萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

花木点景:残夏の紅

2017-09-29 17:22:14 | 写真:花木点景
縷紅草ルコウソウ、夏を名残る紅一花。


家庭菜園の様子86ブログトーナメントいつもの道、夏を名残る花・つい撮ってみました、笑
撮影地:道@神奈川県某所2017.9

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山岳点景:銀秋の空

2017-09-27 10:21:15 | 写真:山岳点景
尾花ゆく山の道、秋の青。


第2回 ☆なんでも風景写真☆ブログトーナメント
撮影地:ススキ草原なる明神山@山梨県2017.9

明神山は標高1,291メートル、なだらかな山容ですが悪天候時・夜間は危険です。
初心者コースと紹介されている+安易に登れそうと見えますが遭難者・行方不明者も少なくありません。
この夏も死にそうな顔で下山してくる手ぶら人をたくさん見ました、自助できる最低限の装備はしましょう?笑

○夏の午後はとくに天気が急転します、コレ撮影した後1時間せず豪雨になりました。
○見晴らしが良い草原状の山は風雨に晒されやすい=気温低下しやすいため低体温症の危険が高いです。
○浮石が意外と多いため、日没後の下山は転倒の危険が高いです。
○北斜面は森が深く野性獣の生息地=ツキノワグマ・イノシシも多いため早朝や遅い午後は遭遇の危険があります。
○水場も自販機もありません×草原帯のため日陰もなし→特に夏~初秋は熱中症・脱水症状の危険が高いです、飲料水は多め+帽子必携で。
○凍結しやすい山域=軽アイゼン・ストック必携+車道もアイスバーン・ブラックバーンによる危険高、早朝&午後14時以降は凍結します。
○11月~4月までは降雪地域です、厳寒期は零下20度を下回る日もあります。
○富士山はじめ入山しやすい登山ルートが多い山域=遭難事故多発帯+風が強い+雪も多いため、遭難通報すぐ来てもらえないこともあります。
※明神山に限らず、
草原になっている山は悪天候の影響を受けやすく、逃げ場もありません。
ルート自体の危険度は低いため軽装備でも登れる=初心者コースと紹介されるため、装備不足による遭難事故が多発してます。
低山でも楽ちんルートでも山は山、山の三品=水・雨具・照明器具はハイキングでも必ず持参してください。
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第85話 暮春 act.37-side story「陽はまた昇る」

2017-09-26 15:49:00 | 陽はまた昇るside story
the punishment and sin.
英二24歳3月下旬


第85話 暮春 act.37-side story「陽はまた昇る」

泣いている、でも呼ばれる。

「そっか、」

あいづち微笑んだ視界、銀色ゆるく舞う。
また降りだした雪、そんな三月の森に携帯電話ふるえだす。

―来たか、やっぱり、

春の降雪、午後ゆるむ雪面、条件そろいすぎている。
それでも今すこし聴きたい話手は涙ひとつ笑った。

「ごめん宮田くん、途中で泣いたりして。あと名前で呼ぶ話だけさせて?」
「いいよ、聴かせて?」

あいづち重ねて登山ジャケット振動つたう。
ポケットの携帯電話ふるえる、けれど願いに彼女が口ひらいた。

「私、この春から大学に行くの。そうしたら父が周太くんに条件だして」

条件、なぜ君に?

「みやたっ、招集だよ!」

呼ばれた、タイムリミットだ?

「ワルイね美代っ、宮田ちっと返してもらうよ?救助コールきちまったからねえ、」

テノール笑って雪を来る。
さくさく足音わたる雪の道、蒼い登山ジャケット姿が鍵さしだした。

「俺の車よろしくね美代、俺ちっと行ってくるからさ?」

雪白の笑顔からり笑って、ぽん、鍵ひとつ華奢な手に載せる。
受けとった掌を彼女は見て、大きな瞳ちょっと笑った。

「光ちゃん今朝もう退職したんでしょ?なのに救助の連絡が来たの?」
「月末まではイチオウ在職だからね、地元民だしさ?」

答える瞳からり底抜けに明るい。
そんな元上官に英二は微笑んだ。

「辞めて早速ですか、国村さん?」
「マッタクの超過勤務だよねえ、ほら?さっさとドア開けな、」

雪白の笑顔からり、助手席の扉ノックする。
あいかわらずだな?呆れ半分つい笑って、運転扉のロック開いた。

「ほら宮田、おまえの携帯が呼んでるよ?黒木だろうけど出てやんな、」

黒木だろうけど、ってなんだかな言われ方だな?

おかしくてつい笑いたくなる、こんな時なのに?
そんな本音とシートベルト締め、携帯電話にイヤホンマイク付ける。
エンジンキー回しコールつなぎかけて、こんっ、運転扉の窓ひとつ敲かれた。

「周太?」

ガラスごし、ホリゾンブルーの登山ジャケット姿がいる。
黒目がちの瞳が自分を映す、その眼ざしにパワーウィンドウのスイッチ押した。

「宮田?黒木だ、まだ奥多摩にいるな?」

携帯電話の声、でも下がるガラスに君がいる。

「八丁橋で国村さんがいます、救助要請ですね?」
「大雲取谷だ、奥多摩交番と日原駐在も出たが宮田がいちばん近い、行けるか?」

指示むこう無線音が重なる、現場と繋いでいるのだろう。
それだけ状況は厳しい、そんな現実に黒目がちの瞳が訴えた。

「…、」

声はない、でも君の手が紙切れひとつ。
さしだされ掌さしだして、載せられた小さな折紙に微笑んだ。

「行きます、大ダワから落ちましたか?」
「そうだ、後藤さんからも国村さんに連絡いったはずだ、」
「わかりました、」

話しながら折紙ひとつ胸ポケットしまいこむ。
これを渡してくれた手、ほんとうは掴みたいけれど。

「あと宮田、今朝の件また打診あったぞ?」
「はい?」

遮られた思考に訊き返す、打診?
今朝、ああそうだ?

『例の嘱託OBが長野の件を聴きたいらしい、』

あの男また肩透かしだな?
つい可笑しくて笑った。

「あの件は断ってもらえますか?今日中に戻れるかわからないので、」
「もう断った、正当な理由だろう?」

即答してくれる声もすこし笑い噛む。
このひともなかなかだな?感心するまま言われた。

「状況報告また頼む、とにかく無事帰還してくれ、」
「はい、行ってきます、」

電話を切って、でもイヤホンマイクは外さない。
そんな運転席の窓、見つめてくれる黒目がちの瞳に笑った。

「行ってきます、」

笑いかけて純粋が見つめ返す、このまま見ていたい。
それでも左手サイドブレーキ押し、クラッチ軽くアクセル踏んだ。

―周太ごめん、せっかく会えたのに、

別れも何も言えなかった、そのまま自分はまた山へ行く。
こんなふう離れてしまう、君は今、どんな貌しているのだろう?

『英二が生きたいように生きていいんだ、どんな英二でも僕はずっと、』

雪の森むきあった声、瞳、君の言葉。
あのまま永遠に見ていられたらいい、そんな願いごと本当はしていた。
それでも自分は雪山へ行く、ただ惹かれるままタイヤチェーン響き走りだした。

「昨日から二日連続だねえ?マッタク春の雪はクセモンだよ、」

朗らかなテノールが助手席に笑う、でも不機嫌だ?
そんな元上官に言った。

「光一、なぜ小嶌さんの進学に周太が条件だされるんだ?」

なぜ?が多すぎる、こんなこと。
考えハンドル繰る隣から言われた。

「ソレは周太に訊くことだろ?」

ワイパー薙ぐ雪の窓、静かな声が刺す。
稜線そめる銀色の道、タメ息とハンドル握った。

「だよな…光一は大学のこと知ってたんだろ?」

かとん、かたん、ワイパー音に声ながれる。
自分の声なのにどこか違って、そんな空間にテノール笑った。

「ちゃんとは昨日だね、御岳じゃチョットした騒動だよ?テレビ映っちまったなんて美代もドジだね、」

明るい声からり笑っている。
あいかわらずのザイルパートナーに訊いてみた。

「小嶌さんが東大に行くことが、そんな騒動なのか?」
「だよ?都会とは違うからねえ、」

軽やかなトーン答えてくれる。
けれど言葉はそうじゃない、その横顔が言った。

「美代も俺らと同じで二十四だろ?ここいらじゃイイカゲン嫁いけって齢なワケ、ソンナ齢からガッコ入ったらってコト、」

開けた運転席の窓、チェーンの音まじり雪が匂う。
あわく渋いあまい冷気なぶる風、砕かれる氷の響き尋ねた。

「ようするに小嶌さん、家族に反対されながら大学に行くのか?」
「そうなるねえ?」

テノール軽く返してくれる。
今その眼ざし何を見るのだろう?知りたくて訊いた。

「光一も医学部、受験するんだろ?」
「だよ、でも俺と美代じゃマッタク事情が違うんだよね、」

返事してくれる声は明るい。
そこにある現実へ問いかけた。

「もし小嶌さんに結婚相手がいるなら、事情は変わるってことか?」

もしYesなら、だから名前。

『名前で呼ぶ話だけさせて?私、この春から大学に行くの。そうしたら父が周太くんに条件だして』

話しかけて途切れた言葉、それは「事情」なのだろう?
そんな推定たやすいまま24歳の受験生が笑った。

「ソコラヘン本人から聴きなね?ほら、」

銀色おどるフロントガラス、登山グローブの指が示す。
もう着いてしまった現場にタメ息ひとつ、エンジン停めた。

(to be continued)
【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】


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花木点景:月草露草

2017-09-25 09:50:00 | 写真:花木点景
名残の青、晩夏ゆれる露草。


秋あわい陽透ける色はイメージ月光、月草の古名に納得です。
撮影地:森@神奈川県

なんでも花フォトブログトーナメント
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花木点景:ほととぎす

2017-09-24 12:47:41 | 写真:花木点景


夏終わり、秋告げる杜鵑の花。


撮影地:森@神奈川県

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花木点景:秋霖のち紅

2017-09-23 23:30:03 | 写真:花木点景
紅露ひかる、

花木点景:秋霖のち山

雨あがる山上、色残る曼殊沙華。


赤い彼岸の花咲く尾根、墨彩えがく空。


第3回 ☆なんでも花フォト☆ブログトーナメント
撮影地:蓑山@埼玉県秩父郡皆野町

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休日雑談:雨に朝食

2017-09-23 10:11:05 | 雑談
午前は雨天の関東地方、
ソンナワケで登山ちょっと無理かなーと朝食のんびり自作して、



ホワイトソース×パンがあったからグラタンパン

くりぬいたパンの残り×リンゴ→アップルプディング

どっちも簡単すぐできるヤツ、笑
ソレに残り野菜でサラダ添えて、いわゆる冷蔵庫アリモノ献立。
なんだけど・ナンダカ贅沢になれてしまうから、幸せなんてコンナカンジ掌すでに、笑

マグカップの茶渋このあとキレイにします、笑
撮影地:神奈川県某所

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第85話 暮春 act.36-side story「陽はまた昇る」

2017-09-22 23:20:18 | 陽はまた昇るside story
My world’s both parts, and,
英二24歳3月下旬


第85話 暮春 act.36-side story「陽はまた昇る」

きれい、それだけ。

そんな言葉の瞳まっすぐ明るい、こんな眼は違うのだろうか?
世界は自分の知らない姿に映るだろうか、そんな眼に英二は微笑んだ。

「きれいって小嶌さん、俺には褒め言葉でもないけど?」

紙コップくしゃり、掌つぶして湯気くゆる。
もう空っぽだった味噌汁また香って、白い息に笑った。

「周太に小嶌さんが言ったんだろ?もしファントムの素顔が綺麗だったら、それでも歌姫はラウルを選んだかなってさ?でもキレイとか言うんだ?」

もしファントムの素顔が綺麗だったら?

そんな仮定を君は言った、その発言者が雪に見あげてくる。
明眸まっすぐ自分を映して、ちいさな顔は微笑んだ。

「それは顔のつくりについての話よ、今言ってるのは姿勢みたいなこと。潔いっていうのかな?」

軽やかな、そのくせ薄くない声が笑いかける。
この女こんな声だったろうか?疑問めぐらせながらも微笑んだ。

「それで小嶌さん、周太の話まだ始まらない?あんまり時間ないんだけど、」

本題から逸れている、わざとだろうか?

―肚芸は得意に見えないけどな、単純そうだし?

よく知るわけじゃない女、二人で話すのは二度めだろうか?
それでも未知じゃない視線が自分を見あげた。

「宮田くん、周太くんが右足ケガしているの気づいたでしょう?」

いきなり本題だ?

―やっぱりケガしている、周太は、

すこし前に気づいたこと、だからこの背に負えた。
まだ名残る温もりに視線、雪の道むこうを見た。

「光一も知ってるんだろ?周太を座らせてるし、」

立ったまま話す雪の道、むこうの四駆かたわら君がいる。
アウトドアチェアむかいあう登山ウェア姿、薄青と群青それぞれ寛ぐ。

「知ってる、何も言われなくても光ちゃんは解るから。だから周太くん今、くったくなく笑ってるでしょ?」

ほらソプラノが答える、その「解る」が羨ましい。
そんな自分だったら違ったろうか?想いただ微笑んだ。

「光一はそうだろうな、」

あいづち微笑んで息が白い、気温が下がっている。
もう正午とっくに過ぎた春の森、雪まばゆい道に告げた。

「で?さっさと周太のこと話せよ、俺に質問とかいらない、」

話すなら今すぐ、全てを。
もう焦らされるのは厭きて、だから哂った。

「いちいち質問してくれるけどさ、焦らす話しかた嫌いなんだ。光一のことも今はいい、さっさと周太のこと話せよ?」

ただ君のことだけ聴きたい、そうしたら取り戻せるだろうか?
もう遅いのかもしれない?それでも投げた言葉に澄んだ眼ざし返った。

「ニュースになった事件の夜、周太くんは昏睡状態になったの。ケガと喘息の発作から熱がでて、」

ケガ、喘息。

今の君にある秘密、そして君を示す言葉。
もう知っているんだ、この女は?

「事件の夜から二日間ずっと眠って、目が覚めた夜にまた肺炎おこしかけて昏睡状態になって、それで私が呼ばれて、」

昏睡状態、その最中に呼ばれること。

『美代ちゃんは自分の感情も超えて周太くんを愛してる、』

あの祖母があんなことを言う、それだけの信頼がある女。
だから「知っている」この自分が知らない時間も、そして感情も。

「周太くんのお母さんは手を握って離さなかったの、それでお祖母さんが心配して看病の交代役に私を呼んだの、」

ソプラノが時なぞる、面影ひとつ描きだす。
黒目がち優しい瞳が泣いている、涙に穿たれる熱が、

―そんなに信頼されてるのか、あの祖母に…美幸さんまで、

看病に呼ばれた、それは君の母親からの信頼。
その事実に鼓動きしみだす、熱が波うつ、熱い。

「お母さんの代わりに座ってたら…周太くんうなされて叫んだよ?」

眠る君が叫ぶ、そんな貌を見た女。
その瞳が鼓動に刺さる、軋む、軋んで熱くて、

妬ましい、

「叫んだんだよ周太くん、ね…それで恋人になれるわけないよ?」

嫉ましい熱、けれど言葉に見つめてしまう。
その瞳が自分を見た。

「英二、って、」

呼ばれる、でも、この声にじゃない。
誰に?

「英二って叫んだよ、それ聞いちゃってるのになれるわけないよ?」

叫んだ、この自分の名前を。
誰が?

「英二って叫んだんだよ周太くん、私じゃない、」

君が、叫んでくれた?

どういうことだろう、どうして?
ただ聞こえてくる声に見つめるまま、澄んだ眼ざし告げた。

「私が手を握ってるのに、英二って叫んだんだよ周太くん…そういうのずっと見てるの私、つらいよ?」

白銀ゆれる春の雪、声が透る。
告げてくれる息が白い、春の冷厳にソプラノが見つめる。

「だって叫ぶ気持ち私もわかるの、私も周太くんの背中に叫んだから、」

君が叫んだ、それを目の前のソプラノがなぞる。
そんな雪道むこう君の横顔、あの唇が叫んでくれた?

「叫んだんだ、小嶌さんも?」

なぜ?

ただ疑問に問いかける。
この女も君と同じことをした、その瞳が微笑んだ。

「叫んだよ?あの事件のとき新宿で…追いかけたかった私、」

ことん、

鼓動ノックする、なんだろう?
でもこの感覚は知っている、ずっと昔のようで二年も前じゃない。

「一緒にいたのに電話ひとつで…走って行っちゃったの、うんときれいな笑顔で、」

ソプラノが語る、でも知っている。

―…じゃあ、ね?

記憶の底が微笑む、右手をあげる。
ちいさく手をふって踵かえして、そして遠ざかる横顔。

「追いかけたかったの私、だからわかるの、周太くんが叫んだのなんでか…わかる、」

白い息ソプラノが見あげる。
また傾く陽にまばゆい森、銀色の道に涙おちた。

「英二って追いかけたいの周太くん、だから…追いかけさせてあげたい、の、」

頬の薔薇色そっと光おちる。
大きな明眸ゆっくり瞬いて、自分を映しだす。

「それに私、宮田くんを好きになっちゃうのわかる、だから追いかけさせてあげたいの…周太くんのこと大好きだから、だから、」

ソプラノが笑って自分を見る、大きな瞳に雪がふる。
明るい眼きらめく光あふれて零れて、そして笑った。

「レンアイ卑怯者なんて嫌いよ私、あの小説、『オペラ座の怪人』の歌姫なんて私は嫌なの、だから追いかけてほしいんだ、」

だから、

そう繰り返す声まっすぐ見つめてくる。
ただ聞いている真中、まっすぐ彼女は笑った。

「追いかけてほしいの正直に、そうしたら私も追いかけられる、」

追いかけて、誰が、誰を?

めぐる想い明眸が見あげる、頬の薔薇色つたう光。
泣いている眼も薄紅そまって、それでも明るい瞳。

(to be continued)
【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】


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山岳点景:赤秋予祝

2017-09-21 23:40:50 | 写真:山岳点景
秋、彩×再々


山岳点景:赤秋予祝

紅葉のとき近し、で、俟ちかねるから去年の秋山を。


山の天候×温度変化は劇的、
その急激な冷えこみに秋色あざやかです。


急激な冷えこみ←気温低下は平地の常識では計れません。
午後2時過ぎるとカナリ低下×急速あっというまの日暮れ。


そんな短い秋の日に、山の秋色は輝きます。


今日は書く暇なかったので写真を、笑
撮影地:大菩薩嶺@山梨県2015.10、奥多摩@東京都2014‐15.11

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花木点景:緋色雪洞

2017-09-19 21:14:30 | 写真:花木点景
初秋を燈す、


花木点景:緋色雪洞

夏草はざま秋、花ゆく曼殊沙華。


第40回 ☆花って綺麗ですよね♪☆ブログトーナメント
撮影地:ヒガンバナ、森@神奈川県

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