萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

山岳点景:白×蒼

2014-01-31 18:01:17 | 写真:山岳点景
凍結、水の変転



山岳点景:白×蒼

戦場ヶ原@栃木県日光、1月の風光です。
小雪舞う空からは薄日が射して、凍てつく大気に息は白かったです。




木道も雪に埋まって湿原との区別が付きにくい状態でした。
なので行かれるのなら残っているトレースを踏んでゆくことがおススメです。
それでも時おり、先行者が踏み外した→埋まった脱出大変だ、っていう痕跡を何ヶ所か見ました。




下の樹氷は中禅寺湖畔にて。
波絶えない湖面は蒼く沈んで空気も凛と冴えていました。




Savant「言の氷塞 act.3」校了しています。
Aesculapius「不尽の燈21」草稿UPしました、倍から加筆予定です。
それ終わったら短編連載or第73話の続きを掲載しようかなと。

夕刻取り急ぎ、



1月の写真(2014)ブログトーナメント

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Short Scene Talk ふたり暮らしact.20 ―Aesculapius act.30

2014-01-31 01:11:10 | short scene talk
二人生活@birthplace4
Aesculapius第2章act.20の幕間




Short Scene Talk ふたり暮らしact.20 ―Aesculapius act.30

「雅樹さん、桜って散るとこも綺麗だね?(御機嫌笑顔)」
「うん、綺麗だね。桜は花も葉も良いなって思うよ、秋の紅葉も冬芽の時も(ほんといつみても桜は良いな光一みたい照萌)」
「だねっ、(御機嫌笑顔)そういえば雅樹さん、花を散らすってドウいう意味かね?」
「え…(それって照)どんな時に遣われてたの?(明広さんの本とか言ったら意味決定だよね照)」
「オヤジの本にあったね、美少年の花を散らしたらナンタラって書いてあったね、(人間の花って不思議だね?)」
「…照(ああやっぱり明広さんの本なんだ照、ってナンカ作為的だな光一がそれ読んだのって何だか僕のこと書いてるみたい?)」
「ね、雅樹さん?美少年の花を散らすってどういう意味かね、ソレとも俺の訳仕方がナンカ変なのかね?(違う意味にとってるかね?)」
「いや…照 それどんな内容の本だったの光一?照(って聴かなくても解かるけどちょっと聴いてみたいって言うか照)」
「美青年と美少年のレンアイ小説だねっ(御機嫌笑顔)」
「れ…照(ああやっぱりソウイウのなんだねフランス恋愛小説なんだ明広さんソレわざと光一に読ませたんじゃないかな照悶)」
「初めての時の前に読んでさ、このあいだ再読したら雅樹さんと俺みたいで面白かったねっ(極上笑顔)(5年ぶりに読んだねアレ)」
「は…照(初めての時の前ってソレってあの夜に言ってた男同士のセックスも勉強したよって言ってたことだよね照)」
「ね、雅樹さん?花を散らすってドンナコト言ってるのかね?(あのときも不思議に思ったけどナンのことだろね?)」
「えっ…とね、言葉で言うの難しいから現場になったら教えてあげるね(困×照笑顔)(ああ今すぐ現場になりそうな僕です困るよこんなの誘われてるみたいで照困でも光一にそのつもりないんだよねコンナ時ほんと歳の差って翻弄させられて悶々×照幸)」




Aesculapius第2章act.20の幕間、
雅樹と光一の会話@山桜の杜2、雅樹の照れ喜び×悶々7です、笑

Savant「Vol.4 Icebound 言の氷塞 act.3」草稿UPしてあります、あと倍くらい加筆予定です。
ソレ終わったらAesculapiusか第73話+短編連載を書きます。

で、にほんブログ村の反映が今夜ちっともされません、笑
メンテナンスしたばかりらしいのに遅いんですよね、ココンとこ。

深夜に取り急ぎ、




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山岳点景:睦月の空

2014-01-30 15:00:16 | 写真:山岳点景
氷点の空



山岳点景:睦月の空

年明@山梨の空です、
西湖あたりの公園みたいなトコで撮影したんですけど、寒かったです、笑
上下とも人工的に散水した氷柱の写真なんですけど凍るアタリ気温の低さが伺えます。

なんでも!ブログトーナメント



第73話「暫像4」「Eventually Comes True May.2012 act.5 清風」加筆終っています。
どちらも読み直し校正が終ったら週刊連載かAesculapiusを掲載予定です。

休憩合間とり急ぎ、




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Short Scene Talk ふたり暮らしact.19 ―Aesculapius act.29

2014-01-30 00:43:10 | short scene talk
二人生活@birthplace3
Aesculapius第2章act.19と20の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.19 ―Aesculapius act.29

「イイ天気で森もご機嫌だね、雅樹さん(御機嫌笑顔)(ふたりで散歩は楽しいね幸)」
「そうだね、木も光合成いっぱい出来て嬉しそうだね(光一が御機嫌なのが僕は嬉しいな光一は僕の太陽だね照萌)」
「光合成って葉っぱがデンプン作るんだっけね?(前に雅樹さんに教わったね)」
「そうだよ、デンプンを蓄えることで木は成長するんだ(僕は光一の笑顔で元気チャージしてるよね照ほんと僕ってデレてるな萌幸)」
「雅樹さんといると俺、いろいろ教われて楽しいね(御機嫌笑顔)ね、中学校の勉強とかもみてくれるの?(雅樹さん先生なら楽しいね)」
「うん、僕が家庭教師もするよ?夜勤の日は出来ないけど、御岳で開業したら合間にも見てあげる(笑顔)(開業大変だけど光一の教育の為にも僕がんばらないとね奏子さんのご両親に文句言わせるの嫌だし僕も意地がある何より光一の選択肢を広げてあげたい)」
「うんっ、楽しみにしてるね、雅樹先生?(極上笑顔)」
「せ…照(先生だなんてプレイみたい照って何考えてるんだ僕でも勉強のたびソンナ呼び方されたら僕ちょっと悶々)」
「ね、あの縁側に机置いて勉強とかもイイね?(庭見ながら勉強も楽しそうだね)」
「そうだね(ほんと可愛いな光一は照萌)引越したら光一の部屋もちゃんとしようね、好きな部屋を選んでいいよ?(思春期だし自分の部屋ほしいよね)」
「うん、ありがとう雅樹パパ?(御機嫌笑顔)(部屋の心配までしてくれてホントお父さんだね)」
「ぱ…照(ああこの呼び方ちょっと他のパパみたいで僕なんかもう照)」
「でも雅樹さん、寝る部屋は一緒だよね?そのために大きいベッドだよって言ってたもんね?(極上笑顔)(一緒に寝たいもんねっ幸)」
「もちろん毎晩一緒に寝たいよ?照笑(ああモチロンとか言っちゃった僕これじゃ毎晩いつも光一のことしたいって言ってるのと一緒みたい照悶々)」
「うんっ、もちろん毎晩一緒だねっ(極上笑顔)毎晩いつも抱いて寝てね?(雅樹さんに抱っこされて寝ると幸せ良い夢見れるね甘えんぼすぎだけど息子ならイイよねっ嬉)」
「だ…照(ああ光一その貌ほんと綺麗可愛すぎる僕いまホント幸せだ照でもそんな毎晩いつも抱いてだなんて幸照どうしよう僕そんなにえっちな子に育てちゃったのかな初体験も早かったし僕の責任だよね悶々×照萌)」
「あ、金蘭が咲いてるね、きれいだね雅樹さん(御機嫌笑顔)(この花めずらしいもんね嬉しいね一緒に見られて喜)」
「うん、きれいだね(笑顔)(僕には光一がいちばん綺麗だよ照萌こんなに妄想しちゃうのは綺麗すぎるからなのに照悶々×幸)」



Aesculapius第2章act.19と20の幕間、
雅樹と光一の会話@山桜の杜、雅樹の照れ喜び×悶々6です、笑

Aesculapius「不尽の燈20」校了しています、山桜の杜から国村家のシーンです。
第73話「暫像4」草稿UPしてあります、あと1/3ほど加筆の予定です。

深夜に取り急ぎ、




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第73話 暫像act.4―another,side story「陽はまた昇る」

2014-01-29 20:30:06 | 陽はまた昇るanother,side story
Discordant elements, and makes them move 不協和の痕



第73話 暫像act.4―another,side story「陽はまた昇る」

かつん、かつん、かつん、

回廊を鳴らす靴音が耳につくのは緊張感の所為。
誰も自分を気にしてなどいない、そう解かっているのに擦違う全員へ警戒が背骨を貫く。

―可能性を考えていなかったわけじゃない、でも、

心呟きながら制服の脚を制御して、駆け出しそうなトーンを宥めて歩く。
会釈しながら行く廊下はオレンジ色の光あわい、もう黄昏に暮れて今日が終わってゆく。
そんな窓明かりすら昨日以上に赤く想えて、染まりだす赤色光に夢が周太の鼓動を撃った。

『…しゅうた、』

ほら、父の絶息が自分を呼ぶ、そして赤い鮮血が夜空を舞う。

ゆっくり倒れこむ制服姿、銃声、それから桜の花びら3枚と血染めの写真。
アスファルトに横たわる父の白い貌、赤い紺青色の制服、叫んでいる父の友人の貌。
どれもが現実には見ていない光景、それなのに映しだされる色彩と貌と映像たちに気管支が噎せあげた。

「…っ、ぅっ、」

咳き込んでしまう?

発作の兆しごと呑みこんで周太は非常扉に屈みこんだ。
ここなら誰も気づかれない、その安堵に呼吸深くして気管支と肺を宥めてゆく。
今ここで喘息を曝したらいけない、そう理性に訴えるまま胸抱えこんで思案が廻りだす。

―おばあさまが危険かもしれない、もし、あのひとが気づいたら…英二も、

『 La chronique de la maison 』

仏文学者だった祖父が書き遺した推理小説は、全文フランス語で綴られる。
物語の舞台はパリ郊外、ある屋敷で放たれた2発の銃弾を廻る殺人事件を描きだす。
その登場人物たちを脳裡に数えてゆくごと祖父の意図と今までの理由が、軌跡を顕わす。

―屋敷の主と小さい息子、妻、母親、乳母…殺されてしまう父親と犯人、それから友人の警察官…だけ、だから、

家族5人と乳母1人、犯人1人、そして主人公の友人である警察官。
この8人が物語を織りなしてゆく、それは半世紀前の事件と酷似していた。
けれど小説には「妻の従妹」は登場しない、それだけが事実と小説の相違で意図だろう。

―あの新聞記事が小説の事件なら、全て納得できる、

入隊前休暇の初日、世田谷区役所で祖母の除籍謄本すべて遡って取得した。
そのあと行った川崎の図書館で半世紀前の新聞記事を閲覧して、そこに類似する事件を見た。

“神奈川県川崎市の住宅街外れにある雑木林で拳銃自殺。神奈川県警と警視庁の警察官による死体見分の結果、自殺と断定”

そう新聞記事に記されていた事件発生日は、曾祖父の命日だった。
あの事件記録は小説と食い違う、けれど、小説を信じるなら事実の作為と記録の意図が見える。
そして小説に「妻の従妹」が登場してこない理由も現れて、祖父の贖罪と意志と祈りが今を宥めだす。

―お祖父さん、あのひとは顕子おばあさまのこと何も知らないって信じて良いの…気づかれないようにお祖父さんがしてくれてるの?

あのひとは「友人の警察官」は主人公の妻の従妹に気づけない?
そうであってほしい、それならば数日前に顕子が来訪し滞在したことを「友人の警察官」はどう解釈する?

―僕が休暇中に何していたとかチェックされているとしたら、おばあさまのことも…でも英二は帰ってきた、

顕子の滞在中、英二も家に帰ってきた。
あの英二なら「友人の警察官」の動向を把握している可能性が高い、それなら顕子の来訪はノーマークだろうか?

―休暇中のチェックは無いって考えて大丈夫、だとしたら…英二は深いところまで知ってることになる、ね?

過去も、現在も、英二は全てを把握している?
そう考える方が今までの全てに納得できるだろう、そして可能性が確信に変わる。

“Mon pistolet”

そう小説に記されていた祖父の拳銃は、半世紀前の事件に遣われた拳銃の行方は英二が知っている。
その可能性を事実だと考えるなら英二は祖父の小説を当然読んでいるだろう、そして多分、他の記録も読んでいる。

―だって英二は僕より先回りして動いてる、いつも…お祖父さんの小説もたぶん僕より先に知って、読んで…だから、

英二、あなたは「何」で全てを知ったの?

どこまで知っているの、どうして自分に教えてくれないの?
なぜ自分よりも先に追いかけようとするのだろう、あなたの目的は何?

「…どうして」

ひとりごと零れて溜息くゆらせる、その呼吸に気管支はもう痛くない。
いま廻らせた思案の集中に発作も忘れられた、この幸運に微笑んだ背後から気配が近づいた。

「湯原、そこで何をしている?」

この声は知っている、

その気配ごと認識しながら周太はそっと制服の胸ポケット触れた。
そこに挿しこんだボールペンを右手へ取り、床なぞらせてから立ち上がり微笑んだ。

「すみません伊達さん、ボールペンを落して探していました、」

詫びながら右手を示してみせる。
携えたボールペンは埃わずかに付着して、その小さな塵埃にシャープな視線が向く。
そのまま周太の顔を見、精悍な貌いつものまま伊達は告げた。

「用が済んだら戻れ、離席して10分以上経ってる、」
「はい、申し訳ありません、」

素直に頭下げた前、制服姿が踵を返す。
いつもどおり端正な背中は真直ぐ歩きだす、その後を追いながら心裡ため息吐いた。

―喘息のとこ見られなくて良かった、でもどうして…こんな探しに来るなんて、

離席の時間を計っていた、そんな言葉に探されていたと解ってしまう。
なぜ伊達は探しにまで来た?そこにある理由と目的を考えずにいられない。

―やっぱり僕は見張られてる、だから伊達さんを?

SAT狙撃チームで技術から知力体力ともトップ。
そんな男と不適格烙印の自分が組まされることは異様だろう。
何よりも自分が入隊試験に合格したこと自体が異様、そんな自分と組まされたことを伊達自身はどう想っている?

「湯原、」
「はい、」

低く深い声に呼ばれて意識を戻す、その真中で端正な背中は歩いてゆく。
振り返りもしない、けれどこちら見透かすような空気は真直ぐ言った。

「気をつけろ、」

気をつけろ、

ただ一言、その意図は何を示すのだろう?
解らなくて、ただ可能性を探しながら周太は肯った。

「はい、申し訳ありませんでした、」
「ふん?」

吐息のような相槌に精悍な貌が振り返る。
さらり此方を見、深い眼差しが冷静に告げた。

「湯原、晩飯につきあえ、」

今、なんて伊達は言ったのだろう?

「…え?」

言われた言葉に途惑わされて見つめ返してしまう。
配属されて3日目、けれど初めて聴いた発言が冷静に続いた。

「今日うちの班は定時だ、晩飯の時間くらいある、」

食事に誘ってくれている?
そんな台詞が発言者の貌と不釣り合いで途惑わされる。
本当にこの人が自分に言っているのだろうか?それが不思議なまま伊達は言った。

「食いたいもん考えておけ、」






(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Book I[Patterdale] 」】

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夜に

2014-01-28 20:30:01 | お知らせ他


こんばんわ、ここんとこコノヘンは天気良いです。
いわゆる小春日和ってカンジでもありますが今日はヤタラ風が強かったです。

いま第73話「暫像3」とAesculapius「不尽の燈19」校了しました。
これから「Eventually Comes True May.2012 act.4 ―清風」の加筆校正します、
それ終わったら週間連載orAesculapiusかside story anotherのどれかUP予定です、

とりあえず取り急ぎ、



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第73話 暫像act.3―another,side story「陽はまた昇る」

2014-01-27 23:46:29 | 陽はまた昇るanother,side story
Invisible workmanship that reconciles 不可視の聲



第73話 暫像act.3―another,side story「陽はまた昇る」

運命が扉を叩くなら、どんな音だろう?

やわらかなノックだろうか、激しく叩きつけるだろうか。
それとも雨ふるよう雪のよう声かすかに触れて消えてゆく?

―お父さん、この場所のどこかに足跡があるんでしょう?…僕に教えて、

心ひとり呟きながら事務デスクの片隅、過去データのファイルを捲ってゆく。
まだ電子化される以前の現場記録は何年もある、それをパソコンに打ちこます。
こんな資料整理も業務としてある、その仕事に父の軌跡を見つけられるかもしれない。

なぜ父は警察官に「ならざるを得なかった」のか?

その理由と証拠が欲しい、どうしても父の現実を知りたい。
だから喘息の罹患も隠してこの部署に来た、この秘匿が知られたら多分もう叶わない。

―喘息がばれたらSATは除隊になるよね、もし現場で咳き込んだりしたら危険で…馬鹿な我儘だけど知りたい、

SATは籠城事件などの対応として誕生した。
当然そこでは秘密裏の行動が求められる、そのとき喘息発作が起きたらどうなるだろう?
その危険予想は解かっている、けれど自分の運と意地を賭けて知りたい、だから今ここを辞めたくない。

だって、父はSATに殺されたのかもしれないのに?

―もしかしたらお父さんはSATがあるから大学に残れなかったのかもしれないんだ、そのために最後も、

なぜ父は警察官に「狙撃手」にならざるを得なかったのか?

その真相の手掛かりは一冊の小説しか自分に無い。
祖父が書き残したミステリー小説、それだけが過去の事実を示唆してくれる。

―お祖父さんの小説は多分、フィクションじゃないんだ…それなのに拳銃が無かった、

“屋敷の奈落深く、私は分身を埋葬した”

そんな一節をフランス語で記した祖父の真実は、祖父の過去にある。
その過去が父を「狙撃手にならざるを得なかった」時間へと追い込んだかもしれない?
そう考えたから入隊前の休暇の初日に実家の「奈落」を掘り起こし、けれど祖父の「分身」拳銃は消されていた。

―確かにお祖父さんは拳銃を埋めたんだ、だってホルスターの革が土に混じってた、でも、鉄の錆屑は何も無かった、

祖父の拳銃は「埋められていた」その痕跡は奈落の土に混じらす朽ちた革屑が示してくれる。
そして拳銃は「消されていた」無傷のまま掘り起こされた事実を鉄屑の不存在が教えてくれた。

“Mon pistolet” 私の拳銃
“souterrain”  地下室
“enfermer”   監禁する、隠す

祖父が言う「奈落」を示す単語たちは仏間の隣、茶室に穿たれた炉。
あの家で「souterrain」地下に降れる可能性は唯ひとつ、炉を外し場合だろう。
その炉を外すには屋敷内に入り茶室で作業するしか出来ない、そして、そんなこと可能な人間は自分以外に二人だけだ。

―お母さん一人じゃ炉は外せないもの、それに小説のことも知らなかったんだ、

炉を外せる人間、そして小説の「souterrain」が茶室の炉だと読みとれる人間。
それは祖父の小説を入手し、家の構造を知り自由に出入り可能な人物という条件になる。
この2つ条件を満たす人間だけが祖父の拳銃を掘り起こす、だから可能性は限定される。

誰が祖父の「分身」拳銃を掘り起こせるのか?そんな人間は自分と父と、英二しか考えられない。

―英二、あなたなんでしょう?

父ではない、その痕跡を土が示していた。
もし父が掘り起こしたなら14年前になる、この経年より遥かに土は新しかった。
そんな事実を祖父の「奈落」に見つめて、だから父の過去に「強制された」悲痛を見た。

―そうでしょう英二?お父さんとお祖父さんのこと何か知ってるから、拳銃を掘り起こしたんでしょう?

英二は祖父の拳銃を今、持っている。

きっと祖父の拳銃は朽ちてなどいない、それは「奈落」の土質から解かってしまう。
あの土に腐敗した金属たちの痕跡は無かった、だからこそ今も父の痕跡を業務から探して、けれど見えない。

―まだ3日だけど僕に割り当てられてる事件は多分、お父さんの担当じゃないものだけだ、

父の年代に発生した事件はある、けれど父の名前は一切出てこない。
自分が誰の息子なのか上官たちは当然知っているだろう、それくらい人事ファイルの身上書で解かる。
そんな配慮は当たり前かもしれない、それでも父の事件を直接に担当する可能性を探せないだろうか?

―誰かが担当しているはずなんだ、ここ居る誰か…そのひとの手伝いが出来たら見られるのに、

父のデータ整理を担当しているのは、誰だろう?
それとも過去に父の案件は処理済でもう触ることは難しい?

―処理済だったらデータ整理の仕事にはならないよね、でも見る方法があるはず、

「…ぁ、」

思案に声こぼれて周太はそっと息呑んだ。
整理編集の仕事は無いかもしれない、けれど閲覧方法なら自分にはある。

―そうだ、参考資料にしたいって言えば良いんだ、

データ整理編集の目的は何か?それは参考資料として使用する為でいる。
それなら使用すると言えば自分も父のデータを見られるかもしれない?そう気がついてすぐ溜息こぼれた。

―ううん駄目、僕がお父さんのこと探ってるってバラすことになるもの、

せっかく思いついて、けれど無駄になる。
こんな落胆を自分は幾度あと重ねたら父の足跡に、過去の真実に辿りつけるだろう?
そんな想いもどかしいまま仕事はパソコンの画面を綴ってゆく、そしてまた考えだす。

―でも英二はどうやって辿りつけたのかな、お祖父さんの小説だけじゃ解らないのに、

『 La chronique de la maison 』

祖父がミステリー小説に遺した過去、それは祖父の還暦までしか記録が無い。
だから父の警察官になった時間軸は当然のこと綴られず、けれど英二の言動は「読んで」いる?

―僕が知らない何かを英二は読んでいるのかもしれない、おばあさまの孫である英二なら、

英二の祖母である顕子は自分の祖母、斗貴子の従姉にあたる。
そして顕子は斗貴子と最も親しい親族で祖父の事も、幼少期の父も知っている。
そんな顕子は過去の現実『La chronique de la maison 』の原点を見た唯一生存する親族になる。

―おばあさまは小説の時間を生きてた唯ひとりの親族なんだもの、なにか証拠みたいの英二が知っていても、

唯ひとり、あの過去を現実として生きた人。
それが英二の祖母だった、それを改めて思案するまま周太は息呑んだ。

「…あっ、」

唯一の生き証人、その存在に「彼」が気づいてしまったら?

―だから英二は僕との血縁関係を内緒にしてるんだ、それなのにこの間おばあさまは、

この間、数日前に顕子は実家に来てくれた。
自分が喘息発作を起こしかけて倒れて、その看病のために顕子は来てくれた。
そして自分との血縁関係を認めて母とも話をしてくれた、数日を滞在して主婦を務めてくれた。

この事実をもし「彼」が知ったら顕子はどうなるのだろう?

「…っ」

パソコンを休止させ、デスクから立ち上がり踵を返す。
その背中に低く透る声が呼びとめた。

「湯原、行先報告は?」

冷静な声、動じない声、そんな呼び声に少し宥められる。
けれど立ち止まれない想いのまま振り向いて周太は微笑んだ。

「失礼しました。伊達さん、トイレに行かせて下さい、」
「どうぞ、」

さらっと答えて、けれど鋭利な眼差しが見あげて問う。

“本当に用事はそれだけか?”

そんなふう訊くような瞳に周太は背を向け、執務室の扉を開き外へ出た。







(to be continued)

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青空零度

2014-01-27 07:56:31 | お知らせ他


おはようございます、昨日は温かかったのに今朝は寒、笑
昨日は温かい場所にいた所為もあり今日は尚更に寒く感じるんでしょうけど。

でも写真下はウチの近所ではありません、ココまで寒冷地域じゃないんで。
先々週あたりに出先で撮った氷柱です。



昨夜、Aesculapiusとside story another 草稿UPしてあります。
今日はソレの加筆校正する感じです。

朝に取り急ぎ、

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山岳点景:冬鳥の汀

2014-01-26 23:41:48 | 写真:山岳点景
蒼×白、冬モノトーン



山岳点景:冬鳥の汀

白鳥@山中湖、凍結する湖の汀です。

すこし暖かい日が続いた午後、食事がてら遠出したんですけど。
曇ぎみ白い空に雪の湖が映えて、停めて下りた波打際で白鳥が歩いてきました、笑




岸辺沿いに融けた湖水、歩いてきた白鳥は浮んで食事?らしく。
連れ立って至近距離まで歩き、泳ぎ、のんびりしてました。

第3回 野鳥ブログトーナメント



Aesculapius「Pinnacle不尽の燈 act.19」草稿UPしてあります。
倍くらい加筆して、そのあと第73話の続きor短編連載の予定です。

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Short Scene Talk ふたり暮らしact.18 ―Aesculapius act.28

2014-01-26 00:38:21 | short scene talk
二人生活@birthplace2
Aesculapius第2章act.18と19の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.18 ―Aesculapius act.28

「青椛きれいだね、枝振りもよくってさ。雅樹さん、俺ここ好きだね、(御機嫌笑顔)」
「よかった、光一が好きになってくれて、照(ほんと御機嫌に笑ってくれてる気に入ってくれて嬉しい可愛い萌)」
「でも雅樹さん、ココが寂しくって新宿に帰っちゃったんでしょ?雅嗣伯父さんのことは好きだったのに(好きって言ったね確かに)」
「うん、あのときは寂しく見えちゃったんだ。僕、弱虫だね?困笑(光一みたいに静かさを楽しむとか出来なかったな)」
「弱虫とは思わないね、でも雅嗣伯父さんのこと好きだったんでしょ?(大伯父サンで父親として好きって解かるけどちょっと妬けるね拗)」
「うん、好きだよ?心も姿も綺麗なひとだったから(笑顔)(あんなふうに僕もなれるかな)」
「ふうん、きれいな人だったから好きだったんだね…茶碗片づけてくるね(違う好きって解るけど妬けちゃうね俺も嫉妬深いね拗笑)」
「ありがとう、僕も一緒に洗うよ(少しでも多く二人一緒にいたいな照萌)」
「ひとりで出来ます、座ってて?(極上拗ね笑顔)(なんかヤタラ妬けちゃうね嬉しそうに好きだよって言うんだもん拗)」
「え…光一、どうしたの?(なんか怒ってるよね今さっき御機嫌だったのにどうしたのかなでも怒ってる顔も綺麗なんだよね困萌)」
「どうもしないね、雅樹さんは好きな雅嗣伯父さんのコト偲んでてよね、俺アッチにいますから(極上拗ね笑顔)(ちっと拗ねても赦してよね)」
「伯父さんのこと?(どういう意味だろう光一どうしたのかな?あっ)待って光一、違うんだよ?(どうしよう変な誤解されてる困)」
「ふんっ、なにが違うんですかパパ?(拗ね笑顔)(父親で夫なんだもんね雅樹さんソレって同じだったわけでしょふんっ拗)」
「ぱ…照(パパって違う意味みたい照萌ってソンナ場合じゃないよ僕)」
「さ、パパはノンビリしてて下さいね、俺は茶碗洗ってきますから(拗ね笑顔)(紅くなってる雅樹さん可愛い喜でも俺拗ねてるもんねっ)」
「あのね光一、僕が雅嗣伯父さんを好きだったのは神職の先輩や父親としてだよ?僕が光一のこと好きなのとは違うんだ、照」
「ふん、どう違うの?(拗ね笑顔)(解かるけど言ってほしいね我儘だけどっ拗)」
「うん…(言うより行動だよねこんな時は照喜)光一、(ほっぺにキスなら許してもらえるよねキスしちゃおう照大喜)」
「ぁ…照(ほっぺだけど雅樹さんからキスしてくれたね照喜)…まさきさん?」
「光一、キスしたいのは僕、光一だけだよ?(照笑顔)(ああ僕どうしようほっぺキスだけで今もうこんなに照萌幸)」



Aesculapius第2章act.18と19の幕間、
雅樹と光一の会話@吉村本家2、雅樹の照れ喜び×悶々5です、笑

第73話「暫像2」と「Eventually Comes True May.2012 act.3―清風」校了しました。
このあとAesculapiusを掲載予定です、そのまえに短編他UPかもしれませんが。

深夜に取り急ぎ、




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