「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2014・01・06

2014-01-06 10:15:00 | Weblog


 今日の「お気に入り」。

 「 インドに狼に育てられた子の話がある。名高いアマラとカマラである。一人は幼くして死んだが
  一人は十七(推定)まで育った。けれども言葉はついにひと言もおぼえなかった(片ことはしゃ
  べったが笑えなかったという説あり)。ここに秘密を解くカギの一つがある。してみれば胎内か
  ら三歳までのうちに幼児語を、十歳までにその国の言葉の骨格をおぼえるのだなと思われる。骨
  格が根をはったら、外国語は容易にはいれない。翻訳しておぼえるから本心を打明ける手紙は母
  国語でなければ書けないことを、幼くして渡米して小学校からプロテスタンの学校で教育を受け
  た、のちの津田塾大の初代学長『津田梅子』の例で知った。」

(山本夏彦著「最後の波の音」文春文庫 所収)


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