鳴って立ちあがる、だって顔こんなに熱い、きっともう真赤だ。
こんなの恥ずかしくて、読みかけの本と鞄つかんで見おろして告げた。
「おかいけいしといてえいじ、じゃあね?」
「え、待ってよ周太?」
がたん、椅子もうひとつ鳴る。
立ちあがった長身はシャツさわやかで、その困り顔も綺麗で見惚れたくなる。
こんな顔いつも毎日ずっと見ていたい、そんな想い見つめながらもカフェの片隅、そっぽ向いた。
「さきにかえってるから、」
先に帰っている。
そう言える日常なんて、ありふれている。
だけど自分には大切で、愛しくて、得難かった今に扉を開いた。
同じ帰り道へ、君と。
(to be continue)
周太と英二もたまにはノンビリで、笑
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周太某日@第85話+X日後
未来点景 soliloquy めぐる秋に、―another,side story
ちいさな日常ちいさな喧嘩、その始まりは君。
だって遅れてきたくせに、いきなりその質問?
『おまたせ周太、そのメール誰?』
こんな質問ほら、あれだ、プライベートの侵害?
つい睨んだテーブル越し、白皙の笑顔きれいに言った。
「遅れてごめんな周太、これでも走ってきたんだけど許してくれる?」
ずるい、その笑顔。
―ついゆるしたくなっちゃう、ね…きれいで、
切長い瞳ふちどる睫こまやかな陰翳、あの翳り哀しそうで。
白皙なめらかな輪郭シャープに削ぐ、そのライン凛々しくて見惚れてしまう。
特にほら、顎から首すじ凛々しいライン、シャツの襟元あざやかな鎖骨のくぼみ、まるで彫刻のよう惹きこまれる。
もう言いなり全部ゆるしてしまいたい?そんなカフェの窓辺、マグカップに白皙の指ふれた。
「これココア?ひとくち飲ませてよ、周太?」
長く細い指がマグカップからむ。
そんな仕草ひとつ綺麗で、つい惹きこまれかけて首ふった。
「だめ、英二は英二で頼んで?」
「俺は俺でオーダーしたよ、でも今すぐ飲みたいんだ、」
言い返してくれる低い綺麗な声。
見つめ返す瞳も綺麗で、つい見惚れてマグカップ盗られた。
「あ、」
声が出て、でも手が出遅れる。
そのまま白皙の手はマグカップかたむけ、凛々しい唇そっと口つけた。
ほら?首すじもう熱い。
―だめこんなのいしきしちゃだめ、でも、
意識してしまう見てしまう、あの唇。
こんなこと馬鹿みたいだ?そう解かっているのに逆上せて熱い。
こうなると解かっているから止めたい唇、けれど勝手に飲んでしまった笑顔ほころんだ。
「ほっとするな、あまいのも良いね周太?」
きれいな低い声が笑ってくれる。
こんな声ほんとうに大好きで、つい頷いた。
「ん…あまいのもいいよ?」
「そうだな、周太なんか甘いもの頼んだ?オレンジケーキとか美味そうだよ、」
笑ってメニュー広げてくれる。
指さす白皙あいかわらず綺麗で、でもどこか逞しくなった。
―きっと山だね…毎日の訓練でザイル繰って、
出逢ったころ、長い指は節くれ一つなかった。
―苦労知らずの手って思ったな、おぼっちゃまのクセにって…はらがたって、
なめらかな白皙の手、細く長い美しい指。
傷ひとつない手に育ちから全て見えるようで、けれど今はもう違う手。
いくども豆潰し、火傷も負い、薄れてはいるけれど無数の傷痕が刻まれた手。
―こんなだから憎めないんだよね、こんな…遅刻されても、ね?
どうして今も遅れたのだろう?
なんて話してくれるまで訊かない、でもそれでいい。
そんなふう想えるほど時間いくつも重ねた相手は綺麗な笑顔で言った。
「それで周太、さっきのメール誰?」
やっぱり訊くんだね?ああもう台無し。
「かんけいないでしょ?」
ほら言い返してしまう、だから訊かれたくないのに?
こんな面倒リンクの始まりに綺麗な低い声が笑った。
「関係あるよ周太、周太の予定が解からないと俺も困るだろ?」
「こまるって、なにが困るの?」
また言いかえす、マグカップ取り返し抱えこむ。
口つけかけて、ふっと馥郁かすかな甘さに首かしげた。
「…英二、香水を変えたの?」
いつもと違う甘い香、これは君の匂いと違う。
けれど知っている甘い香に大好きな声が笑いかけた。
「変えてないよ?たぶん花じゃないかな、」
「…花?」
尋ねて見た先、白皙の笑顔が窓を見る。
切長い瞳の視線そっと追いかけて、懐かしいオレンジ色に微笑んだ。
「ん…きんもくせい咲いたんだね、」
あまい芳香やわらかに咲く、この香は秋を呼ぶ。
あまい風さわやかに頬ふれて、すこし開いていた窓に笑ってくれた。
「そうだ、キンモクセイだったな?匂いは憶えてたんだけどさ、」
「記憶に残る香だよね、金木犀…いいにおい、」
微笑んだ唇そっとあまくなる。
風かすめる甘さにマグカップ口つけて、ひとくち甘くて息呑んだ。
―あ、かんせつきす?
ああどうしよう、同じマグカップ口つけてしまった。
気恥ずかしくて、もう熱い首すじ掌そっと隠しこんだ。
―だからだめっていったのにえいじったらもう、
心裡つい文句ながれる。
でも声にできない気恥ずかしさに綺麗な低い声が言った。
「周太の予定がわからないと俺、困るよ?予定を考えないといけないだろ、飲みいくなら誰とどこなのか教えて周太?」
また話が戻るんだ?
飽きず廻らされる会話にタメ息こぼれた。
「予定って…別にいいでしょ?英二いつも帰り遅いんだから、」
「俺のが遅いかもしれないけどさ、でも夜の予定は大事だろ周太?」
すぐ言い返して見つめてくれる、この眼ざしに揺らぎそう。
だって睫こまやかな陰翳が綺麗だ、つい惹きこまれそうで首ふった。
「…しつこいえいじ、」
「しつこいよ俺は?周太にそれだけ夢中だから、」
さらり言い返してくれる、その言葉に熱また逆上せだす。
こんなに赤くなるなんて恥ずかしい、唇そっと噛んだまま言われた。
「周太は酒弱いだろ?俺が迎えにいかないといけないし、飯も俺一人になるしさ、夜のこともあるから教えてよ周太?」
たしかに自分はアルコールに弱い。
たしかに迎えに来てもらうかもしれない?納得して、けれど止まった。
「…よるのこと?」
それ、何のことだろう?
立ち止まった思考に綺麗な声が笑いかけた。
「飲みすぎた夜はセックスよくないだろ?だから前の晩にしとかないといけないからさ、いつどこで誰と飲むのか教えてよ周太?」
ああもうなんてこと言うんだろうこんな場所で?
「……もうしらない、」
かたん、
椅子が鳴って立ちあがる、だって顔こんなに熱い、きっともう真赤だ。
こんなの恥ずかしくて、読みかけの本と鞄つかんで見おろして告げた。
「おかいけいしといてえいじ、じゃあね?」
「え、待ってよ周太?」
がたん、椅子もうひとつ鳴る。
立ちあがった長身はシャツさわやかで、その困り顔も綺麗で見惚れたくなる。
こんな顔いつも毎日ずっと見ていたい、そんな想い見つめながらもカフェの片隅、そっぽ向いた。
「さきにかえってるから、」
先に帰っている。
そう言える日常なんて、ありふれている。
だけど自分には大切で、愛しくて、得難かった今に扉を開いた。
同じ帰り道へ、君と。
(to be continue)
周太と英二もたまにはノンビリで、笑
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