
今日の「お気に入り」。
「 人の才能というものは一つしかない、行きづまっても他に転じることはできない。花いっとき
人ひと盛りである。弱年のころ百メートルを十秒強で走ったから今も走れるとスポーツの世界で
は思うものはないのに、他の世界ではあるのである。以前奇想わくがごとくだったから今もと思
う経営者がある。
私は一雑誌を主宰して四十年になるが、プランがわいて出て応接にいとまがなかったのは五年
もなかった。それなのに雑誌が四十年も続いたのは全盛時代がなかったせいである。
満つれば欠くるといって、全盛時代があればあとは衰えるばかりである。
命長ければ恥多しという。
ながければ恥多し』平6・6・2〕」
(山本夏彦著「ひとことで言う-山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)
