萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚362

2015-04-30 10:18:05 | 雑談寓話
「半世紀、50年も一緒に暮らせたら少しは愛情深まってるのかなあ?それとも色褪せちゃうかな、疲れて、」

色褪せて、

なんて花サンが言った@小田代が原に向かう車中の朝、
それは「褪せる」だけの元があるということだ?
そんな本音を訊いてみた、

「御曹司クンを独り占めしたいんだ?」

こう言えばもう解るだろうな?
そんな意図に花サンは少し笑って答えた、

「独り占めしなくてもいいの、いつも一緒にいたいわけじゃないし。でも結婚したら、トモさんより近くはなれるでしょ?」

比較級の「近く」が望みなんだな?
そんな彼女の本音に笑った、

「御曹司クンから連絡ずっとないよ、もう忘れたんじゃない?笑」

そうあってほしいな、

っていう願望だった、だって不毛すぎる、
御曹司クンと自分は気持ち重なることがない、それなら離れたほうがいい。
それくらい解る程度には御曹司クンも賢い、そんな信頼に花サンは言った、

「私ずるいんだー…御曹司サンのことホントには一番に想えないクセに、私は御曹司サンの一番になりたいの。だから結婚したらって、」

花サンが御曹司クンを一番に想えない、
そこにある彼女の時間へ訊いてみた、

「今も、大学の時の彼が一番なんだ?」
「うん、もう亡くなってる人なのにね…私バカみたい、」

笑って、けれど悲しそうだった、
そんな助手席の横顔は話してくれた、

「御曹司サンのこと一番に大事にしたら御曹司サンも気持ち変わるかもって想うよ、でも私ができないから、だから私の家族に挨拶する気にもなれなくて当たり前だよね…だからね、」

ちょっと言葉とぎれて、こっち向いてくれるのが視界の端見えて、
そうして泣きそうな声が言った、

「だから私ホント解んない、なんで御曹司サンはトモさんをずっと好きなわけ?トモさんこそ一番のひと他にいるのに、なんで?」

あ、これが一番話したいことなんだな?

「花サンが今日、話したいことってソレなんだ?笑」

つい笑って訊いてしまう、
だって問題はそこじゃない、そんな現状に花サンはすこし拗ねた、

「そんな笑わないでよ、私は真剣なんだから、」
「ごめん、でも御曹司クンの問題はそこじゃないだろ?笑」

また笑いながら言って、で、問題提起してみた、

「花サン、御曹司クンが欲しいのは話をちゃんと聴いてくれる相手だよ。花サンは話ちゃんと聴けてる?」

聴いて受けとめてほしい、

ソレが御曹司クンの一番の願いごと、
そして御曹司クンの一番になる必須条件だろう?

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山岳点景:朝、山の光陰

2015-04-29 14:54:07 | 写真:山岳点景
光×風



山岳点景:朝、山の光陰

今日、午前7時の奥多摩湖は鏡でした。
山影も空も映しこんで澄明、そんな水面に静かな朝です。



夜明に出てむかう途中の山里、朝露がきれいでした。
もう平野では終えた水仙もスノードロップも山間部に瑞々しいです。



自生の山藤は薄紫が多いですが、めずらしく白藤を見つけました。
早緑やわらかな春山に純白は潔く映えます。



まだ芽吹きの梢は葉もまばら、それでも木洩陽はまぶしく初夏を呼びます。

第57回 昔書いたブログも読んで欲しいブログトーナメント



なんて写真を撮っていたので読み直し&草稿UPこれからです、笑

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山岳点景:桜、深山の里も

2015-04-27 23:50:10 | 写真:山岳点景
桜、こもれる



山岳点景:桜、深山の里も

山深い里にて、桜の林がありました。



隠れ里、ってこういう所かな?
そう想わされる山深い集落は花あふれていました。
桜、桃、りんご、春咲く花木は青空に花びら透かして光ります。



ほんとは小説の続きも書きたいけど眠すぎます、笑


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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚361

2015-04-27 13:50:39 | 雑談寓話
「ホント私は不満いっぱいだと思う、そのくせ別れるのもできないって変でしょ?」

「結婚したら50年とか一緒だよ?半世紀も御曹司クンと暮らせそう?笑」

なんて会話した@小田代が原に向かう車中、
夜明けてゆくフロントガラスに紅葉を見つけて笑いかけた、

「花サン、紅葉もうはじまりだしてるよ?左前方の山、笑」
「あ、ホントだ。楓かな?それとも漆?」
「あの赤色だと漆かもしれないね、」

なんて他愛ない車窓の会話して、
すこし空気やわらぐと花サンが言った、

「半世紀、50年も一緒に暮らせたら少しは愛情深まってるのかなあ?それとも色褪せちゃうかな、疲れて、」

色褪せて、

そんな言葉に花サンの聲が出ている、
だって「褪せる」だけの元があるということだ?
そんな本音を訊いてみた、

「御曹司クンを独り占めしたいんだ?」


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山岳点景:乾坤の一滴

2015-04-26 22:30:03 | 写真:山岳点景
天地の行人



山岳点景:乾坤の一滴

大菩薩峠@山梨県にて、苔から滴る雫です。
この一滴が集まって流れになり川へ海へゆきます。



登りあげ標高あげていくと斜面の蔭は雪が吹き溜っています。
これが溶けだして苔からの一滴となるワケです。



細い渓流も多い登山道は苔むすポイントを多く見ました。
それだけ水の豊かな山です。



そんな保水力を守る山は大木も多いです。
ふっと惹かれるような樹勢にいくつも出会いました、笑



そして開けた眺望、大菩薩峠から賽の河原へ尾根ひろやかです。



こんなところで風雨に晒されたら凍死だな、と思うほど風吹くと冷たかったです。
これだけパノラマ開けると風もろに受けてしまいます、道は危険ポイント少ないけれど天候変化は注意が必要だなと。



はるか向こうは南アルプスの稜線、富士山も見られます。
逆サイドは大菩薩嶺が晴天に穏かでした、時間あるときまた登りたいとこです。



コッヘルで湯を沸かした味噌汁&にぎりめしが旨かったです、笑
そんな傍らケルンが青空に映えていました。



今日は登山口から1時間ほどのショートコースで一挙に登りました。
その短時間でまったくの別世界、けれど天候次第では風雨や霧、雷撃が怖いなって感想です。
どこの山も同じですけど、天候チェックと悪天候に対応できる装備が必須の山だなって思いました。

で、また行きたくなる山です、笑



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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚360

2015-04-26 18:04:59 | 雑談寓話
「付き合いはじめて日がたつのに挨拶もする気がないのよ、彼は。そういう態度からお母さん不実だって、」

彼=御曹司クン

について、花サンがそう言った秋@小田代が原に行く車中、
夜明けてゆく清々しいフロントガラス見ながら彼女はちょっと微笑んだ、

「愚痴ってイイよってトモさん、私が不満いっぱいに見えるんだ?」
「正直、見えるね、笑」

あっさり答えて、
で、困ったような笑顔で花サンは言った、

「ホント私は不満いっぱいだと思う、そのくせ別れるのもできないって変でしょ?」

なぜ不満だらけの癖に別れたくないのか?

その答えは本人がいちばん解っている、
けれど答え知らないフリする人に訊いてみた、笑

「結婚したら50年とか一緒だよ?半世紀も御曹司クンと暮らせそう?笑」

半世紀50年、その時間は短くない、
それでも「御曹司クン」に向き合い続けられるのか?
問いかけた相手は考えこんだ、


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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚359

2015-04-25 18:46:05 | 雑談寓話
「お母さんとお姉ちゃんに御曹司さんのこと話したの、そして反対されちゃった、」

「御曹司クンがバイセクシャルだってコトは話した?」

「それ話したら終わりよ、今ですらアンナだもん?」

なんて会話の秋@小田代が原に行く車中、
夜明けのフロントガラス見ながら花サンは言った、

「付き合いはじめて日がたつのに挨拶もする気がないのよ、彼は。そういう態度からお母さん不実だって、」

花サンの母なら確かにそうだろう?
納得しながらつい笑った、

「それは花サンのお母さんなら理解しがたいだろね、笑」
「そうなのよー、だからトモさんのこと信頼してるのに、」

タメ息まじり笑ってくれる、
でも本当はしんどいだろう?そんな相手に笑った、

「着くまでノンビリ愚痴っていいよ?笑」


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山岳点景:陽を透かす

2015-04-24 23:03:00 | 写真:山岳点景
光の陰影、初夏



山岳点景:陽を透かす

晩春から初夏、陽の輝度あかるい時期は陰翳あざやかです。
頭上の梢も葉を透かして光の文様を描きます。

その足元、まだ稚い緑色の蜘蛛が太陽にきらめいていました。



下は海老根蘭、関東では珍しい黄色です。
エビネランの花びらは厚めですが太陽を透かし輝いていました。



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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚358

2015-04-24 10:09:09 | 雑談寓話
「ホントにもう、トモさんならおばちゃんも心配ないんだけど、」

って花サンの母に言われて、あれ?って思った。

「なら」

って花サンの母は言った、
それは比較する「なら」じゃないだろうか?

もしかして花サン、御曹司クンのコトを話したかな?

そんな予想と花サンは助手席に乗り込んで言った、

「お母さん、よけいな嫌み言わないでよ?せっかく楽しみに行くとこ水射さないで、」

今ので嫌みになっちゃうんだ?
そんな感想に推定また確かめるまま、花母は言った、

「はいはい御免なさいね、いっぱいリフレッシュさせてもらいなさい。トモさん、よろしくね?」

なんて感じに送り出されて、
なんとなく気まずけな花サンに笑ってみた、

「小田代が原、紅葉ちょうどイイみたいだよ?笑」

楽しい近未来でご機嫌直してほしいな?
そんな意図に少し笑ってくれた、

「うん、私もググってみたよ。天気もイイみたい、」
「トレッキング日和だね、写真もきっと良いよ、笑」
「うん、私もカメラ持ってきたんだー小さいのだけど、」
「おー、撮影会だな、笑」

なんて会話しながら行く車内は空気やわらかくなって、
もう楽しそうになった笑顔はペットボトルくちつけ言った、

「お母さんとお姉ちゃんに御曹司さんのこと話したの、そして反対されちゃった、」

やっぱりそういうことなんだ?
納得とハンドルさばきながら訊いてみた、

「御曹司クンがバイセクシャルだってコトは話した?」

たぶん話せないだろうな、

そう解っているけど訊いてみた、だって話せないなら尚更に自覚は必要だ、
例の事情を話さず済ませたいなら問題起きたとき、相談するにも難しいだろう?
そのリスクを自覚してほいし相手はタメ息吐いたら

「それ話したら終わりよ、今ですらアンナだもん?」

今ですら、

そんな言い回しとさっきはの花母発言に状況はわかる、
ホントややこしくなっちゃうんだな?

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第83話 辞世 act.6-another,side story「陽はまた昇る」

2015-04-23 23:55:04 | 陽はまた昇るanother,side story
涯の途次
周太24歳3月



第83話 辞世 act.6-another,side story「陽はまた昇る」

ばたん、

助手席の扉閉めてシートベルトする、もうこの席に慣れた。
これで何度目に座るだろう?記憶を数えながら運転席へ頭下げた。

「すみません伊達さん、お待たせしました、」
「湯原、あの子は誰だ?」

即座に訊かれて、エンジン音すぐ走りだす。
ハンドルさばく横顔つい見つめて周太は瞬いた。

「あの、見ていたんですか?」

いつから、どこから伊達は見ていたのだろう?
疑問と心配まぜ織られながら沈毅な声が言った。

「抱きあっていたな、恋人なら報告しないと違反だ、」

あ、そこからなんだ?

―これ誤解されてるよね、でも当然…かな?

こんなこと予想外の誤解、けれど当然なのだろう。
そして改めて気づかされた現実につい訊きかえした。

「あの…僕たち恋人どうしに見えましたか?」
「他にどう見える?」

即答されて気恥ずかしくなる。
こんな時こんな事態になるなんて?途惑いながら口開いた。

「こいびとじゃありません、友達なんです…すごく大事な友達です、たくさん約束するくらい大事です、」

すごく大事、そして約束たくさん紡ぎあう。
だから合格発表にも付き添っている、そんな今日に言われた。

「約束ある大事な異性の友達って、普通に考えたら彼女だろ?」

そんなことになっちゃうんだ?

「あの、でも美代さんは他に好きなひとがいます、僕じゃありません、」

事実を答えながら首すじ熱く逆上せだす。
マフラーに隠れて見えないだろう、それでも運転席の横顔は言った。

「真赤になってるぞ湯原、貌は正直だな?」

こんな言いまわしまるで尋問だ?

―どうしよう僕ほんとうに真剣に勘違いされてるよね?

今それどころじゃないはず、だって任務の呼出中なのに。
けれど今は逆に「それどころ」じゃない、もう額まで逆上せながら言った。

「顔が赤いのは僕が恥ずかしがりで驚きすぎてるからです、本当に美代さんと僕はこいびとじゃありません…でも異性の友達は申請が要るんですか?」

恋人関係では無い、でも「近い」のかもしれない?
そう気づかされる尋問者は沈毅なトーン応えた。

「抱きあったり指切りげんまんでするほど親しいなら申請しておけ、交際相手と言われても反論は認められない、」

本当に全部を見ていたんだな?
そんなふう伝えてくれる相手に訊いた。

「伊達さん、それは親しい異性なら守秘義務に関わることは変わらないってことですか?」

なぜ交際相手を申告する必要があるのか?
その理由に問いかけた先、先輩は口開いた。

「俗に言うハニートラップを疑われたら厄介だろ、文句つけられる可能性は消しておけ。それにな、」

言いかけて、ふっと横顔が黙りこむ。
この沈黙もう解かる、そのまま周太は微笑んだ。

「それに、僕が死んだときの連絡先ってことですね…母に連絡がつかなったときの、次の連絡先として、」

自分の家族は、母だけだ。
だからこそ尚更に「次」は求められている、その現実に肯かれた。

「そうだ、湯原の引受人を他に訊いておけと言われている、」

ほら、自分の立場はそうだ。

こんなこと当り前だろう、だって「引受人」が必要になる任務こそ自分の現実だ。
そして今この時こそ必要なのかもしれない、そんな覚悟へ笑いかけた。

「伊達さん、僕たちは今から難しい場所に行くんですね?引受人が一人でも多く必要になる、」

きっとそういうことだ、だから美代も泣きたかった?
あの泣顔そっと見つめるフロントガラスは小雪あわい、その隣に訊かれた。

「湯原は登山の経験者だったな、積雪期はどれくらいだ?」

なぜ登山の経験値を訊くのだろう?

疑問おきて、そして状況すぐ解かってしまう。
きっとそういうことだ、気づいた答えと笑いかけた。

「標高2,000メートル級なら経験があります、子供の頃に父と雪の奥多摩を登りました、」

答えながら記憶の向こう懐かしい。
あの幸せだった冬の休日、あの笑顔、それから雪の花咲く森。

『秘密の山桜だよ、誰も知らない。だからね、君も秘密を一緒に守ってほしいんだ、』

幼い、けれど深く響く透明な声。
あの声まだ幼かった人も同じ現場に立つのだろうか?

―雪山なら山岳レンジャーも出動かもしれない、もし今日の当番が光一の班なら…英二も、ね、

これは仮定、けれど正解なら?

そう想った途端かたり鼓動が軋む、ほらもう痛い。
だって「引受人」が必要になる場所だ、そんな現場で再会したらどうなるのだろう?
そう考えるだけで鼓動ゆっくり絞められてゆく、それなのに沈毅な横顔は静かに告げた。

「現場は標高2,500メートル地点の雪山だ、七機の山岳レンジャーがサポートに入る、」

ああ、見せてしまうのだろうか?

―僕が人を撃つところを見られるんだ、光一と…英二に、

雪の花咲く森、あの美しい記憶の相手は何を想うだろう?
そして誰より見せたくない相手に見られてしまう、そんな現実むかうフロントガラス雪が白い。



(to be continued)

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