萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第77話 結氷 act.4-side story「陽はまた昇る」

2014-06-30 23:50:00 | 陽はまた昇るside story
cryoconite 黒点腐食



第77話 結氷 act.4-side story「陽はまた昇る」

運命、その梯子を外したのはその事件だろう?

1983年 

都下某所、或る一つの立籠もり事件が極秘に鎮圧された。
この事件は報道されていない、その「極秘」は出動した部隊に理由がある。
このとき警視庁第七機動隊第1中隊レンジャー小隊も出動した、その記録一冊はさんで老人が問いかける。

「宮田君を昨日、本庁で見たと後輩たちから聴きました。よく行くんですか?」

見た、聴いた、後輩「たち」から。

そんな言葉たちに何を見たのか解かってしまう。
だって訊かれることが自分の目的だった、この予想通りに笑いかけた。

「今回が2度目です、昨日は山岳警備隊の研修で行きました、」

正直ありのまま答えながらファイル開きコピー機へセットする。
この資料だけは敢えて事前準備しておかなかった、だって今あの目の前でコピーすれば都合良い。

“ The sad, the lonely, the insatiable, To these Old Night shall all her mystery tell ”
 悲哀、孤愁、渇望、これらの者へ古き夜はその謎すべて説くだろう

そんな詩の一節は今、この手のファイルと似つかわしい。
もう30年を経た書類は終った過去、けれど今この現実を作ってしまった。
その作為者は穏やかに微笑んでまた問いかける。

「午前にあった研修ですね、でも午後に見かけたそうですよ?」

全て聴かせてもらおうか?

そんな命令が声の底に響いて、けれど穏やかに優しい。
つい話したくなる温和、このトーンに幾つの運命が歪められ壊されたのだろう?

「午後は打合せでした、青梅署との合同訓練があるので、」

朗らかに笑って答える向こう、老人の笑顔は端正に優しい。
その奥にある品定めの視線は英二を見つめて、笑顔で尋ねた。

「青梅署の後藤君とは親しいのでしょう?」
「はい、卒業配置からお世話になっています、」

素直に頷いて笑いかけながらコピー機の音が止まる。
印刷された用紙とり確認する向こう涼やかな声が訊いた。

「宮田君は山のキャリアが全く無かったのに第九方面、山間部の管轄署ばかり希望したそうですね?」

卒業配置先の希望は3つ挙げられる、その配属先で交番勤務に就く。
そして山間部を管轄する青梅署・五日市署・高尾署は山岳救助隊を兼務するため卒配には普通充てられない。
けれど山の実績者で救助隊希望なら選ばれることもある、だから3つとも自分と馨が「同じ」志望をしたのは必然の偶然だ。

―馨さんと俺の卒配希望は3つとも同じだ、それを観碕も知ったなら多分もう調べて、

馨の当時まだ高尾署は八王子署から独立しておらず山岳救助隊も配備されていない。
それでも山間部だからと第三志望に馨が選んだことは昨日、蒔田のパソコンから開いたファイルで読んだ。
こんな共通点は観碕なら知っているだろう、その結果に自分の断片ひとつ知ったかもしれない相手に笑いかけた。

「警察学校の山岳訓練でハマってしまったんです、教官に相談して未経験者でもアピールできる方法を探しました、」

これは本当の事実、そして馨と同じ志望は偶然。
だから探られたところで何も見つけられない、そんな意図に老人は微笑んだ。

「山岳救助隊は警察でも危険が高い任務です、なのに選びたがるなんてね?君なら麹町署だって狙えたでしょうに、」

麹町警察署は日本最初の警察署で開設130年を超える警視庁の筆頭警察署。
警視庁第一方面に属し、管内には皇居や首相官邸、国会議事堂、外務省、財務省、警察庁、最高裁判所など首都機能が集中する。
署員300名以上の大規模警察署であり管轄に警視庁本部も所在する、そのため国家公務員I種採用の警察キャリアが現場研修することも多い。

そんな麹町署へ卒業配置されることはエリートコースと謂われている、それを「狙える」根拠を言わせたくて微笑んだ。

「山が好きなんです、私には麹町署のような中枢は務まらないと思います、」
「そうですか?でも君こそ適任でしょう、」

肯定と否定、二つながら微笑んで言ってくる。
その意図にただ笑いかけて書類を渡した先、穏やかな声が告げた。

「宮田君、お祖父さまと君は似ていますね?宮田次長検事にも鷲田君にも、」

ほら、名前二つとも挙げてきた。
その「君」に立場関係を示威する相手へ笑いかけた。

「観碕さんは祖父をご存知なんですか?」

知っているに決まっているだろう?
そんな想い綺麗に潜めて笑った手元、書類を受けとられながら徹る声が言った。

「鷲田君は同じ帝大法科の3年後輩ですから。宮田次長検事は仕事柄お世話になりました、笑顔が本当に綺麗な方で私は好きでしたよ、」

どくん、

言葉に気づかされて鼓動が撃つ、もしかしてそうだろうか?
こんなこと解かりたくない、けれど可能性を見つめて英二は笑いかけた。

「祖父の葬儀においで下さったんですか?」

これも「同じ」なのだろうか?

そう考えた方が全て解ける、納得できてしまう。
ずっと自分が捜していた「鎖」が誰なのか?その解答の鍵が老人に微笑んだ。

「お通夜に伺いました、君とも少し話しましたよ、英二君?」

今、壊れた音が聞えたのは誰のプライドだろう?

―あのとき俺もまさか、周太みたいに?でも記憶は、

馨の通夜で周太は意識操作された、それと同じことを自分もされた可能性はある。
けれど記憶に混濁したものは何一つ思い当たらない、祖父の通夜の光景は前後から鮮明でいる。
あのとき自分は高校2年生で沢山の弔問客と言葉交わした、その相手の顔は希薄でも憶えている言葉を微笑んだ。

「立派な法律家になりなさいと仰って下さいましたね、祖父と似ているから同じ検事も良いだろうと、」

そう多くの人に言われた、けれど幼い頃からの未来図を言われたに過ぎない。
そんな台詞はこの男も同じだろう?そんな推測に穏かな瞳は懐かしそうに笑った。

「よく憶えていましたね、でも皆が同じことを言っていたかな?」
「はい、小さい頃から言われていました、」

明朗に笑いかけながら肚底でプライドが哂う。
あの夜に掛けられた言葉は影響など無かった、だから意識操作などされていない。
それでも観碕は祖父の通夜に来ていた、それが何の目的もない行動だと想えない、それなら?

―母さんだな、きっと、

最も暗示に掛かりそうな人間は?

そう考えてすぐ答えは解かる、あの母なら容易く陥るだろう。
元から息子の進学先に不満を抱いていた、それを少し正当化してやれば簡単に動く。
そんな解法を辿りながら漸く6年前すこしだけ融ける、なぜ母が強固に息子の進路を捻じ曲げたのか?

―周太が東大に行く可能性があったからだ、だから俺を行かせようとしたんだろ?

晉は観碕と東京帝国大学で出会った、それを晉の孫も自分で再現させようとした?
そんな意図から母を動かして、けれど周太は東大を選ぶことなく意図は違えられたのだろう。
それでも母の行動は家族を崩した、そんな侵食が祖父の通夜に行われたのなら「赦す」選択は消える。

敬愛する祖父の葬儀を利用した?そんな相手に冷酷な望み生まれるまま英二は朗らかに綺麗に笑いかけた。

「鷲田の祖父とも話されていましたよね、私の両親とも、」

何気ない貌で会話を続けて、けれど回答次第で赦さない。
だって理由ひとつまた掴んでしまう、その想いに穏やかな声は答えた。

「鷲田君とは挨拶だけしました、お母様とも少し話したと思います、鷲田君の御嬢さんだからね、」

やっぱり母と話していた、その内容もう言わなくて解かる。
そうして自分は東京大学か付属大学だけを選ばされた、そんな意図が透けて浮ぶ。
母は息子が「都内にいる」ことを望まされた、それが観碕の意志であるなら今更でも考えだす。

自分が周太と同じ教場になったことは偶然だろうか必然だろうか?

そうして気づかされる自分の立場は「罠」けれど「誤認」がある。
この誤認が罠を裏切るだろう?そんな思案に旧知の男は問いかけた。

「宮田君は蒔田君とも親しいのでしょう?ずいぶん気に入られているらしいですね、昨日も一緒の所を見かけたと聴きました、」

この事を今日いちばん訊きたくて来たのだろう?
その推測は想った通りでいる、そこにある意図に真直ぐ笑いかけた。

「蒔田さんは警視庁山岳会の先輩になります、昨日も打合せでご一緒してコピーを手伝いました、」

どちらも事実だから当然「見かけた」だろう?
けれど本当に観碕が知りたがっているのは違うシーンでいる。
蒔田のパソコンからファイルにアクセスしたのは「誰」なのか?それを知りたがっている。

“ 2151194540 ”そして“ 5921194211 ”

この数列ふたつ共に解いたのは亡霊「Fantome」かもしれない、それは老人を追い詰める?



(to be continued)

【引用詩文:William B Yeats「The Rose of Battle」】

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚138

2014-06-30 09:00:10 | 雑談寓話
眠いです、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚138

異動一週間@11月の日曜夕方、18時、
やっぱり同僚御曹司クンから電話が着た、

「いま着いたー前のトコに車停めてるから、」
「ほんとに来たんだ?笑」

本当に来るなんてどうしよっかな?笑
そんな感想と笑ったら弾んだ御曹司クンの声が言ってきた、

「来るに決まってんじゃん、気をつけて早く来てよ?笑顔」

なんて急かされて家を出て、
もう暮れた道を歩きながら変な感じだった、

なんでコンナ時間から2時間のために出かけるんだろ?

日曜夜なんて自分だけでノンビリしている方が本来は好きで、
なのにワザワザ着替えて夜道を歩いてるのがなんか変だった、
調子が狂う、けどなんか愉しいうち車が見えて御曹司クンが笑った、

「おー私服冬バージョンだ一年ぶりだーなんかイイ、笑顔」

なにが良いんだろ?笑
こんな呑気に喜んでる貌が可笑しくて笑った、

「おまえ私服だとテンションあがるね、そういうフェチ?笑」
「っ、フェチとか言うなナンカ変態ぽいだろ、照拗×笑」

なんて会話しながら御曹司クンの車に乗って、
とりあえずの行先を話しはじめた、

「なー8時半に帰るんだと行って中華街とか?リクエストある?」
「そこのファミレスでもいいけど?駐車場あるしさ、笑」
「ファミレスつまんないってば、俺ちょっと調べたんだけどソコでもいい?」
「8時半に帰られるならイイよ、笑」

ってことで連れてかれた店は、車停められる和食ダイニングっぽいとこだった。

「ここ和食だし車で来られるから良いなって思ってさ、だからノンアルコールも結構あるし、」

なんて機嫌よく言ってくれる台詞は「褒めてー」ってねだる犬っぽくて、
相変わらずな雰囲気に笑った、

「ほんと犬っぽいよね?笑」
「あーまたそういうイジワル言う、相変わらずSだなー拗×笑」
「笑、」
「またそうやって笑うっ、新しいトコでもSだって言われてんじゃね?」
「白州のハイボールにしよっかな、枝豆とたこわさと、笑」
「あっ、無視するなってばもー拗×笑」

とか話しながらオーダーして、
すぐ飲むモンとツマミっぽいモンやってきて、呑みだすと御曹司クンが上機嫌で笑った、

「やっぱ正面から顔見られるのってうれしー、この一週間ほんとなんかさー」

明るいトーンで言ってくる、でも言ってる事が軽くない。
そんな言葉たちに困ってホントに「先」を考えるコトなんとなく考え始めた、


ワクワクブログトーナメント

とりあえずココで一旦切ります、続きあるんですが反応次第でラストで、笑
第77話「結氷3」短いけど加筆ほぼ終わり、読み直し校正またします。
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山岳点景:青の階

2014-06-29 23:46:00 | 写真:山岳点景
Through all the long green fields has spread,



山岳点景:青の階

大山千枚田@房総半島にて、早苗が青かったです。
秋に行って綺麗だったから青田も見たくて行ってみました。



鴨は虫やら食べてくれる益鳥です、
ので自然農法で放し飼いにもするんですけど、ココは野生でいる雰囲気でした、笑

お散歩写真(6月)ブログトーナメント



で、加筆校正ほか遅くなりましたけど、
第77話「結氷3」短めですが加筆ほぼ終わり、読み直し校正ちょっとします。
Aesculapius「Saturnus15」校了VER貼りなおしました、写真も変えています。

久しぶりに英二短編 dead of night「secret talk20 氷月」草稿UPしました、日付け変わるころ校了です。
そしたら雑談ぽいやつ載せたいんですけど寝落ちしたら順延で、笑

取り急ぎ、

【引用詩文:William Wordsworth「The tables Turned」】


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secret talk20 氷月―dead of night

2014-06-29 23:36:02 | dead of night 陽はまた昇る
凍れる貌、けれど
第76-77話の幕間



secret talk20 氷月―dead of night

君の声を聴きたい、言葉を知りたい、けれど答えは無い?

「…周太、今なにしてる?」

そっと呼びかけて、けれど独りの部屋に応えは無い。
架けたコールかちり留守番電話に切り替わって要らない声が喋りだす。
いま電話に出られない、発信音の後にメッセージを、そんな台詞なんて欲しくないのに?

「しゅうた…」

名前ひとつ呼んで通話切る、そして静寂また押しこめる。
狭い寮室は天井から薄闇くるんで鎮まらす、その無音に気配だけが降る。
また雪は降りだしたのだろう?そんな予想ごと起きあがって踏んだ床、素足に冷たい。

だから心配になる、今、君は温かい場所にいる?

―喘息は、発作は大丈夫なのか周太…どうして、

どうして今この傍に君は居ない?

今もし一緒に居たのなら心配なんて最小限だ、だって現実に護っていられる。
今もし隣に居るなら体の変化ごと抱きとめ支える、護る、この自分が救える。
けれどこの現実は電話すら出てくれない、もう無機質の声は訊き厭きて今は?

「どこにいる、今…」

ひとりごと零れるままカーテン開いて、かちり、開錠音だけが鳴る。
そっと開いた硝子から吹きこんで頬ふれて、冷える感覚に懐かしい。

凍れる風、雪、それから君の笑顔に逢いたい願い、そんな全てが3月を呼ぶ。

「…また遭難したら来てくれる?周太…泣いて怒って、抱きしめて…」

ほら3月の吹雪が君を映す、あの風雪の生死に君は来てくれた。
あのとき目覚めたベッドに君は居た、あの寝顔にどれだけ幸せだったか君は知っている?
きっと知らないから今だって声ひとつ聴かせてくれなくて、その理由が怖くて夏の記憶に苛まれる。

あの北壁の夜もし違っていたら、そうしたら君は今この傍に居たろうか?

そんな仮定に苦しい、だって自分を責めるしか無い。
あの夜に道違えたのは自分、他の誰の所為でもない、そう解かっている。
解かっているから今この電話すら自分の罪だと想えて、だから哀しくて悔しくて、そして赦せないまま雪へ凍える。



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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚137

2014-06-29 20:21:05 | 雑談寓話
こんなとこ↓行ってきたので加筆校正これからです、



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚137

異動忙殺の一週間@11月、さすがに疲れて土曜ノンビリして、
そしたら夜になって同僚御曹司クンから着た電話の〆台詞は、

「じゃあ起きたら電話くれな?無理でもOKでも電話くれた時に決めてよ、」

なんて誘われて翌朝、起きたら昼過ぎていた、笑

誰もが不慣れな新規プロジェクト+寄せ集めの新規同僚+短期間〆切、
そんな条件=ストレス要素満載な一週間に疲れきって寝坊したらしく、

ま、仕方ないよな?笑

なんて笑ってベッド転がってたらまた寝落ちして、
結局、御曹司クンに電話したのは16時とかだった、

「やっと電話来たー、おはよー生きてる?笑顔」

生きてる?なんて言われてちょっと可笑しかった、
確かに16時過ぎまで寝てたら「生きてる?」だろう、そんな感想に笑った、

「寝てちょっと生き返ったけど?笑」
「そっか、よかったー、でもソンナ疲れてるんなら出掛けるのシンドイよな?」

確かに出掛けるのはメンドクサイ、
でも出掛け方にもよる、そんな考え+無理だろなって予想に言ってみた、

「車で送迎ありならイイよ?8時半には家に帰ってたいけどね、笑」

いま16時で20時半に帰宅だったらナシだろう?
そんな予想と笑ったら電話の向こう声が弾んだ、

「じゃあ迎え行くなっ、クリスマスの時の最寄駅んトコ着いたら電話するで良い?」

ほんとに来る気だ?
こんな反応ちょっと予想外だった、で、訊いてみた、

「何時ごろ着く?」
「今すぐ出るから6時に着くと思う、寝て待ってても良いからなっ、また後でなー笑顔」

なんてカンジに電話は切れて予定は決まり、
そんな事態にあらためてベッド転がったまま考えた、

なんでコンナ会いたがってくれるんだろ?

それは御曹司クン自身が言う通り恋愛感情かもしれない、
でも自分は恋愛を持つなんて無い、それを何度も伝えている。
それでも御曹司クンは「もしかして」を期待している?そんな空気あらためて考えた、

このままだと御曹司クンは幸せな恋愛を逃すかもしれない?

そういうの哀しいな、って想った。
たった2時間のために喜んで車出してくれる、そういう無邪気が幸せ逃す原因になったら?
そんなこと考えると今の電話もしなきゃ良かったとか想えて、だけどホッタラかすことも不安になる。

どうしよっかな?そんなこと考えながらとりあえずコーヒー淹れて飲んだ、


とりあえずココで一旦切ります、続きあるんですが反応次第でラストで、笑
Aesculapius「Saturnus15」校了しています、第77話「結氷3」加筆校正Ver後ほどまた。
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第77話 結氷 act.3-side story「陽はまた昇る」

2014-06-28 23:30:00 | 陽はまた昇るside story
nivation 雪蝕



第77話 結氷 act.3-side story「陽はまた昇る」

雪音が、遠く聞こえる。

本当は聞えていないかもしれない、けれど聴く。
いま地上では除雪作業しているだろう、それなのに自分は地下に籠められる。
いま空はきっと青い、隊舎も白銀に輝いている、そんな想像と古い書架のなか英二は微笑んだ。

―ファントムみたいだな、地下に閉じこめられて、

『Le Fantome de l'Opera』

シャンデリア眩いオペラ座の地下に「Fantome」は宮殿を築き棲む、そんな物語。
宮殿は迷宮でもある、そこに歌姫を攫いこんで妻に望んで、けれど貴公子が彼女を地上へ連れ戻す。
こんな物語は自分を映すようで今この地下書庫と雪光る地上の落差から可笑しい。
そして考えてしまう、今、あの男と自分の役はどちらだろう?

貴公子かファントムか、君はどちらの手を取る?

「宮田君、1983年のファイルをお願いします、」

穏やかな透る声に呼ばれて瞳そっと細められる。
いま言われた年号に笑いたい、ようやく始まってくれる?

「はい、」

返事した自分の声は明朗に凪いでいる。
このトーンに俤は少ない、そう知るまま歩きだす通路は古書の香に沈む。
乾いて燻んだ匂いは時間を遡る、そして既知の棚からファイル一冊取りだしてまた詩が謳う。

or but came to cast
A song into the air, and singing passed
To smile on the pale dawn; and gather you

And wage God‘s battles in the long grey ships.
The sad, the lonely, the insatiable,
To these Old Night shall all her mystery tell;

運試しの賽投げつけ
虚ろなる空に歌い、謳いながら透り過ぎ去り、
蒼白の黎明に微笑む、そんな相手しかない君よ、集え

そして遥かなる混沌の船に乗り神の戦を闘うがいい。
悲哀、孤愁、渇望、
これらの者へ 古き夜はその謎すべてを説くだろう。

“or but came to cast A song into the air, and singing passed”

今この一冊に運試しの賽を投げつけるのは、あの男だろうか自分だろうか?
そんな思案と書架を歩き拓けた視界、デスク向かうスーツ姿の老人に微笑んだ。

「お待たせしました、コピー取りますか?観碕さん、」

微笑んで呼んだ先、穏やかな瞳そっと細められる。
眼差しは優しげだけれど何も語らない、その無機質が嫌いだ。

―同類を嫌うってヤツだな、きっと、

こんなこと自分で笑いたくなる、これは自分の我儘だ?
そんな自覚に微笑んで直ぐ銀髪の笑顔は尋ねた。

「どこをコピーするのか解かるんですか、宮田君?」

ほら確信もう訊いてくる、この質問になんと答えよう?
そんな思案も可笑しいまま英二は爽やかに笑いかけた。

「1983年なら立籠もり事件かと思ったのですが、違いますか?」

さあ、核心そのまま突いたなら何て応えてくれる?

今も試すつもりでいるのだろう、けれど試すのは自分の方だ。
そんな支配権を示しながら謙虚に微笑んだ向かい老人は微笑んだ。

「宮田君、昨日は本庁で忙しかったですか?」

やっぱり訊くんだ?

昨日、本庁、そして「忙しい」に尋問が笑ってくる。
この回答はなんて応えたら今この老人を奈落に満足させられる?



(to be continued)

【引用詩文:William B Yeats「The Rose of Battle」】

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Short Scene Talk ふたり暮らし@INTERMISSION act.1 ―Aesculapius act.65

2014-06-28 23:00:00 | short scene talk
二人生活@intermission
第4章act.15-16の幕間@本家



Short Scene Talk ふたり暮らし@INTERMISSION act.1 ―Aesculapius act.65

「はい、お茶どうぞ?(御機嫌笑顔)(お客さんに茶を出すとか家刀自っぽいよねっ)」
「ありがとう光ちゃん、もう立派な主夫だなあ?」
「ありがとね杢田のオッチャン(御機嫌笑顔)(言われると嬉しいねっ)」
「…、照(ああ主夫だなってなんか照れるなでも光一すごく御機嫌で可愛い萌)」
「雅人さんもハイどうぞっ(御機嫌)(ふふんっ雅樹さんの専属主夫だもんねっ)」
「お、湯呑も今時季っぽいし雅樹好みだな?光ちゃんホントよくやってるな(中一で大したもんだよな頼もしい主夫だ感心)」
「うんっ、きっちり雅樹さんの専属主夫してるからねっ(得意笑顔)(雅樹さんが恥ずかしくないようにホントよくやるもんねっ)」
「…、照×得意(僕の好みで出してくれるなんてほんと専属主夫だなこういうの嬉しい分だけ恥ずかしい幸せ照お茶美味しいな)」
「光ちゃんの部屋はあの角部屋か?(たぶんそうだろうな陽当り良いし子供には良い部屋だよな茶うまいな光ちゃん淹れ方うまいな)」
「あの角部屋だよ、屋根裏部屋も付いてるね、ねっ、雅樹さん?(御機嫌笑顔)(秘密基地みたいに出来るねっ)」
「そうだよ、屋根裏部屋どんなふうに遣うか決まった?(こんな喜んでくれてる気に入ってくれてるみたいだ嬉しいな喜)」
「うんっ、さっき杢田のオッチャンと話したんだけどね、書斎にしようかなって(御機嫌笑顔)(こういうと雅樹さん解かるよねっ)」
「明広さんの部屋みたいに?(屋根裏部屋で書斎って明広さんの部屋もそうだったから安心するんだろうな)」
「うんっ、あんなカンジで秘密基地っぽくしたいねっ(得意笑顔)(俺の城だもんねっ環も喜ぶようなのイイね楽しみだね)」
「ああいう部屋イイよな、俺も明広さんの書斎って憧れだぞ?(隠れ家っぽくてカッコいいんだよな和洋折衷が巧くいってて)」
「オヤジのよりモット良い部屋にしてもらうからね、杢田のオッチャンよろしくね?(イイ笑顔)(オヤジの部屋はオッチャンの親父さんだっけね)」
「ああ、しっかり良い部屋にさせてもらうよ(明広くんの部屋は親父の仕事なんだよな超えるの難しいけど光ちゃんの遣いやすい部屋に)」
「お世話かけます、よろしくお願いしますね?(笑顔)(杢田さんなら良い部屋にしてくれるだろうな二人でどんな相談したんだろう)」



第4章act.15-16の幕間、本家@法事翌日の雅樹と光一です。
Aesculapius「Saturnus15」加筆ほぼ終わり、読み直し校正ちょっとします。
第77話「結氷3」このあと加筆校正します、倍くらいになるかなと。

気分転換がてら取り急ぎ、




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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚136

2014-06-28 00:25:09 | 雑談寓話
週末最初の夜っていちばん良いです、
で今夜もちょっと書きます、バナー押して下さる方に感謝にて、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚136

イキナリ異動になった11月、案の定だけど忙殺生活になった。

ちょっとメンドクサイ調べ事だらけ+期限短い+規模デカい、
なんて嫌な条件まみれのプロジェクトは経費だけは融通が利いていた、

「ソレだけ報酬もデカく入るらしいけどさ、自分らの給料は変わらんもんなあ?」

なんて下がり気味テンションな新規同僚たちと同様、自分もさして嬉しくはなく、
ソレでもヤることやらないと終われない=帰宅できないから仕事モードの連続だった、
そんなワケだから昼ゴハン時刻もますます不定期→16時に昼&夕飯ってカンジになり、

From:御曹司クン
本文:おつかれー今日もそっちエリア殺気立ってたな?
   昼ちゃんと行けてるのか心配になる、帰り終電だろうけど気をつけてな?

なんてカンジのメールをもらうような状況で、
それでも週末は休めたから寝+家事+食は週末まとめてってカンジだった。

寝るの幸せだなー、笑

って感覚のベッドタイムは週末イキオイ増えて、
さすがに出掛ける余力あまり無くて、本屋とか買物に行く程度で、
そういう週末土曜の夜、やっぱりだけど御曹司クンから電話がきた、

「こんばんわー寝てた?」

なんて出だしの声がナントナク照れてる感じで、
っていうか声を聴くこと自体が久しぶりだな思いながら笑った、

「家事か食べるか以外は寝てた、笑」
「朝イキナリ出張とかだろ?ハードだよなー、」
「行ったら雪だったりして笑えないよ?笑」
「あーそれ辛いよな?靴とかヤバいし、」
「でもご当地グルメは良いよね、空港とかだけど、笑」
「それ俺は小樽のとき最高だったー笑顔」

ってカンジで職場あるあるネタで会話が展開してくれる、
こういうの同僚ならではの気安さがある+疲労度も解かってくれやすい、
だから電話ごしでも御曹司クンは察してくれた、

「マジおつかれモードだな、どっか外出とかホント無理っぽいな?」
「だね、でも本屋は行ったよ、笑」
「おまえのオアシスだもんなー」

なんて会話して、で、ちょっと遠慮がちに訊いてくれた、

「なー明日とかやっぱ無理?」

ナニが無理?なのか訊かないでも解かる、
でも久しぶりにSりたくなって笑ってやった、

「おまえとデートは無理、笑」
「っ、そんなハードル上げた言い方するなよっ飯行くだけだってばっ、照拗」

ってカンジに相変わらず拗ねながら照れてくれて、笑
そういういつも通りがナンダカ嬉しかった、けど疲れてるまんま笑った、

「今んトコなんとも言えないね、明日が何時に起きるかも解らないし、月曜また早いしさ?笑」

保留、ってある意味いちばん意地悪だろな?
そんなこと思いながらベッド寝転んで文庫本また眺めてる電話口、御曹司クンは笑った、

「じゃあ起きたら電話くれな?無理でもOKでも電話くれた時に決めてよ、笑顔」

ようするに「電話くれな?」がイベントなんだ?笑


とりあえずココで一旦切ります、続きあるんですが反応次第でラストにします、
Favonius「少年時譚20」+Savant「夏嶺の色3」校了、Aesculapius「Saturnus15」草稿UPです。
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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚135

2014-06-27 01:06:05 | 雑談寓話
眠いけどちょっと書きます、バナー押して下さる方に感謝にて、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚135

イキナリ異動になった11月の月曜夜は同僚御曹司クンの泣き電話だった、

「仕事もうヤダって煮詰まってもさあ…ぅっ、おまえ見るとがんばれたんだよ席からよく見えたしさー…っも、明日からどうしよ」

なんて泣かれて鬱陶しかった、のに電話こっちから切れなかった。
たぶん付合ってる相手なら遠慮なく切っている、だから御曹司クンは放りだせなかった、

そんなワケで月曜→火曜は電話ごし、御曹司クンの泣き×文句を聴きながら寝落ちして翌朝、メールが着た、

From:御曹司クン
本文:おはよー気が付いたら電話つなぎっぱなしで寝てた、
   おまえの寝息が聴こえてなんか幸せだったんだけど(顔文字笑顔)
   でも録音はしていないからな?

録音していたら犯罪ちっくだよね?
っていうかコイツ元気いっぱいだろ想いながら通勤の車中で返信した、

Re :正直モンの方が好きだよ?笑

この返信どう来るかな?
とか思いながら文庫本を読んで列車は着いて、
で、職場に着いて元の席へ引越荷物を取りに行ったら御曹司クンがやって来た、

「ホント録音とかしてねえからっ、」

イキナリそれなんだ?笑
こんな反応素直すぎて可笑しくて笑った、

「ソウイウコトにしとくね、笑」
「ホント嘘吐いてねえってば、だからー、拗」

ちょっと拗ねながら御曹司クン言って、で、ちょっと笑った、

「だからさ、慣れない仕事たいへんだろうけど、がんばれな?」

なんて言う貌は泣いてなかった、
昨夜もう散々に泣いたから涙も止まっている、そんな目許に笑ってやった、

「ありがとね、おまえの目ズイブン腫れてるよ?笑」
「しかたねーじゃん、また電話するな、」

そんな台詞で笑って御曹司クンは席に戻って行った、
とりあえずココでは泣かずに済んだらしい?

がんばったんだな?笑

電話でも泣きじゃくるってカッコいいもんじゃ無い、
それでも御曹司クンなりの精一杯だって解かるから褒めたかった、
でもソンナこと言わないまま自分も新しい席へ行って、で、案の定だけど忙殺生活が始まった、


とりあえずココで一旦切ります、続きあるんですが反応次第でラストにします、
第77話「結氷2」校了しています、Favonius「少年時譚20」草稿UPしました。
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第77話 結氷 act.2-side story「陽はまた昇る」

2014-06-26 06:09:17 | 陽はまた昇るside story
snowbound 封鎖の天



第77話 結氷 act.2-side story「陽はまた昇る」

雪は止んだ、けれど世界は白く動かない。

「都心部でも10cmの積雪、山間部は檜原村で30cm…」

テレビが告げるニュースに今日の状態は映される。
その声に画面ときおり眺めながら箸運ぶ前、色白の貌が口開いた。

「12月でこれだけ降るの珍しいですね、黒木さん、除雪要請は?」
「あるだろうな、いま国村さん達が打合せしている、」

答える低い声に次の予測が出来る。
きっと訊かれるだろう?そう想った通り高田が尋ねた。

「宮田さんも出動するんですか?観碕さんが来るそうですけど、」
「もちろん本職に出動だ、元本部長でも任務は関係ない、」

きっぱり答えてくれる声に微笑んでしまう。
この「本職」に信頼とプライドは篤い、そんな同僚に英二は笑いかけた。

「俺も書庫より現場にいたいです、」

地下の穴倉よりも空近くにいたい。
そんな本音に日焼あわい貌が笑った。

「その気持ち俺も分かりますよ、今日は除雪だけじゃなくて救助もありそうだし、」

言いながら視線が窓へ向く。
ライトグレーの切れ間から青色が見える、そこにある陥穽に穏やかな声が尋ねた。

「高田も疑似好天になると思うんだ?」
「浦部もそう見るだろ?黒木さんと宮田さんはどうですか、」

闊達なトーンに訊かれながら夜明の屋上が想われる。
雪降る暁に見上げた空は危うい、そして天気図に読んだ予測を口にした。

「高層天気図は東北と関東の温度差が大きいです、日本海も小さな低気圧が隠れています。たぶん8時ごろ晴れてまた崩れます、奥多摩は正午前かと、」

たぶん昼まで保たない、それが危ぶまれる。
今の空に登ってしまうハイカーもあるだろう、そのリスクに先輩も口を開いた。

「宮田の言う通りだろうな、しかも今日は土曜だ、既に登り始めたハイカーもあるだろう。所轄は厳しいだろうな、宮田?」

思案の前から訊かれて去年の冬を思い出す。
いまニュースで告げる積雪量、それから予想される事態を告げた。

「はい、現時点で30cmだともう車で入ってると思います。天気図を読まないハイカーは積雪量と天候変化に対応できないかもしれません、」

平野部の降雪条件は気温が上空1,500m付近で零下6度以下、地上2度以下。
そのため上空で雪になっても地上の気温が高ければ途中で溶けて平野部は雨となる。
そして気温は高度300mで3度低下するため山上では降り始めから雪となり平野部とは積雪量に差がつく。
こうした積雪差の読み違えに「疑似好天」が重なれば行動不能に陥りやすい、その可能性に浦部がため息吐いた。

「きっとアルプスも遭難が多いと思います、昨日は研修会で今日すぐ実地ってカンジだな、」

昨日、全国の警察山岳救助隊から代表が集まった。
その夜から天候悪化は始まっている、そんな廻り合せに高田の一重目が瞬いた。

「昨日って浦部の知り合いが長野県警から出たんだっけ?」
「うん、高校の山岳部で一緒のヤツがね。今ごろ駐在所で待機してるよ、きっと穂高は荒れてる、」

微笑んで話してくれながら色白の顔は浮かない。
故郷の友人が気遣わしい、そんな顔に自分も心配ごと見つめてしまう。

―こんな寒いと周太の喘息は大丈夫かな、今日は休みのはずだけど、

雪の寒空で訓練などされたら気管支に障る、だから休みで良かった。
けれど休日だからと出掛けるかもしれない、それが心配で気遣わしい。

―昨夜は電話出てくれなかったけど、メールは読んでくれたのかな、周太、

朝食前に確認したとき返信は来ていなかった。
このあと電話してみようか?そんな心配に訊き慣れた足音が近づいて肩を敲かれた。

「宮田、あのヒト変更なしで来るってさ、ヨロシクね?」

軽やかなテノール笑って隣に座ってくれる。
そのままトレイ置いた上官に黒木が問いかけた。

「国村さん、この雪の中を観碕さん来るんですか?こっちも出動かも知れないのに、」
「出動で中断アリだよって言ったけど来るってさ、よっぽどココが気に入ったんじゃない?ねえ、宮田巡査部長どの?」

感心と呆れ混ぜたトーンが悪戯っ子にこちら見る。
その言葉に計画通りだと笑いたい、けれど押えて英二は微笑んだ。

「書類を先にコピーしておきます、途中でも満足頂けるように、」

今日も満足させてやればいい、そしてまた信頼されるだろう。
昨日に疑わせた分だけ今日を信じさたなら崩れにくい、そう固めてみせる。
幾度も疑って信じて、そうして固めた信頼を崩されたなら屈辱はどれだけ大きいだろう?

―あの男には五十年分の屈辱を、そうでしょう晉さん?

きっと今日は荒天になる。



(to be continued)

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