萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

深夜雑談、驟雨の夜×うっかり

2020-08-31 23:51:07 | 雑談
オツカレサンな月曜日、
で・オツカレ→うっかり編集途中UPしちゃったツイさっき、笑

あれ?なんでUPされてんの??

びっくりした、笑
まだ冒頭の書き出しだけ、挿絵写真もつけていない、
UPするなんてトンデモナイ状態・なんだけどウッカリUPしちゃったらしい。
どんだけ自分オツカレサンなんだろーっていうのにも我ながらビックリした、笑

今日は帰ってきて風呂してソファーバッタリで、
バッタリそのまま寝ちゃってたアタリかなりオツカレサン。
夏バテなんだろーか・猛暑日ツヅキだし・残暑見舞いしーずんだし?

こんなこともあるよなー
想いながらツイさっき晩酌ゴハンして、
好きな某クラフトビールで暑気払いなるかなー思ったり。
そんな傍ら悪戯坊主はすやすやカワイイ寝顔で癒してくれる。

雨の音したり、静かだったり。
しばらく雨らしいけれど、秋が来るんだなー思うと雨も良いモンで。
まあ帰り道いきなり豪雨ざばん濡れまくったのは・まあ帰りだったから良かったし。
っていうのも今日のオツカレばたん原因になっているかもしれないけれど?笑

っていうワケでサッキは間違いUPしたんだけど、
閲覧してくれた方には申し訳ありません・しばしお待ちくださいね?
写真は残暑@2年前の悪戯坊主



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渓光る、丹沢

2020-08-31 20:13:03 | 写真:山岳点景
翡翠色ゆれる、誰も知らない渓谷の朝 
山岳点景:丹沢2018.6


八月末日・豪雨×猛暑日に写真で暑気払い×残暑お見舞いを、笑
滝や渓流は涼しくて楽しいですが、転滑落etc危険だらけなので要注意。
渓流の水遊びや沢登りは事故も多い×道迷い遭難の死亡原因スポットも沢沿いです。
【撮影地:神奈川県丹沢2018.6】

夏休み×緊急事態宣言出てないとは言っても×県境越えての外出自粛で近場の里山散歩・のち午後はおうち時間なココントコ週末、笑
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永遠の夏へ―William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet 18」

2020-08-31 08:20:26 | 文学閑話翻訳詩
言葉、君、永遠の夏へ
夏×ウィリアム・シェイクスピア「シェイクスピのソネット18番」


永遠の夏へ×William Shakespeare

Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate.
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer's lease hath all too short a date.
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimm'd;
And every fair from fair sometime declines,
By chance or nature's changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st, 
Nor shall Death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st.
 So long as men can breathe or eyes can see,
 So long lives this, and this gives life to thee.

貴方を夏の日とくらべてみようか?
貴方という知の造形は 夏より愉快で調和が美しい。
荒い夏風は愛しい初夏の芽を揺り落すから、 
夏の限られた時は短すぎる一日だけ。
天上の輝く瞳は熱すぎるときもあり、
時おり黄金まぶしい貌を薄闇に曇らせ、
清廉な美のすべて いつか滅びる美より来て、
偶然か万象にうつろい崩れゆく道をたどらせる。
けれど貴方という永遠の夏は色褪せない、
清らかな貴方の美を奪えない、
貴方が滅びの翳に迷うとは死の神も驕れない、
永遠の詞に貴方が生きゆく時間には。
 人々が息づき瞳が見える限り、
 この詞が生きる限り、詞は貴方に命を贈りつづける。
【引用詩文:引用詩文: William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet 18」自訳】

小説「第86話 建巳act.7陽はまた昇るanother」「斗貴子の手紙」に引用

ちょっと昔風なカンジに固い言い回しな翻訳にしてあります、
昔の手紙×論文集の扉詞に引用されているので、笑
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朝陽ふる、吐竜の滝

2020-08-30 23:09:03 | 写真:山岳点景
まばゆい光、滝、樹影、朝陽きらめく渓谷で 
山岳点景:吐竜の滝2019.7


真昼の猛暑日アンマリだから写真で暑気払い×残暑お見舞いを、笑
滝や渓流は涼しくて楽しいですが、転滑落etc危険だらけなので要注意。
渓流の水遊びや沢登りは事故も多い×道迷い遭難の死亡原因スポットも沢沿いです。
【撮影地:山梨県北杜市八ヶ岳山麓2019.7】

夏休み×緊急事態宣言出てないとは言っても×県境越えての外出自粛で近場の里山散歩・のち午後はおうち時間なココントコ週末、笑
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私の孫になる君へ―斗貴子の手紙 another,side story「陽はまた昇る」

2020-08-30 08:18:00 | 陽はまた昇るanother,side story
君に未来を、
harushizume―周太24歳3月下旬


私の孫になる君へ

愛しい君へ

はじめまして、未来に生まれている君へ。
私は君のお父さん、馨さんのお母さんで君にはお祖母さんになります。
名前は斗貴子「ときこ」と読むんですよ、旧姓は榊原といって世田谷にお家がありました。
その家は君がこの手紙を読むころには無いかもしれません、私は兄弟がいなくて一人っ子だから家を守る人がいないんです。

こんなふうに書くと分かってしまうかしれないけれど、私は君が生まれるよりずっと前にこの世から消えます。
私は喘息という病気で心臓も弱いの、長くは生きられません。君のお父さんが大人になる姿も見られず世を去るでしょう。
本当はもっと生きて馨さんが大人になったところも見たいです、入学式も遠足も一緒にしたいけれど叶いそうにありません。
でも、あなたに逢いたいです。

馨さんの子供である君に逢いたい、お祖母ちゃんですよと笑いかけて抱きしめたいわ。
どうしても君に逢いたいです、まだ生まれていない遠い未来の君に逢いたくて、つい馨さんの姿に想像します。
もしかして髪はくせ毛ですか、私がそうだから馨さんもくせ毛です。本は好きかしら、花を見るのも好きでしょうか。
こんなに想像するほど君に逢いたいです、だから手紙を書くことにしました。何年先になるか解からなくても必ず届く魔法で贈ります。
この魔法は叶っているはずです、何故って今こうして君は読んでいるでしょう?

君と一緒にしたい事はたくさんあります。
君と手をつないで庭を散歩したいです、私が好きな花を一緒に見たいわ、白い一重の薔薇ですよ。
本もたくさん読んであげたい、書斎はたくさん本があるでしょう?東側の飾棚は私が御嫁入りに連れてきた本です。
お菓子も一緒に作りたいわ、スコンは君のお祖父さんもお気に入りです、君も私みたいに甘いものが大好きかしら。
私の母校でも一緒に散歩したいわ、大きな図書館がとても素敵なのよ?君のお祖父さんの研究室も案内したいです。

お祖父さんの晉さんと私は大学の研究室で出逢ったの、フランス文学の研究室です。お互い本が大好きだから逢えました。
君のお祖父さんはフランス文学の学者です、戦争のあと独りでフランスに留学して一生懸命に勉強した立派な方です。
いろんなご苦労をされてきました、その苦労の分だけ濾過された心が本当に綺麗で瞳にも表れています。
私は君のお祖父さんの妻になれて本当に幸せです、そして教え子であることも誇りです。

私と君のお祖父さんは齢が十五歳も違います、でも共通点が恋になりました。
二人とも文学が大好きだという共通点です、フランス文学にイギリス文学、もちろん日本の文学も大好き。
私は体が弱くて学校に行けない日も多かったの、そんな私にとって本はいちばん傍にいる友達です。
それでも学校は好きだったのよ?だから尚更に学校へ行けない日もベッドで本を読み勉強しました。
そんな私だから君のお祖父さんが書いた本とも出逢えたの、彼の言葉たちは鼓動から響きました。
響いたから大学へ行きたいと夢を抱いたのよ、君のお祖父さんに逢いたくて。

君が生きる時代は女の子たちも大学に行きますか。
私の時代は女が四年制大学に行くことは珍しくて、合格も難しいと思われていました。
それでも私は大学へ行きました、君のお祖父さんと逢いたくて日本でいちばん難しい大学を受験したの。
病気がちで大学なんて無謀だとお医者さまにも叱られました、でも短い命ならばこそ夢を見に行きたいとお願いしたの。
どうしても君のお祖父さんに御礼を言いたくて、それには学生になって逢いに行くことが一番の恩返しだと想えて大学に進みました。

だって君、学問は受け継がれていくものです。
たとえば文学は文字を通して世界を伝えていくことができます、それを読んだとき人は希望を見つけることも出来るの。
病気でベッドにいる時間すらフランスの風景に連れていってくれた、この心の自由をくれたのは君のお祖父さんが紡いだ言葉です。
それは君のお祖父さんがこの世を去っても遺ります、文学が文字が世界にあり続ける限り、君のお祖父さんがつむいだ自由は生きています。
そして私も生かされました。

But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall Death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st.
 So long as men can breathe or eyes can see,
 So long lives this, and this gives life to thee.

私が好きな詩の一部です、シェイクスピアというイギリスの詩人が詠みました。
William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet 18」ソネットという十四行詩です。
言葉は時間も空間も超えてゆく梯、想いつなぐ永遠の力があることを謳われています。
この詩は学問をあゆむ全ての人に贈られるものです、この通りに君のお祖父さんは生きています。
きっと君のお父さんも同じように生きるでしょう、そして私も詩のように生きたのだと自負しています。

君のお父さんの名前は馨ですが「空」でもあります。
馨、この「かおる」という音はラテン語の“ caelum ”カエルムを充てたのです。
若葉の佳い香がする5月の青空の日に君のお父さんは生まれました、だから“ caelum ”です。
馨という文字は言葉を伝える「声」が入っているでしょう?きっと文学を愛する人になると思います。
そうして君に本を読み聴かせてくれるのだと予想しています、お祖母さんの予想は当たっていますか?

君の名前はどんな願いの祈りに付くのでしょう。
考えるだけで幸せになります、そして逢いたくて祈ってしまいます。
馨さんが大人になって大切な恋をして、そして君が生まれてきてくれること。その全てが幸せであれと祈ります。

馨さんが結婚する相手は素敵な女性でしょうね、君のお母さんになってくれる人ですから。
きっと私はすこしだけ嫉妬してしまいます、なぜって今も手紙を書きながら馨さんを見ていて愛しいのです。
こんなに馨さんが愛しいもの、馨さんの子供である君も愛しくて宝物で、誰よりも幸せを願わずにいられません。
だからこそ君のお母さんが幸せである日々を祈ります、君が笑っていられるように。

君のお祖父さんに、新しい奥さんを迎えてとお願いしました。
私は君のお父さんのきょうだいは産めません、でも健康な新しいお母さんがきたら馨さんにきょうだいが出来るでしょう。
私はきょうだいが無いけれど仲良しの従妹がいます、顕子さんといって馨さんのことも可愛がってくれる頼もしい人です。
病気がちの私をいつも見舞ってくれたのも顕子さんです、彼女が従妹だから私はたくさん笑っていられました。
そういう信頼できる身内が馨さんにもいてほしくて晉さんに再婚を勧めています。

ですから私ではないお祖母さまが君にはいるかもしれません。
その方と君は血のつながらない家族です、でもどうか大切にして下さいね。
家族は血の繋がりだけではありません、心が結ばれたなら幸福な家族です。

私は本当に幸せに生きました。
君が今いるこの家で私は生きて笑っていました、屋根裏部屋が私の書斎で大好きな場所です。
鎧戸の小さな出窓があるでしょう、あの下は小さな隠し棚になっていることを君は知っていますか?
開け方のヒントは寄木細工です、板をずらすと開きます。そこに贈物をしまっておくので受けとって下さい。
それを見れば私は幸せだったことが解かるはずよ、そして君を愛していることも伝えられると信じています。

君は学問が好きですか?
たぶん大好きだろうと思います、学問に出逢った晉さんと私の孫ですから。
君のお父さん、馨さんも学問が大好きな人になると思います。今も絵本を見て笑っているわ。
まだ文字も読めないはずの赤ちゃんです、でも小さな指で文字をなぞりながら楽しく笑っています。
だから君も学問を愛する人になるかもしれない、そう想えるから学問にも役立つ贈物を選びました。

いつか時の涯に君と逢えるよう思えてなりません、そのときは笑顔で私を見つけてください。
そのためにも写真を同封しておきます、君のお父さんを、私の caelum を抱いている私です。
そこには君も抱きしめています、何故って君は馨さんを通して私の遺伝子と夢を継ぐのだから。

どうか君、幸せに生きてください。私は永遠に君を愛し護ります。

湯原斗貴子


第86話 建巳act.7← →第86話 建巳act.8

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第86話 建巳 act.7 another,side story「陽はまた昇る」

2020-08-29 23:40:01 | 陽はまた昇るanother,side story
La Méditerranée en zinc; 
kenshi―周太24歳3月末


第86話 建巳 act.7 another,side story「陽はまた昇る」

ことん、

水桶に柄杓が鳴る、墓地そっと透って響く。
スーツの袖めくり一枚のさらし、濡らして絞って指そっと冷たい。
もう三月も終わる、それでも冷たい水ふれる桜の風、なつかしい墓碑に微笑んだ。

「お彼岸に来られなくてごめんなさい…お父さん、」

見つめる黒い石、刻まれた家紋に姓が鈍く光る。
花曇りやわらかな空の下、さらしで周太は墓石にふれた。

「…お祖父さんもお祖母さんもごめんなさい、なかなか来られなくて…ひいお祖父さんも、ひいお祖母さんもごめんなさい、」

呼びかけながら墓石を磨く、磨いた跡あざやかに艶めいて消える。
拭うごと白布ひとつずつ黒ずんで、来られなかった想い呼びかけた。

「休みがほとんど無かったんです、僕…でも学校は行きました、お祖父さんとお父さんの大学…お祖母さんもいたのでしょう?」

碑ぬぐって小さく声かける、話したくて。
話したい、でも本当は、生きていたとき話したかった。

「お祖父さんの本を読みました、論文どれもすてきで…お祖父さんの研究室、今は田嶋先生が守ってくれてるよ?」

語りかけて磨く墓、この下に祖父の遺骨は眠る。
生きてあったことはない、それでも瞳閉じて俤に微笑んだ。

「お祖父さん?夢で会いに来てくれたよね、お父さんと一緒に…銀河鉄道の夜の夢、」

熱で眠った夜、そんな夢に会えた。
家には写真すら遺されていなかった、それでも会えた面影に眼を開いた。

「お祖父さんは背が高かったんだね…僕はあまり大きくないけどお祖母さんに似たのでしょう?顕子おばあさまが教えてくれたよ、」

見つめる真中、墓碑の戒名が黒く光る。
刻まれた俗名、享年、そこにある時間さらしで拭う。

「おばあさまは二人のことね、たくさん話してくれるの…大学でのこと、イギリスのこと…二人が出会ったときのこと、」

声にして見つめる墓碑、祖父と祖母の名が寄り添う。
その刻まれる順番に、ことん、鼓動そっと疼いた。

「お祖母さんの手紙を見つけました、僕…すごく嬉しかった、」

声にした喉が疼く、見つめる名前そっと迫る。
あの手紙つづってくれたひと、その優しい手は今この下に眠る。

「おばあさん、僕ね…僕、おばあさんの孫で良かった、」

“私の孫になる君へ”

愛しい君へ、そう呼びかけ書きだしてくれたひと。
はじめまして未来に生まれている君へ、そんなふう自分を望んでくれたひと。

「おばあさん、僕、ちゃんと生まれて今ここにいるよ?」

微笑んで名前そっと拭う、刻まれた三文字なぞらせる。
このひとが自分を望んでくれた、生まれるずっと前から、その命を懸けて。
その想い綴られた言葉たち、ほら?見つめる墓碑の名前に映りだす。

“私は君のお父さん、馨さんのお母さんで君にはお祖母さんになります。名前は斗貴子「ときこ」と読むんですよ、”

斗貴子、墓碑にそう刻まれている。
この名前のひとが自分の命を望んでくれた、生まれるずっと前から、ずっと。

“馨さんの子供である君に逢いたい、お祖母ちゃんですよと笑いかけて抱きしめたいわ。どうしても君に逢いたいです、”

どうしても逢いたい、あいたい。
その想い僕だって同じだ、だから今日もここにいる。

「僕、おばあさんのおかげで今、生きているんだよ…顕子おばあさまが救けてくれたのは、おばあさんのおかげでしょう?」

この墓碑に眠るひと、その従妹が自分を救ってくれた。
その救い手を自分の元に連れてきたのは、眠るひとの遠い遠い、はるかな願いだ。

“何年先になるか解からなくても必ず届く魔法で贈ります。この魔法は叶っているはずです、何故って今こうして君は読んでいるでしょう?"

祖母が願って贈ってくれた、その想い自分に届いている。

「おばあさんの手紙とプレゼント、僕の宝物なんだよ…だからね、手紙も暗記しちゃってるくらいなの、」

固い墓碑さらし拭って、透ける温もり慕わしい。
ただ陽だまりに温まっただけ、そう解っていても微笑んだ。

「おばあさん、僕もくせっ毛でしょう?」

笑いかけて髪かきあげて、梳かれる指やわらかに絡む。
こんなふう祖母も髪をかきあげたろうか?

“もしかして髪はくせ毛ですか、私がそうだから馨さんもくせ毛です。本は好きかしら、花を見るのも好きでしょうか。”

本は大好き、花も庭いっぱい育てている。
あの花々いくつか祖母が植えたのだと大叔母は教えてくれた。

“私が好きな花を一緒に見たいわ、白い一重の薔薇ですよ。”

教えてくれた花は祖母が愛した花。
それが「同じ」だった幸せに、名前を見つめて笑いかけた。

「本も好きだよ、お花も好き…おばあさんが好きな花、僕もだいすき…同じだね?」

声ひそやかに呼びかけて、冷たい墓碑おだやかに温かい。
もう消えてしまったひと、それでも遺された想いは届いている。

“こんなに想像するほど君に逢いたいです、だから手紙を書くことにしました。”

想像してくれた、生まれるより前の時間から。
生きて会えなかったひと、それでも似てしまった共通点に微笑んだ。

「喘息も同じだね…病気は困るけど、でも、似てるから嬉しいってなれたよ?」

呼びかけてスーツの胸もと静かにふれる。
この病も遺伝に同じと、そう思えるから厭わしいだけじゃなくなった。

“私は喘息という病気で心臓も弱いの、長くは生きられません。でも、あなたに逢いたいです。”

長くは生きられない、そう書きのこした通り祖母は早逝した。
それでも願ってくれた祈りに周太は笑った。

「僕も会いたかったよ…だから手紙ほんとに、本当にうれしかったよ?」

“君と一緒にしたい事はたくさんあります。”

一緒にしたいと願ってくれた、生きては叶わなかった願い。
それでも同じに好きでいる、花も本も、他たくさん同じに好きがある。
そうして受け継がれていく想いと磨く墓碑、眠るひとの言葉が映りこむ。

“だって君、学問は受け継がれていくものです。たとえば文学は文字を通して世界を伝えていくことができます、それを読んだとき人は希望を見つけることも出来るの。”

学問を愛したひと、その想いが祖父と出逢い父を生んだ。
そうして自分が今ここにいる、生かされて。

「…そして私も生かされました。って、おばあさん書いてたね…」

声そっと手紙なぞらせて、そこに記されていた詩。
その詩を父も愛していた、そして綴られる祈りに笑いかけた。

「お父さんの論文を読んだよ?田嶋先生がくれたの…ワーズワースの詩のこと、すごいね…」

語りかけ拭う碑、木綿を透かして温かい。
こんなふう父の背中を流せたなら、どんなに幸せだろう?

「…おと、さん…」

声こぼれて瞳ゆらぐ、やわらかに視界にじんで零れだす。
泣いてしまう、でも、今はそれでいいのかもしれない。

「おとうさん…僕、今日、警察官を辞めてきたよ…」

辞めてきた、自分の意志で。
この自分の意志で退職した、この最涯に周太は笑った。

「僕もお父さんの場所にいてね、わかったんだ…お父さんはお父さんだったんだなって、わかって嬉しかった、」

父は父のまま生きて死んだ。
それを知りたくて同じ道に入った、そして終えて今日ここに生きている。
生きて今この墓碑にさしむかう、ここに眠る想いに笑いかけた。

「田嶋先生がお父さんの論文集を作ってくれたんだよ、扉はシェイクスピアの詩…お父さんが大好きで、お祖母さんも好きな詩だよ?」

But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall Death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st.
 So long as men can breathe or eyes can see,
 So long lives this, and this gives life to thee.

「この詩を選んでくれて…深い緑色の表紙なんだよ、銀色の文字で…お父さんが好きな山の色だからって田嶋先生がしてくれたの、」

笑いかけて視界そっと滲みだす、ゆるやかな熱が零れだす。
この詩こめられる父との記憶、そして祖母が綴ってくれた手紙の祈り。
そんな全てが父の論文集に掲げられたこと、それを選んだのは父が唯ひとり、ザイルを繋いだ相手。

「お父さん、ほんとうに田嶋先生は夏のような人だね?あの詩そのままで…お祖父さんもそう思うでしょう?」

祖父の教え子、そして父の友人でザイルパートナー。
その人が自分の明日に待っている、それは祖母の願いでもあるかもしれない。

“言葉は時間も空間も超えてゆく梯、想いつなぐ永遠の力があることを謳われています。この詩は学問をあゆむ全ての人に贈られるものです、”

遺してくれた手紙に祖母が遺した想い、そのままに想い繋がれる。
繋がれて見つめる自分の明日、もう近い選択に顔を上げた。

「僕も学問の世界に生きます、だから…いつか逢えるね?」

“いつか時の涯に君と逢えるよう思えてなりません、そのときは笑顔で私を見つけてください。”

そんなふうに祖母は願ってくれた、だから逢える。
きっと逢える日には返事をしたい、あの手紙の最後の言葉に。

“どうか君、幸せに生きてください。私は永遠に君を愛し護ります。”

あの言葉に笑って、自分は生きる。

※加筆校正中
(to be continued)
【引用詩文:Jean Cocteau「Cannes」】

第86話 建巳act.6← →第86話 建巳act.8

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翠煙、吐竜の滝

2020-08-29 08:50:13 | 写真:山岳点景
霧たちのぼる雲を生む、緑滴る渓の夏 
山岳点景:吐竜の滝2019.7


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蒼水、雄滝の冬

2020-08-28 20:48:38 | 写真:山岳点景
蒼い水奔る、真冬に冴える清流色彩 
山岳点景:雄滝2017.12


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【撮影地:山梨県小菅村秩父山塊2017.12】

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第86話 建巳 act.6 another,side story「陽はまた昇る」

2020-08-27 23:57:00 | 陽はまた昇るanother,side story
Petit oiseau, petite rose, 
kenshi―周太24歳3月末


第86話 建巳 act.6 another,side story「陽はまた昇る」

見慣れた入口、ここを潜るのは今が最後。

「おはようございます、」

あいさつの先、見慣れた制服姿かすかに硬くなる。
強張るまま空気はりつめて、硬い口調が呼びかけた。

「失礼します、ご用件は何ですか?」

硬いトーン突き放される。
いつも硬い、それでも言葉は違っていた。

―いつも挨拶だけだったのに…もう違うんだ、

親しいわけじゃない、けれど顔は憶えている。
そうでなくては務まらない、だから今、憶えているけれど「知らない」貌されている。

「お名前とご用件をお願いします、」

制服姿は無表情のまま訊いてくる。
あらためて名前と用件を訊く、もう自分は「消えている」のだろう。

―配属された時からファイルは消されるけど…もうここに僕はいないんだ、

今日まで自分が所属する部署、それは存在すら消える場所。
そうして今も消されている、この予想していた現実に周太は一礼した。

「今日付けで退職する湯原と申します、退職届の提出に参りました、」

だから今日、自分の意志でここに来た。
譲れない想いの最涯で、庁舎の番人が問いかけた。

「そちらの方は、ご用件は?」

硬い視線の先、隣でスーツ姿の青年が佇む。
その細い瞳おだやかに笑って、警察官に会釈した。

「東京地検の加田です、捜査のご協力をお願いしたく参りました、」

告げながら胸ポケットに指入れて、取りだした金属ちいさく光る。
金と白と、中心の紅色きらめくバッジに警官の眼かすかに揺れた。

「なぜ、検察官が同行を?」

退職する警察官と検察官が一緒に現れる。
こんなこと不審に思われて当然だろう?けれど若い検事は微笑んだ。

「偶然そこで会っただけですよ、問題ありますか?」

明るい、けれど冷静な声おだやかに応えてくれる。
何ひとつ動じない、そんな検事に警察官は告げた。

「確認します、こちらでお待ちください、」

かちり踵返して電話に向かう、その背は制服に皺がない。
こんなふう隙など許さない場所で、検察官は微笑んだ。

「湯原さんの退職届、私の仕事に関わることみたいですね?」

細い瞳ほがらかに笑ってくれながら、その指がスーツの衿にバッジ留める。
菊の白い花弁と金色の葉、その中央に紅色あざやぐ旭日。

“秋霜烈日のバッジ”

霜と日差しのような形がダークスーツの衿もと光る、それは刑罰や志操の厳正に喩えられる形。
そのままに職務と理想像が課される青年は、精悍な口もと柔らかに言った。

「このまま退職届の受理を見届けさせてください、そのあとも私は仕事していきます、」

おだやかで明るい口調、その眼差し冷静なくせ明るく温かい。
秋冴える霜と夏育む炎天、そんな形そのままに青年の瞳が燈る。

そして退職届は受理された。

※加筆校正中
(to be continued)
【引用詩文:Jean Cocteau「Cannes」】

第86話 建巳act.5← →第86話 建巳act.7

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水踊る、白糸の滝

2020-08-27 10:30:05 | 写真:山岳点景
飛沫けぶる、銀色おどる水の時間 
山岳点景:白糸の滝2017.7


真昼の猛暑日アンマリだから写真で暑気払い×残暑お見舞いを、笑
滝や渓流は涼しくて楽しいですが、転滑落etc危険だらけなので要注意。
渓流の水遊びや沢登りは事故も多い×道迷い遭難の死亡原因スポットも沢沿いです。
【撮影地:山梨県奥秩父山塊2017.7】

夏休み×緊急事態宣言出てないとは言っても×県境越えての外出自粛で近場の里山散歩・のち午後はおうち時間なココントコ週末、笑
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