萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚326

2015-01-31 01:25:05 | 雑談寓話
「仕事では今までどーり連絡応えてくれるんよ、でもプライベートは三度にいっぺんやねん。そんな毎日プライベートメールはしてないねんけどな?」

ってハルが言った有給休暇7月後半@新居にて、
その「連絡応えてくれる」相手の対応にちょっと心配で訊いてみた、

「先輩サンの体調は最近どう?」
「なんや、ホンマのサヨナラ準備みたいなこと言わんといて?」

と言いながらハルの大きな目が泣きそうになって、
そんな貌から現状が見えるみたいで訊いた、

「あまり体調良くなさそうなんだ?」
「ん…早退ーとかなあ…」

考えこむよう不安げになる、
このこと最近ずっと考えていた、そんな貌でハルは言った、

「なあ、ヒトって死期が近いと遠ざかるもんなんやろかー…お父ちゃんの時もそうやったん、」

古傷が抉られる、そうハル自身がいちばん気づいている。
それなのに離れたがらない理由笑いかけた、

「ハル、だから先輩のこと一生懸命に好きなんだ?笑」

一生懸命に好きになる、それはリハビリとも似ているかもしれない。
そう思える友達は寂しげに笑った、

「そうやな、お父ちゃんのこと重ねて見とるとこあるわ。そういうの気づかれとるから恋人にして貰えんのかな?」

思春期に亡くした父親、その残像を今また失う?
それをハルの先輩は気づいて、だから恋人にならず保護者でいるのかもしれない。
そんな結論はハルも解っているんだろう、それなら言う必要もないまま笑った、

「真性ファザコン見抜かれて?笑」
「せやねん、私ホンマにファザコンやからなあ、お父ちゃんラブや、」

笑って言って、その大きな目は寂しそうでもなにか明るくて、
で、その明るさが悪戯っ子に笑って訊いた、

「で、トモは例の御曹司クンとドウなっとるんか?さっき適当にボカシタやろ、ちゃんと答えんか?」

追及まだするんだ?笑


ちょっと書いたんでUPします、眠いけど。
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第82話 声紋 act.5-another,side story「陽はまた昇る」

2015-01-30 21:53:41 | 陽はまた昇るanother,side story
will trust 君の聲に



第82話 声紋 act.5-another,side story「陽はまた昇る」

ほら、君のメールは写真から僕を攫う。

「ん…きれいだね、英二?」

白銀まばゆい稜線の涯、昇らす雲に空が青い。
この道を登ってゆくのだろう、そんな写真の言葉を周太は開いた。

From  :英二
Subject:哲人
本 文 :北岳にいるよ、穏やかだけど気温が低い。
     山肌は地面から凍ってるよ、アイゼンの感覚に帰ってきたって嬉しくなる。
     四人で登るのは初めてだけど夜が凄そうだよ、でも沈黙は守るから心配しないで?
    
夜が凄そうってなんだろう?

言葉に首傾げさせられる、雪山の夜は何が凄いのだろう。
考えてみても経験サンプルが無くて解らない、そのまま返信つづりながら考えてしまう。

「…雪山の夜は初めてじゃないよね、英二は…四人だから?」

ひとりごと零れながら指先は文字つづる。
こんな他愛ない時間も何度目だろう、幸せで、けれど言葉また戻る。

『親子でも指紋一致は無いが、まったく無縁のヤツが14年前に亡くなった指紋を残すなんか不可能だろ?あとは本人の幽霊だ、』

低く透る声が告げた推定は、このメール相手を示してしまう。
示すのは正体と、そして意図だ。

「…幽霊になるつもりなの、英二?」

声こぼれて溜息そっと部屋に融ける。
独りの自室は夜に鎮まらす、この静寂に考えてしまう時間は無駄だろうか?

―お父さんの指紋まで付けられるのかな、いくら英二でも?

十四年、その時の長さにも父の指紋は遺る?
遺るとしても入手する方法はあるだろうか?

―家に出入りしているから指紋はあるだろうけど、でもお父さんだけの指紋をどうやって?

書斎に父の指紋は遺るだろう、けれど十四年間に自分と母の指紋と交ざっている。
そこから父だけの指紋を特定して十指すべて再現するなど出来るだろうか?
考えるごと解らなくなる、なぜ君はここまでするのだろう?

『警視庁に証拠があると考えている。その根拠が何か解らないが、蒔田部長も同じ考えだからパソコンを使わせたんだろ、』

蒔田地域部長、父の同期と英二はパソコンで何をしたのか?
それは共通目的「証拠」のためだろう、だから解らなくなる。

英二と蒔田、どちらが主導なのだろう?

「…英二、あなたは誰…?」

そっと溜息ひとつ呼びかけて本音、すこし怖い。
あの端正な美しい笑顔の素顔はどこにあるのか、知りたいけれど解らない。
だって再会しても何も話してくれなかった、それほど自分は評価も信頼も無いのだろうか?

「英二にとって僕は…なにかな?」

ひとりごと微笑んで送信ボタンそっと押す。
このメールいつ読んでもらえるか解らない、だって相手は雪の高峰にいる。
あの場所では携帯電話も切って電力温存が普通だ、そう解るから無い物ねだりしたくなる。

―今知ってること話せたら何か変わるのかな、それとも…やっぱり話してくれないかな、

今知っていることで英二が知らないことは何だろう?

田嶋教授の存在は英二も知っている、だって「幽霊」は東京大学にも現れた。
祖父の小説も英二は知っているのだろう、だから仏文研究室に訪れたし祖父の拳銃は消えた。
蒔田と父の関係も当然よく知っている、そうじゃなきゃ庁舎の監視カメラに幽霊は写らない。

でも多分きっと、樋本清志ともう一人の狙撃手は知らない。

「でも…話しても話してもらえないかも、ね、」

つぶやき声から想い、あの笑顔ひとつに廻ってしまう。
こんなふう誰かを考えこむ時間は2年前に無い、だから尚更に今を途惑ってしまう。

なぜ自分はこんなにも拘るのだろう、あのひとに?

途惑い独りの部屋ため息ひとつ、そっと音が聞えてしまう。
この静けさ今は寂しくなる、そんな本音を気づかれていたのかもしれない。

「…だから伊達さん、ご馳走してくれたのかな?」

ひとりごと微笑んで台所に立ち、マグカップひとつ紅茶を淹れてみる。
馥郁ゆるやかな湯気やさしい、花のような香ごと抱えてソファ座りテレビ点けた。

「続いてのニュースです、先月に起きた…の容疑者が逮捕されました、否認するも……季節の便りです、新宿御苑の梅が咲きはじめました…」

流れだすアナウンスと画面なにげなく白梅に惹きつけられる。
あのベンチも暫く座っていない、その懐かしさに白梅ひとつ懐かしい。

―そういえば梅の季節は一緒に行ってないよね、えいじと、

ほら、懐かしんで笑顔また想ってしまう。
あの笑顔に逢いたい、あの声を聴いて話したい、そんな願いに水仙あまく香った。

「ん…きれいだね?」

小さなテーブルの上に白と黄色あわく咲く。
星のような花に翡翠色やわらかな葉が凛と涼しい、この花に想いまた途惑う。

『私の名前は由希よ、由縁の由に希望の希って書くの。雪の朝に生まれたからって父が付けたのよ?』

ほら色白の笑顔がまぶしい、あの笑顔に花が明るます。
そう明るく想う本音はメール相手への孤独感だろうか?

「ね、英二…もう秘密にする理由なんて無いのに、なぜ?」

湯気ゆるやかなマグカップに問いかけて、そっと啜りこんだ紅茶が熱い。
こんなふう雪山にも紅茶を飲むだろう、そう偲んでしまう時間に今あなたが遠い。



T o  :英二
Subject:Re:哲人
本 文 :写真すごくきれいでした、ありがとう。
     都心も冷えこんでいます、鍋料理がおいしかったです。
     沈黙は守るほうが無難だけれど、でも解らなくなることも多いって僕は想うよ?
    



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山岳点景:山間の列車

2015-01-29 21:00:00 | 写真:山岳点景
氷瀑にて



山岳点景:山間の列車

芦ヶ久保の氷柱@埼玉県秩父にて、
氷柱の展望台から撮ったんですけど、背後は↓こんな感じです。

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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚325

2015-01-29 10:38:03 | 雑談寓話
有給休暇7月後半@新居にて、

御曹司クンとその後どうなっとるん?

と学生時代の友人ハルに訊かれ、
御曹司クンメールの着歴を見せて、で、言われた、

「なんや、返信ちっともしてへんやん?」

そういえば返信済みマーク出るんだったな?
って言われて思い出して笑った、

「だね、笑」
「だね、ってホンマSやねえ、返信ほしいからメールくれるんやろに、」

なんて同情的トーンで言われて、
だから気がついて訊いてみた、

「先輩からのメールとか減った?」

我が身のこと、だから同情的になる?
そんな空気に訊いたらハルは凹んだ、

「はあーーなんでトモって即・図星やねん?」

当たりらしい、
そんな台詞&凹み顔につい笑った、

「ハルは解りやすいから?笑」
「はあ、もお単純オバカ言うことかいな?」

苦笑×照笑、
そんな顔で笑ってハルは言った、

「仕事では今までどーり連絡応えてくれるんよ、でもプライベートは三度にいっぺんやねん。そんな毎日プライベートメールはしてないねんけどな?」

距離を測っているor作りたがっている?
そんな彼の対応にちょっと心配で訊いてみた、

「先輩サンの体調は最近どう?」

これが一番の原因かもしれない、
その現実にハルの大きな目が泣きそうになった、

「なんや、ホンマのサヨナラ準備みたいなこと言わんといて?」



移動中ちょっと書いたんでUPします、車窓の雪山がきれいでした、笑
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山岳点景:水の一瞬

2015-01-28 22:00:00 | 写真:山岳点景


山岳点景:水の一瞬

芦ヶ久保の氷柱@埼玉県秩父にて。



近づくと氷の成り方が解かりやすいです。
上みたいな草木の枝が凍りつく→その氷に雫が凍りつく→で、下のような氷柱になります。



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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚324

2015-01-28 01:25:01 | 雑談寓話
退職した7月の後半は有休消化期間=夏休みで、
その前半は引越&フィールドワークに充て、後半は新居に慣れる&友達に会うで過ごした、
で、学生時代の友達や遠方の友達が新居に泊りに来たりもしたワケで、

「おーキレイに住んではるなあ、中古物件やろ?」
「ペット可のとこは大概中古だよ、笑」

なんて会話から学生時代の友達ハルの訪問は始まって、
ソファで寝転がってる悪戯坊主の相手してくれながらハルは言った、

「なあ、転職したついでに引越したんやろ?でも前に居たとこも新しいとこに近いやん、やっぱシガラミ切る為に引越たんか?」

またそういうこと訊くんだな?笑
こんな相変わらずな友達に笑った、

「結果シガラミ切るのに良かったけど?笑」
「お、何があったん?」

聴かせてよ?
そんな貌してくれる相手に言った。

「前の部屋、最後の客は前に話したバイのヤツだったよ?笑」

これだけ言えば通じるだろう?
そう思った通りハルは瞬きイッコ訊いてきた、

「御曹司くんとか呼んでる子やろ?トモに告白しまくってたヤツやん、そんなん泊めて一晩無事だったんか?」
「それって襲われなかったか訊いてる?笑」

即答に訊き返しながら可笑しい。
だってこんな質問フツーないだろう?そんな笑いに言われた。

「そら襲われたか気になるわぁ、夜一晩ふたりきりで何も無いとか難しいやろ?」
「ナンも無いよ、ハルこそ彼と二人きりで何も無いとかホント?笑」

なんて返事して、で、ハルが訊いてきた、

「私は何かあったら嬉しいんやけどな、で、トモは御曹司くんと引越し後はどないしてるん?」

やっぱりソコを訊くんだな?
そんな質問に開いた携帯電話、いくつかの着信履歴を見せて笑った。

「メールは向うからくれてるよ、返事は2回に1回するかどうかだけどね?笑」



カナリ眠いです、でもすこし書いたんでUPします、笑
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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚323

2015-01-27 00:00:03 | 雑談寓話
急だけど花サンが泊りに来た7月たぶん金曜日、

From:御曹司クン
本文:帰ってきてるんだよな?でも居場所もう解んないけどさ。

なんてメールが着て、
すごいタイミングで来るもんだなって可笑しかった、笑

「あ、メール?返信とか遠慮しないでね、」

って花サンが言ってくれるのもまた可笑しくて、
こんな話題タイミングのメールに困りながら言ってみた、

「御曹司クンからだよ?居場所が解からないって拗ねてる、笑」
「そりゃ拗ねるでしょ、あっちは大好きなんだから、」

なんてヤヤつっけんどんに言われて、
そんな御機嫌に本音が見えて訊いてみた、

「花サンも大好きなのにって拗ねてる?御曹司クンに対して、笑」

声かけて蕎麦猪口に酒を注いだ前、
彼女の眼がすこし大きくなって笑いだした、

「大好きっていうのは自信ないなあ、でも拗ねたい気分は本当かも?」
「それなら頑張ってみなよ?笑」

笑いかけて蕎麦猪口の酒呑んで、
その前でワイン飲んでる笑顔は訊いてきた、

「頑張るって、御曹司サンと恋人関係になってガンバレってこと?」
「御曹司クンに拗ねたい気分があるならね、笑」

笑って言って、ワイングラス片手の笑顔がすこし考えこんで、
それから彼女は言った、

「ね、もしかして二度と御曹司サンと会わないツモリ?引越し先も転職先も話していないんでしょ、メールだけにするの?」

その質問やっぱりしたいよね?
そんな貌に想うことそのまま言った、

「メールもそのうちしなくなると思うよ、そのうちケンカみたいなコトになるだろうしさ、笑」

きっと近々、ケンカじみたことになるだろう?
だって逢いたがってるのに拒絶したら二択だ、

逢いたい要望を頷くか、拒絶したまま自然消滅か。

そういうのは友達でも恋人でも家族でも変わらない、
ホントに家族は血縁と財産関係が切りきれないから続くこともある、
でも御曹司クンとは他人で、恋人でもなく連絡ツールも携帯電話経由でしかない、

もし番号&アドレス変えたらホントに終わりだな?

そんなこと考えながらも近々ホントに終わるんだろなって思ってた、それがお互い幸せだろうから。


カナリ眠いです、でもすこし書いたんでUPします、笑
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第82話 声紋 act.4-another,side story「陽はまた昇る」

2015-01-26 22:40:00 | 陽はまた昇るanother,side story
sonagram 君の軌跡



第82話 声紋 act.4-another,side story「陽はまた昇る」

湯原の父親と似てたからだよ、あの画像の男。

そう言われてしまった人を今、どうやって庇えば良いだろう?
そう想うけれど知りたい、何を目的で監視カメラに映ろうとしたのか?

「伊達さん今言いましたよね、あの画像の人は僕の兄じゃないのかって。同じことを新宿署にいる時も訊かれました、でも僕は兄の存在なんて知りませんし父が母以外の人がいたなんて考えられません、それに、なぜあの画像の人が復讐で動いてると考えるんですか?」

一息に問いかけ並べた食卓は湯気が温かい。
のんびりした食事の風景、それなのに言葉は緊迫するまま周太は穏やかに尋ねた。

「僕の兄が復讐のために蒔田さんの部屋へ行く、そう考えるだけの情報と理由が伊達さんにはあるんですよね?僕にも教えてくれませんか、」

伊達は優秀だ、その頭脳は信じられる。
けれど頭脳を使う動機と根拠は解らない、それなら訊いてしまえば解かるだろう。
あの人「画像の男」英二が何を考えているのか、そして伊達が何を知り何を考えているのか?

「伊達さん、僕のこと心配して援けるつもりなら教えてくれますよね?伊達さんがこの画像を探しだした理由を話してください、」

なぜ英二の画像を探しだしたのか?
それを聴けば伊達の理由と事情がうかがえる、そんな意図に沈毅な瞳がすこし笑った。

「画像を探した理由は湯原が心配だからだ、庁舎の外壁に何かを見たなんて怪談話か精神疾患の前兆だろ?湯原の精神状態がまともなのか知りたかった、」

去年12月の映像だ、湯原、窓の外に見えるモノは何だって俺に訊いたこと憶えてるか?

隠された監視室で伊達はそう言っていた。
あの言葉あらためて投げかけられる、その理由に問いかけた。

「僕が幻覚を見たと疑ったんですか?それにしては調べるのが遅いですよね、あれは12月のことで今もう2月ですよ、」
「あの部屋を使う時間の問題だ、この2ヵ月チャンスは少なかったの湯原も解かるだろ?」

穏やかな冷静が問い返してくれる。
もう空いてしまった土鍋はさんだ向こう、かちり卓上コンロを消すと伊達は言った。

「あれは勝山さんの事があった直後だったろ?あのとき、血だまりの中で叫んでた湯原がまともに見えると思うか?」

勝山の事、血だまり。
その言葉から2ヵ月前の事件が映って、そして自分が叫ぶ。

―…お願い死なないでお父さんっ、僕が待ってるからいかないで!

銃声、赤い飛沫、鉄じみた匂いと青い制服姿。
喘息の発作が起きそうで駈けこんだ洗面所、その真中で制服姿の青年が倒れこんでゆく。
首から血を流して右手は拳銃を握って、声も無く床へ倒れた横顔は他人のはずが父に見えてしまった。

「憶えてるか?お父さんって湯原は叫んだんだ、他人でまだ若い勝山さんに父親を呼ぶなんて普通じゃないだろ?だから庁舎の外壁のことも調べたんだ、」

低く透る声が話してくれる、そのトーンが穏やかに落着かす。
ことん、納得ひとつ肚に落ちながらも尋ねた。

「その結論を教えてくれますか?僕が見たものは幻覚じゃない人間だとしたら、何のために彼は現れたんですか?」

何のために「彼」英二は現れたのか?
その目的を知りたい願いに食卓ごし、沈毅な眼差しは言った。

「たぶん幹部端末の使用が目的だ、あの日の翌日に蒔田部長のパソコンはメンテナンスに出されている、キーボードの指紋鑑定されたんだろう、」

なぜ英二は蒔田の部屋を訪れたのか、わざと痕跡を残して?

―きっと英二は指紋なんて残していない、でも監視カメラに入室する顔だけ残して…なぜ?

告げられた事実にもう考えだす、なぜ「顔」だけ残したのだろう?
思案めぐらせながら確かめたい一点を訊いた。

「その情報って伊達さん、どうやって手に入れたんですか?」
「部長付のヤツが同期にいる、」

答えて、シャープな瞳すこし笑ってくれる。
その言葉に今日までの行動を伺い尋ねた。

「あの画像を見つけてから同期の方を誘導尋問したんですね?」
「おかげで湯原に質問するの遅くなった、」

言いながら土鍋のなか浚えてゆく。
残っていた中身すべて椀ふたつ盛り、片方こちら渡して言った。

「画像探しはそんなに手間じゃない、あの日あの時間の前後で庁舎内を調べれば済む。でもあのワンショットしか写ってないんだ、幽霊画像みたいだろ?」

幽霊画像、だなんて?

「…ふっ、」

あのひとが幽霊、そう言われて笑ってしまう。
つい吹きだした食卓ごし精悍な貌も笑いだした。

「笑っちゃうよな、幽霊とかって子供じみてるだろ?でも他に写って無かったらそう思うぞ、」

確かにそう思うだろう、だから「わざと映った」んだ?
こんな子供だましでも影響力はある、その実例に笑いかけた。

「そうですね…でもあの部屋でゆうれいって怖そうですね?」
「正直ちょっと怖かった、でも安心のが大きかったな、」

笑って箸動かしだす。
椀から白菜を口入れて、飲みこみ伊達は言った。

「もし幽霊だとしても湯原が見たものを俺も見たってことだ、なら湯原は精神疾患の幻覚を見たんじゃない。まあ俺もオカシクなってるかもだがな?」

恐怖より安心、そう伝えてくれる言葉は温かい。
だって「俺も」と言ってくれた、その言葉ひとつ見つめ微笑んだ。

「集団催眠でしょうか?今のところ僕と伊達さんだけですけど、」
「それも思ったけどな、他の人間にも確かめれば解かるけどさすがに無理だろ?でも湯原には確かめてほしかったんだ、」

話してくれるテーブルは出汁の香ゆるやかに温かい。
こんな匂いも少し前まで消えていた、すこし緊張ほどけるまま口開いた。

「壁で見たときは遠目で顔まで見ていません、でも伊達さんは地域部長の廊下の人が同一人物だって思うんですよね?」
「辻褄が合うからな、監視室でも言った通りだ、」

応えながら椀をとり口つける。
呷りこんで、ほっと息吐くと俊敏な眼差しが言った。

「ただ幹部の端末を使うならIDとパスワードが要る、それに、あの画像より前に蒔田部長は部屋に戻っているからな、部長と面識があるヤツじゃないとパソコンに触ることは出来ないはずだ。でも部長はあの画像後すぐ退室して部屋の前で俺の同期と話していた、そのまま男は部屋から出ていない、」

すぐ退室して「部屋の前で」伊達の同期と話していた。
その事実は強固なアリバイになってしまう、そう気づかされて息そっと呑んだ。

―蒔田さんが協力してるってことだけど、でもどうして?

蒔田は父の同期、それだけで英二に協力するだろうか?
考えて、思いだした「過去」にまた思案しながら明敏な声が続けた。

「アルパインクライマーなら外壁を伝う技術がある、非常用の侵入口を使って部長の部屋から他の階へ壁から移ることも可能だ。パソコンに触らせてもらえるほど蒔田部長と親しくて外壁を伝う技術がある男が幽霊の正体になる、その該当者は山岳救助隊なら複数いるだろうけど、でも顔が不思議だろ?」

不思議じゃない、その条件すべて合う人は一人いる。

―やっぱり英二なんだ、あの壁にいたひとは…でも何のためにパソコンを?

確信して、そして疑問ひとつまた起きる。
その答ほしくて優秀な先輩に尋ねた。

「顔も不思議ですけど…蒔田部長のパソコンを使いたいことも、壁から外に出る理由も不思議ですよね?」

英二、あなたの動機は何?

そう何度も訊いて、けれど答え本当には返してくれない。
それなら自分で探してしまえばいい、そして信じたい願いに聡い声は言った。

「幽霊として探してるんだろな、」

湯気のむこう沈毅な瞳まっすぐ見つめてくれる。
冗談を言っているのではない、その真摯な視線が口開いた。

「湯原の父親と同じ顔で同期の部屋に現われたんだ、そして部屋から出てこないで消えている。どれも幽霊の行動そのままだろ?幽霊がいることを見せつければ死に関わった人間は正体を探そうとするはずだ、その動いた人間を炙りだして真相を掴もうとしているのかもしれない、」

ほら、伊達は英二の意志を辿れてしまう。
こういう存在が「あの男」観碕の側にいる可能性だってある、そんな現実の声が言った。

「湯原の父親は警察内部による暗殺の可能性がある、それは高架下の弾痕と拳銃が2丁ある可能性から湯原も解ったろ?だから幽霊の男も庁舎に現われたんだと思う、警視庁に証拠があると考えている。その根拠が何か解らないが、蒔田部長も同じ考えだからパソコンを使わせたんだろ、」

暗殺、

言葉にされて鼓動から軋む、だってなぜ?
なぜ父が暗殺されるのか、その自問に答すぐ映る。

“ J'ai enterre un autre nom. ” 私はもう一つの名前を埋葬した。

祖父が遺した小説は現実の記録だ。
そう今は信じている、それくらい警察官になって色んなことが解かりすぎた。
そして今も新しく知ろうとする、そうして追いたい父ともう一人の軌跡に問いかけた。

「伊達さんは、蒔田さんが幽霊の協力者だと考えてるんですか?」
「他に考えようがないだろ、幹部の端末を使うのにも蒔田さんのIDがいるはずだからな?」

答えて、けれど沈毅な瞳が考えこむ。
眼差しは相変わらず澄んでいる、その眼に尋ねた。

「さっきパソコンのキーボードを指紋鑑定したって言いましたよね、その結果はどうなったんですか?」

もし英二なら指紋など残さない。
そういう男だと今はもう知っている、そのままに伊達は言った。

「メンテナンスの担当者から部長の部屋に幽霊がでる噂はないか訊かれたらしい、同期は有得ないって笑ってたけどな?」

キーボードの指紋照合をした、それがなぜ幽霊の噂になるのか?

なにが指紋照合から解かったというのだろう?
その可能性いくつか考えるまま尋ねた。

「なぜ指紋鑑定で幽霊の噂になるんですか?」
「変だろ?だから湯原に画像を確かめてほしかったんだ、」

考えこむよう土鍋ごし見つめてくる。
なにを確かめてほしいのか、その目的に先輩は口開いた。

「指紋が似る可能性を調べたけど、生れたばかりの一卵性双生児でも95%の一致で全く同じにならない。でもキーボードを確かめた結果に幽霊の噂を訊くのは、過去に亡くなった誰かと指紋が似ているからだろ?でも顔が似ていても指紋まで似る可能性は全くの他人では有得ない、」

指紋は「隆線」と呼ばれる線で識別されている。
隆線は指の表皮内側にある真皮にある乳頭により形成されており、そのため表皮を削ってもまた戻ってしまう。
乳頭は無数の小さな突起物で部分的に連続し、山になる「皮野」と谷の部分「皮溝」で形成したラインが指紋の隆線になる。
この隆線が切れ・分かれ・渦を巻くなどおよそ百の特徴点が存在し、そのうち15点ほどが一致する確率は100兆人に1人ともいう。

だから伊達が言うよう「全くの他人では有得ない」けれど血縁者でも一致率は低い。
それでも少ない可能性に低く透る声が言った。

「指紋鑑定するくらいなら監視カメラの画像も確かめているはずだ、その結果として幽霊の噂を訊くなら指紋は一致したんだろう。だから俺も湯原の兄弟がいる可能性を考えたんだ、親子でも指紋一致は無いが、まったく無縁のヤツが14年前に亡くなった指紋を残すなんか不可能だろ?あとは本人の幽霊だ、」

父の指紋を残す。

それは英二になら可能だろうか?
それとも今言われた通り「本人の幽霊」かもしれない、そんな想い微笑んだ。

「逢いたいです、父の幽霊なら、」



(to be continued)

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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚322

2015-01-26 20:45:01 | 雑談寓話
「これ前に純愛ものってトモさん言ってたね、私あまり読まないジャンルだな、」

なんて花サンが言った7月たしか金曜夜@新居、
ワインかなんか飲みながら花サンが訊いてきた、

「この本を読んで御曹司サン、なんで泣いたの?」
「読んでみたら解かるよ?笑」

知りたかったら読めばいい、
そう思ったまんま言ったら彼女はちょっと考えこんで言った、

「読んでみたい気もするけど怖い気もするな、」
「なんで怖い?」

訊きながら傍らの猫が撫でてコールしてくれる、
その小さい頭そっと撫でる前で花サンは口開いた、

「読んで、もし解らなかったらショックじゃない?御曹司サンって私からすると言葉が通じないこと多いから、あんまり自信ないのに余計へこみそう、」

言葉が通じない、
それは恋愛したいなら致命的だろう?そんな発言に言ってみた、

「御曹司クンの言葉とか理解したいって思うんだ?」
「うん…思うなー、最近なんか思ってると思う、」

ワイン口つけながら「思」が多い、
それが本音を示すみたいで訊いてみた、

「御曹司クンは浮気性だよ?寂しがりな分だけすぐ手短な誰かに甘えたがってヤりたがる、しかもバイセクシャルだから360度ぐるり恋愛対象だよ、そういう御曹司クンを丸ごと理解して受けとめようって思える?」

男も女も恋愛対象、だから誰と出掛けても「ふたりきり」なら即デート。
そういう御曹司クンの主観を理解できるのか?そんな問いかけに花サンは訊いた、

「ね、なんで御曹司サンってそんなに寂しがりなの?手短な誰とするとか私は考えられないよ、」

それが普通の感覚なんだろう?
だけど御曹司クンなりの理由がある、そのヒントを言ってみた、

「言っちゃえば弱いんだろね、弱虫だから独りが怖くってXXXしたがるんじゃない?体を繋げれば心も繋がれるって思いたがってるよ、即物的だけどさ、」

体の距離が心の距離、
そういう考え方もあるんだろう、でも実際は違う。
それを身をもって思い知っちゃった人は溜息ひとつ困り顔で笑った、

「それなら私にもっと恋愛してくれても良さそうなのにね?ホント自分勝手な人だなーあいつめ、」

ホント自分勝手だ、御曹司クンは。
思いたがってるクセに結果ちがう、そんな現実に笑った、

「たしかに自分勝手だね、性懲りなく同じ間違いするアタリ弱くて馬鹿なワガママだって思うよ?笑」

ホント馬鹿だ、弱くてワガママで学習能力もない。

そういうヤツだって解ってる、それでも解ってほしいなって思ってる。
だって今ここで解らないと一生ホントに独りだろう、それを耐えられるほど強くない馬鹿男のために言ってみた、

「でも花サン、どんな動機でも花サンと近づきたいから御曹司クンもベッドに誘ったんだよ?その結果が想像と違っても距離を縮めたいのは本音だと思うよ、」
「そっかなーそれなら少し救われるけど、期待するのも今は怖いかな?」

困ったよう笑って言う貌は寂しそうで少し嬉しそうで、
そんな彼女自身が本当は寂しい、だからこそある可能性に笑いかけた、

「寂しがりだから手短に縋りたいけど誰でもいいワケじゃない、そういうの花サンもちょっと同じだろ?御曹司クンの気持ちもわかると思うけど、笑」

寂しがり×寂しがり

それが花サンと御曹司クンだろう、
似たもの同士だから惹かれもするし反発もする、その一人は笑って言った、

「確かにちょっと同じかな、でもトモさんは全く違うね?」
「だね、笑」

素直に認めてグラス口つけて、この「全く違う」が可笑しかった、
だってコンナふう彼女が言うのは意味あれこれ含んでいるのかもしれない?

御曹司クンと花サンは同類項がある、その共通点に恋愛可能性はある。
でも自分に同類項は少ない、だから結局のとこ恋愛に至りようがない。

そう考えることは花サンにとって楽かもしれない、
だって「恋愛外」な自分だからこそ花サンは気楽に何でも話せて逃げ場にもなれる、
そして「恋愛外」であることは御曹司クンと恋愛関係になりえない、それは御曹司クンが彼女に向く可能性を高くもする、

そんなこと考えながら飲んでる傍ら、携帯電話が鳴った、


なんでんかんでん20ブログトーナメント

加筆合間にすこし書いたんでUPします、

このあと第82話「声紋4」加筆倍ほどします、
Favonius「少年時譚87」校了、Aesculapius「Dryad25」読み直したら校了です、
コレや小説ほか楽しんでもらえたらコメント&バナーお願いします、笑

取り急ぎ、



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山岳点景:春山、雪に花

2015-01-25 22:00:00 | 写真:山岳点景
雪と花、天空の里にて



山岳点景:春山、雪に花

蝋梅@東京都御岳山、咲きかけです。

ケーブルカー御岳山駅から武蔵御嶽神社までの参道で多く見かけます。
まだ一分咲き程度、満開の時にあたったら黄金色が灯篭がわりに華やかです。



っていう春の兆しの一方、日蔭は積雪が目だちます。



宿坊や御師の町も日蔭は雪、茅葺屋根や黒木の壁に白が映えます。



参道は除雪されていますが、斜面や日蔭は雪埋もれていました。



武蔵御嶽神社の境内は春めいた陽ざしが温かかったです、
が、日蔭は積雪ありで濡れていると思って石畳を踏むと凍りついていたりします、



社殿から奥へ、
登山道らしくなる前の休憩ポイント長尾平は林間部に積雪有。
凍結→アイスバーン状態もあるので転倒注意です、



長尾平から大岳方面↓積雪が見えます。



奥ノ院から鍋割山へ行こうかなって歩いて、奥の院の鳥居から細くなる部分でアイスバーンになりました。
ビジターセンターで情報は聴いていた+アイゼン持ってたんですけど、マアイイかなって引き返しました。



なんてカンジの山道では5cmからの霜柱あちこち見られます。
拾えるほど硬度シッカリで氷の礫状態です、踏んでも砕けきらず陽に反射して綺麗でした。

下はケーブルカー駅付近からの御岳山頂、
雪が白い宿坊の町並は天空の里ってカンジです、

神社仏閣史跡巡り10ブログトーナメント



で、戻ってきて地元の方と話してたら引き返して正解だと言われました。
なんでかっていうと昨日は遭難事故発生=アイスバーン転倒→骨折で救助ヘリが飛ぶ騒ぎになったんだとか。
アイゼン持っていても転倒は有り得るからアイスバーン見たら無理しないでほしい、っていうか軽装備の人が多すぎてホント困るよと。
必ずビジターセンターによって当日の登山道情報を聴いてほしいけどソレもしない人が多くて、そういう人が遭難するんだと話されていました。
現実に御岳山は毎月1件ほど遭難事故が起き、重傷・死亡事例もあります。



っていう写真を撮っていたので加筆ほか途中です、笑
取り急ぎ、



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